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『ハロウィンの魔女は大人気で大変にゃ☆ 』
猫宮・千佳(ib0045)


「うにに」
 ふるる、と頭のネコ耳頭巾が遠慮がちに震えています。
「コクリちゃん、本当にいいのにゃ?」
 上目遣いで聞くのは小さな魔術師、猫宮・千佳(ib0045)。
「うん。ボク、白い服を着ることが多いから黒がいいな」
 千佳に見詰められたコクリ・コクル(iz0150)はそう返して千佳の抱えて来た黒い衣装の束を手にします。
「うにゅ。コクリちゃんがそう言うなら、あたしは白い衣装にゃね」
「それに……」
 頷いて白い衣装の束を抱え直した千佳に、コクリが背中越しに悪戯そうな笑顔を見せます。
「千佳さんが黒い魔女の服を着たら黒猫になっちゃうじゃない。ボクの目の前を横切られちゃうと大変な目に遭うかもだし☆」
 そう言ってぺろっと舌を出すのです。
「うにに! それじゃ白い猫ならコクリちゃんの目の前で抱きついても安心にゃ〜」
「ああん、千佳さん早く着替えようよぅ〜!」
 何だかうれしくなった千佳、コクリに抱きつき頬をすりすりするのです。

 その後。
 着替え用に張り巡らせた布に、二人仲良くごそごそと着替えている影が映っています。
「あの、千佳さん?」
「うにゃ?」
 コクリ、小さな三角形の布を目の前に掲げていますね。
「パンツ……たくさん入ってるね。大きいのとか紐みたいなのとか」
「気に入るのをはくにゃ」
 実は二人とも、ハロウィンのお祭りに仮装して参加することになっています。仮装参加者はここで着替えるように誘導されたみたいですね。
 千佳はこの日を心待ちにしていただけに、たくさんの小物や衣装を用意してきたようです。
「う〜ん。できるだけ着込んで出ようか。マントを羽織るから着ぶくれしても問題ないし」
「日が暮れて肌寒くなるかもにゃから、それがいいかもにゃ」
 というわけで膝を上げる二人。パンツを重ねばきしたりふわふわのパニエを着けたり、コルセットをつけたり白すくみずを着たり、布胸当てを付けてしゃつを着て色違いのワンピースを着け、胸丈ボレロの袖に腕を通して首にスカーフ巻いてふわっと魔女のマントを羽織り……。
「変身完了にゃ。行くにゃよ〜!」
「うんっ、行こう!」
 着替えようの布をばさーっと開ける二人。最後に箒を持って、手をつないで駆け出していくのです。



 ハロウィン祭りの町は盛況です。
「わあっ。あの白猫の魔女さん、可愛い〜」
「黒い魔女ちゃん、可愛い格好して〜」
 フードを後ろに跳ねたネコ耳白魔女姿の千佳と、黒い三角帽子を被った黒魔女姿のコクリも沿道の女性や子どもたちに大人気です。いろいろポーズをせがまれてますね。
「ええと……こう?」
 ミニスカートのワンピース姿で箒をまたぎきゃるん♪と笑顔を見せるコクリ。黒いニーソックスと衣装の裾からのぞく白い太ももが高々と掲げられてすとんと落ち着きます。
「あたしはこうかにゃ?」
 千佳も絶対領域を見せつけるように白いニーハイソックスの足を上げてその後ろに跨がって、コクリの背中に身を預けるようにぴとっとひっついてうっとりした視線で観客に流し目。
「きゃーっ、可愛い〜!」
 どっとわいてキャンディーが飛び交ったり。ちゃんと千佳の肘に抱えたお菓子かごに入っているのが驚異的です。
「もっと跨がった箒を上げて!」
 過激な注文も飛んできます。
「え? いいけど……どうして?」
「その方が可愛いからよっ。そしてその高さのままでまたいで元に戻るのよっ!」
「ええーっ!」
「それでもコクリちゃん、素直にするのにゃね」
 真っ赤になって困る姿にまた「きゃーっ」と黄色い歓声。渋々ながら素直に従う姿に以下略。思わず千佳から突っ込まれるありさまです。そして下りる時に高々と足を上げることになり「こっち側の足を上げるのよっ!」と厳命を受けたり。

 その後。
「たくさんお菓子もらったし喜んでもらったし、楽しかったにゃ〜」
 にゃふふん、と満足そうに足を高々と上げて千佳が歩いています。肘に掛けたお菓子かごの中はいっぱい。笑顔もきらきらとご満悦です。
「千佳さんのほっぺにキスする手前で止めて流し目でしょ? 千佳さんの首筋に吸血鬼のように牙を建てるような仕草でしょ……」
「コクリちゃんに抱きついておねだり目線とかコクリちゃんに後ろから抱きしめてもらって招き猫ポーズとかもしたにゃ!」
 そんな事を話しつつ、前に出て振り向いたり反対に回って顔を覗き込んだりしながら人波をかき分けます。行き交う人は、狼男の仮装をしてたり包帯ぐるぐるだったり、普通の格好の見物客だったり。
 日はすっかり暮れています。
 もう一騒ぎ。
 そんな、祭りも掉尾の様相を呈していたときでした。
「きゃあっ!」
 可憐な悲鳴がどこからともなく響くのです。
 どうやら南瓜頭の誰かが女性のスカートをめくっているようですね。



