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『しあわせのかたち 』
フィノシュトラjb2752)&真珠・ホワイトオデットjb9318

「わぁ、雪が降ってきたのだよ……!」
 クリスマスが近い、とある冬の日。
 街角で空を見上げたフィノシュトラは、降りてくる白の結晶に思わず声を漏らす。人界で見る雪というものは、何度見ても綺麗だ。
 彼女は今、とある人物を待っていた。
 待ちあわせの相手は真珠・ホワイトオデット。友人であり、妹のようにかわいがっている相手でもある。
「遅くなりましたにゃん!」
 ぴょこんと弾むような足取りで真珠がやってくるのが見える。フィノシュトラも手を振り返すが、彼女の格好を見てぎょっとなる。
 真珠が身につけているのは、雪のちらつく十二月には全く不釣り合いのもの。見せてはいけない部分を最低限の布地で覆った程度の姿が、道行く人々を凍えさせている。
「真珠さん……」
「どうかしましたにゃん?」
「その格好すごい寒そうなのだよ?」
 ちなみにフィノシュトラの出で立ちはナイルブルーのダッフルコートに、キャメル色のムートンブーツ。今日は寒そうだからと、オフホワイトのマフラーも巻いてきた。
「私は寒くないですにゃん?」
 真珠はきょとんとして、小首を傾げる。確かに悪魔である彼女は、寒さなど大して気にならないのかもしれない。
 でも! とフィノシュトラは首をぶんぶん振り。
「だめなのだよ! 風邪引いちゃったら大変なのだよ!」
 しかもこのままでは、どこへ行っても目立ってしまう。しかし当の本人はその事にまるで気づいている様子がない。フィノシュトラは真珠の手を取ると、目先にあるショッピングモールを指さす。
「今から、お洋服を一緒に買いに行くのだよ!」
 一緒にお買い物、という言葉に真珠の桃色の瞳がきらきらと輝く。
「フィノちゃんと一緒にお買い物ですにゃん! 嬉しいですにゃん♪」
 自慢の猫耳と尻尾がぴこぴこ。テンションが上がったときの彼女の癖だ。

 二人は色々なお店を回りながら、服を見繕っていく。
「これだけたくさんあると、どれにするか迷うのだよ……!」
 フィノシュトラが真剣に選ぶ中、真珠は自分でも選んでみようと店内をうろうろ。
「これとかどうですにゃん?」
 手にしているのは三角ビキニ。というかこの真冬にどこから見つけてきたんだ(真顔)。
「だめなのだよ! それじゃ、今の格好と変わらないのだよ!」
「にゃ!? それじゃあ……これならどうですにゃん?」
 続いて出してきたのはYシャツ。男物に見えなくもないが、さっきよりは全然マシだ。
「むー、もしこれを着るのなら下は……」
 考え込むフィノシュトラに小首を傾げ。
「にゃ? これ一枚で着ればいいですにゃん!」
 それなんて裸Yシャツ。
「ぜ、全然だめなのだよ! 色んなところから怒られちゃうのだよ!」
「これもだめなのですかにゃん!?」
 真珠は驚いたように瞳をぱちぱちさせた後、猫耳をぺたんとさせ。
「ふにゃーお洋服選びって難しいですにゃん……」
 彼女の場合はそもそもセンス以前の問題なわけだが、自覚がないのでどうしようもない。
 しょんぼりする真珠をフィノシュトラは励ましながら、腕を引く。
「大丈夫、私がちゃんと選んであげるのだよ!」
 向かった先は、季節物をたくさん並べた一角。ふわふわのファーがついたコートや、もこもこのスカートが所狭しと並べられている。
「これなら、あったかいのだよ!」
 フィノシュトラが指さしたのは、真っ白なワンピース。起毛素材でできており、手触りも柔らかで温かそうだ。
「ワンポイントで猫の足跡がついているのが、かわいいのだよ!」
「にゃ〜ほんとですにゃん♪」
「これも真珠さんに似合いそうなのだよ!」
 続いて持ってきたのは膝丈のワンピースコート。猫耳フードのケープ付きで、袖や裾がファーで縁取られている。
「この丸いのがかわいいですにゃん!」
 首元にあしらわれたぼんぼんを指さし、真珠はうっとりとした表情になる。
「白くって丸っこくて、なんだか美味しそうですにゃん……」
「た、食べちゃだめなのだよ!」
 慌てて真珠を止めつつ、フィノシュトラも小首を傾げ。
「でも……確かにちょっとお腹がすいてきたのだよ。買い物が終わったら何か食べにいくのだよ!」
「賛成ですにゃん!」
 その後二人は柄物ロング丈Tシャツや、フリル付きのショートパンツに黒猫ハイソックスなどを購入。
 更衣室を借りて着替えを済ませると、店を後にする。
「これで一安心なのだよ!」
 もこもこコートに身を包んだ真珠を見て、フィノシュトラは満足そうにうなずく。
「フィノちゃんありがとですにゃん♪」
「じゃあこれから美味しいものを食べにいくのだよ!」
 
