『―― 褌仮面、ここに参上！ ―― 』

香坂・光（ga8414）

「はぁ、平和な世界にはまだまだ遠いねぇ……」
　香坂・光（ga8414）はため息混じりに、青い空を見上げた。
　戦後も光は依頼を受けて、大石・圭吾（gz0158）と共に野良キメラや、治安が悪いのをいい事に好き勝手に暴れる人達の制圧など、正義の味方として行動を行っていた。
　けれど、褌仮面として動いているせいか、人々からは尊敬の眼差しよりも「うわぁ……」といった生温い視線の方が多かったりするのだけれど。
「大石さん！　今日は向こうで元能力者達が暴れているんだって！　食料とか奪っているらしいし、ちょっと懲らしめてほしいって依頼が入ってるよ！」
　光が大石に言葉を投げかけると「それは大変だ！　褌に任せればすぐ解決さーぁ！」と意味の分からない言葉を叫びながら駆けだしていった。
（……場所、まだ教えてないけど分かるのかな？）
　相変わらず考えるより先に行動するタイプ（褌限定）らしく、光は遠ざかっていく大石を見ながら苦笑しながら、彼の後を追った。

※※※

「ふむふむ、よし！　行くぞ！　我ら褌仮面の恐ろしさを見せてや――ああああっ！」
　大石が真面目に打ち合わせをしようと屋根の上で香坂に話しかけているが、彼の声は大きいし、何より既に対象者に見つかってしまっている。
　このまま逃げられるよりは、と思い、香坂は大石を特攻隊に（勝手に）任命して、屋根の上から突き落とす。
　常人なら大怪我ものだが能力者（むしろ大石だから）大丈夫だろう、と心の中で香坂は呟く。今まで彼と多くの依頼を共に受けていたけど、彼ほど何もしないで、そんなのアリ！？　と思えるような状況にも無傷でいた能力者はいないのだから。
「ちょっと待ったァァッ！　せっかく戦う力を持ってるのに、それを使って悪行三昧なんて許さないのだ……！　あたし達、褌仮面が成敗してやるのだ……！　あれ？　大石さん？」
　光がキョロキョロと相棒の姿を探すが、既に下でピクピクしている姿を見かけ「そういえば、突き落としちゃったんだっけ、えへ☆」と照れたように呟く。
「さぁ、行くよ！　大石さん！」
「おう！　行くぞぉぉっ！　我らが褌の威力を見せてやろう！」
　食料を奪う元能力者達をなぎ倒していく。
　ちなみに戦っているのは光１人であり、大石は褌をひらめかせながら応援に徹している。
　褌仮面は２人組なのだが、毎回戦っているのは光１人であり、もう１人は毎回怪しげな踊りや奇声をあげながらの応援ばかりで、戦わされている光に同情の声もあがっているようだ。
「これでラストなのだっ！」
　バシーン、と持っていたハリセンで最後の元能力者を退治するとビシッとポーズを取る。
「皆、大丈夫だったかな？　何かあればいつでも褌仮面を呼んでねー！」
　悪事を働いていた元能力者達を縛り上げた後、光は彼らを引きずって一般人達に挨拶をする。
「香坂さん、ありがとう！」
「……っ！？　あ、あたしは香坂じゃないよ！　風のように現れ、風のように去っていく褌仮面なんだから！　そ、そんな名前では呼ばないで欲しいのだっ！」
　一般人から言われたことに、香坂は慌てながら言葉を返す。
　香坂と大石は自分達が褌仮面であることを知られていないと思っているが、そう思っているのは自分達だけで、実際は誰もが知っているということに気づいていない。

※※※

（やってることは、前と全然変わらないんだよねー）
　野良キメラを倒して、悪事を働く人を捕まえて、依頼達成の報酬にお金をもらって、それで毎日を過ごして――……と、戦時中と変わらない生活に、香坂は苦笑を零す。
「ねー、大石さん？　これからのこと、何か考えてるー？」
「これからのこと？　そうだなー、褌仮面としての任務を終わらせた暁には、褌布教者として全世界に褌の素晴らしさを教えてやろうと思っているぞ！」
　きらーん、と無駄に歯を輝かせながら答えた大石の言葉に、香坂はがっくりと肩を落とす。
（それって、つまり今と変わってないってことじゃん……）
「香坂はどうだ？　これからどうやって褌に生きるか決めているのか？」
「褌以外の選択肢もちょうだいよ……」
　既に『褌』と決める辺りが大石らしくて、香坂はため息を零す。
（でも、あたしも……多分、これからも変わらない生活を送るんだろうなー）
（特に変わらない生活って、結構凄いことなのかも……平和になるのが一番なんだろうけどさ）
　香坂は青い空を見上げた後、大きな深呼吸をする。
「大石さん！　次の仕事に行くよー！」
「お、おう！　やる気満々だな、褌仮面２号！」
「褌仮面をやろうって言ったのはあたしでしょ、あたしが１号で大石さんが２号！」
「何を言う！　褌ナンバー１の座は決して譲らんからな……！」
　相変わらずの馬鹿話をしながら、次の仕事に向かう。
　褌仮面が伝説になる日は意外と近いような気もするし、伝説にならないような気もする――…。


ＥＮＤ


――　登場人物　――

ga8414/香坂・光/14歳/女性/ダークファイター

――――――――――

香坂・光 様

こんにちは、水貴透子です。
今回はご発注頂き、ありがとうございました！
久しぶりに大石を書いたのですが、やはり大石は大石でした（笑）
内容の方はいかがだったでしょうか？
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、書かせて頂き、ありがとうございました！

2014/11/16

■ＷＴアナザーストーリーノベル（特別編）■

水貴透子

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2014年11月17日