▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『夢のような一時をあなたと…… 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

「あれ? 学園から手紙がきてる。何だろう?」
 悠里は郵便受けに、通っている学園専用の封筒が入っているのを見つけて首を傾げる。
 校章入りの封筒を開けて見ると、ハロウィンの夜に行われるイベントに、悠里ともう一人を招待したいと書かれてあった。
「ふぅん……。街外れの山の中にある貴族のお屋敷で、昔の貴族の格好をして一晩過ごすんだ。……でも何で私に届いたんだろう?」
 もう一度首を傾げて考えてみても、思い当たることが浮かばない。
 ただ通っている学園は、一般的な普通の学園ではない。時々は奇抜なイベントを行い、生徒達を驚かせることも少なくはないのだ。
「この招待状には『二名様限定』って書いてあるから、とりあえず嬉しいって素直に思って良いのかも」
 学園が用意したイベントならば、素直に安心して参加できる。
 それにすでに悠里の頭の中には、一緒にイベントに参加したい人物の姿が浮かんでいた。
「よしっ! 思い切って、シルヴィアさんを誘ってみよう!」
 悠里は頬を赤く染めながら、愛おしい恋人に電話をかける。


☆二人っきりのハロウィンナイト
「ふふっ、ユウリから突然電話がきた時には驚きましたが、こんな素敵なお誘いだったとは」
 シルヴィアはクスクスと笑いながら言うも、嬉しさを隠せない様子。
 しかし隣にいる悠里はポカーンとしながら、目の前の建物を見上げている。夕方、高級車で迎えが来たのも驚いたが、到着した場所がまるで外国のように大きく広く立派な庭の中に建つ洋館であったことに、更に衝撃を受けたのだ。
「……こんなに立派な建物、生まれてはじめて見ました」
「そうですか? 私の故郷の英国には、こういった建物は数多くありましたけど」
「うそっ!?」
 庶民として生まれ育った悠里は、平然と建物を見上げる裕福で立派な家柄の生まれであるシルヴィアとの差を感じてしまう。
「さっ、そろそろ中に入りましょう。ハロウィンらしく、仮装をしなければ」
「うっうん……」
 気後れしている悠里の手を掴み、上機嫌のシルヴィアは玄関に向かって歩き出した。
 ――が、屋敷に入った途端、メイド姿の女性達に二人は捕まり、それぞれ別室に通される。
「えっ! ええっ!?」
「ちょっちょっと強引では?」
 戸惑う二人を、メイド達はあくまでも笑みを崩さずに部屋の中に入れてしまう。


 そして一時間後、着替えとメイクをメイド達にやってもらった悠里は、少々お疲れ気味で一階の居間に通された。
「けっ結構、強引なメイドさん達だったなぁ」
 連れてかれた部屋は衣装部屋であり、悠里に似合いそうなドレスを次々に勧めてきたのだ。その中から悠里自身が気に入ったドレスを選ぶと、そのドレスに似合うメイクや髪型をしてくれた。
「でもこのドレス、我ながら似合っているかも。好きな色のドレスがあって良かったぁ」
 悠里が選んだのは、淡い水色のふんわりとしたプリンセスラインのドレスだ。ヒールも同じ色で、そんなに高さがないものにした。黒髪はリボンで編み込んで頭の上で束ね、アクアマリンとシルバーのティアラをつけている。
「ハロウィンの仮装だし、このぐらいしても良いよね?」
 大きな窓に映る自分の姿はいつもとは違い、輝いて見える。
 そこへ扉をノックする音が聞こえてきたものだから、慌てて振り返った。
「はい、どうぞ」
「ユウリ、先に着替え終えて……って、まあ!」
「わあ……! シルヴィアさん、ステキ!」
 二人は互いの姿を見た途端、驚きに眼を丸くして、その場で硬直してしまう。
 シルヴィアは青を基調とした騎士の衣装を着ている。甲冑ではなくパーティーに参加するようなデザインであり、しかも男装用であった。金色の髪は後ろで一つに結んでおり、顔立ちがはっきりと見れる。
「ユウリはきっと可愛らしい水色のドレスを選ぶと思っていたので、私はこの衣装にしてみたんです」
「そっそうだったんですか……。あのっ、とっても凛々しくてカッコイイです!」
「ありがとうございます。ユウリはとても可愛らしいプリンセスですね」
 ニッコリと微笑むシルヴィアだったが、実は内心ではほっとしている。
 メイドに服を着せてもらうのも、メイクをしてもらうのも、髪型をセットしてもらうのも慣れていた為、衣装部屋に入るなりシルヴィアはテキパキとメイド達に指示を出した。
 騎士の衣装を選んだものの、それでも頭の中では執事服や燕尾服の方が良かっただろうか、という考えが駆け巡っていた。
 実は衣装を選ぶ時が一番時間がかかっており、そのせいで悠里よりも遅れたのだ。
 しかし着替え終えた悠里の可憐な姿を見て、心底この衣装で良かったと安心する。何故ならシルヴィアには、これから行いたいことがあったからだ。
「ごっほん! ユウリは日本人ですからハロウィンのことをよく分かっていないと思いますので、簡単に説明します。本来ハロウィンとは、日本でいうところのお盆みたいなものです。人間がオバケの仮装をして街を歩き、家を巡ってお菓子を貰う代わりに人々に害をなさず、あの世へ亡者を返すという儀式なのです。なので私とユウリは今宵、この洋館に住みついている幽霊のプリンセスとナイトということになります」
「なるほど。幽霊として振る舞わなくちゃいけないんですね」
「そうです。この仮面をかぶり、今夜だけはユウリはプリンセスらしく、私は仕えるナイトらしく演じましょう」
 そう言ってシルヴィアは、目の周りを覆い隠すタイプのアイマスクを悠里に差し出す。
「わあ、キレイなマスク!」
 悠里ははしゃぎながらマスクをつける。
 そしてシルヴィアもマスクをつけると、悠里の前で跪いた。
「それではユウリ姫、わたくしと今宵一晩、この世界に復活を許された時を一緒に過ごしてくださいませ」
 シルヴィアはシルクのロンググローブに包まれた悠里の手をそっと取ると、恭しく手の甲に口付ける。
「はっはい! ……えっと、私も何かした方が……」
「こういう場合は姫は身につけている物を一つ、渡すんですよ。それと言葉遣いも姫らしくしてください」
 こっそりしっかりシルヴィアから言われて、悠里はアタフタするのを止めて背筋を伸ばす。
「でっでは騎士・シルヴィアさ……いえ、シルヴィア、今宵一晩よろしくお願いしますわね。あと、これを」
 悠里は髪を束ねていたリボンをしゅるり……と引き抜き、シルヴィアに差し出す。長い黒髪がふわりと広がるも、整えられておかげで少しウェーブがかかったヘアスタイルになっただけ。
 シルヴィアはリボンを受け取ると、自分の髪を結んでいた紐を解いて、代わりに悠里のリボンを結んだ。
「ありがたく頂戴いたします」
「ええ」
 悠里は照れながら微笑むと、そっと腰を曲げてシルヴィアの額にキスをした。
 驚いたシルヴィアだったが、すぐに優しい笑みを浮かべる。