 買い物を終えた彼女達は、通りをぶらぶらと歩く。
 街はすっかりクリスマスムード。
 周囲の至るところでクリスマスソングが流れ、自然と気持ちが浮き立つから不思議だ。
「なんだかいい匂いがしますにゃん」
「あっ真珠さんどこいくのだよ?」
 真珠はぴこぴこと耳を動かしながら、吸い寄せられるようにとある店へと入っていく。看板に書かれているのは『デンマークチーズケーキ』。
「わぁ、美味しそうなのだよ!」
 店内には香ばしく甘いチーズの香りが充満している。どうやらこのお店では焼きたてを食べさせてくれるらしい。
「私達も食べるですにゃん!」
 期待に胸を膨らませながら店に入り、注文。運ばれてきたケーキを前に揃って瞳を輝かせる。
「いい香りなのだよ……!」
「チーズケーキはたくさん食べたことありますにゃん。でもこれはちょっと違うですにゃん?」
 まず見た目が普通のチーズケーキとは違う。ふわふわのスポンジの上に、熱々のチーズが乗せられているのだ。
 ナイフで切れば、とろりとしたチーズが絡みつく。真珠は早速口にしてみる。
「ふわぁ……とても美味しいですにゃん♪」
 とろけそうな表情に、フィノシュトラもどきどきしながら一口ぱくり。
「本当、すっごく美味しいのだよ……!」
 チーズの芳醇な香りと濃厚な味わいが、ふわふわケーキの甘さによく合っている。あっという間に平らげた真珠が物足りなさそうに。
「ふにゃ〜もう無くなってしまいましたにゃん。もう一個食べるですにゃん♪」
「私も食べたいのだよ!」
 あまりの美味しさについつい、追加注文。
 一緒に頼んだフレーバードティーやカフェモカも楽しみつつ、結局二人で6個もたいらげたのだった。



