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『とっておきのハロウィンデイズ 』
百々 清世ja3082)&奥戸 通jb3571

 ハロウィンの時期が近付けば、テレビの中も何処となく浮かれ立っている。
 お休みの日。お菓子を摘まみながらお昼のテレビを付ければ、関東にある大型テーマパークのハロウィンイベント特集をしていた。
 女性リポーターの突き抜けるように明るい声に誘われ、インタビューに応えたのは制服姿の高校生カップルだった。
 彼女の誕生日が近いらしい。それを兼ねたデートらしく幸せな様子の彼らは仲睦まじげに手も繋いでいた。
「きゃー! 制服でデートですって! なんかロマンだわぁ!」
 クッキーを食べていた手を止めてはしゃぎだした奥戸 通に百々 清世は言葉を投げかけてみる。
「じゃ、してみる? 制服デート」
 軽く投げかけられた清世の返答。通は思わず彼の顔を見てしまう。
「えっ、制服デートしてくれるんですか?」
「うん、勿論。通の望みならばー」
 清世の言葉にぱぁっと通の表情が明るくなる。
「嬉しい。制服着て、手を繋ぐのって夢だったの……」
 うっとりと幸せそうな表情を見せた通。何だかこっちまで嬉しくなってきて、清世は笑ってみせた。
「じゃ、決まりってことでー」
 清世は早速手元のスマホから、テーマパークのチケットの予約をする。
(丁度通の誕生日ももーすぐだもんね)


●待ち合わせ
 駅での待ち合わせは指定した時間より一時間も早かった。
 乗換などに時間が掛かるかなと考えて、早めに出てきたは良いものの早く着きすぎた通は時計台の下ではぁと一息吐く。
 周囲を見渡して見れば、皆誰かと一緒にとびっきりの笑顔を見せている。
 通り過ぎたカップルに少し憧れを重ねてみたりして、再び駅の出口と時計を交互ににらめっこ。
 何往復かしたその時、急に背後から目を両手で覆われた。
「だーれだ」
「……キヨくん? え? なんで? まだ、一時間も前だよ?」
 その声はとても聞き覚えのあったものだから。通が答えを返すとあっさりと通の視界を解放した。
「あったりー、通と少しでも長く居たいからねー。あと、レディーを待たせないのが鉄則。これ、俺のポリシーなので」
 ニィっと笑う清世の格好は学ランだった。互いに高校時代の制服を着てこようと打ち合わせていたのだ。
「キヨくんの学校って学ランだったんだね」
「そーそ。でも、俺、制服ってあんまり好きじゃないんだよねー、首締まるし学ランとかチョークの粉で真っ白けにしてよく叱られてたし」
「ああ、そういえばそんなこともあったなぁ。すぐ袖口が真っ白けになっちゃうんですよね」
 微笑み返す通の格好はブレザーだ。卒業してから何年か経っているが、全然可愛らしい。物凄く、似合っている。
 お互い見慣れた相手のはずなのに、全然違った様子を見せていてとても新鮮だ。
「でも、通が可愛いからまぁいっか」
「あっ……うん、ありがと。キヨくんも、とっても格好いいよ」
 顔を茹でたタコのように真っ赤にして、微笑みなんとか告げた通に余裕の笑みを返す清世。
「好きな子の前じゃ、いっつも格好いいキヨくんなんでーす」
 ちょっと口調がイタズラっぽい。一歩先へ踏み出した彼は振り返り誘う。
「じゃ、いこっか」
「うん!」
 通は清世の腕にしがみつくように手を握る。

 ――夢のような一日の始まりだ!

●夢のような一日
「テーマパークにきたら、まずはこれ!ですよね!」
 開園と同時、ごった返す人々の中を掻き分けるように進みながら、通が清世を引っ張り向かったのはカチューシャなどを取り扱っているワゴンストア。
「ロバ耳付けちゃえ!」
 通はその中から、ロバ耳をチョイス。そして、そのままお揃いのロバ耳カチューシャを係のお姉さんに言って購入。
「あ、そーだ! 記念写真とってもらおー。お姉さん、撮ってー」
「はーい。いいですよー」
 清世からスマートフォンを受け取った係のお姉さんは笑顔でふたりにカメラを向ける。
「はい、チーズ」
「ぴーす」
「ぴーすです」
 かしゃりとシャッターが切られた。こんな感じで如何でしょうかとの言葉とともに渡されたスマフォの写真はよく取れていた。

 アトラクションも混んでいたが、その間ふたりで話していれば待ち時間なんていうものもあっと言う間だった。
 漸く絶叫マシーンに乗り込んだふたり。
(通怖がるかなー。その時は手握ってあげよ)
 なんて、甘いことを考えていた清世。しかし、いざコースターが走り出せば通は唐突に笑い出した。正直、めちゃくちゃビビる。
 思わず、通の顔をマジマジと見るが、彼女はそんな清世の様子に微塵も気付いていない様子だった。
「す、すごい笑ってるねー」
「絶叫乗ると変な笑いでません……? ってなんでキヨくんこんなブレてるの」
 よかった。通にビビっている表情は幸い映っていなかったようだ。
「買ってかないんですか?」
 不思議そうな通の声が、余計、ちょっと虚しい。

