▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『銀色の誓い 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

 街がイルミネーションに包まれた頃、天谷悠里 の所に一通の手紙が届いた。差出人は書かれていない。可愛らしい白の封筒に茶色のシーリングスタンプで封されたそれには切手すら貼っていなかった。悠里は開けていいものか悩んだ末、フィアンセのシルヴィア・エインズワース に相談することにした。
「この手紙なんですが、開けてもいいんでしょうか?」
「まあ、このままにしておくわけにもいかないし開けてみましょう?厚さから見て爆発物は入っていなさそうだし、この手紙自体に危険はないと思うわ」
 2人で封を開けると少し甘い香りが香った。手紙の主は、2月に行った魔法のお菓子屋さんだった。
『クリスマスイブにお店を開けることにしたの。着飾ってクリスマスケーキも乙なものでしょう?もしよかったらいらっしゃいな』
 簡単な内容ではあったが、2人を喜ばせるには十分だった。2人でクリスマスイブの予定を立てていたところだったからだ。
「このお誘いは断る理由がないわね」
「はい!」

 クリスマスイブは不思議な夜だった。粉雪が舞う中、空には月が出ていた。月明かりを反射した雪は銀の光が降り注ぐようだった。
「綺麗ですね」
「そうね、とても綺麗だわ」
 2人は空に、世界に、祝福されている様に、銀の光が降り注ぐ中、店への道を手を繋いで歩いて行った。その左手薬指にはバレンタインに店でもらった指輪が輝いていた。

「いらっしゃい。お誘いを受けてくれて嬉しいわ」
 黒い少女は嬉しそうに微笑んで2人を中へと迎え入れた。白い少女も一緒だ。
「今日はクリスマスイブ。特別な変身をさせてあげるわ」
 黒い少女はそうウインクすると、悠里をフィッティングルームへ誘った。シルヴィアは白い少女に誘われ、違う部屋へと入って行く。
「特別な変身?」
 フィッテングルームへの短い道中、首を傾げる悠里に黒い少女は
「すぐにわかるわ。さあ、入って」
 そう言ってフィッテングルームの扉を開けた。

 変身した2人が再開したのはある個室の前。お互いに変身した相手の姿に一瞬で心を奪われた。いや、正確には再び心を奪われた。というのが正確だろう。
 悠里は白薔薇をモチーフにした衣装は、白薔薇をモチーフにしたプリンセスラインのロングドレス。そのドレスの白は雪を。胸元や腰に飾られた城に銀糸の織り込まれた素材のバラはその雪に輝く薔薇園の薔薇を連想させた。シルヴィアと再会して初めて気がついたが、メイクと変身の効果だろう。身長も伸びて、大人ぽくなった彼女はまさに清楚な姫君と言った姿だった。ヴェールとブーケがあれば結婚式にも望めそうだ。
 一方のシルヴィアはいつもおろしている髪を後ろでゆるく結び、白に少し金糸の入ったロングタキシード。黒いネクタイと中の落ち着いた金のベストがそう見せるのか、変身の効果か女性的な美しさと共に男性的な凛々しさも持ち合わせていた。まさにその姿は新郎かナイトだった。
「ここは姫とナイトだけが入れる部屋。姫とナイトの誓いを交わした者だけがね」
 黒い少女がそう言うとまるで、心得ていたかのように、シルヴィアが悠里の前に跪き、
「姫、最愛のユウリ姫。私は今宵、貴方だけのナイトに」
 そう言って、手の甲に口付けた。悠里も
「ええ。今宵と言わず、私はずっと貴方だけの姫ですわ。シルヴィア」
 そう言って少し頬を赤らめながらも額に口付けると微笑んだ。すると、誰も触れていないはずの扉が開き、奥、バラ園の見える窓際に2人がけのテーブルが1つだけあるのが見えた。
「誓いは認められたようね。中へどうぞ」
 2人は腕を絡め、悠里がシルヴィアに体を預け甘やかな視線を絡めながら席へと着席した。
 赤から白へのグラデーションになっている炭酸飲料が入ったかさの高いグラスにが白い少女によって運ばれてくる。
「いちごのシャンパンでございます」
 恭しく頭を下げ白い少女が退席すると、部屋には2人だけになった。
「乾杯いたしましょう?この素敵な夜に」
「ええ。この素敵な夜に乾杯」
 2人は甘い視線を絡ませたまま、グラスを軽く当て、一口口を付ける。
「まるで恋の味ですわね」
 悠里がそう言って微笑む。
「そうですね。甘く少しだけある酸っぱさはまさに恋の味ですね」
 シルヴィアがそう返した。
 2人は暫く、銀の光が降る庭を見ていた。銀の光はバラへ降り積もり、色とりどりのバラを銀に染めていく。
 悠里はふと、シルヴィアに視線を投げかける。このバラ達は私のようだわと思いながら。シルヴィアの色に染められた私と同じ。でも、嫌なんて少し思わない。むしろ幸せだとこの瞬間の喜びと幸せを噛み締めていた。
 シルヴィアは投げられた視線に愛おしそうに微笑む。目の前の女性、悠里姫のないとになれて幸せだと感じていた。しかも先ほど姫は『ずっと』と言ってくれた。それならその手は離さない。そう誓いを新たにした時、黒い少女がケーキを持ってきた。
「ティラミスよ。どうぞ召し上がれ」
 それぞれの前に置かれたのはハートの形をしたティラミスの周りをベリーやチョコで飾った皿からして綺麗なひと皿だった。
「食べるのがもったいないくらいですわね」
 ほぅとその綺麗さに息をつく悠里にシルヴィアが微笑む。
「これは私達に食べられる為にここにあるのです。食べて差し上げませんとかわいそうかと」
「そうね。シルヴィアの言うとおりだわ」
 そう言って一口。最初はスポンジに染み込んだコーヒーが主張して甘くないのだが、後味が甘かった。そしてシャンパンを一口。すると、口の中に爽やかな甘さだけが残っているのに、口の中はさっぱりとした。
 シルヴィアもそれを感じたらしく
「よく考えられていますね」
 2人は微笑みながら、会話を楽しみながらケーキを食べた。

