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『夏を乗りこなせ! 〜勇敢なる彼らの愉快な一日〜 』
衛 杏琳(ic1174)&隻(ib9266)&林 于示(ic1168)&樂 道花(ic1182)&五黄(ic1183)&浪 鶴杜(ic1184)&遼 武遠(ic1210)&虎星(ic1227)&斯波・火懿李(ic1228)

●龍ではなく波を

 いつだってなんだって、主の言葉は絶対なのだ。
「海に行くぞ!」
 洛春邸の風通しの良い一室に飛び込んだ少女、衛 杏琳(ic1174)の張り上げる声に、広間でくつろいでいた同胞達は一斉に視線を向けた。
「はいはーい、もー様にさんせーい!」
「勿論ついてくぜ」
 打てば鳴る速さで虎星(ic1227)が両手をぶんぶんと頭上でふって、樂 道花(ic1182)が鼻をならし頷く。二人とも、既に目が輝いている。
「突然ですね、殿」
 どうしてですかと問う目付け役、斯波・火懿李(ic1228)に杏琳は笑顔を返した。
「今日はいい天気だろう。絶好の海日和だと思わないか?」
 要するに気まぐれで、思いつきだということだ。
「食事の準備は後追いでどうにでもなるとして、水着の用意はすぐにできませんよ」
 突然の提案を諌めようとした火懿李の言葉を遮るようにして、隻(ib9266)が持っていた荷を差し出した。結構な量に気圧されつつ火懿李が受け取る。見た目ほどは重くない。
「買ってある」
 中身は同胞達全員の水着。
「いつの間に?」
 五黄(ic1183)が尋ねる横で、浪 鶴杜(ic1184)が手をぽんと打った。
「殿達女性だけででかけてらしたの、このためだったんですねえ」
 鶴杜の言葉に火懿李も思い出す。つい主の言葉につられたが、彼女たちは以前、揃って買い出しに行っていたことがある。それもただの気まぐれだろうと思っていたが、こんな日が来ることを予想しての下準備だったらしい。確かに今日であれば仕事のない者も多い。天気という好条件も揃った日ということなのだろう。
 男性用の水着は、女性用ほどサイズの違いは問題にならない。それは彼女達が自分達に内緒で代わりに見立てたのだろう。
(なるほど、殿の計略のうちですか)
 してやられましたねと口が笑みを形作る。ならばぬかりのない準備を整えなくてはならない。
「‥‥」
「これを着るのか」
 林 于示(ic1168)には虎星が、遼 武遠(ic1210)には道花が水着を渡す。彼女達が特別に選んだと聞いてしまい感想を言うに言えず、いつも以上に静かになる二人だった。

●熱き日差しとたくさんの砂

「海ーうーみー!」
 駆けだしていく虎星が途中でくるりとふりむく。レース状のパレオもふわりと揺れた。
「もーさまー♪」
 対する杏琳はワンピース水着に羽織物。時折腕を力いっぱい振り回しながら呼んでくる彼女に答えようとしたところで、杏琳の視界が遮られる。
「殿! とのっ! いい天気ですね!」
 近くまで寄ってきた鶴杜だ。側近二人が今すぐ傍に居ないおかげで杏琳に接近中。尻尾をぶんぶんと振りながら笑顔を向けてくるわんこ系男子(だが狼)にも杏琳は分け隔てなく笑顔を向ける。傍目には猛獣使いに見えるかもしれない。
「よく晴れてていい天気です! さすが殿! 嬉しくて駆け回っちゃいますよ!」
「うん、そう言ってくれると思ってた」
 こくりと頷く様子が『いってよし』に思えたのか、鶴杜は繋がれた紐をちぎったように走り出した。白い砂浜の照り返す様子に、彼のもふもふの灰白尻尾が映える。今はまだ陽射しも強いけれど、夕方になったらとても幻想的な景色になりそうなくらい。
 虎星も鶴杜も水が苦手だ。新しい水着は着ているけれど、基本的には砂浜を駆けまわるだけに留める。熱くなった砂が足を焼くから、波打ち際で時々熱をさらう波が気持ちいい。
「もーさまー♪ 海だよーあそびましょー!」
 熱心に駆けずり回る合間に主のところにやってきてはじゃれつくのはどちらも変わらない。しかし虎星は猫科であるし同性なので、杏琳に対しての絡み方は違った。尻尾と耳がもふもふなのは変わらないけれど、体全体で擦りつくような感じなのだった。
(私だって成長の余地はまだある、はずだぞ)
 いろいろと負けているような気もしつつ、杏琳は考えないようにした。

