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『友に幸運を 』
アルマ・ムリフェイン(ib3629)&ケイウス=アルカーム(ib7387)

 天儀でも馴染み深くなった風習――クリスマス。
 ジルベリアの聖人が生まれた日で、それを祝う祭りだと言うが、実際の所はクリスマスを名目に皆で騒いだり宴を開いたりするのが天儀流だ。
 そして此処、神楽の都でも負けずにクリスマスの準備が進んでいる。その証拠にクリスマスを明日に控え、ツリーの飾りやパーティー用の料理などが大量に店先に並べられていた。
「鳥の丸焼きに、ケーキ……どれも美味しそうだね♪」
 ふふ、と笑みを零すアルマ・ムリフェイン(ib3629)は、浪志組の羽織りを纏って自主警邏の最中だ。
 本当は非番なのだけど、こうした催しの前だからこそ警戒は怠らない方が良い。羽目を外して暴れる人が出ないとも限らないから。
(そう言えば、恭一郎さんも今日は非番って言ってたような……)
 直属ではないものの、上司である天元 恭一郎(iz0229)の顔を思い出して首を傾げる。あまり催し事を楽しむ性質では無さそうだが、甘い物は好きだった気がする。
「ケーキ買って行ったら喜ぶかなぁ?」
 カクリ。そう首を傾げた時だ。突然、何かが覆い被さって来た。
「だ、誰――!?」
 そう声を上げて肩に乗る腕を振り払おうとした。しかし顔を動かした瞬間、アルマの目が瞬かれる。
「ケイ、パパ?」
 何してるの? 言外にそう伝えながら耳を動かす。そしてその感触が擽ったかったのだろう。
 アルマに圧し掛かっていたケイウス=アルカーム(ib7387)の顔が動いた。
「アルマぁ〜! このままだと家に帰れないよ〜」
「え?」
 半泣きになりながら「助けて」と懇願する彼にアルマは「?」を飛ばす。が、直ぐに何が「助けて」なのか理解した。
「もしかして……プレゼント選び?」
 手に握り締められた財布と、ケイウスの背に見える店。其処の店主が困ったように此方を見ている。
(そっか……ケイちゃん、パパになったんだよね……それじゃあ、プレゼントはあの子の……)
 大アヤカシに攫われて育てられた娘を養女にしたと聞いていたが、きちんとパパをしているらしい。
 この寒い中、必死に娘のプレゼントを探していたのだろう。首に回された腕は冷たく、彼の体からも冷えた空気が漂ってくる。
「ケイパパ、頑張ってるんだね♪」
 クスリと笑んで顔を覗き込む。その視線にようやく体を放すと、ケイウスは長い息を吐いて情けなく眉尻を下げた。
「頑張ってる、って言うか……喜んで欲しくてさ」
 人として歩み始めた彼女に、楽しいことや嬉しいことが沢山あるんだという事を教えたくて、如何にかして喜ぶ方法を探していた。
 そう若干照れ気味に語る彼に笑みを零す。と、その直後、ケイウスはアルマに向き直ると、彼の顔をじっと見た後、パンッと両の手を合わせた。
「頼む、アルマ! 女の子へのプレゼントなんて何を選んだら良いのかわからないんだ! 一緒に探してくれっ!!」
 目の前で合せられた手と下げられる頭にアルマの目がパチクリ動く。
「えっ、と……僕で良いの?」
 アルマが迷うのも無理はない。
 普通こういったことは女性に頼むものだ。にも拘らず、ケイウスは同性であるアルマを頼った。
 ケイウスらしいと言えばらしいのだが、本当に良いのだろうか。思わず首を傾げた彼にケイウスは言う。
「仕事中なんだろうけど手を貸してくれないか? もし怒られたら一緒に謝るし……あ、恭一郎に内緒にしておくから!」
 頼む!
 こうも必死に頭を下げられと断る訳にもいかない。
「仕方ないなぁ。ケイパパがそこまで言うなら断ったら可哀想だよね♪」
 ニッと笑って拝む顔を覗き込む。
 これにケイウスの顔に明らかな安堵が浮かんだのは言うまでもない。
「恩に着るよ、アルマっ!!」
 彼はそう言うとアルマをギュッと抱きしめて飛び上がった。