 その後、シルヴィアは本物の騎士のように悠里の手を引き、ダイニングルームへと向かう。そこで豪華なハロウィンディナーを完食した後、ライトアップされた庭園を二人は腕を組みながら見て回る。
「シルヴィアはこの屋敷や庭のこと、随分詳しいのですね」
「実は先程、メイド達から聞いたんです」
「まあ」
 二人はクスクスと笑いながら、庭から一階のダンスホールに入った。
 すると亡者の姿をした音楽隊が舞台にいるのを見て、悠里は思わず足を止める。
「あっあの方達は?」
「この屋敷の音楽隊です。ちゃんとした演奏を聞かせてくれますよ」
 そう言ってシルヴィアが片手を上げると、美しい演奏がはじまった。
 シルヴィアは悠里の手をそっと外すと、改めて正面から向かい合って手を差し出す。
「ユウリ姫、わたくしとワルツを踊ってくださいますか?」
「しっシルヴィアがリードをしてくれるのならば、よくってよ」
 強気に聞こえるが、悠里はこういった社交場でのダンスの経験があまりないので、シルヴィアにリードをしてもらいたいという気持ちが見えてしまっている。
「もちろん。姫をリードするのが、騎士の役目ですから」
 シルヴィアは悠里の手を取り、もう片方の腕は腰に回した。そしてゆっくりと、悠里に負担がかからない動きで踊り始める。
 すると音楽に合わせて、二人はちゃんとワルツを踊っているように見えた。


 優雅な一時を過ごした後、火照った体を冷ます為に二人はバルコニーに出る。
 そして二人っきりになったのを確認したシルヴィアは、心の赴くままに悠里に正面から抱き着いた。
「しっシルヴィア、どうしたの?」
「ああ、ユウリ姫。貴女は何故そんなに魅力的なんでしょう。可愛らしく踊る姿に、わたくしの心は奪われっぱなしでございます。ずっとわたくしだけの姫であってください」
「あっ……!」
 悠里の耳元で熱く囁いた後、シルヴィアは熱い眼差しを向けながらそのまま自分の唇と悠里の唇を重ねる。
「んんっ……!」
 はじめは驚いた悠里だったがすぐに眼を閉じて、体の力を緩めてキスを受け入れた。
「はあ……。愛の語らいをするには、ここでは人目がありますね。お部屋へ参りましょうか」
 悠里の返事を待たず、シルヴィアは彼女をお姫様抱っこしてしまう。
「きゃあっ!? ……結構、大胆な騎士なのですね」
「何を今更」
 ふふふっと余裕の笑みを浮かべるシルヴィアが少しだけ憎らしくなった悠里は、彼女の首に自分の腕を巻き付けるとそのままキスをする。
「ひっ姫!?」
「……うふふ。愛おしさが溢れ出てしまいました。さっ、二人っきりになれる場所へ連れて行ってください」
「まったく……。姫にはかないません」
 二人は間近で微笑み合いながら、部屋へ向かって行った。


<終わり>



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja0115/天谷悠里/女/大学部3年/アストラルヴァンガード】
【ja4157/シルヴィア・エインズワース/大学部5年/インフィルトレイター】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 このたびは依頼をしてくださり、ありがとうございます(ペコリ)。
 二人っきりの甘々なハロウィンナイトはどうでしたでしょうか?
 夢のような一時を、楽しんでいただければと思います。
HC仮装パーティノベル -
hosimure クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年12月01日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.