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『劇場版・魔法少女ナギリン2〜黄昏の女王と沈まぬ太陽〜 』
アスハ・A・Rja8432)&暮居 凪ja0503)&フレイヤja0715)&御手洗 紘人ja2549)&月居 愁也ja6837)&小野友真ja6901

●三度ある事は十度まで…げふん

「うーん。ちょっと肌寒くなってきたわね」
 コートの裾を握り締め、寒そうに体を抱く。女性の名は、暮居 凪。
 この寒い季節。しかも年末である。せかせかと、周りの人同様に、彼女もまた大学に向かっている途中であったのだ。
「いい加減に出席をちゃんとしないと、単位取れなくなっちゃうわね」
 リアルな話をこの様な夢のある子供向け番組で言わないでほしい物である。
 そこ、既に子供向けでは無いと言うツッコミは禁止。脚本作家が泣いちゃうから。

 ――閑話休題。
 駅へ向かう彼女を、呼び止める声が一つ。
「へい嬢ちゃん、くじ引いていかねぇか」
 どうやら、商店街のくじ引き屋のようだ。恰幅のいいおっさんが、にこにこしながら話しかけてくる。
「あいにく、私は忙しいの」
 相手にせずにさっさと離れようとする凪、だが、おっさんも食い下がる。
「ほら、一等賞はサンシャイナー温泉でな。豊胸作用で有名だ。おじょうちゃんも――」
 ――キッ。
 パリン。
 おっさんの後ろのガラスにヒビが入る。無論それには誰も手を触れていない。
 終に凪の目線に込められた怒りは物理的な破壊力を持つに至ったのだろうか。
「結・構・で・す」
 振り向いて、その場を離れようとする。
(「ここで誘われてしまえば、絶対にまたあのキツネの策略に嵌るわ。――二度とあのような愚は」)
「残念賞です。このカイロをどうぞ」
「引いていくわ」
 流石に寒さには抵抗できなかったようだ。
(「普通ははずれの方が確率が高いはず。ここで丁度当たるはずは」)
 先ほどのキツネの策略についての考えはもう忘れたのだろうか。

「大当たり!一等賞、サンシャイナー温泉への二泊三日でございます!!」
「なっ…!?」

「ふふふ、予想通りなんだよー」
 ヒビの入ったガラスの裏で。冷や汗を僅かにたらしながら、キツネのマスコット――チェリーチェリーが微笑んでいた。
「このチェリーに掛かれば、因果を操作するくらい造作も無いんだよー」
 おい。それならもうちょっとマシな能力の使い方をしろよチェリーさん。


●旅行にトラブルはつき物

「で、結局はこうなっちゃったわけか…」
 はぁ、とため息をつきながら、駅の中を凪は進んでいく。
 せっかくの旅行である。譲渡できる家族もおらず、友人たちは忙しい。
 故に、一人で向かうしかなかったのである。決して豊胸作用が気になった訳ではない。断じて。
「と…これは変身道具じゃないわね。うん」
 しげしげと扉の取っ手を見つめ、うんうんと唸る。
 一見変質者にも見えなくは無いこの行動だが、ちゃんとした理由がある。
 ――以前、騙されて咄嗟に掴んだ物が、『――』への変身道具だったせいで、強制的に変身させられた事があるのだ。
 なので、彼女の慎重さも理解できない事はない。
 …が、その慎重さに反して、特に異常はみられなかった。

「然し、1と1/10番ホームって、またおかしな所ね」
 ――ホーム名を除いては。
 いくら頭上に案内看板があったせいで迷わずに来れたとはいえ、そもそもこの異常なホーム番を普通の人ならば怪しむのではなかろうか。
 だが、それに凪が気づく気配は無い。或いは普段から非日常に慣れすぎているのかもしれない。

 ――列車に乗り込んだ凪。何故か窓のカーテンが常に下りた状態になっているのは気になったが、車内の照明がよく、列車全体を明るく照らしていたため、特に不便は無い。
 それ故に、彼女が異変に気づいたのは、列車が目的地に到着し、下車してからの事であった。


