▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『猫とソフトクリームと灼熱地獄 』
矢野 古代jb1679)&カーディス=キャットフィールドja7927)&ミハイル・エッカートjb0544


●真夏の大ピンチの訪れです
 さて、四季が美しい国ニッポンと申しましてもその偉大なる自然には苦しめられるばかりのことが御座います。
 春は花粉症、夏はだるく、秋は落ち葉掃除が大変で、冬は寒い。
 中でも夏の暑さを乗り切る為に、古来から人は様々な工夫を凝らしてきました。
 現代人には、エアコンなる文明の利器が御座います。
「暑い。どうしようもなく、あつい」
 しかし、眉をしかめる矢野 古代君のようにその恩恵を受けられない不幸な現代人も居たのでした。
 先程からリモコンを必死の形相で連打しているのですが、現実は漫画のように根性論だけではどうにもならないのです。現実はそんなヌルゲーではないのです。
 ぶっちゃけて言うと、矢野家のエアコン君は壊れてます。故障しています。要するに、矢野家は危機的状況に置かれていました。
「……本気で、あつい」
 今にも溶けそうな古代君は部屋でのたうち回ります。
 だけれど、彼は気付きました。
「このまま家に居ても仕方無い」
 そう、何も始まらないのです。気付いた古代君はむくり、と立ち上がります。
「アイス食いに行こう」
 出歩けばきっと何か良いことがある。ポケットに財布と涼しさへの希望を詰め込んで部屋を出たのです。



●それは、運命の出会いでした
 意を決して部屋から出た古代君を待ち受けていたのは、憎たらしい程に眩しいぎんぎんぎらぎらお日さまでした。
 どうして、こうも太陽って呼ばれてもない時に出てくるんでしょうね? 恨みがましくお日さまを睨み付けても、何の意味もありません。
 暑い。暑い。超暑い。過ぎるのはその考えばかりですが、実は少しだけ夏の陽射しに心を躍らせていたりしました。

 そうして、5分くらい歩いた頃でしょうか。

 ――ガシッ!

 古代君の足が何者かに掴まれてしまったようです。それに気付いた古代君は思わずびっくりしてしまいました。
「な、何だ?」
 ぎょっとして、古代君そちらに目を向けてみると其処に行き倒れていたのは大凡夏の日本には似付かわしくない全身真っ黒くろすけのスーツに身を包んだ金髪青年のミハイル・エッカート君でした。
 彼、熱いの凄く苦手なはずなのにポリシー(?)である黒服だけは脱げなかったのです。最早、魂の一部なのです。
 そんなミハイル君、顔に死相(のようなもの)が浮かんでいるようでした。そうして、訴えます。切実に、瞳で訴えかけます。
「死にそうな俺に愛の手をぉぉぉぉぉぉぉ……」
「あー、アイス買ってやるから行こうぜ」
 今にも倒れそうだったミハイル君に古代君はとりあえずちろちろと、とりあえずペットボトルのお水をかけました。
 掛けられながら溶けきっていたミハイル君。しかし、古代君の誘いの言葉をきいて、がばっと身を起こしました。
「本当か?! 嘘だったら針千本飲ますからな!」
「こんなことで嘘は言わない。というか、針千本何処から用意するんだ?」
 古代君のツッコミはわりと、的を射ていました。
 さて、急に元気になったミハイル君。ペットボトルのキャップを閉めながら、古代君はふとこんな存在を思い出しました。
「……カッパか?」
「キュウリ?」
「夏野菜……って、いや連想ゲームじゃなくてまぁいいや」
 はぁと、古代は息を吐きます。
「ミハイルさん、行くか」
「ああ――ッ!」
 先程の砂漠の中で生き倒れるミイラのようだったミハイル君は何処へやら。彼は元気よく頷いて、飛び上がります。
 この灼熱地獄の中、アイスクリームへの期待に胸を高鳴らせたのでした。


 だけれど。
 やはり暑さには弱いミハイル君。その後は古代君に寄りかかる形でアイス屋さんへの道を進んだのです。
 その光景、非常に暑苦しいです。



●3人寄れば暑苦しい
 さて、辿り着いたのは駅前にあるお店です。
 そのお店はラーメンとともにソフトクリームを出すなどという少し驚いてしまうようなお店ですが、安くて美味しいので地元の皆さんには愛されているお店でした。