「‥‥む‥‥」
 陽射しはもちろん、気温も高い。潮風があるとはいえ、遮るものがパラソルしかない状況だ。于示は一か所にじっと座り込んで目をきつく閉じて暑さと戦っている。ぐでっとぐんにゃりだらけてしまいたいところを、これも精神修行とばかりに瞑想で耐えているのだ。
 そんな彼を横目で見ながら隻は杯を傾ける。スポーティなタンキニがほっそりとした体を包んでいる彼女が飲むのは水でも茶でもなく既に酒なのはご愛嬌、彼らは酒に強い者が多く、外見に差はあるが皆等しく成人していて飲むときは皆ものすごく飲む。これでもかというくらい飲む。今駆け回っている虎星は笑顔で盃を空けるくらいだ。
(‥‥悪くない)
 火懿李のそろえた酒が美味いということもあるだろうが、久々のゆっくりとした時間。浜辺で、気心の知れた同胞達と、戦いから離れた場所で一時の休息。この状況そのものが悪くないと思う隻である。于示が修行然とした様子で頑張っているけれど、もう少し気を抜いてもいいのではないだろうか。
(倒れる前に声をかければいいか)
 同じ主君に仕える者同士互いの距離感はわきまえている。
「殿ー、これでいいのか?」
 ビキニ姿の道花が杏琳に桶を持ってくる。何に使うのだろうかと隻はぼんやりと眺めたまま。その隣に五黄が座る。
「多分一波乱来るぞ」
「兄様」
 隻用の追加の酒瓶を見せながら、小さく笑う。
「操のあの背中は、何か企んでる時の背中だ」
 俺達みたいに耳や尻尾があるわけじゃないけれど、わかりやすいよなと笑うその眼は保護者のもの。
「止めなくていいんですか」
 主らしくない振る舞いは嗜めるべきだろうか。しかしそれは武遠や火懿李の仕事であって自分の仕事ではない気もする。
「どっちにしてももう遅いんじゃね?」
 ほら。五黄の示す先では、既に事件は始まっている。

●正しい水の使い方

 道花にもらった桶に海水を汲んだ杏琳は、標的を誰にしようかと物色していた。パッと見は暑がっている同胞に水を分けてやる優しい主君のはずだが、内心は少し違っている。
(水に近づかない者も多いが、かけてしまえば皆涼めるだろう?)
 我ながらいい考えだと思っている。折角皆で海に来たのだ、なるべくなら大人数で楽しみたい。はしゃぐには難しい性格の者もいるけれど、だからこそ、一緒になって水遊びをしてみたいとも思うのだ。
 勿論、涼んでもらうことも目的に含まれているのは嘘ではない。だって海に来ること自体が羽休めのつもりなのだから。
(避暑らしく水を浴びなければな!)
 さて誰にしよう‥‥ズルッ!
 考えに満足した顔のまま体の向きを変えて、足元の荷物に気がつく。傾いだ体を立て直そうとしたせいで、桶だけが飛んだ。
 ズバシャアッ!
「殿!?」
 砂浜に強く踏みこむ音と水が跳ねる音が合わさって響いて、同胞達の視線が集まる。
「ん、ああ。この通り大丈夫だ。驚かせて悪かったな。武遠も平気か?」
 日頃の鍛練の賜物だなと杏琳が笑い、武遠に視線を向ける。
「背にかかったくらいですから」
 水着ですし大丈夫ですとの返事。しかし狐の尻尾は海水びたしで、心なしか元気がなくなったようす。眉もやや下がったような? 杏琳の見間違いだろうか。
「武‥‥っ!」
 すまなかった、悪気あっての事じゃないんだと口を開きかけた杏琳だが、冷たい視線を感じとり息を飲む。
「殿‥‥少し戯れがすぎます」
 振り向かずともわかる、このままでは火懿李に捕まり炎天下のお説教コースだ。水着だって新調して来たというのに、それはいただけない。
「惇瑚! 黒淵!」
 すかさず側近二人の名をよべば、心得た五黄と隻が杏琳の壁となり盾となり、火懿李を阻んだ。
 一連の様子をしっかり確認できており、長い付き合いだからこその見事な連係プレーに火懿李も勢いが削がれる。
「お供します、操様」
 その隙に杏琳は逃走、隻もすかさずついていく。酒を飲んでいたとは思えない身のこなしだ。
「あ、お待ちなさい! ‥‥まったく」
 火懿李だって好きで怒りたいわけではない。主には主らしい態度というものがあると思うから言うのだ。
「ま、遊びに来てるんだしさ?」
 五黄のなだめる素振りに気もとられ完全に機会を失う。
「悪気あってやってるんじゃないはずだしな」
「当たり前です‥‥まあ、確かに」
 人を惹き付ける愛嬌も必要なのは事実だ。まして今は五黄の言う通り、同胞達だけで遊びに来ているわけで‥‥うやむやになったのは、かえって良かったのかもしれないと、落としどころを見つけることにするのだった。