●サンシャイナー国へようこそ

「なんじゃこりゃー!?!?!?」
 思わず絶叫したのも無理は無い。人が凡そ想像できない事態を、凪は目撃していた。

 ――空に、二つの太陽が浮かんでいたのだ。
 ここが異世界であるのは、紛れ様の無い事実である。
「ナギリンいらっしゃ――へぶしッ!」
 台詞を放ち終える前に、強烈な蹴りを正面から喰らい吹き飛ぶチェリーチェリー。
「ま・た・あ・な・た・の・仕・業・ね…っ!」
 列車の側面に激突し、ずるずると滑り落ちるチェリーを、青筋の浮かんだ修羅の表情で睨むナギリン。
「フフ…フフフ…ここから…帰る、には…ナギリンの魔力が……必要なんだよ…」
 へたり込んだまま、笑いを浮かべて述べるチェリー。
「その手には乗らないわよ。…第一、こんな異世界じゃ、テンマも襲ってこれないでしょう。何と戦うと言うのよ」
 ――それは俗に言う『フラグ』と言う物ではないだろうか。ねぇ凪さん。

「ふははは!この黄昏の魔女が統べる国に不法侵入してくるとは、いい度胸じゃないのだわ」
「いえ、直ぐに帰りますので見逃してくださいおねがいします」
 何故か敬語になりながら頭を抑えるナギリン。
「みすみす見逃すと思って?このたしょがれ――」
 あ、噛んだ。たしょがれさん噛んだ。
「たしょがれって言うなー!!違うったら違う。違うんだってば!」
 ばっちり録音してあります。無論カットはしません。監督はおにちくなのです。

「ご、ごほん。――兎も角、ここからそう簡単には」
「いいえ、今ここで帰らせてもらうわよ」
 最後まで言わせるか、といわんばかりに凪は扉の開閉バーに手を掛け――
 ――そのバーが、まばゆい光を放った。

 ♪♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪

 テーマ曲と共に、俗に『変身バンク』と呼ばれる一連のシーン。凪の私服が弾け飛び、その体が白の衣装に包まれる。
「魔法少女ナギリン、ただいま参上っ!」
 ポージングした直後、凪改め『魔法少女ナギリン』は、その場に崩れ落ち、『orz』のポーズを取る。
「何で…何でいつも引っかかってしまうのかしら…」

「ふふふ。こっちだって、工夫してるんだよー!」
 遠くでしてやったり、と言う表情のチェリー。
「今回もばっちりナギリンの新コスに経費…ごほん…力を込めてるよ!下もいいけどへそチラも捨て難いよね!やったね!」
 技術の無駄使い、と言う物ではないだろうか。
「フィールド耐久度が前回比の150%向上したよ!」
 それは気のせいじゃ、寧ろ今そこで持っている超望遠カメラで撮影してグッズにするためじゃ――だめだ、ツッコミに疲れてきた、帰ります。

「その姿、戦意ありと認定するわ。いらっしゃい第一の試練、メルトスライムーっ!!」
 その場の空に亀裂が走り、そこから小さなスライムが、ぽよんぽよんと地にいくつも落ちる。
「え、戦意なんて――」
「問答無用ッ!」

「ふ、ふふふ、どうして皆、人の話を聞かないのかしらねぇ…」
 ざわり。空気が、変わった。
「私は今、すっごーく、機嫌が悪いの…」
 『orz』のポーズから顔を上げたナギリンの表情は…鬼神のそれに相違なし。
 襲い来るスライムたちをキッと睨みつけ、ガツンと、大地が揺れるほどに踏みしめる!
「そんな気持ち悪い物、近づかせはしないわぁ!」
 ブン、と空を切る猛烈な回し蹴り。
 一瞬の間。次の瞬間に巻き起こる強烈な暴風が、スライムたちを引き裂き、押しのける。
「ふふふ、いくら切り裂いても無駄無駄。その子達は小さくなっても動き続けるわ」
「元々切り裂くための物じゃないわよ」
 え? きょとんとするたしょがれ改め黄昏の魔女。
 ――暴風はスライムたちを押しのけ、出てきた次元の亀裂へと叩き込む。
「恨むなら、戸締りをしっかりしなかった自分を恨む事ね」
「え? ちょ、きゃぁぁあ!? こっちこないでェェ!?」
 次元の亀裂に押し込まれたスライムたちは、スタート地点、即ち『黄昏の魔女』の居場所へと――


●試練を考えよう

「はぁ…はぁ…よ、よろしいですわ。第一の試練はクリアと言う事にしてあげますわよ!」
 服がぼろぼろの状態で、黄昏の魔女フレイアがよろよろと這い上がる。
「説明するんだよー!あのスライムは服装の繊維のみを溶かして栄養とする、紳士たちご用達のペットなんだよー。結構レアだから欲しがる人も大勢居るはずなんだよ」
 いつもの説明ありがとう、チェリーさん。所でその手に持っているスクリーンは?
「たしょがれさんのグッズも欲しい人が居るかもと思って、事前にカメラを仕込んでおいたんだよ。意外な収穫だn…へぶしっ!」
 飛来した瓦礫の破片が頭部に直撃し、チェリーがばたりと倒れる。

