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『ツンデレ☆デート 』
三日月 壱ka0244)&トルテ・リューンベリka0640

「……遅いな、もしかして何かあったとか?」
 時計を見ながら、三日月 壱(ka0244)は小さなため息を吐いた。
 彼、三日月はトルテ・リューンベリ(ka0640)と一緒に出掛ける事になっていたのだが、約束の時間を30分過ぎても彼女が来ず、何の連絡もないため、僅かに焦りの色が滲んでいた。
「その辺を探してきた方がいいかもしれないな」
 三日月が小さく呟いた時「待たせたな、少し遅れてしまったようじゃ」と尊大な態度と共にトルテが現れた。
「おい、少しっていうのは5分や10分の事を言うもんだろ…1時間は少しの範囲に入らねぇ!」
 三日月が拳を強く握り締めながら、少しだけ怒ったように叫ぶ。
 何かあったのかも、という心配があったからこそ、余計に怒りも増したのだろう。
「そ、そんなに怒ることはないじゃろう…」
 三日月が怒るのは予想外だったらしく、トルテは目を瞬かせながら答えている。
「……まぁ、それだけ心配させたのは悪かった、それは素直に謝罪しよう」
 トルテは偉そうな言葉だけど、三日月が心配してくれた事が嬉しくて、素直に謝った。
「今日は紅茶専門店に行きたいんだろ? さっさと行くぞ」
 三日月は照れながら、トルテに手を差し出す。
「……」
 一瞬、トルテはきょとんとした表情を見せたが、少し嬉しそうにその手に自分の手を重ねた。

 それから、しばらく2人で歩いた後、紅茶専門店に着いた。
「妾は紅茶にうるさいぞ、それを分かっていてここに連れて来たのであろうな?」
「あー、もう、いいからさっさと入れって……」
「な、何をする……! せ、背中を押すでない!」
 三日月はトルテの背中を押しながら、面倒そうに呟いた。
「……ほぅ、店内の雰囲気も悪くはないな」
 三日月が連れて来た紅茶専門店は、内装も良く、店内には紅茶の香りで包まれていた。
「ランチセットにしようかな、結構美味しそうだし……」
「妾もそれにしよう、紅茶は先に頼むのじゃ」
 注文が終わった後、三日月は「そういえば、何で遅れたんだ?」と気になっていたことを聞いてみる事にした。
 もし、やむを得ない事情があったのなら、さっき怒鳴った事を謝ろう――……と三日月は考えていたのだけれど。
「特に理由などないのじゃ」
 さらっと悪びれた様子もなく言われ、三日月の中で何かがプチッと切れた。
「お待たせしましたー!」
 三日月が文句を言おうとした時、注文していた物が来て、怒るタイミングを失ってしまう。
「おお、美味しそうなのじゃ……! では、さっそく……」
 トルテが食べようとした時、ポケットに入れていたハンカチがひらりと落ちる。
「む……」
 トルテは落ちてしまったハンカチを拾うため、紅茶から視線を逸らし、下に手を伸ばした。
 それを見て、三日月は悪戯を思いついたらしく、テーブルにセットしてある塩をトルテが飲む紅茶の中に入れた、しかも大量。
(人が心配していたのも知らずに、理由はないだと……ふん、これでも食らえ!)
「よっと……む、まだおぬしの分は来ておらぬのか? 妾だけ食べるのは気が引けるの……そうじゃ、どうせすぐに来るだろうし、これをおぬしの分にするかえ?」
 トルテが満面の笑みを浮かべながら、自分の前にあるランチセットを三日月に渡そうとするが、三日月はそれを全力で断る。
 それもそうだ、先ほどその紅茶の中に大量の塩を入れたのだから。
「い、いいって! すぐ来るんだし、気なんか遣わずさっさと食べろって!」
「そうか? それならお言葉に甘えて、先に食べさせてもらうのじゃ……っと、その前に紅茶を」
 ごくり、とトルテが紅茶を飲んだ瞬間――……。
「ぶ――――ッ! な、なんじゃ、この紅茶は……っ」
 あまりの塩辛さにトルテは涙目になりながら、目を瞬かせる。
「ひゃははは! 引っ掛かりやがった! 相変わらず面白い反応だぜ!」
 トルテの吹き出し具合がツボに入ったらしく、三日月はトルテを指差し、これ以上ないくらい馬鹿にしたような笑いと共に叫んだ。
「……お、おにょれ〜、おぬしの仕業か……! この、神罰を食らわせてくれるわ!」
 トルテはカップに残っている紅茶を、三日月の口の中に注ぐ。
「ぐぁ、か、からっ……!」
 そして、咳き込んでいる三日月の頬はパシーンと乾いた音を響かせながら叩いた。
「いっ……!」
「それくらいで済んだことを感謝するのじゃな!」
 ぷいっ、と視線を逸らした後、トルテは昼食を黙々と食べ始める。
 流石にその態度を見て、やりすぎたか、と三日月も反省をするが、とりあえず機嫌を取るのは昼食を食べた後にしよう、と心の中で呟いていた。