「‥‥‥‥‥」
 杏琳の悪戯騒動の横で、被害者武遠は人知れず自分の尻尾に触れる。潮水滴る尻尾は、いつもの自慢の尻尾の手触りに比べたらとても残念な感触。主に心配をかけたくもなかったから、大丈夫とは言ったけれど。いつも人に見られないところで手入れは欠かしていない自慢の尻尾。今はふって水滴を飛ばす気力も起きない。
 ぱさり。
 その尻尾に手拭いが投げ掛けられる。誰だと振り返れば、それは道花が寄越したもので。
「ここでしけた顔すんなよな」
 元通りとはいかないだろうけど、それでも使えよ。言い捨てた道花は足はやに杏琳を追いかけようと離れていく。
「感謝する」
 見ているだけでも楽しいと感じていた、その気持ちまでも忘れるところだった。それを思い出させてくれた分も含めて、武遠は道花のその背に返した。

●不慮の挑戦結果

 波が運んでくる海水が気持ちよかったから。虎星はついつい調子に乗って、波打ち際から少しずつ海の中に入っていく。
「きっもちいいーーー♪」
 パシャパシャ‥‥パシャン!
「あははははは!」
 足にあたる波の音も大きくなって、どんどん楽しくなってくる。水が苦手だとか、泳げないなんてことを忘れるくらい、心の底から楽しんで。
「あっ!」
 バシャン!
 虎星の足が波に取られる。浅瀬だったはずのそこは、運の悪いことに一段深くなった場所。小柄で泳げない虎星はもちろん溺れてしまう。
 バシャバシャバシャッ!
 手足をどう動かしていいかもわからない。何もしないよりはいいはずだと必死にばしゃばしゃ動かすけれど、逆に沖から流されていってしまうのだ。
「あーーーーー!!」
 そうだ誰かを呼ばなくちゃ、でも誰を? とりあえず出たのは叫び声だけ。
「虎星!」
 杏琳の声が聞こえたのが先か、于示が海に駆け飛び込んだのが先か。
「‥‥‥‥‥」
 豪快なクロールでざかざかと波を掻き分けていく獅子の姿は鮫もかくやと言わんばかり。押し寄せる波がどんなものであろうと動じずに、虎星に向かい泳いでいく。
「喋ると海水を飲む」
 だから閉じていた方がいい。一言だけ伝えて、虎星をひょいと抱えあげる。片方の腕は背に もう一方は膝の下に。いわゆるお姫様だっこという奴だ。
 速度重視で泳いで向かってはいたが、于示の身長であれば足もつく場所なのだ。そしてなるべく虎星を水につけずなおかつ変な場所に触れない方法となると自然とそうなる。他意はない。すべては外見のわりにスタイルのいい虎星のせいということで、于示のある疑惑の都合でもない。
「ふにー」
 流石に溺れたのが堪えたようで、元気一杯だった虎星がおとなしい。
「少し休むといい」
 小さな声で言う于示の声はどこか優しく響いていた。