「はぁ…はぁ…ならば、第二の試練ですわ!ぽちっとな」
 派手に手を上げ、フレイアは仰々しく『2』と書かれたボタンを押す。
 その瞬間、ナギリンの周りに、大量の筋肉モリモリの成年男性が出現する。
「第二の試練、漢地獄!さぁ、これでどうかしら!?」
「――この程度が試練とは、呆れるわ」
 やれやれ、と首を横に振るナギリン。
「けど、やはり数が多いわね」

 と、そこに、急に片方の太陽から、一条の光が地に突き刺さる。
 光の中から、魔法少女コスチュームの人影が出現する。
「魔法少女、太陽のサンシャイン、ただ今参上!」
 実は魔法少年なのだがそこの突っ込みは入れないで置こう。
「黄昏の魔女、また試練で人を困らせているのかっ!」

「また変なのが来たわ…」
 小声で頭を抑えるナギリンに、サンシャインはにかっと明るく笑いかけ
「安心しー。俺はあんたの仲間や。共に魔女の試練を打ち砕くためのな」
 そこへ、周囲の男たちは一斉に飛び掛る。
「何はともあれ、先ずは目の前の試練の突破からや!」
「仕方ないわね…」
 この状況を潜り抜けるのが最優先だ。そう判断したナギリンも、前に出る。 

「――いつも変態どもを相手にしている私に、この程度の敵が倒せないはずはないわぁ!」
 男たちが飛び掛る瞬間。逆立ちした状態で全身を回転させたナギリンの周囲に、旋風が巻き起こる。
「ナギリン・リバースタイフーン!劇場版第二作でドン・アスハにトドメを刺した技なんだよー」
 何とか起き上がったチェリーが安全圏で解説している間に。男たちは旋風竜巻に空に巻き上げられる。
「これで――終わりや!」
 空に浮かぶは、巨大な火球。それを振り回すようにして、サンシャインは男たちをその中に『吸い込んだ』。
「サンシャイン・プレッシャー…!?」
「何、知っているのかチェリー!!」
「太陽を具現化して、敵をその中に飲み込む…防御も回避もすっごく難しい必殺技なんだよ」
「えげつないな…」
 ※尚、この撮影に当たって人命への被害はありません。

「さぁ、これで終わり。…次の試練は?」
「え、えへへ、ちょっと待ってね…」
 状況を見守るフレイアの頬に、冷や汗が浮かぶ。
「(どうしよう、次の試練まだ考えて無かったわ)」
「無いなら、こっちから直接行くわよ。――このバカ騒ぎの責任を取ってもらうために」
 慌てて周囲から『使える物』を探すフレイアの目に、一つのトイレが止まった。


●いつもの

「俺は何のために生きているのだろう――」
 時は少し、遡る。
 月居 愁也は、一人、荒野を彷徨っていた。

 ――トイレ修理へ向かう途中。
 一刻も早く目的へ辿り着くため、とある踏み切りを横切った際、向かってきた列車に激突したのだ。普通の人間ならば即死であっただろうが、彼は宇宙人――トイレ星人。意識を刈り取られただけで、命に別状はない。
 そして、起き上がった彼は、この太陽が二つある世界に辿り着いていた。

「トイレを…トイレを…くれ…」
 魔法少女が統制するこの世界である。
 トイレに行かない彼女たちだ。トイレを設置する等と言う考えは浮かばないのだろう。
 ――世界にトイレがない。この事実は、本来トイレ星人である彼から、生きるための活力を完全に奪い去っていた。

「ざまぁねぇな」
 目の前に、人の姿が見える。幻影だろうか
「だ、誰だ…」
「今はそんな事は重要じゃねぇ」
 目の前の者の姿。それはトイレ星人たる彼自身の真の姿であったが、地球在住の長さが祟り変身中の記憶を失う彼はそれに気づく事はない。
「トイレ神の教えを思い出せ。ウォッシ教四大司祭だったヤツが、情けねぇ」
 説明しよう。ウォッシ教とはトイレ星の星教である。その教主に次ぐ位が、四大司祭である。意外とすごいヤツだったらしいこのトイレ星人。
「『――トイレが無くば、そこに我はトイレを作らん』忘れたのか?」
 瞬間。きゅぴーんと電球が愁也の頭上に光る。
「そうか!無ければ作ればいいんだな!」
 猛烈な勢いで、彼は建材を収集し。トイレの製造を始めた。