●かえりみち
「今日楽しかった?」
「うん!」
 通は心の底からの笑みを見せてくれた。だから、本当に楽しかったことが容易に窺えた。
 まあ、俺と一緒だから楽しくないわけないけど。そんなことを思っていると――。
「だって、キヨくんと一緒に居られるんだもん。楽しくないわけがないですよ」
 まるで自分の思考を呼んだかのような通を、清世はマジマジと見てしまう。
 一瞬固まった後、噴き出したのは笑い。いきなり笑い出した彼に、通は少し拗ねた様子を見せているようだ。
「もう、キヨくん。何笑ってるんですか! 私、変なこと言いました?」
「だって、俺もだしー」
 素直に白状した清世に、通は頬を赤らめながら微笑み告げる。
「仕方ないですね、もう」


●料理しようと思う心が大切?
 家へ戻った時には既に遅い時間。だけれど、折角の記念日だから早寝をしてしまうには余りにも勿体無い。
「お礼に、何か作ろうと思うのだけれど、何がいいですか?」
「じゃあ、ロールキャベツ食べたーい」
「ロールキャベツ! 解りました、任せておいてください!」
 グッと自信満々に拳を握る通。だけれど、彼女は卵焼きすら満足に焼けないらしい。
 手伝おうかと進言しようとした清世。しかし、彼女はやる気満々。
「お手伝いはしない方がいい……?」
「だって、お礼だもん。キヨくんはゆっくりしててください」
 エプロンを着けて腕まくりをする通。気合は充分な程に溜まってはいるようだけれど――。
 そっかと頷いて、やる気満々の通の様子を微笑ましく眺めながら清世は居間に戻りテレビを付けた。

「よーっし! 頑張りますよー!」
 気合をいれてガッツポーズする通。スマートフォンでレシピサイトを開き、ロールキャベツを検索。
 簡単やら初心者向けだのという文字に釣られ開いたレシピ。うん、手順を見る限りはシンプルで何とか出来そう。
「ロールキャベツくらい、出来ますよ! ……多分」
 タネを混ぜる。ちょっとタマネギを大きく切りすぎて、卵の殻もうっかりいれてしまったけれど慌てて取り除いた。まぁ、及第点だと思う。
 キャベツを巻く。ところどころ破けてしまったけれど爪楊枝を刺して固定すれば気にならないと思う……多分。
 此処までは見た目は不格好だけれど、何とか普通のロールキャベツの姿をしている。
「いやもう爆発なんてさせない絶対そんな振りじゃ…………………………」
 材料を鍋に入れて、コンロの火をかけた。

 ――ぼんっ。

「アッー!」
 悲鳴と絶叫と散らかる残骸。もうカオス。先程まで台所だった場は、まるで紛争地帯の乱戦後のような様子を見せている。
「ちょ、え! 何があった。通大丈夫?」
「え、えと……その、爆発……」
 慌てて台所に駆け込んできた清世に通は残骸を指差しわなわなと震えながら申し訳無さそうに状況を説明した。
「じゃあ一緒に片付けようか」
 清世は素早く雑巾やバケツを持ってきて片付け始める。一瞬、呆気に取られていた通もそれに続く。
 なんだか、通にとっては清世が見ていたテレビ番組の明るい女性ナレーターの声がとても虚しく感じる。
「……ごめんなさい」
「気にしない気にしなーい。何も謝る必要ないよ。ほら、愛情は爆発だーって言うじゃん」
 自分を励ましてくれているのだろうか。軽い調子で告げる清世に通はクスリと笑いを立てる。
「それ、芸術じゃないですか?」
「いいのー。愛情だって爆発したって。だって、爆発しそうなくらい通のことラブだしー?」

●今日も、明日も、明後日も
 料理は全てがダメになったわけではなかった。残ったロールキャベツに清世が数品足して御飯を済ましてしばしの間談笑していた。
 時計を見れば午前12時を過ぎていた。惜しいけれど、夜もだいぶ更けてきてそろそろ夢の時間がやってくる。
「ちょっとトイレいってくるー」
「うん、いってらっしゃい」
 席を立った清世を見送り、うつらうつらと舟を漕ぐ通。しかし、突如落とされた部屋の照明に驚き一気に眠気が吹き飛んだ。
「キヨくん?!」
 目が慣れてきた通がキョロキョロと辺りを見渡すと部屋着にマント姿という出で立ちの清世がドアの付近に立っていた。
「とりっくおあとりーと。お菓子をくれないとイタズラするぞ」
「えー。どうしようかなー……」
「時間切れー。イタズラしちゃいまーっす」
 声をあげる間もなく、近付いてきた清世。すると、彼はおでこにキスをし、通の首にプレゼントのネックレスをかける。
「イタズラ。飛びっきり甘いやつー」
「もう、それじゃあご褒美ですよ……キヨくん、ありがと」
 頬に赤味が増してゆくのが、暗くても解る。通は大切そうに貰ったネックレスに手をあてていた。
「キヨくんおやすみなさい」
「うん、おやすみ、通」
「また、明日ね」
 互いのぬくもりを感じながら夢を迎える。きっと、この瞬間が1番幸せなのだ。優しい夢の中へと旅立っていった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja3082 / 百々 清世 / 男 / 23 / イフィルトレイター】
【jb3571 / 奥戸 通 / 女 / 21 / アストラルヴァンガード】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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水綺の出身地域は殆どがまだセーラー服を採用している場所だったので、他地方へ行くと皆可愛いブレザーの制服を着ていてびっくりしたりします。
大変お待たせして申し訳ありませんでした! 気に入って頂けると幸いです。
ご発注、ありがとうございました〜!
HC仮装パーティノベル -
水綺ゆら クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年11月21日

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