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『冬の夜の御伽話 』
ロザーリア・アレッサンドリka0996)&ウェンディ・フローレンスka3505

 どこの世界にだってクリスマスはやってくる。
 この紅の世界、クリムゾンウェストにも、当然ながら。
 リアルブルーのそれとはもちろん少しずつ違うけれど、それでも冬のこの日をめでたいと思うのは、きっと同じなのだ。


 そんなクリムゾンウェストのどこかで、ロザーリア・アレッサンドリは、今日も今日とて彼女のファンを名乗るお嬢様、ウェンディ・フローレンスの来訪を受けていた。
 ……まあ、ファンとして慕ってくれる人がいると言うことは、ロザーリアとしては嫌な気持ちはしないのだけれども、何に対しても熱心な彼女には正直頭の下がる思いである。ウェンディがハンターになるきっかけがロザーリアにもあると知ったら、ロザーリアは喜びつつも照れてしまうのではなかろうか。
 まあそんな事情はともかく、ロザーリアの家へ訪れたウェンディはずいぶんと大きな荷物を持ってきていた。
「ロザリー、今日はケーキを焼いてきましたの。それに、この時期ならこれでしょう?」
 無邪気に微笑んで、ウェンディは大きなバスケットの中身を見せる。そこにはまるまると大きなローストチキンが鎮座ましましていた。いっしょに食べるつもりで、家から持ってきたらしい。
 ウェンディはロザーリアのファンであると言っても、実質的にはお友達関係に近い。ウェンディはこうやって時折ロザーリアの元に差し入れを持って遊びに来ては、おしゃべりの相手になってくれる。かつて経験した花嫁修業の賜物もあって家事一般が得意なウェンディ、その料理をもらえるのは確かにロザーリアにとってみればずいぶんとありがたい話だった。
「ウェンディ、よく来てくれたね。なるほど、これは美味しそうだ」
 ウェンディの料理はロザーリアも大好きだ。そんな彼女が手作りしたであろう焼きたてほやほやのローストチキンと、生クリームをたっぷり使ったケーキを受け取りながら、ロザーリアは彼女を家へと招き入れる。これは、ロザーリアのファンを自称するウェンディにはうれしい以外のなにものでもない申し出で、早速ウェンディも家へ上がってふたりしてディナーの準備をはじめた。
 ウェンディもいままで何度かお邪魔したことがあるので、食事に必要なものくらいはありかを把握している。ローストチキンに焼きたてのパン、そしてアルコール控えめのロゼワインを準備して、早速二人でディナーとしゃれ込む。
 ウェンディの持ち込んできた料理はディナー一式で、これを食べるだけでもかなり腹一杯になってしまうものだが、それでも女性にとっては甘いものは別腹。食後に切り分けられたクリームたっぷりだが甘さは控えめのケーキは、予想以上にするすると胃に入っていく。
「うん、これもやっぱり美味しいね」
「ふふ、ありがとうございます」
 貴族の令嬢、ないしは男装をすれば男装の麗人とも見まごうほどの洒落者エルフのロザーリアと、おっとりと可愛らしい雰囲気の、女性的なウェンディ。何も知らぬものが見れば、へたをすると男女のカップルに間違えられるかも知れないが、それもまた彼女たちにとってみればちょっとしたスリル――に繋がるものなのかも知れなかった。