(虎星は大丈夫そうだな‥‥)
 一安心だ、と持っていた鞠を道花に投げ返そうとした杏琳の耳に再び叫び声が響いた。
「うわあああぁぁぁぁぁ!?」
 同胞達も虎星の無事に胸を撫で下ろしたところだった分驚きが大きい。
「なんですか」
 尻尾を拭いていた武遠の声にも驚きが混じっている。
 そうして全員の視線を集めた先に居るのは鶴杜。
「あれはどうしたんだ」
 鶴杜の姿を見た杏琳の声には驚きを通り越して呆れも混じる。
 泣きながら戻ってきた鶴杜は、右手に鮑を貼りつかせ、左手に雲丹が刺さり、頭にワカメが絡まり、そして尻尾を大きなシャコガイに挟まれているという、天然海産物トラップ大集合な姿になっていたのである。毒物じゃないのが救いだが、逆に笑いを誘‥‥状況は非常によろしくない。
「取ってください! 取ってくださいぃ!」
 半狂乱の鶴杜が五黄や武遠に必死の形相で泣きつく。端から見た格好はともかく、当人としては痛い物ばかり。特にシャコガイが大きくてがっちり挟み込んでいる分、他の全てが外せることに気づいていないような勢いである。
「肴が増えたな!」
 舌なめずりをする道花を火懿李がたしなめる。
「不謹慎ですよ、まず助けなければ」
「でもあれ旨そうだよな、食いでもありそうだ」
 新鮮だから生でもいいなと言う五黄、こちらも食べる気だ。
「どうしてそうなったのかという疑問はありますが、まず状況を片付ける方が先ですね」
「‥‥手伝おう‥‥‥」
 尻尾の危機に心配そうな顔で武遠が近寄り、虎星を休ませた于示も早速素手で貝に手をかける。
「黒淵、私は待っていればいいのかな」
「操様は指揮をとればよいかと」
 虎星は私が看ておきますからと隻の言葉に背を押されて、杏琳も鶴杜救出に向かった。
「まずは落ち着け鶴杜! 暴れたら余計に締まると思うぞ、その貝!」
 于示が強引に開こうとしているシャコガイの様子を見ながら鶴杜に声をかける杏琳。
「殿おぉぉぉ!」
 主の声でそれまで暴れるように手足をばたつかせていた鶴杜がびしりとおとなしくなる。これなら救出も長くかからないだろう。

●場所は違えといつもの姿

 鶴杜が体を張ってまで手に入れた海産物もつまみに増えて、五黄は待ってましたとばかりに宴会へと切り替える。主を含め自分より若い同胞達への対応があると見越していたからこそ、状況が落ち着くまでは個人的な楽しみを控えていたのだ。
「これでうまい酒が飲めるってもんだ」
 火懿李が用意した酒瓶から気に入りの一本を探り出してあける。
「さすが火懿李、好みのところを揃えてるな」
 お前もどうだと盃を持たせ、同僚達に注ぐ。誰かに注げば自分の杯にも注ぎ、乾杯と称してすぐにあけていく。ペースも早い。
「‥‥飲みすぎです、自重なさい」
 五黄にそう言う隻もゆっくりとはいえ確実に杯を重ねている。
「もう始めてたんだったな、それ旨いか? ‥‥じゃ、もーらいっ」
 嗜めは無意味に終わる。隻の持つつまみを横から奪い取り、更に杯を重ねていく五黄。

