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『『迷い子に愛と帰郷の翼を』 』
ディアドラjb7283)&レイ・フェリウスjb3036)&ファラ・エルフィリアjb3154



 冬。
 種子島の気温は平均十二度と暖かい。とはいえ、吹く風は強めで、時折身を竦めるような寒さを感じることがある。今も音をたてて風が通り過ぎ、先を行くファラ・エルフィリア(jb3154)のスカートを豪快に翻していった。
「わりと風強いよねー」
 本人、まったく気付かずに安納芋のロールケーキを頬張っているが。
「……なぁ、注意した方がよくねーか?」
 ケーキをもぐもぐしてる少女の後ろ、しっかり見てしまった涼風和幸が、隣を歩くレイ・フェリウス(jb3036)の腕を突っついた。
「なにを?」
 対するレイはきょとんとした顔だ。
「な、さ、さっきからピラッピラッ見えてるだろ!?」
 和幸の声に、レイはやんわりと微笑む。怜悧な美貌に、落ち着いた物腰。どこか近寄りがたさすら感じさせる容貌だが、人見知りする傾向のある和幸が懐くほど温和な性格をしている。
「気にしない方がいいよ?」
 ただし若干世間と色々ズレているが。
「いや、気にするだろ!?」
 和幸は思わずつっこんだ。
 レイというこの青年が、前にいる少女の兄的立ち位置にいるのを和幸は知っていた。レイとファラも血の繋がらない義兄妹だという。同じく血の繋がらない兄弟がいる為、親近感を感じているのだが、どうも彼等の兄妹間は自分達のソレとは違うようだ。
「といっても、ファラ自身全く気にしないから……でもまぁ、君が気にするなら駄目だよね」
「俺が気にする以前に駄目だろ!? というか、妹なんだろ!?」
 和幸が小声で怒鳴りながらレイとファラを交互に指差す。黒髪に蒼い瞳のレイと異なり、ファラの髪は柔らかな金だ。淡い珊瑚色の唇も大きな新緑色の瞳も、実に魅力的だと言えるだろう。外見だけなら「天使のよう」と称されるのも頷ける。それほどに可憐な美少女だった。
「自室にエロ雑誌天井まで積み上げてる子を妹と言いたくないなぁ」
 中身は年季の入ったオッサンに近いが。
「ファッション誌とかじゃ無いのかよ!?」
「読むならいつでも貸すよー?」
「い、いいいらねぇよ!?」
 何故か服の下から御本を取り出すファラに、和幸は咄嗟に出かけた手を引っ込めながら叫んだ。思春期って色々大変。
「人間って大変だよね」
「悪魔なら大変じゃないのかよ!?」
「私はもともと色欲薄いから」
「色欲言うなよ!? そこまで酷く無ぇよ!?」
「若いって大変だよね」
 あくまで真面目で真摯な青年の声に、和幸は頭を抱えた。妹分は腐った意味で大変な相手だが、兄貴は別の意味で大変な相手な気がしてきた。
「そうだ、ファラ。時々パンツ見える」
「他に言い用、なんか無いか!?」
 ズバッと言ったレイに和幸が真っ赤。ファラはキリッとした顔でサムズアップ。
「おめでとう!」
「……ありがとう?」
「その反応おかしいな!? てゆかなんで俺見ながら『ありがとう?』って尋ねる!?」
「私は別にファラのパンツ見ても嬉しくは無いし」
「おおお俺だって別に嬉しいとか…思ってないからっ」
 もはや首元まで真っ赤な和幸に、レイはふんわりと微笑んだ。
「若いって大変だよね」
 和幸に勝ち目は無かった。