「お楽しみのところごめんなさい。そろそろ店じまいなの」
 黒の少女がそう言って入ってきた。白の少女は小さな枕のようなものを持っていた。2人が外を見ると、時間が過ぎるのは早いもので雪はやみ、空が白んできていた。
「指輪つけてくれているのね。じゃあ、私たちからクリスマスプレゼントよ。その指輪をこの枕の上に置いてくれない?」
 2人は首を傾げたが言われるままリングを置いた。すると黒い少女がそれぞれの指輪の上でパチンと指を鳴らした。その時金色の光がリングに降り注いだように見えたのは気のせいだろうか。次の瞬間指輪が輝き、お互いを象徴するような色の石がついた婚約指輪に姿を変えた。
「姫、私はいつか本物の挙式をし、永遠の私の姫にすると誓います」
 そう言って、シルヴィアは悠里の指に婚約指輪をはめた。
「シルヴィア、私お同じことを考えていたわ。いつか本当に結婚式をして私だけのないとになって頂きたいわ。だから、誓いの口づけを」
 悠里はシルヴィアの指に指輪を通し、瞳を閉じた。
 シルヴィアは悠里の腰に手を回すと抱き寄せ熱く長い口づけをした。それは、彼女達の思いの強さを表現するかのようだった。

 悠里とシルヴィアが瞳を開くと、そこには何もなかった。彼女たちも来た時の格好で、朝日が金色の光を降り注いでいるだけだった。
「夢……だったんでしょうか?」
 そうきょとんとする悠里にシルヴィアがもう一度口付けた。
 その味は、苺のシャンパンとティラミスの味がかすかにした。そして、2人の指には婚約指輪が光っていた。
「夢じゃないわ。ユウリ。きっと奇跡だったのよ」
 シルヴィアの言葉に悠里は頷き、2人は微笑んだ。
 


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja0115 /天谷悠里 /女性/18/清楚な姫君】

【ja4157/シルヴィア・エインズワース/女性/23/男装のナイト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 お久しぶりです。2度目のご注文ありがとうございます。前回同様、素敵な発注文でお2人の幸せを祈りながら書かせていただきました。お気に召すものができたなら幸いです。
 お2人の前途が祝福されたものであるようにお祈りしております。今回はありがとうございました。
snowCパーティノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年01月09日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.