「……おぬし、妾をどこに連れて行く気じゃ」
 紅茶専門店を出た後、三日月はトルテの手を引いて、とある場所に向かっていた。
「ここ」
「……ここは、ガラス工房?」
 三日月が連れて来たのは、ガラス細工の物を作ったり、販売したりしている場所だった。
「お前、こういう場所好きだろ」
 僅かに頬を染めながら、三日月がボソッと呟く。
 三日月のその言葉を聞き、トルテは目を瞬かせた後「……そうじゃな」と照れたように答える。
 さっきまで紅茶の事で怒っていたはずなのに、自分の好みを知っていたという些細な事で、トルテの中にあった怒りはどこかへ消えてしまっていた。
「向こうに綺麗なガラス細工があるのじゃ、ほら、早く……!」
 トルテは三日月の手を引きながら、嬉しそうにガラス工房の中へと入っていく。
 そんな彼女の様子を見ながら(単純……)と三日月は心の中で毒づいていたけど、彼自身は気づいていないのだろう、幼さの残るその表情がほんのりと赤らみ、頬が弛んでいることに。

「……結局何も買わなくて良かったのかよ」
 それから1時間ほど、ガラス工房の中を見て回っていたけど、トルテは何も買わなかった。
「欲しい物はあったのじゃが、金銭的に余裕がなくての……こ、今度また来るからいいのじゃ!」
 手をぱたぱたとさせて、何でもない風を装っているけど、無理をしているのは一目瞭然だった。
「……手ぇ出せよ」
 三日月はため息を吐いた後、トルテに向けて言葉を投げかける。
「手? こうか?」
 トルテは首を傾げながら三日月に手を差し出すと、その上に小さな包みが乗せられる。
「これ……」
「気に入るか知らないけど、ついでに買っただけだから」
 三日月は顔を真っ赤にさせており、トルテは目を瞬かせながら袋を開ける。
 すると、その中には猫の形をしたガラス細工が入っていた。
「勘違いすんなよ! これはあくまでついでだからな!」
「……ありがとうなのじゃ! 大切にするぞよ……!」
 猫のガラス細工を大事そうに両手で包みながら、トルテは満面の笑みでお礼を言う。
「ふ、ふん……!」
 甘酸っぱい空気の中、オレンジ色に染まる空の下、2人は手を繋いで帰路に着いたのだった。


―― 登場人物 ――
ka0244/三日月 壱/男性/14歳/人間(リアルブルー)/霊闘士(ベルセルク)

ka0640/トルテ・リューンベリ/11歳/女性/人間(リアルブルー)/聖導士(クルセイダー)

――――――――――

三日月 様
トルテ 様

こんにちは、水貴です。
今回は【HC仮装パーティーノベル】をご発注頂き、ありがとうございます……!
甘酸っぱい2人に、私も楽しく書かせて頂きました!
今回は書かせて頂きありがとうございました!

2014/11/15
HC仮装パーティノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2014年11月17日

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