 三人が歩いているのは、鹿児島県に属する大隅諸島の一つ、種子島。和幸の故郷であり、最愛と言っても過言ではない義兄が居る島である。
 かねてより交流のあるディアドラ(jb7283)の呼びかけで、種子島旅行となったのだ。義兄の邪魔はすまいと、頑なに帰郷を我慢している和幸にとっては渡りに船。正直、心から感謝している。
 そのディアドラを前方に見つけて、ファラが大きく手を振った。柔らかな銀色の髪の美女が手を振り返す。
「合流地点より先にお会いできましたわね」
「ここが合流場所じゃなかったのかい?」
 神秘的な美貌の女性に、レイは不思議そうに小首を傾げる。和幸はファラを見た。「ディアさん、こっち!」と先頭きって歩いていたのはファラである。
「ディアさんのおっぱいの気配がしたからね!」
「……エロセンサーかよ……」
 おっぱいハンターの二つ名は伊達ではないようだ。
「さぁ、いろいろ遊びに行きましょう♪ クリスマスのお買い物もいいですわね。和幸様もお兄様にプレゼント、お渡ししたいでしょうし!」
「別に俺のことはいいよ! てゆかそこで二人してニコッとか笑うなよ意味深に!!」
 女性人二人にとても素敵な爽やか笑顔をされて、和幸は慌てて叫んだ。
「家族にプレゼント探すのって、素敵だよね」
 腐った思考に汚染されてないレイがのほほんと微笑んで言う。そんなレイにファラが「はいっはいっ」て元気よく手を挙げた。
「にーちゃもあたしにプレゼント用意してくれてもいいのよ?」
「私におまえが欲しそうなものを理解できるとは思えないけど」
「和幸ちゃんをお姫様抱っこしてくれたらむっちゃ喜ぶよ!」
「男の子をお姫様抱っこする趣味は無いからね?」
「じゃー、最近流行の冬も肌色出していこうゼ☆的な穴あきセーター着てくれたら言うことないかな!」
「私の方が言うこといっぱいありそうだよね」
 義理兄妹の会話に、和幸は(こいつも苦労してるんだなぁ)とレイを見た。
「じゃあ、にーちゃの欲しい物あげるから、にーちゃもあたしの欲しいのちょーだい!」
「ファラが落ち着いて腐った思考を封印――」
「チェンジで」
「――何をチェンジなの」
 ゼロコンマで拒否したファラにレイはとてもとても遺憾な顔。(こいつも苦労してるんだなぁ)と和幸は再度しみじみレイを見やった。
「そういや、ディアドラさんは何か買いたいもの無いのか?」
 企画してくれたディアドラに問うと、ディアドラは妖精のような微笑を浮かべて言う。
「最新式高画質撮りなデジカメと、大容量記憶媒体が欲しいでしょうか」
「……」
 何故だろう。嫌な予感しかしやがらない。
「あと、新しいアルバムも欲しいですわね。出来たら一万枚ぐらい収納できるものが」
 それはすでにダンボール箱レベルじゃなかろうか。
「……あえて突っ込まねーけど、どうせ撮るなら自分自身のとかにしろよ」
 色んな写真を撮りまくられたうえに、兄に進呈されてしまった経験を持つ和幸は慄いた。対象は自分じゃないとイイナ。でも兄と一緒の写真も大量にもらったから、プラマイゼロな気はする。
「私自身を撮っても、代わり映えしませんもの。でも、人の子はとても早く姿が変わってしまいますでしょう? 一瞬一瞬が儚いものですから、少しでも留めておきたいと思うのですわ」
 ディアドラは微笑む。慈母のような笑みだ。
「――で、そのココロは?」
「兄弟愛っていいですわね!」
「俺がターゲットになって無いか!?」
「大丈夫ですわ! 私の最愛のお方も八万枚ほど撮る予定ですから!」
 量。
「……あんたの最愛の人間も大変なんだろうなきっと……」
「いえ。その方は悪魔ですが」
「一瞬が儚くないな!?」
 叫ぶ和幸に、ファラをあしらっているレイが(大変そうだなぁ)という眼差しを向けていた。
「好きな方の一秒を永遠に手にしたいと思うのは恋する乙女の特権ですわ♪」
「他の恋する乙女が怒りそうな気もするんだけどな」
「和幸様もお兄様の写真、とても欲しい気持ちはおありでしょう?」
「その流れで言われると頷け無いよな!?」
 男の子って複雑ですのね、という顔をされて和幸は頭を抱えた。レイが再度しみじみと(大変そうだなぁ)という眼差し。
「せっかく種子島に来たんだし、種子島由来のお土産とかも買っていきたいよね。涼風さんのオススメは何かな」
 さらりと助け舟を出すレイに、感謝の眼差しをしつつ和幸は考えた。
「実用的なのだったら、種子鋏とかすごい良く切れるけど。刀と同じ製法で作ってるから」
「刀と同じ、ってすごいね」
「使えば使うほど切れ味が良くなるしな」
 へぇ、とレイは感心顔だが、鋏はプレゼントとしてどうなんだろう、と女性二人が神妙な顔をしている。
「あとは能野焼かな。素朴な風合いで、茶器や花器も綺麗なんだ」
 女性人二人が、パンフレットに描かれた能野焼をじっくりと見る。
 和幸を見る。
 パンフレットを見る。
「あのね、和幸ちゃん。ちょこっと尋ねてもいっかな?」
 ファラはとてもとても神妙な顔で尋ねた。
「和幸ちゃん、実年齢おじーちゃんだったりしないよね?」
「趣味渋くて悪かったな!?」