「そういえばね」
 ティーカップをことりと置き、人心地ついたところでロザーリアが口を開く。
「何かありましたの?」
 ウェンディは、目を一つ瞬きして、ロザーリアを見つめる。
「いや、ふと思い出してね」
 目の縁がほんのり赤いロザーリア。ディナーの時に含んだアルコールが、とろとろと心地よいのだろう。舌の滑りも、普段よりいくらか良い感じである。
「この間ね、不思議なご老人に会ってね」
 ロザーリアはそういうと、そっと目を細める。
「そのご老人はずいぶんと大きな荷物を抱えていてね。真っ白い髭を蓄えた、なかなか恰幅の良いご老人だったんだが、荷物が大きくてずいぶんと難儀している様子だった」
「まあ。では、ロザリーは、その方を助けておあげに?」
 ウェンディがなんだか楽しそうに尋ねる。すると、ロザーリアもうんうんと頷いて返した。察するに、ウェンディは天性の聞き役なのだろう。
「ああ、うん。荷物もさることながら、相方にはぐれてしまったと言うことでね……相方を捜すお手伝いもしてね」
 そこで一旦、ロザーリアが言葉を句切る。
「でも、ご老人は何とか自分で見つけることができたらしくてね、あたしにありがとうを何度も言いながら去って行ったよ」
「それは良かったですわ。……でも、そのご老人、なんだか引っかかりますわね」
 そんなエピソード、聞いたことがあるような。ウェンディは小さく首をひねる。
「うーん、有名な人なのかも知れないね。ほら、何しろあたしは元々エルフで世間様のことにはどうしても疎いから」
「そのご老人はどんな格好をなさっていたんですの?」
「うん、それがね、ずいぶんと目立つ格好をしていたんだよ。赤い外套に揃いのズボンをはいていてね。そのご老人、これから子どもたちに会いに行くんだと言っていたけれど、……もしかして有名な人なのかい?」
 そこまで聞いて、ウェンディは思わず吹き出してしまった。
「そっ……それ、クリスマスのサンタクロースさんですわ。ロザリーはご存じありません?」
「え、クリスマスって……ええっ!?」
 クリスマスは、詳細は知らないがどういう日であるかくらいはロザーリアも知っているつもりだ。こうやってチキンやターキーを食し、ケーキを食べ、子どもたちはプレゼントをもらう――そういう日だ。
 しかし、ロザーリアはどんな姿のどんな人物が子どもにプレゼントを配るのかまでは知らなかった――知っていれば対応が違ったのかというと、そういうわけでもないだろうが。ウェンディはロザーリアに、サンタクロースという存在について丁寧に教える。
「それに、きっとサンタの相方というのならばそれはきっとそりをひくトナカイさんですわね。ロザリー、ちっとも気づかなかったんですの?」
「気づかない……というか、まさかそんな人が堂々と歩き回っているなんて知らなかったんだよ」
 ウェンディに指摘されてあたふたするロザーリア。だが、ふっと何か思い出したかのように、コートのポケットを探った。
「どうしたんですの?」
「いや……ちょっと思い出したんだけど、そのご老人に小さな箱をもらっていてね」
 ロザーリアがそう言いながら、小さな紙包みを取り出す。封を開けてみると、

『メリークリスマス。
 これを手にしてくれた優しいエルフの君に、幸いが訪れますよう』

 そう書いてあるカードと、小さな星の形をあしらったアクセサリーが入っていた。
「本当に、サンタクロースだったんだね……」
 サンタという存在はよく知らないものの、こんなサプライズはとても嬉しくて。早速プレゼントをつけてみると、なんだかうれしい気分になった。サンタクロースは、その存在を知らなくても、こうやってさりげなく贈り物をくれる――きっとそんな存在なのだ。
「なんだかこういうことがあると、来年も良い年になりそうだね」
 ロザーリアが言うと、ウェンディも微笑む。
「ええ。ロザリーにも、わたくしにも、きっと素敵な年になりますわ。楽しみですわね」
 そう言い合いながら、微笑む二人。
 窓の外では、ちらちらと白いものが舞い始めていた――。

 Merry Christmas,and a Happy New Year!



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka0996 / ロザーリア・アレッサンドリ / 女 / 21 / 疾影士】
【 ka3505 / ウェンディ・フローレンス / 女 / 17 / 聖導士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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今回は発注有り難うございました。
クリスマスからは少し遅れてしまいましたが、如何だったでしょうか。
クリムゾンウェストのクリスマスは現実世界とは少しばかり違うようですが、それでもきっとプレゼントとご馳走というスタイルは変わらないものなのではないかと思います。
良い新年をお迎えくださいますよう、祈っております。

では今回は重ねて有り難うございました。
snowCパーティノベル -
四月朔日さくら クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年01月05日

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