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『ハロウィンの甘酸っぱい青春物語 』
猫野・宮子ja0024)&ALjb4583

「トリックオアトリート、だよ♪」
 猫野・宮子(ja0024)はAL(jb4583)に手を出しながら、にっこりと微笑む。
「ふふ、今日はお菓子を集めるパーティーなのに、ボクからもお菓子を集める気ですか?」
 クスクス、と柔らかく笑みを浮かべながらALは猫野の手のひらに飴玉を乗せた。
「えぇ〜、ALくんが用意してるなんて思わなかった……悪戯しちゃおうと思ってたのに」
 手のひらに乗せられた飴玉を見ながら、猫野は面白くなさそうに呟く。
「宮子様なら、きっとそう言ってくるだろうなと思っていましたから」
 猫野の行動をしっかり読んでいたALは、悪戯っぽく微笑んで答える。
「それにしても、宮子様はいつもながら大胆な…」
 猫野が仮装している姿を見て、ALは頬を赤らめながら小さな声で呟く。
 猫野がしている格好は包帯だけを巻いたミイラ女。素肌に包帯だけを巻いた格好であり、ALが頬を赤らめるのも無理はない。時期的には寒いはずだが、お洒落のためには薄着、という女性の心理に似たものを感じる。
「そう? ALくんだって、今日はいつもと違って大胆な服だよねー?」
 猫野がジロジロとALの服装を眺めていると「……は、恥ずかしいので、あまり見ないでください……」とALは気恥ずかしそうに答えてくる。
 ALはへそ出しシャツとスパッツ、首輪をつけて狼のグローブとブーツを履いた可愛らしい狼男の仮装だった。
 中世的な外見のせいか、周りの男性陣もチラチラとALを見ているが、当の本人はその事に気づいていない。
「ほら、ALくん! たくさんお菓子を集めちゃおうよ!」
 猫野がALの手を取って歩き出す。
 今まではこれくらい当たり前の事だったが、今のALはドキドキして、胸が苦しいくらいだ。
(前は何ともなかったのに……胸が、ドキドキする……)
 今日は少し猫野に触れられたり、大胆な格好を見るだけでドキドキしてしまい、ALはその理由が分からず首を傾げる。
「ALくん、どうしたの?」
 ALの様子がおかしい事に気づき、猫野が顔を覗きこみながら問いかける。
「なっ、何でも、ありません……っ!」
 少し動けば唇が触れてしまいそうなほどの位置に、猫野の顔があり、ALはリンゴのように顔を真っ赤にさせる。
「それならいいけど……具合が悪かったらちゃんと言ってね? 無理はさせたくないから」
「は、はい……!」
 猫野からの優しい言葉に、冷たい風が吹いているのに、ALの心は暖かくなる。
(本来ならばボクが宮子様を気遣わなくてはいけないのに……逆に気遣われてしまいました)
 しょんぼりとした表情を見せていると「こら」と猫野がALの額をでこぴんした。
「宮子様?」
「せっかくのパーティーなんだから楽しく行こうよ、ほら、向こうに美味しそうなお菓子あるよ!」
「わわっ、宮子様……! そ、そんなに引っ張られると転んでしまいます……!」
 猫野が自分を気遣ってくれている事が嬉しくて、これ以上心配をさせないようにパーティーを思いきり楽しもう、とALは心の中で呟いた。

※※※

「予想以上にたくさん集まりましたね」
 パーティーからの帰り、猫野とALは両手いっぱいのお菓子を抱えていた。
「そう――……くしゅんっ!」
「宮子様、大丈夫ですか? そんな薄着をしているから風邪を引いたのでは……」
 くしゃみをした猫野に慌ててALが言葉を投げかける。
「うーん、やっぱりこの格好はちょっと寒かったかな? 早く帰って暖房をつけなくちゃ……!」

 それから帰宅までの歩みは早くなり、猫野が部屋に入ると、すぐに暖房をつけた。
 でも、暖房をつけたからといってすぐに温まるわけではなく、寒さに体を震わせていると……。
「……え?」
 猫野の身体を優しい温もりが包んだ。
(ボクは、何故このようなことを……?)
 抱きしめられた猫野も状況を把握していないが、抱きしめた側のALも把握できていない。
 恐らく、寒そうにしている猫野を見て、ALも身体が勝手に動いたのだろう。
「……ALくん?」
 自分を抱きしめる腕が想像していたよりも、ずっと逞しくて、猫野の鼓動もドキドキと高鳴る。
「大丈夫、こうしていればすぐに暖かくなりますよ」
 猫野を抱きしめる腕に力を込めながら、ALが優しげに言葉を返す。
「暖かくなるって、あ、ALくん……っ!?」
 いつもの可愛らしい雰囲気はまったくなく、猫野も少し戸惑いながらALを見上げる。
「宮子様は、ボクに抱きしめられるのって……いや、ですか?」
「いやじゃない、けど……いきなりで驚いたっていうか、ALくんらしくないっていうか……」
「ボクらしいって、これもボクですよ……?」
 こつん、と額と額をくっつけながらALがジッと猫野を見つめる。
 唇も触れ合いそうな距離にあり、猫野は恥ずかしさから、ギュッと瞳を閉じた。
 ――ちゅっ。
 小さなリップ音が響き、そろりと猫野が目を開くと、頬にALがキスをしていた。
「あ、あああああALくん!?」
「ふふ、顔が真っ赤ですよ、宮子様」
(い、いつものALくんじゃないみたいなんだけど……っ!)
 普段は従順な執事なのに、今は少しだけSっ気が見えるような気がする。
「美味しそうなパウンドケーキがありましたよね? すぐに温かい紅茶を淹れますので、宮子様は着替えてから向こうで待っていてくださいね」
(……いつものALくんだ)
 キスされた頬に手を当てながら、ALの背中を見送る。
(うぅ、顔が真っ赤なの、まだおさまりそうにないよ〜……っ)
 火照る頬を手で隠しながら、猫野は着替えのために、自室へと向かって行った。
 このふたりが、お互いの気持ちに気づくまでは、もう少しだけ時間がかかりそう……?


―― 登場人物 ――

ja0024/猫野・宮子/14歳/女性/アカシックレコーダー:タイプB

jb4583/AL/13歳/男性/ダアト

――――――――――

猫野・宮子様
AL様

初めまして、水貴透子です。
今回は『HC仮装パーティーノベル』をご発注下さり、
ありがとうございました……!
初々しい&甘酸っぱさを書いたつもりなのですが、
いかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容になっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2014/11/21
HC仮装パーティノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年11月21日

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