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『雪見鍋 〜客人も交えて寒さを乗り越える一日〜 』
遼 武遠(ic1210)&二香(ib9792)&ジャミール・ライル(ic0451)&衛 杏琳(ic1174)&樂 道花(ic1182)&五黄(ic1183)&浪 鶴杜(ic1184)

●冬の寒さとあたたかい鍋

 その日の洛春邸には、いつもと違う音が混じっていた。
「ほんっと、寒いよねー」
 白い息をほうと吐きながらジャミール・ライル(ic0451)が嘆く。暖かそうな布を用いた服を着てはいるが、アル=カマル育ちの彼にはまだ寒いらしかった。とはいえここは屋内なので、先ほどの言葉も完全な本心ではないのだけれど。
 何度も訪れているし、大概の者と面識がある。人が多いことは勿論だけれど、ジャミールがこの屋敷を気に入っている理由は他にあった。
(もふもふがいっぱいだよねー♪)
 神威人や修羅が多いのだ。特に神威人の者達が持つ耳や尻尾はジャミールがこの屋敷に来る理由の大部分を占めていた。
「あっ遼ぱぱちゃん発見!」
 中でも特にふわっふわの尻尾を持ったジャミールの大好きな存在(と書いてもふもふと読む)、遼 武遠(ic1210)を見つけ駆け寄る。気分が変わると気温の感じ方も変わるもので、それまで無意識にこすり合わせていた手をぱっと広げた。勢いをつけて尻尾に抱き付こうとする。
「ご遠慮願えますかな、ライル殿」
 あっさり避けられてしまった。これまでに何度もやっているから武遠も警戒していたらしい。ジャミールが転ばないようきちんと肩を支えて止めた上で、丁寧に駄目出しをされてしまった。
「えーざんねーん。遼ぱぱちゃんのもふもふで暖を取ろうと思ったのにー」
 その言い訳は建前に近い。確かに寒いと思っているけれど耐えられないわけではない。ただふわふわもこもこの尻尾を堪能したいというのがジャミールの本音だ。
「‥‥そうですか」
 そこは気づかず真面目に思案する武遠。実直さもいいよなあとジャミールが思っていることには気づかない。
「ライル殿、夕食も食べていかれますか」
「なになに、作ってくれるの?」
 この時期は日が傾くのが早い。窓の向こうに見える空も赤らんできているから支度を始める頃合いだろう。
「鍋にしようと思います」
 それで暖まっていかれてはどうですかと言われ、ジャミールは笑顔で頷いた。

 鍋と言っても様々あるが、洛春邸で暮らす者達は泰国の出身者が大半を占める。そのため食生活も泰国の物が大半を占める。
「ライル殿の分は、少し控えた方がいいかもしれません」
「そういたしましょうか‥‥一度様子を見て、後から足すという事も出来ますね」
 武遠の言葉に頷いた二香(ib9792)が手に持っていたおたまで作りかけのスープを鍋に注いでいく。ジャミールの分だけ取り分けておくのだ。
「こうしておけば、間違う事もありませんわ」
 鍋に使うスープは二種類、一方は鶏の旨味を凝縮した白湯で、もう一方は香辛料たっぷりの紅湯だ。配慮しなければならないのは後者の紅湯の方。同胞の中にも刺激的な味が苦手だと言う者は居るが、彼らなら自分で白湯の方だけを食べるだろう。しかしライルは客人で、紅湯を知らない可能性がある。それに香辛料そのものに慣れていなさそうだ。より体を温める効果があるのは紅湯の方だから、出来ればそちらも食べて貰いたいと思う。ならば先回りをして専用のスープを用意してしまおうというのが両者一致の見解だった。
 大鍋に仕込んだスープに、追加の香辛料をくわえて仕上げなおす。スープが出来てしまえば後はそう迷う事もないはずだ。
(お鍋だけでは味気ないですね)
 武遠が中華鍋を振るう横で鍋の具材を切りながら、他に何を作ろうかと考えを巡らせる二香。最近、餡を買い込んだ事を思いだしていた。