 結局、お土産はロケット饅頭になった。
 先に申し込んでいたことにより案内してもらった宇宙センターを後にした一同の中、兄と会えた和幸がほくほく顔。ファラとディアドラが顔ツヤッツヤ。様々なものを察したらしいレイがとても遠い眼差しで後に続く。
「宇宙センターの近くに浜辺があるんだね」
「ああ。夏になったら泳ぎに来るといい。海も綺麗だろ?」
「本当だね」
 嬉しそうに言う和幸にレイは微笑った。海岸は驚く程奥行きのある砂浜を有し、その雄大さに圧倒される程だった。
「綺麗でいいな。こういう、思いっきり広々とした景色って、学園ではなかなか見ないし」
「ああ。海開きとかになるとさ、どうしてもここに来たくなるんだよな。砂熱くて海遠くて、小さい頃連れて来てもらった時は、すごい足が辛かったんだけどさ」
 孤児院に引き取られて後、訪れたことのある浜辺。小さな足には、波打ち際はあまりにも遠かった。
 それでも夏が来れば思い出すのは、種子島の浜辺だ。
「大事な場所なんだね」
「まぁな」
「だったら、来れる時には度々帰ったらいいと思うよ」
 楽しげに波打ち際へと走る女性陣を見守りながら、レイはそっと声を落とした。和幸は思わず相手を見上げる。
「二人も気にしてたよ。会いたいと、そう思ったら会いに行けばいいのに、と」
「……」
 和幸は視線を遠くへと向ける。あっという間に波打ち際まで走り、寒さなど感じていないように波の近くで遊んでいる二人を。
 アウルが発現し、学園に入学することになって以降、一方的な喧嘩別れのようになって、ずっと義兄と会っていなかった。頑なになっていた自分の背をそっと押してくれたのは、誰あろう、ディアドラだ。
「会わない理由を作るより、会う理由を考えるほうがきっと楽しいんじゃないかな」
 きっと見透かされているのだろう。兄に迷惑しかかけないだろうからと、必死に勉強に打ち込んでいる自分の『逃げ』を。気恥ずかしくて写真を撮ることも、欲しいと言うことも言えずに自分のことを。
「ほんのちょっとずつだけでも、動き出してみるといいよ。嫌でもほら、引っ張り出そうとするヒトもいるし」
 波打ち際の二人を指さして、レイはニコッと笑った。和幸も笑う。
「……うん。ありがとな。それに、別に……嫌じゃないし」
「それはなにより」
「なんかさ、世話ばっかりやいてもらって、俺、どうやって礼をすればいいのかな、って。なんか申し訳なくて」
「二人とも、君と一緒にいるのを全力で楽しんでると思うけどね」
「うん……というか、ずっと気になってて、さ」
 嬉しいような恥ずかしいような。複雑な百面相をする和幸に、レイは笑った。
「それはきっと、考えても意味のないことだよ」
「そ、そうなのか?」
「だって、そうじゃない?」
 笑うレイの声は、弟を見守る兄のように温かい。
「誰かを支えたい、助けたいって思うのに、敢えて理由をつける必要は無いんじゃないかな。天使と悪魔と人間と……普通なら、こうやって一緒にいることも無かったかもしれない私達だけれど」
 もしかしたら、殺し合いをしていたかもしれない種族の者達だけれど。
「この世界で出会って、縁があった。ただそれだけで、とても奇跡なんだから」
 和幸はレイを見る。同じ年代に見えるけれど、自分よりも遥かに長い年月を生きてきた悪魔を。