「ふう。やっと落ち着ける」
 ――そして今。彼が作ったトイレは、終に完成の時を迎えた。
「さーて、用を足して、っと」
 ガチャリ、と彼が扉を開けた瞬間。
 ――飛来した隕石のような物によって、トイレは瓦礫と化したのである。
「あ…あぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
 怒りによって、その姿は変わる。
 月居 愁也は、彼の真の姿。トイレ星人にしてウォッシ教四大司祭が一人、ウォッシュレッツに変身する。
 近未来式真空トイレの形と化したその髪型が、彼の力と、怒りの程を表現している。
 
「――今の隕石を飛ばしたのは、あの魔法少女よ」
 お約束の擦り付けをありがとう。たしょがれさん。

「トイレを壊したのはてめぇかぁぁぁぁ!」
「第三の試練。『最強の変態ども』よ。おーほっほっほほ!」
 余りにもお約束の展開に、ナギリンが目頭を押さえた瞬間。
「ん?『ども』?」

「問おう。これが私のマスクーか」
 花粉防衛用アルティメットマスクと、睨み合いする人が一人。
 無論、マスクが回答を返せる訳もないが、一人、話を進める。
「――どうやらそのようだな。……人・面・一・体ッ!!」
 マスクを装着し、その腕に出現するはバンカー。
 そこに居たのは、紛れも無くナギリンの宿敵たる『テンマ』の幹部、ドン・アスハ。
「さぁ、この二人が最終試練よ!」

「ならば先制攻撃や!喰らえ、サンバースト!!」
 太陽のような火球を、二人に投げつけるサンシャイン。
「ゴフッ。ゴゴゴフッ」
 ――どうやらドンアスハのマスクは、また言語を遮る物だったようです。以下から字幕つきでお楽しみください。

「フッ、ゴフゴゴゴゴゴフッ」(ふっ、このドンアスハは、以前とは違うぞ)
 バンカーを前にして、一直線に火球へと突撃する。
 謎のエネルギーフィールドを展開したバンカーは、そのままドン・アスハの体を包み込んだまま、火球を貫通!
「なんやて!?」

「……これでトイレを破壊したのかァァ!」
 残った火球が向かう先は、ウォッシュレッツ。
「笑止ぃっ!」
 両手にラバーカップを構えると、周囲に無数の、トイレの幻影が出現する。
「今日はすこぶる調子がいいんでなァ! 浄宙・百星大轟流ッ!」

「あ、あの技は!?」
「何、知っているのかチェリー!?」
「浄宙・百星大轟流――大司祭レベルのウォッシ教徒が、伝道時にその星の人の心を浄化するための技……!無数のトイレから排出される濁流が、全てを洗い流して、見る人たちを放心状態にするんだ……」
「無差別破壊じゃねぇか!?寧ろダイナミック洗脳!?」

 ――とまぁ、お約束の解説はさておき。
 巨大な濁流は、太陽の如き火球を飲み込み。押し流した。


●魔王ナギリン

「――フ、フフフフフフフッ」
「ど、どうしたんや?」
 大技を破られ、一旦後退したサンシャインは、突如横から伝わる不気味な笑い声に、思わず声の元――ナギリンの様子を確かめに向かう。
 だが、その髪で覆われた表情を見て、彼はまるで何か不気味な物を見たかのようにビクリと後退する。

 ――顔をあげたナギリンの表情は、正しく『悪鬼』。
「どうやらこの連鎖を終わらせるためには、一度徹底的に『教え込んで』やる必要がありそうねぇ……」
 味方ですら引かせるナギリンの体から放たれるオーラに、黄昏の魔女が平然としている訳も無く。
「倒せ!倒すのよ!アレを倒せば、あなたたちは元の世界に帰してあげるわ!」
 ――己が二人をこの世界に閉じ込めている元凶だと言うのを自白したような台詞であるが、変態二人がそれに気づく様子はない。変態だからね!
「喰らえ、無限・吸引千手乱舞ゥッ!!」
 ウォッシュレッツの背後から無数の幻影の腕が伸び、それぞれが所持しているラバーカップを四方八方からナギリンに投げつける。
「うざいわぁぁぁ!」
 回し蹴り。直後、周りの空気が一時的に奪われ、真空状態と化す。
 ――その場に空気が戻った時。すべてのラバーカップの柄は一斉に折れ、地に落ちる。地面に吸い付くラバーカップたちは、さながら墓地の如く――
 閑話休題。