 さて、冷たいアイスクリームにきゃっきゃきゃっきゃと歓声を上げる子ども達、とても楽しそうですね。その中で一際目立つ黒いもこもこが居ました。
 よく見れば、猫のような形をしています。けれど、その体長は人間と同じくらいはあるのです。背中には夏の強い陽射しに照らされた銀色のファスナーがきらーんと輝きます。
「むふー、アイスクリームはやはり甘くて冷たくていいのですよね。ちゃんと皆さん、ゆっくり食べないと頭がきーんとなりますよ」
「かき氷じゃねーからならねーよ!」
「おやおや、最近の子どもは元気ですね」
 そう、黒猫の着ぐるみを身に纏ったカーディス=キャットフィールド君です。
 曰く黒猫忍者服のきぐるみで、夏毛仕様らしいのですが、ちっとも涼しくなさそうです。むしろ、黒がお日さまをいっぱい吸って、かなり暑そう。
「なんだ、あれ……暑苦しい」
 だからか、ソフトクリームをぺろりとあっと言う間に完食してしまったカーディス君。
 そのアイスクリームをなめるもこもこに向かってミハイル君が吐き出した言葉は、何だかとっても端的。目は虚ろ。
 ミハイル君、暑さのせーでのーみそ錯乱気味です。がばりと両腕を掲げます。荒ぶるミハイルのポーズです。具体的にどのようなものかは皆様のご想像にお任せ致します。
「暑苦しいからそれを脱げー!」
「あーーれーーーおやめくださいおだいかんさまーーー!」
「ええい! よいではないか、よいではないかー!」
 ミハイル君はカーディス君に襲い掛かりました。カーディス君は必死の抵抗をします。
 絡むミハイル君は、なんだかノリがとっても酔っ払いです。勿論、シラフです。のーみそゆだってるけど。
「……なんだそれ」
「これが脱がされる時における日本の美学だと思いますの」
「会社の同僚に服を無理矢理剥ぐときはこうだと教えられた」
 古代君の呆然とした呟きに律儀に答えを返すイギリス猫野郎のカーディス君とアメリカンサラリーマンのミハイル君。
 米英、とっても仲良く日本文化を大誤解しております。誰か、どうぞ座布団を取り上げてください。
「よいではないかよいではないかー! このファスナーが目に入らぬかー」
 その間に、ミハイル君はファスナーに手を伸ばし思いっきり、引っ張りました!
「ちょっまっ?! そのファスナーはダメですのー!!」
「よいではないかよいではないかー!」
「らめぇえええええええええ! あぁぁぁぁっ?!?!」
 叫び声に、子ども達の視線が一気にカーディス君達の元に集まります。
 カーディス君は、必死の抵抗です。必死の抵抗を続けています。周囲の子ども達も呆然とその様子を眺めています。

 しかし、糸の切れた人形のようにぱたりと倒れ込むミハイル君。慌てて古代君が支えます。
「疲れた、暑い」
 どうやら、諦めたようです。これにはカーディス君もほっと一安心。
 とても親しくさせていただいている、素敵な年上のお友達ふたり。でも、夏場は着ぐるみを剥ぐとか毛を刈るとか言いながらハンターのような雰囲気で此方を射貫く視線は正直言うと少しだけトラウマだったりするのです。
「カーディスは、何を食べていたんだ?」
「夕張メロンソフトです。おいしかったのですよー」
 古代君の問いにカーディス君は元気よく答えました。
「じゃあ、それにする」
 速攻で決めたのはミハイル君です。最早、考える余裕もなかったのでしょう。
 お店の人が手渡したアイスを美味しそうに舐める



●えぴろーぐ〜童話「ヤノタロウ」〜
「犬代わりの猫と猿代わりの黒服と桃から生まれていないけどヤノタロウ……一人足りないけど、まぁいいですね」
 クーラーが効いた矢野家で、カーディス君は満足げに絵日記を閉じました。
「何をしている」
「絵日記ならぬ絵本日記なるものを作っておりました! 中々の出来だと思います」
 古代君に自信満々にカーディス君は絵本を突きつけました。
「この夏のめもりーあばんちゅーるですよー。童話風に纏めて見たのです。読みます?」
「破棄」
「あーれー、おだいかんさまーおやめくださいおだいかんさまー」

 こうして、黒い撃退士達の夏は騒がしく過ぎていったのでした。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【jb1679 / 矢野 古代 / 男 / インフィルトレイター】
【ja7927 / カーディス=キャットフィールド / 男 / 鬼道忍軍】
【jb0544 / ミハイル・エッカート / 男 / インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 ソフトクリームはラーメン屋で食べるものだと思っていました。水綺です。もっとー食べてみやーち。
 ご発注、有難う御座いました!
アクアPCパーティノベル -
水綺ゆら クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年09月22日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.