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『一緒にハロウィン! 』
ウェスペル・ハーツka1065)&ルーキフェル・ハーツka1064


 秋の穏やかなある日のこと。
 ルーキフェル・ハーツは巨大な荷車がひとりでに動いているのを見つけて、目をまん丸にした。
「ふおお……すごいお……カッコいい荷車なのだお……!!」
 だが何のことはない、荷車が大きすぎて引っ張っているウェスペル・ハーツが見えなかっただけ。
「すごい荷物……うー、何を運んできたのだお?」
 ウェスペルの顔は力を入れ過ぎて真っ赤である。だが振り向いた顔は、得意げにキラキラ輝いていた。
「るーには見せてあげますなの!」
 覆いをのけると、荷台はオレンジ色の丸い物で一杯だ。
「かぼちゃ……だお?」
 ルーキフェルは少し警戒気味である。お野菜大好きなウェスペルと違って、ルーキフェルは肉食だ。もしかしてこのすごい量のかぼちゃが今日からのご飯になるのだろうか……?
 だがウェスペルは小鼻をひくひくさせて胸を張る。
「このかぼちゃは、おばけかぼちゃにしますの! だってはろいんなの!」
「はろいん?」
「はろいんはおばけカボチャを作って、お菓子を食べていっぱい遊ぶのがおやくそくなの、しってるの」
 ルーキフェルの顔もぱっと明るくなる。
「お菓子食べて遊ぶ、はろいん、すおいお! うー、物知りだお!」
 ウェスペルはそこで、ルーキフェルのちょっぴりとがった耳に、とっておきの秘密をこしょこしょと囁く。
「はろいんはいきなり遊びに行ってもいい日ですなの。うーとるーで一緒にセストのとこに遊びに行きますなの!」
「ふおお……いそいでセストのとこ遊びに行くお!!」
 今度はルーキフェルが鼻息荒く拳を握った。


 ジェオルジ全体を黄金色の秋の光が満たしている。
 セスト・ジェオルジは執務室の窓の向こうに広がる光景に見とれていた。
 その間に彼の背後の扉が少しずつ開いて行く。セストは振り向かない。
 ついにオレンジ頭の白い影が2つ、ひょこりと覗く。
「このかぼちゃとマントで、うーたちなのはばれないの、あたまいいの」
「うーたちじゃないお、かぼちゃお化けだお!」
 怪しい人影はぼそぼそと囁き合うと、すすす〜っと室内に滑り込み、セストの背後で同時に叫んだ。
「「とりっくおあとりーと!」」
 突然現れたおばけ2人に、セストはいつも通りの冷静な表情を変えないまま振り向いた。
「……ああ、驚きました。いらっしゃい、かぼちゃお化けさん達」
 驚いてる様子は全く見られない。セストは演技が下手くそだった。
 そもそもこの部屋にルーキフェルとウェスペルが勝手に辿りつける訳もなく。
 玄関で取次の人に丁寧にご挨拶して名乗ったおかげで、先にセストには伝わっていたのだ。
 それでも2人は満足していた。
「ぷはー、成功なの! ほんとはるーとうーなの!!」
 南瓜の被り物が外れると、茶色い頭が現れた。
「セストもかぼちゃさんになるといいお!」
 金色の目がキラキラ光って、白い布と大きな南瓜を執務机にどんと置く。
「……そういえばハロウィンでしたね」

 それから数分後。
 お茶を運んで来た使用人は、緑の帽子を乗っけたやたら落ち着き払ったかぼちゃお化けを見て、お盆を落としそうになるのだった。


 セストはかぼちゃの被り物をしげしげと眺める。
「それにしても上手にできていますね」
「セストは今日はお仕事おわったお?」
 そわそわしながらルーキフェルが尋ねた。
「ああ、そうですね。そろそろ終わるところでしたよ」
「じゃあ、一緒にかぼちゃランタンを作りたいなの! こっち来るなの!」
 ウェスペルが待ちかねたようにセストの袖をひっぱり、ルーキフェルが背中を押す。

 外に出たセストは、今度は南瓜の山にびっくりすることとなる。
「随分と沢山……2人とも、とても力持ちですね」
 『力持ち』と言われて、ウェスペルはちょっと得意げだ。
「るーが力を入れすぎてかぼちゃがパーンしてもいいように、たくさん持ってきましたなの」
「成程、じゃああちらの作業場を使いましょう」
 収穫した農作物を加工したり選り分けたりする作業場へ荷車を運ぶ。
「セストのおうち、おおきいお!」
 ルーキフェルの言葉に、セストはちょっとだけ首を傾げた。
「大きい、でしょうか。ずっと住んでいるのでよくわからないのですが」
 生れついたのが偶々領主の家だったから、ここに住んで領主になっている。
 それが他人の目にはどう映るか、自分はまだまだ分かっていないのかもしれない……等と真面目に思案しているセストに、ウェスペルがそっと近寄る。
「セスト、あそこも、あそこも、お庭ですなの?」
 作業場のすぐ横はどうやら畑らしいが、がらんとしている。
「もったいないですの。何か植えるといいですなの。たとえばブロッコリーとか、あとはブロッコリーとか、それからブロッコリーとか……」
 呪文のように好物を囁くウェスペル。いつかセストがその気になるかもしれないから。