「な、なんだとォォ…!?」
「ゴフフフフッ」(僕が行こう)
 驚愕するウォッシュレッツの隣から、再度ドン・アスハが突進する。
「ゴフッゴフゴフフフッ」(飛び道具が効かないならば、直接叩くまで)
 音速に近い速度により、ソニックブームを引き起こしながら、突き出される必殺のバンカー。
 それに対し、美脚を振り上げるナギリン。
「ゴフフッゴフッ――!?」(無駄だ、質量はこちらが上――!?)
 異変に気づくのが一瞬、遅かった。振り上げられた脚はバンカーを蹴って迎撃するのではなく。寧ろナギリンはそのまま逆立ちの体勢になり、両足でバンカーをがっちり挟み込んだのである。
「ゴフッ…!」(しまった…!)
 このままでは腕ごとバンカーを折られかねない。強引にブースターに点火して推進し、ドン・アスハは拘束から脱出する。

「フフフッ……やはり、安寧を得るにはこうするしかないようね……」
 不気味な事を呟きながら、ゆっくりと二人に近づくナギリン。怖い。怖すぎる。これ子供向け番組で放送して良いのか。過去の履歴を見るとほんっと今更だけど!

「そこのマスコット!どうしてこうなったのか説明しなさいよー!」
「んーと、ナギリンの中で、色んな感情がぶつかりあって相殺して、虚無を生み出したんだよー。感情が無くなったナギリンはただの破壊するだけの殺戮マシーン。言うならば、『魔王ナギリン』なんだよー」
 何だその投げやり設定。設定担当出て来い。
「けど、この状態だと無防備になるから、セクシーショットも取り放d――ゲフッ!?」
 落下するラバーカップに捕まってしまったようだ。そのまま、地に墓標の如く突き刺さる。アーメン。

「……くっ……サンシャイン!」
「なんや!?」
「あなたも協力しなさい!」
 黄昏の魔女の呼びかけに、サンシャインが一瞬固まる。
「あんたと協力やのはちょっと――」
「今はそんなこと言っている場合じゃないでしょう!?」
 一喝。
「アレをとめないと、この世界ごと壊されかねないわ。あの力は見たでしょう!?」
「そうやけど……」
 目を瞑り、暫し考える。

「――分かった、協力せんわけにはいかへん」
 目の前のナギリンは、『脅威』へと変貌してしまった。ならばそれを止めるのも、魔法少女たる自分の役目。

●世界揺るがす大決闘

「連携技、いくぜェ!」
「おっけーや!」
 お互い目を合わせると、一斉に動き出す。
 サンシャインが手を上に掲げると、空に浮かぶ太陽の一つの光が、一本に集約され、打ち出される。
 それに対して、構えられるは無数の白いラバーカップ。
「この技が使える日が来るとは思わなかったぜー! 消毒・集光焼却波ッ!」
 無数のカッポンが、光を集め、反射させナギリンへと集約させる。
 息のあった連携。この二人は本当に初対面なのだろうか(すっとぼけ)

「甘いわぁぁ!」
 対する魔王ナギリン。両足を広げ高速で回転すると、その黒いヒールは漆黒の竜巻が如く。光を吸い、消していく。
「ゴッフゴフフフフフゴフ。ゴフゴゴゴッフ」(…忘れたのかナギリン。このドン・アスハがまだ居る事に)
 だが、両足を広げた事で、その中央にある絶対領域は晒される事となる。そこへ、ドン・アスハは猛然と突撃する!
 脚を閉じればそのまま光の雨の餌食となる。だがこのままでは――
「くぬぅぅぅ!」
 全魔力を絶対領域の強化に集中させる。魔力とバンカーがぶつかり合った瞬間、閃光走り――

「――返します、元の世界に返しますわよ!てか二度と来ないでね」
 気絶し、元の姿に戻ったナギリンを列車に乗せるドン・アスハ(の中の人) と月居 愁也に、さっさと行けといわんばかりに手を振る黄昏の魔女。
 先ほどの一合で、どうやら絶対領域を破壊する事には成功したようで。魔王ナギリンは、元に戻ったのである。

 ――ナギリンは、もう二度と変身できないのではないのか。
 ――そもそもサンシャインはなんで黄昏の魔女と戦っていたのか。

 色んな疑問を残したまま、列車は去っていく。
 もう(映画の)尺がないんです。ええ。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年12月01日

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