「にゃ、悪戯する子供かにゃ?」
 千佳、騒ぎに気付くと俊敏に駆け出します。
 これに気付いた南瓜頭にマントの小人。複数いますね。
「楽しいお祭りだし悪戯し過ぎはダメにゃよー……うみみ!?」
 突っ込んだ千佳、あっさりかわされます。いま南瓜頭たち、空に浮かびましたよ?
「子供の仮装かと思ったら……」
「悪戯好きな南瓜の精霊にゃ! コクリちゃん、こうなったら皆捕まえちゃうにゃよ!」
 ついて来たコクリが気付き、威勢良く千佳が拳を固めるのですが、ここで異変が。
「あっ!」
 ばっ、とコクリのミニスカート前部が千佳から逃げた南瓜精霊に高々とめくられました。パニエが豊かにひらりんしてます。
「ふにゃ!? コクリちゃんに何してるにゃー……って、あたしの引っ張っちゃダメにゃよ!?」
 振り返った千佳は自分のスカートを抑えて免れましたが、代わり上着をばばっとめくられました。しかもスカート引っ張られてるし。
「あ……だめ。千佳さん、数が多いよぅ」
 泣き言を言うコクリはわらわらと集まって来た南瓜精霊に囲まれています。首のスカーフを後ろから取られ、手にした箒を取られ。取り返そうと前のめりになったところスカートの中に入られ大きな下着をずり下ろされて後ろに蹴り上げた足からすぽんと抜かれたり。振り返ったところ今度はどうやって抜いたのか中に着ているシャツを抜き取られました。
 もうもみくちゃで、コクリも自分から動いているというよりお菓子を散らしながらくるくると踊らされている感じです。
「助けたいけどこっちも……うにゅにゅ……」
 千佳もキャンディーを散らしながらくるくると踊る感じで下着を取られ、スカートを抜き取られてたたらを踏んだりと酷い目に遭っています。
 というか、もうぼろぼろです。
 折角、今日この時のために千佳が一生懸命選んだ衣装。
 コクリと一緒に楽しもうとたくさん持ってきた衣装。
 それが、こんなことに。
「うにに!」
――だんっ!
 おっと。
 怒りの千佳、南瓜妖精に踊らされていた動きの中で一歩足を力強く踏み出し、かろうじて留まりましたよ!
「もう好きにさせないにゃー!」
 そして何と、自分から白魔女のマントを脱いで南瓜妖精に被せたではないですか。
 むぎゅり、とマントに包まれる南瓜妖精。すぐに大人しくなります。
「それだ、千佳さん!」
 コクリもピンと来て黒魔女の三角帽子を取り、南瓜妖精を捕まえました。
「次々いくにゃよ〜」
「これでもう怖いもの無しだね」
 千佳はポンチョを脱ぎ、コクリは黒魔女のワンピースを脱いで構えます。
 これを見てぎく、と動きを止める南瓜妖精たち。もしかしたら、服に包まれたいのかもしれません。
 とにかくこれで形勢逆転。
――どったんばったん。
 しゃつで南瓜妖精を包んだり、重ねはきした下着の一枚を南瓜妖精に被せたりで次々と捕まえていきます。
「これで最後にゃ!」
 千佳、最後の一匹を猫柄胸当てで南瓜妖精を縛りました。
 ここで気付くのです。
「おお〜!」
 周りでたくさんの人が見ていたのです。
 白すくみずとパニエ姿の千佳と、コルセットに布胸当てとパニエをはいたコクリの姿をっ!
「うみみ、コクリちゃん逃げるにゃー!?」
 どぴゅー、と逃げ出す二人です。

 後日。
 南瓜妖精は全て警備の人に引き渡されたようです。あれから被害はなかったようですね。
「うに、ひどい目にあったけど……ある意味トリック・オア・トリート。悪戯されたからハロウィンらしいのかにゃ」
「そ、そだね」
 二人は捕縛のお礼に届いたパンプキンケーキを一緒に食べつつ、たまにはこういう格好もいいかもと当日逃げ出した姿のまま、衣装を交換して笑い合っているのでした。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 楽しいハロウィン祭での一幕。仲良く着替えて脱がされて。衣装を着て脱ぐまでが仮装です、なお話です(違います♪)。
 可愛い話にするため、南瓜妖精の捕縛方法をややアレンジしました。楽しんでいただければ幸いです。

 では、よいハロウィンを。
HC仮装パーティノベル -
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舵天照 -DTS-
2014年10月22日

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