●お酒と約束と忍耐と

 厨房での支度は和やかに進められていたが、それを待っているはずの広間では既に宴会が始まっていた。
「今夜は皆で鍋にするぞ、宴会だ!」
 衛 杏琳(ic1174)の号令を聞きつけた五黄(ic1183)が、待ってましたとばかりに酒瓶をあけたからだ。場所は勿論広間の中心。さあ寄って来いとばかりに、大きな杯になみなみと注ぐ。
「おっ鍋ーおっ酒ー♪ あたしもちょうだいー♪」
「鍋はまだだが肴ならあるぜ」
 一度干した貝柱のひもを甘めに煮たそれは定番と言ってもいいだろう。魚介の類は猫科の神威人にしてみればとくにたまらない逸品だ。伸びてきた手に新たな杯を渡しながら、自分の口にぽいと放る。
「殿、皆も何してんだ?」
「おう、道花も飲むだろ?」
 物音に耳をピクリとふるわせる。広間の近くを通りかかった顔に視線を向ければ樂 道花(ic1182)だ。騒ぎ始めた様子に誘われて部屋から出てきたらしい。
「酒!? 飲‥‥ま、ない‥‥」
 はじめこそ目を輝かせた道花だが、すぐに尻すぼみになっっていった。
(飲みたい、飲みたいけどっ)
 夏に皆で海に行ったときに飲んだ時に自分が何をしたか、自分はさっぱり覚えていないのだけれど。武遠に話を聞かされた幼馴染にこってりきっちり説教をされたのが今も尾を引いている。
(またあのめんどっちい時間を繰り返されるのは御免だし)
 道花が酔って何をしたのかを事細かに、感情の起伏を込めずに。一部始終を見てきたかのように羅列され告げられる時間。どれほど周りに迷惑をかけているのかを噛んで含めるように説明されたあの時間。正座までさせられて両足が痺れたことまで思い出した。
「軍師殿厳選の酒だからうまいぜ?」
 五黄の誘惑と幼馴染の説教の間で心が揺れる。
「惇瑚、やめてやらないか。‥‥ほら、道花。これも美味しいぞ!」
 酒の代わりにと杏琳が果汁入りの茶を勧めてくる。それを受け取り、なんとか道花は広間に腰を落ち着ける決心をしたのだった。
(でも、飲みたい)
 どうしても、視線が酒瓶の方へと向かってしまうのだけれど。

●もふもふの波にのって

「うーん、待ってるだけってのも暇だなあ。手伝うことない?」
 既に始まっている宴会に混じることも考えたけれど、どうしても腰が落ち着かなかったジャミールが厨房へと顔を覗かせていた。
「っても皿とか運ぶくらいしかできねぇけどー」
 お酒とかでもいいけどと言えば、二香が柔らかく首を振った。
「お客様にそんなことさせられませんし、我が君もそれを望まないでしょう。鍋の方もあと少しでお出しできますからどうかごゆるりと」
「でも、どうにも落ち着かないんだよねー‥‥それじゃあさ、料理するところ見ててもいい?」
 どんな風に作るのか、興味があるからと続けようとしたところで武遠が二人の方へと振り返った。
「完成しました」
 その手には二色に仕切られほどよく煮えた鍋が抱えられている。
「運びますから、席に戻っていただけますか。そもそも、食事中の離席は行儀がなっていませんね」
 説教をしたいところではあるのだが、今は鍋を運ぶことが先だ。ひとまず先にと武遠は厨房を出ていく。
「我が君、どうなさいましたか?」
 武遠と入れ違いに杏琳が厨房へと顔を覗かせ、ジャミールを手招いた。
「衛ちゃん?」
「鍋を運ぶ間は、手が塞がっているだろう‥‥?」
 誘われるまま寄せたジャミールの耳に、悪戯めいて囁く。
「あまりハメを外されると怒られますよ」
 別の鍋を持った二香の忠告は、聞かなかったことにするようだ。ジャミールに告げた後、杏琳は武遠の尻尾に抱き付いて見せた。
 もふもふもふ‥‥ずりーっ。
「‥‥殿、覚悟はできておりますね?」
 あとで説教ですよと声の響きで語っている。しかし無理に引き剥がすようなことはせずに広間まで引き摺っていくようだ。引き摺られている杏琳は引き摺られているにも拘らず楽しそうに笑顔である。見た感じ痛そうにも見えるのだが、武遠が尻尾をうまく動かして怪我をさせないように調整しているからなのだろう。
「いいなー衛ちゃん。俺もって言いたいところだけど、流石に二人がかりは無理だしなー」
「そうですね。あれは我が君だからこそのような‥‥」
「あ、やっぱり?」
 杏琳ごと引き摺って行く武遠の背を眺めながら、ジャミールと二香も広間へと向かう。
(俺は机に置く直前に行こうかな?)
 口にすると武遠に警戒されてしまうので、今は黙って機をうかがう事にしよう。杏琳とも、目配せで合図を送っておいた。