 出会えたことが奇跡。
 こうして、一緒に居られることも。
「君とお兄さんも、そうじゃないかな」
「……うん」
 素直に頷いて、和幸はレイと並んで砂浜を見る。背後を振り返れば、宇宙センター。大切な兄のいる場所。会いたければ会いに行けばいいのだ。肩肘張らずに。
「……でも、やっぱり会いに行く回数はまだ増やせ無いかな。仕事の邪魔したくないし」
「意地っ張りだね」
「だって嫌だろ。大事な仕事してんのにさ。ほどほどにやるよ。俺、あんまり器用じゃないし」
「うん。自分らしいペースが一番いいよね」
「ん。……あ、あんたらもさ、暇な時あったら、その……遊びに来いよ種子島に」
「うん」
 にっこりと微笑まれて、和幸はパッと顔を輝かせた。勉学に打ち込みすぎて、実は友達が少ない和幸である。
 と、チチーッ、という音がして二人は思わずそちらを向いた。波打ち際にいたはずの二人がカメラを構えていた。
「いいもん手に入れたぜェ」
「ちょっとまてぇええええ!」
「あらあらあらあら」
「というか、なんでこっち撮ってるの?」
 全開笑顔のファラを和幸が追いかけ、ふふふ笑いのディアドラにレイが首を傾げる。彼女達の脳内変換でどういう妄想が繰り広げられるのか、純粋培養なレイには思い至れるはずもなく。
「和幸さん、ちょっと元気になられたみたいで嬉しいですわね」
 にこにこ笑うディアドラに、そうだね、と笑って頷いた。
 会いたいのに会いに行かないときには、ちょっとだけ手を差し伸べればいい。望んでくれるのなら、きっとまた皆で遊びに来ることも出来るだろう。彼の兄弟孝行をほんの少しだけ手伝いながら。
「元気なのが一番だよね」
 風が吹く。またおいでよ、と、そう告げるように。
 雄大な自然は、人の子や天魔の小さな悩みも軽く吹き飛ばすようにその大きな腕で自分達を抱きしめてくれる。
 見やる視線の先、強風に翻ったファラのスカートに、和幸が真っ赤になって逃げ出すのが見えた。
「……若いって大変だねぇ」
 レイがしみじみと呟く横で、ディアドラがたまらず噴出した。

 

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 属性】

【jb7283/ディアドラ/女/19/貴腐人】
【jb3036/レイ・フェリウス/男/17/天然】
【jb3154/ファラ・エルフィリア/女/17/腐女子】
【NPC/涼風和幸/男/16/不憫】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご利用ありがとうございました。執筆担当の九三壱八です。
いつも引っ込み思案な子供を引っ張り出してくださってありがとうございます。素直になれないNPCにかわり、深く御礼申し上げます。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
snowCパーティノベル -
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エリュシオン
2014年12月24日

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