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『Belle et la bete en octobre 〜 10月の美女と野獣 〜 』
フィオナ・アルマイヤーja9370

1.
 ハロウィンの夜。
 賑やかになる街には目もくれず、フィオナ・アルマイヤーは空を見つめる。
 世間はオレンジと黒の世界。ハロウィンである。窓の外には可愛らしいお化けに扮した子供たちがジャックオランタンのバケツを手に持って走っていく。もう少し夜が更ければ大人たちが仮装行列をつくるだろう。その中には恋人たちの仲睦まじい姿もあるはずだ。
 ‥‥いつの間にかハロウィンは恋人たちのイベントごとのひとつになっていた。
 空を見ていつものように溜息をつく。空のどこかにいる彼のことを。
 毎日会いたいなんて無茶は言わない。けれど、こうした恋人たちのイベントがあると『会いたい』と思ってしまう。
 それは、望みすぎだろうか?
 いつ現れるかもわからない恋人に、フィオナは星に願うのだ。

『どうか彼と会えますように』

 目を瞑ってそう願い、そっと目を開ける。
 そして、願いは形になって現れる。
 瞬く星の合間から、彼はいつものように馬車に乗って現れた。
「お待たせいたしました。フィオナ様にお会いできるのを心より楽しみにしておりました」
 少し堅苦しい言葉と、柔らかな笑顔に思わず顔が赤くなる。
「私も‥‥私も、楽しみにしていました」
「それは光栄です」
 そう言って微笑むと、彼は懐から真っ白い封筒を取り出した。
「本日はこちらの招待状をお持ちしました」
 フィオナが受け取ると、それはひとりでに解き放たれて手のひらに星空のステージとそこで踊る仮面の男女を映し出す。
「これは?」
「ハロウィンの仮装パーティーへのご案内でございます。神々や星座のみなさまが仮装と仮面で身分を隠し、分け隔てなく交流することを目的としております」
 すらすらとそう答えた彼に、フィオナは困惑顔だ。そんな唐突に言われても、仮面だの仮装だのの用意なんてあるわけがない。
 そんなフィオナに、彼はにっこりと笑う。
「ご安心ください。全てこちらでご用意させていただいております」
 微笑んだまま彼はフィオナの部屋の扉をおもむろに掴んだ。
「そ、その部屋は‥‥!」
 厳選したオールドコンピュータやらオーディオやらが詰まったその部屋の扉。大切な精密機械が詰まったその部屋の扉は開けてはダメ!
 っていうか、乙女的に好きな人にちょっと乙女とはかけ離れているそれらを見られるのは耐えられない!
 止めようとしたフィオナだったが、それは叶わず彼の手によって扉は開け放たれてしまった‥‥!?
「フィオナ様のために用意したクロゼットでございます。ごゆっくりお選びください」
 彼が開けた扉の奥には‥‥たくさんの煌びやかな衣装が詰まった部屋だった。
「どうなって‥‥?」
 唖然としたフィオナに、彼はただ微笑むのみだった。


2.
 色とりどりの美しいドレス、強く輝く宝石。クロゼットの中は所狭しと数々の衣装が置かれていた。
 手に取ると仕立ての良さ、素材の良さがよくわかる。
 どれがいいだろうか。扉の外で待ってくれている彼をあまり待ちぼうけさせるのは申し訳ない。
 けれど、目移りしてしまってどれか1つをなかなか選べずにいた。
 赤いドレス、黒いドレス。ハロウィンなのだから、魔女のようなものがいいのだろうか?
 迷いに迷っていると、ふと1着のドレスに目を奪われる。
 情熱の赤。蝶をところどころにあしらい、金の刺繍がきめ細かく施された真紅のノースリーブ。
 これなら、彼の隣に立っても恥ずかしくない。これに決めよう。
 そう思って手に取ると、ふわっとドレスが手の中から消えた。
「え?!」
 驚くフィオナが反射的に後ずさりすると、衣擦れの音がする。見れば、いつの間にか手に取ったはずのドレスを身にまとって、フィオナはそこに立っていた。
 姿見の前に立ち、フィオナはくるりと自身をチェックする。髪もいつの間にかサイドに三つ編み、そして後ろの高い位置にいつものリボンで結われておまけに蝶と花の飾りまでつけられている。首元の蝶のチョーカーと、二の腕までの長手袋にも蝶の飾りがついている。
 ‥‥自分で言うのもなんだけれど、悪くない、と思う。
 何度か鏡で確認した後、意を決してフィオナはそっと部屋を出る。
 そこにはいつの間に着替えたのか、青い上着の正装に身を包んだ彼が待っていた。まるでどこかの王子様のようだ。
「とてもお似合いでございます」
 そう微笑んで、彼はフィオナの手を取ってうやうやしく跪いた。
「そ、そんなに畏まらないでください!」
 なんだか心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキしてしまう。
 慌てるフィオナに彼がふっと微笑んだ‥‥と思うと、フィオナは彼の腕に抱きあげられていた。
「それでは、美しき姫君をパーティーへとお連れ致します」
 夜空を渡る馬車に乗り、フィオナは彼と2人きりで会場へと向かう。途中、フィオナは彼に尋ねた。
「今回も私は人間代表として招かれたのですか?」
 その問いに彼は笑った。
「いえ。この度は『星の恋人』としてのご招待でございます」
 フィオナはただ赤くなって俯いた。