 お腹が満たされた二人は、再び通りへと繰り出した。
 気になるお店を見かければ立ち寄り、クリスマス直前のきらきらした街並みをめいっぱい楽しむ。気が付けば、すっかり辺りは暗くなり始めていた。
 ぽつぽつと灯りが点り始めた街を眺めながら、フィノシュトラは切り出す。
「そろそろ暗くなってきたし、帰るのだよ!」
 帰り道、彼女達は近くの公園を通りかかった。雪がちらつく園内を二人して散歩していると、写真を撮っている人がいるのに気付く。
 赤いダウンコートを身につけた、若い男だった。
 最初は風景を撮っているのかと思ったのだが、よく見るとレンズの先になぜかクマのぬいぐるみが置かれている。
 男は二人の存在に気付くと、緩やかに微笑んだ。
「やあ、こんばんは」
「こんばんはですにゃん。お兄さんはここで何してるですにゃん?」
 不思議そうな真珠に向け、男はああ、とぬいぐるみを掲げてみせ。
「僕はこいつと旅をしていてね。行った先々で写真を撮ることにしているんだ」
「へえ、なんだか面白そうなのだよ!」
 素直な感想を述べるフィノシュトラを見て、男はそうだ、と向き直る。
「よければこいつと一緒に映ってもらえないかな? いつも一匹でっていうのもかわいそうだしね」
「わかったのだよ! お安いご用なのだよ!」
「お兄さんは一緒に映らないのですにゃん?」
 真珠の問いに男は「僕はカメラマンだからね」とだけ答えると、一眼レフのシャッターを切る。
「ありがとう、助かったよ。いい写真が撮れた」
 礼を言う男に向け、真珠は問う。
「撮った写真はどうするですかにゃん?」
「ああ、この子の持ち主に送ってあげるんだ」
「あれ、ぬいぐるみの持ち主はお兄さんじゃないのだね?」
 続くフィノシュトラの問いに、微笑ってうなずいてから。
「じゃあ、お礼と言ってはなんだけれど。かわいいキミ達に、僕からささやかなプレゼントをあげるよ」
 そう言ってパチン、と指を鳴らした瞬間。周囲の灯りが消え、急に真っ暗になる。
「わわ、どうなってるのだよ?」
 雪が降る中、辺りは静まりかえっていた。
 何が起きるのかわからず、二人が息を呑んだその時。

 突然、光が溢れた。

 色とりどりの色彩が次々に灯され、闇を瞬く間に彩っていく。
 それはまるで、光が空に向けて昇っていくようで。
「わぁ……綺麗なのだよ……」
「きらきらしてますにゃん!」
 見とれる二人の視線先。そこにあるのは、巨大なクリスマスツリーだった。先程まで点灯されていなかったため、存在に気付かなかったのだ。
 30メートル近い高さのモミの木には、数え切れない程の電飾がきらめいている。闇の中で煌びやかに浮かぶさまは、思わずため息が出るほどに幻想的で。
 てっぺんまで光が灯されると、最後に一際大きな星が輝く。ツリーのシンボル、トップスターだ。
「とっても素敵なプレゼントありがとうなのだよ!」
 フィノシュトラが振り向くと、既に男はいなくなっていた。
「なんだか不思議なヒトだったですにゃん」
「うん、まるでサンタさんみたいだったのだよ!」
 ずいぶんと若いサンタだったけれど。
 二人は手を繋ぎ、しばらくの間ずっとツリーを眺めていた。
 天使と悪魔。
 故郷を後にした彼女達がヒトの世界で過ごす今は、とても温かく幸せに満ちている。
 いつかすべての世界がそうなるといい。
 そんな淡い願いを胸に抱く頭上で、導きの星はいつまでも輝くのだった。

 ※

 数日後。
 フィノシュトラはとあるニュースに釘付けになっていた。
 そこに映し出されていたのは、『世界を旅するテディベア』。行く先々で撮った旅の写真が、絵はがきと共に持ち主に届けられるのだそうだ。
 ぬいるぐみの持ち主は幼い少女で、身体が弱く旅行にいけないのだという。
『私の代わりにあの子が旅してくれているのよ』
 そう言って嬉しそうに笑う少女は、旅先から届く便りを心待ちにしている。でも、その送り主が誰なのかは知らないらしい。
「真珠さんにも知らせてあげるのだよ!」
 きっとあの時撮った写真も、彼女の元へ届けられるのだろう。そう思うと、自然と足取りも軽くなる。
 この後、裸にコートだけを身につけた真珠が現れることは、知る由もないのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/オシャレポイント】

【jb2752/フィノシュトラ/女/12/髪色に合わせたコート】
【jb9318/真珠・ホワイトオデット/女/15/白のボンボン】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、この度はご発注ありがとうございました。
お二人のかわいらしいお出かけ、きゃっきゃうふふと書かせていただきました。
作中に出てきたデンマークチーズケーキは好物であります(きり
アドリブもだいぶ荒ぶってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。

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エリュシオン
2014年12月22日

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