   ***

 神楽の都で一番の賑わいを見せる市場。その一角でクマのぬいぐるみを睨めっこしているのはケイウスだ。
 これで何軒目になるだろうか。
 店の前で足を止めては見、そして次の店に向かっては見、と言うのが繰り返されている。
「義娘さんの雰囲気や服装とか……何かわかるものある?」
「え? あ、いや……大人しい子かな。我が侭とか言わないで、我慢強い子だと思う」
 そう言いながらクマから顔を放す。
 いつだったか、そんな我慢強い子が欲しいと言っていた物があった。
 確か一緒に行った祭りで、彼女の姉妹が手に入れた人形を見て言っていたのだ。勿論、欲しいと言葉にしたわけではない。それでもあの時の彼女の言葉や表情、そうしたものを見ればわかる。
「素直に欲しいって言ってくれれば気合い入れて探すんだけどね」
 そう言って小さく笑って肩を竦める。
 そして次の店に行こうとした所で、あるブローチが目に飛び込んで来た。
「これ可愛いかも?」
 「かも」とはこれ如何に。
 思わず目を向けた瞬間、アルマの眉が寄った。
「ケイパパ、その趣味は如何かと思う……」
「え、そうかな? 可愛いと思うけど」
 ケイウスが手に取ったのはやたらとキラキラしたブローチだ。
 確かに可愛いかもしれないが、今聞いた印象には合わない気がする。そう云ったブローチは派手な印象を与える子や明るい子に似合うだろう。
 アルマは僅かに苦笑すると、陳列品を眺めるように目を動かした。そして幾つかの装飾品を手に取ってケイウスの前に並べてゆく。
 その種類は多種多様で、ブローチに髪飾り、ペンダントや指輪、イヤリングなども含まれている。
「予算はさっき聞いたから、その中から選んでみたんだけど……如何かな?」
 アルマが選んだ装飾品はどれも控えめな印象を受ける可愛らしい物ばかり。ケイウスはその中の1つ、十字架のブローチに目を向けた。
「これ良いな……」
 手にしてみてはじめて分かったが、十字架は金でも銀でもない、ちょうどその間を取ったような色をしていた。
 細部に施された細工はうるさくなく、決して自分からは主張してこない。そして中央に嵌められた緑の小さな石も細工同様に静かに其処に納まっている印象を受ける。
 決して自分からは主張して来ないが、此処に存在することを主張するブローチ。そして2色の色を持つそれはまるで義娘の様だと思ってしまう。
「よし決めた! おじさん、これ包んで!」
 笑顔で包装を頼むケイウスに、アルマの頬が緩む。
(ケイちゃん、本当にパパになったんだね)
 ふふ、と笑みを零してケイウスの姿を見る。
 いつまでも同じと思っていたが、お互いに成長はしているらしい。そして今後も成長してゆくに違いない。
「僕も頑張らないとな」
 アルマはそう零すと、義娘の為に包みを受け取る友の姿を見詰めた。

   ***

 昼間は賑やかだった広場も、夕暮れにもなれば人通りが少なくなる。そんな中、ケイウスとアルマはキャンドルが灯るツリーの前で足を止めた。
「へへ、喜んでくれるかな♪」
 頬を緩めて綺麗な包みに納まる贈り物を見詰める。その表情はとても幸せそうで、見ている方も嬉しくなってくる。
「きっと喜んでくれるよ」
 頑張って。そう言葉を添えて微笑む。
 その様子に笑みを零し、ケイウスは懐から別の包みを取り出した。
「はい、アルマ」
「え?」
「いつもありがとう。メリークリスマス、だよ!」
 包みを受け取る様に促す仕草に手を伸ばす。
「ありがとう。でも良いの? 僕何も用意してない……」
 言葉と同時に下がる耳。それを目にしたケイウスが言う。
「アルマにはいつもお世話になってるからさ。ほら、開けてみなよ!」
「うん」
 躊躇いがちに包みを開く。そうして見えた羽ペンにアルマの目が見開かれた。
「それ見た時、アルマのイメージに近いなって思ったんだ。使ってくれれば嬉しいかな」
 へへ、と得意気に笑う彼に、顔が綻ぶ。
 羽ペンは白の羽根で出来ており、軸には緑の石が付いている。この石は先程義娘に選んだのと同じ石かもしれない。
「ありがとう、ケイパパ。あ、そうだ! ケイパパ、ちょっとこっちに来て」
 おいでおいでと手招く姿にケイウスの首が傾げられる。そうしてアルマの前に頭を差出すと、彼は密かに笑って頭を撫でて来た。
「な、何? どうしたの?」
「んー、なんとなく?」
 ふふ、と笑う声に目が上がる。
(何で撫でられてるかわからないけど……でも……アルマが楽しいならそれでいいや)
 楽しそうに何度も頭を往復する手に笑みが深まる。
 大事な義娘に、大事な友。その双方に出会えたことは、ケイウスにとって大きな幸運だった。
 天儀に来なければ、開拓者にならなければ、決して出会う事の無かった人達。そしてそう思う気持ちはアルマも一緒だ。
「ケイパパ、明日は頑張ってね」
 日々成長してゆく友に笑顔を向け、アルマは少し猫っ毛な彼の頭を撫で続けた。

―――END...


登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ib3629 / アルマ・ムリフェイン / 男 / 16 / 獣人 / 吟遊詩人 】
【 ib7387 / ケイウス=アルカーム / 男 / 23 / 人間 / 吟遊詩人 】

【 iz0229 /天元 恭一郎 / 男 / 28 / 人間 / 志士 】ちょい役


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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snowCパーティノベル -
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舵天照 -DTS-
2015年01月05日

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