 その間にもルーキフェルは大きな木のテーブルの上に南瓜を転がす。
(うーたちにいいとこ見せるお!)
 張り切ってナイフを突き立てた瞬間。
 バキバキッ! と思わぬ音が。
「ふおー!?」
 ルーキフェルの手元から真っ二つに割れた南瓜が転がり出て来るのを見て、セストが腰を浮かせた。
「ルーキフェル君、大丈夫ですか。怪我はありませんか?」
「大丈夫だお! でも南瓜が大けがだお……」
 少ししょんぼりしているルーキフェルに、ウェスペルが新しいかぼちゃを抱えて持ってくる。
「るーは力入れすぎなの、もっと優しくするなの」
 被り物を作る時に、かなりの数を失敗したようである。
「分かったお! 今度はちゃんと作るんだお!!」
 めげないルーキフェルは、再びナイフを取り上げた。

 それからも幾つかが割れたり、歯抜けのかぼちゃができ上がったりもしたが、段々カッコいいランタンが増えていく。
「今度はじょうずにできたお!」
 ルーキフェルがまん丸目に大きな口のかぼちゃをドンと据えた。
 ウェスペルがぱちぱちと手を叩く。
「かっこいいですなの! すごくこわそうですなの! ね、セスト……」
「……」
 同意を求めようとしたのだが、セストは自分の南瓜に没頭していた。
 なんだかやたら念入りな細工で、目が3対あるような気がするし、歯が人食いザメみたいだったりするが……。
「セストのは……たぶんあれは『あうとぶれいく』っていうやつだお」
「それを言うなら『あーちすちっく』っていうやつなの」
 本人が楽しんでいるならそれでいいだろう。ルーキフェルとウェスペルは深く頷き合うのだった。


 夕日は急ぎ足で森の向こうへと行ってしまった。
 空にひとつ、ふたつと星が瞬きはじめる頃、沢山のおばけランタンに灯が入る。
「ふおお……すごいなの!」
 あちらの柵の根元、こちらの窓枠、そこここで南瓜のおばけが笑っていた。
「このランタンに角をつけたら牛さんになりますかお?」
 ルーキフェルは南瓜の欠片を乗せてみる。
「牛さんの角はそんな所についてないですなの」
 すかさずウェスペルからは冷静な駄目出し。
「ルーキフェル君、ウェスペル君、お茶が入りましたよ」
 セストが手招きしていた。さっきの作業台にお茶の支度ができている。
 2人は顔を見合わせ、荷車に積んできたお菓子を抱えて駆けていく。

 ひと際大きなランタンがテーブルを明るく照らしていた。
「お菓子いっぱい持ってきたのですお!」
「ふふ、悪戯されないようにお菓子を渡そうと思っていたのですが……おばけさんが沢山持って来てくれたのですね」
 セストの表情が少し和らぐ。
 自分よりずっと年上の大人たちと過ごす時間が長い分、セストはいつも気を張っている。打算や駆け引きを必要としない可愛い『友人』達と過ごす時間は、彼の表情を年相応にほぐしてくれるようだった。

 ウェスペルとルーキフェルが一生懸命選んだ南瓜入りビスケット、蒸しケーキ、チョコレート。セストの母上お手製の南瓜のパイ。
 お腹いっぱい食べて、暖かいミルクティーを飲んで。沢山おしゃべりして。
 時間はあっという間に過ぎていった。
「ランタン、すおいきれいなの……」
 どこか夢見心地でウェスペルが呟いた。
 南瓜を透かして漏れる明かりは、農場を魔法の世界に変えている。
「セスト、あの時の緑のつぶ、あれもキラキラしてたお。きれいだったんだお!」
「ああ……! ルーキフェル君は気に入ってくれましたか」
 そこまで言って、セストは口をつぐんだ。
 突然やってきたおばけ達は、とろとろの半目になってテーブルの上に今にも倒れそうになっている。
「つぶつぶ、うーにもみせてあげたいおー……」

 セストはそうっと、2人の顔を覗き込む。
(お迎えの人が来るまで、風邪を引かせるわけにはいかないな)
 音を立てないようにその場を去り、毛布を抱えて戻ってくる。
 その頃には2人とも、見事にテーブルに突っ伏していた。
「セスト、また遊ぶなの……一緒に遊ぶのすごく楽しいの……」
 聞き取りにくい寝言で自分の名前を呼ぶウェスペルに、セストはそっと毛布をかけた。
「そうですね。また遊びましょう」

 次はどんな遊びをしようか?
 夢の中まで続く程に、この次も思いっきり楽しく。

 いくつもの南瓜が、眠る双子を笑いながら見つめていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1065 / ウェスペル・ハーツ / 男 / 10 / ものしりさん】
【ka1064 / ルーキフェル・ハーツ / 男 / 10 / おとうとおもい】

同行NPC
【kz0034 / セスト・ジェオルジ / 男 / 18 / ふたりのともだち】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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NPCをお誘いいただきまして有難うございます。
こんなに早くお友達ができるとは思っていませんでした。
楽しい思い出になっていましたら幸いです。ご依頼有難うございました!
HC仮装パーティノベル -
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ファナティックブラッド
2014年10月14日

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