 会場は白い大きな洋館で、星の海に浮かぶ大きな客船のような建物だった。
 入り口には仮面をつけた男性が深々と礼をし、同じく仮面をつけたお客を迎え入れていた。
「それでは、フィオナ様。我々も仮面をつけてまいりましょう」
 彼がフィオナに差し出した仮面は赤い蝶と薔薇をあしらったベネチアンマスク。彼はライオンのような獣の仮面をつけた。
「どうしてそんな動物のマスクなんですか?」
 フィオナが不思議そうにそう訊くと、彼は答えてくれた。
「美女と『野獣』でございます。フィオナ様の美しさが引き立つようにと思ったのですが‥‥似合いませんでしょうか?」
 どことなく楽しそうな口調の彼に、フィオナは小さく「似合います」と頬を染めて俯いた。


3.
 十二単にチャイナドレス、ウサギの着ぐるみにギリシャの英雄。
 ここはどこなのか? と問われれば『ハロウィンのパーティーです』と答えるのにふさわしい仮装の数々。
 ‥‥時折、本物っぽい獣が歩いていたりするのは気のせいだろうか?
 和洋折衷、どこの国のものなのかもわからないけれど、美味しそうな飲み物や食べ物がたくさん並べられている。
「Trick or Treat!」
 すれ違う人がそう口にするたび、お菓子の雨が降る。配られたジャックオランタンの小さなバケツは、すぐにクッキーや飴やチョコでいっぱいになってしまう。
「すごいですね。みんな楽しそう」
 いたるところで行われている演奏や踊りに目を奪われて、フィオナはそう呟く。
「フィオナ様は楽しくありませんか?」
 隣を歩く彼にそう訊かれ、フィオナは慌てて首を振った。
「楽しいですよ! 本当に、すごく楽しいです。誘ってもらえて本当に嬉しいです」
 顔を赤くして言ったフィオナに、彼は少しだけ微笑んで耳元で囁く。
「これはお願いなのですが‥‥」
「?」
 突然のナイショ話に、フィオナは少しだけ不安になった。
 けれど‥‥
「腕を組んでいただけますと、もっと楽しいのではないかと‥‥」
 そう言った後、彼は手を差し出す。フィオナは思わず笑ってしまった。
「もっと素直に言ってくれればいいのに」
 フィオナは彼の腕にそっと手を伸ばす。服の上からでも温かな体温が伝わってきて、なんだか照れてしまう。
「失礼になるかと思いまして」
「黙ってる方がずっと失礼です」
 こどもみたいな言い分に、フィオナはふふっと笑みをこぼす。
 すると、彼は人ごみをかき分けてフィオナをバルコニーへと連れ出した。
 微かな音楽が聞こえ、楽しげな人々の声も聞こえる。けれど、そこは星が広がる夜。パーティーの会場とは壁一枚を隔てた別世界だ。
「‥‥気に障ったのですか?」
 フィオナは不安になった。もしかしたら先ほど笑ってしまったことに気分を悪くしたのかもしれない。
 男の人を笑うなんて、やっぱりまずかったかしら‥‥?
 顔色をうかがおうにも、仮面の下の素顔は見えない。怒っているのだろうか?
 何も答えない彼は、そのままフィオナを明かりの届かぬ場所へと誘う。
「あの‥‥ごめんなさ‥‥」
 いっそのこと謝ってしまおうと、謝罪の言葉を口にした時。フィオナは強く腕を引かれ、その腕の中で抱きすくめられた。
「え!?」
 ふいのことで頭の中が真っ白になって、されるがままにぎゅっと抱きしめられた。
「‥‥ビックリしました?」
 抱きしめられたまま、そのまま彼は少し笑った声でそう囁いた。その声に、フィオナは我に返る。
「び、ビックリしますよ! 怒ったのかと思って‥‥私‥‥」
 安堵と驚きとで少し涙が出そうだった。でも、怒っていなくてよかった‥‥。
「素直にと言われましたので、2人きりになりたいなとこちらにお連れしました」
 意地悪だ。わざと怒ってる風を装ったのだと、フィオナはわかった。
「騙したんですね」
「怒った顔も見てみたかったのです」
 仮面の下の顔はきっと笑ってる。そう思うと無性に腹立たしかった。
「嘘つきは嫌いです」
 ぷいっとそっぽを向いたフィオナに、彼は仮面を外しながらフィオナの顔を覗き込む。
「2人きりはお嫌でしたか?」
「それは‥‥でも、騙すのはずるいです」
 彼はフィオナのマスクに手をかけた。
「それじゃ、口づけはお嫌いですか?」
 視線が逸らせない。触れた指先がまるでスイッチを押すようにフィオナの心を刺激する。
 そんな言い方はずるい。
 だけど‥‥

「嫌いじゃ‥‥ないです」

 ハロウィンの宴は楽しげに光を揺らして歌い、踊る。
 暗闇に紛れて恋人たちは、甘いキスに酔いしれる。
 ずっと触れたかったその唇は、どんなお菓子よりもフィオナの心を捕えて離さなかった‥‥。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 ja9370 / フィオナ・アルマイヤー / 女性 / 23歳 / 阿修羅


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 フィオナ・アルマイヤー様

 こんにちは、三咲都李です。
 仮装パーティーノベルへのご依頼ありがとうございました!
 ハロウィンまでにお届けできなくて申し訳ないです(土下座
 お菓子よりも甘く楽しい思い出になればと思います。
 少しでもお楽しみいただければ幸いです。
HC仮装パーティノベル -
三咲 都李 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年11月17日

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