「あはははは、おーいしー♪」
 気付けば回復した虎星も傍で盃をあけている。
「林様、さっきはありがとうー」
「‥‥うむ」
 お礼だよーと虎星に注がれる酒を言われるまま飲み干していく于示。ずっと仏頂面ではあるがこれが素なので誰も気にしていない。尻尾が揺れているので多分嬉しいのだと思われる。
「虎星−俺にもそれちょーだい」
 杏琳と目いっぱい遊んでいた道花も宴会が始まるとすぐに酒を確保し座り込んだ。だが他の者に比べると酒に強くない道花はすぐに酔っぱらってしまう。
「殿ー♪ 俺さっき役にたってただろー?」
 褒めて褒めてと犬のように甘えながら杏琳に抱き付き頬にちゅーっと口付ける。
「早々に飲んだのか‥‥ああ、道花もすごかったぞ! このワカメも食べやすくなったしな」
 逃げ腰の鶴杜を同胞達に抑えつけさせて、頭に巻かれたワカメをすぱすぱと切り離した件である。頭上の林檎を撃ちぬかれるより怖い話が、鶴杜は髪の毛一本も失っていない。
「はっはっはー、だろだろー! 隻も褒めろ!」
 気分よく笑いながら今度は隻に腕を絡め胸を押し付けるように抱き付いて、やはり頬に口付けた。
「お疲れ。そのワカメはしっかり食べておくといい」
 水分が多いから酔いにも少しは効くだろうと隻が道花にワカメを取り分けてやる。道花の酔い方には慣れてしまうほどこれまでも何度も口付けされているから、皆落ち着いた態度で応対していた。
「りぃーぁぉー♪ うん、乾いてるー♪」
 なんとか尻尾を乾かし終えた武遠が宴会の席に寄ってきたのを確認して、すぐにその尻尾に抱き付く道花。容赦なく頬ずりもして感触を確かめる。
「樂殿、先ほどの事は感謝すれど、この仕打ちは自分も我慢の限界というものが‥‥」
 折角の席で説教は避けようと、改めてこの日を楽しもうと心に決めてきたばかりだというのに。武遠が道花を引きはがし正面から説教を食らわせてやろうと肩に手をかければ、思いの外簡単に離れる道花。肩透かしを食らい力んでいた体制が崩れ、そのせいで武遠は対応が遅れたのかもしれない。
 ちゅー‥‥♪
 気付けば目の前に道花の真っ赤な顔がある、そして唇に濡れた感触。
「な‥‥」
 何を、と言おうとしたところでほんのわずかだが口腔内にも侵入を許してしまった。
「えっ、武遠さん大丈夫で‥‥うわあ〜」
 顔を両手で隠しているようで、指の隙間からしっかりとみている鶴杜。犬系尻尾同盟として武遠の近くに居たせいか、色々と熱いものを一番の近くで見てしまっていた。
「‥‥っは‥‥樂殿、だから毎回どうしてそう無防備に‥‥」
「んー♪」
 改めて引きはがすことに成功したものの、道花の生返事に説教には効果がないことを知る武遠。
「‥‥俵担ぎですからね」
 林殿のように甘くありませんよと伝えたものの、道花に聞こえている様子はなかった。

「‥‥仲がいいのはいいことだ」
 酔っぱらった道花を見ながら、杏琳が呟く。今回、どうしても外せない用事で共に来られなかった同胞や、洛春邸で留守番をしている同胞の顔を一人一人思い出す。また別の機会にどこかに誘おう、そんな事を思いながら。
「こういう機会は、偶にあると新鮮な気分にもなれていいな。もっと皆と遊べれば私も楽しいし、結束も強まると思わないか」
 誰宛ともなく呟いたその言葉は、全員の飲酒状況や食事状況を眺め不足がないか気を配っていた火懿李の耳には届いている。
「今日のように突然と言うのは勘弁していただきたいところです」
 前もって相談いただければ困りませんのにと厳しい一言。隠し事をされていたことを根に持っているらしい。
「常日頃申し上げていると思いますが、殿はもう少し落ち着きを身に着けていただけますか」
 あれほど言っていますのに‥‥くどくどと説教をはじめようとする火懿李からそっと目を逸らし、杏琳は今日という一日の思い出を、改めて大事にしよう、そう思うのだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ic1174 / 衛 杏琳 / 女 / 11歳 / 砂迅騎】
【ib9266 / 隻 / 女 / 21歳 / 弓術師】
【ic1168 / 林 于示 / 男 / 48歳 / 泰拳士】
【ic1182 / 樂 道花 / 女 / 14歳 / 砂迅騎】
【ic1183 / 五黄 / 男 / 30歳 / サムライ】
【ic1184 / 浪 鶴杜 / 男 / 26歳 / 巫女】
【ic1210 / 遼 武遠 / 男 / 45歳 / 志士】
【ic1227 / 虎星 / 女 / 13歳 / サムライ】
【ic1228 / 斯波・火懿李 / 男 / 30歳 / 砲術士】
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2014年09月30日

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