「うふふふふ、お鍋到着ですねぇー椎茸は入ってますかぁー?」
 待ちかねた鍋が卓に置かれ、浪 鶴杜(ic1184)はすかさず武遠の肩に腕を回した。
「いやぁ今年もお疲れ様でしたぁ! だから遼さんもお酒飲みましょうよぉーあと椎茸!」
 さきほどまで自分が飲んでいた杯にまだ酒が入っていなかったからと、近くにあった酒瓶を武遠に押し付け飲ませようとする。
「でかしたぞ鶴杜!」
 その隙に杏琳がぴゃっと尻尾から離れ、別の卓に鍋を置いていた二香の後ろに逃げていく。
「殿っ‥‥狼は、どれだけ酒を飲んだのですか」
 予定していた説教は遮られた上、本来ならば気弱なはずの同胞には強引に片を組まれて。仕上げに今は客人が自慢の尻尾に抱き付いている。
「ありがとー。あとでかくとんももふもふさせてね?」
 杏琳が抱き付いていた後でもその質感は失われていない。流石手入れの行き届いた武遠の尻尾だ。
(これなら全もふもふ制覇も出来るかもー?)
 怒られない程度に、は勿論だけれど。

●飲んで飲まれて

「二香、しばらく頼む!」
 武遠から逃げてきた杏琳は二香の影から武遠達の様子を伺った。鶴杜はまだ武遠の肩に腕を回しているから、すぐにこちらに矛先が変わることはないだろう。ジャミールもまだ尻尾を堪能しているようだ。
「このまま説教の事など忘れてしまえばいいんだがなあ」
 酒の力で何とかならないだろうかと半ば本気で首をひねる。武遠だけではない、お目付け役として自分に説教をしてくるものが多すぎやしないか、我が同胞たちは?
「我が君が大事だからに決まっております」
 主の視線に添うように賑やかな様子を眺めながら言う二香。勿論主としての忠誠心は皆持っているだろう。けれどそれ以上に杏琳の事が大切だから、良かれと思ってやっているのは明白だ。それを伝えようと言葉を紡ぐ。
「だから、同じ言葉を繰り返すのも我が君への愛情です」
「うー‥‥二香も説教するのか‥‥」
 杏琳の表情が少しだけくしゃりと歪む。逃げてきた先でも嗜められるなんて、そのつもりではなかっただろうから。
「いいえ。ただ、事実ですもの」
 それらを受け止めるのも主の器、品格が問われることですよと言いながら、ぽんと杏琳の口に放るのは、作っていた胡麻団子だ。
「お行儀は悪いですが、これで落ち着きなさいませ。‥‥いかがですか?」
 食後にお出しするつもりでしたが、味見です。我が君の分だけ特別ですよと笑みを浮かべる。
「むぐむぐ‥‥うん、美味いな」
 流石二香だと杏琳の顔にも笑みが浮かんだ。
「ああ、二香の傍は落ち着くな」
「身に余る御言葉ですわ。‥‥この一年も早うございましたね」
 再び視線を同胞たちの方へと戻し、呟くように言葉を落とす。大きな戦があったからこそ、それを皆が乗り越えてきたからこその今がある。改めて振り返ると、ずいぶんと濃縮された時間だったように思う。
「そうだな。でもたったの一年だ、違うか?」
 これまでだって一年を何度も繰り返してきた。これから先はもう繋がっているのだ。戦いの末に勝ち取った未来が。
 時には母のように、姉のように妹のように、同胞たちを信頼し頼ることもあるけれど、やはり杏琳は皆の殿で主。二香はその頼もしい声に、はいと頷くのだった。

(飲みたい‥‥)
 道花は今もまだお酒への欲求と戦っていた。
 杏琳が差し出してくる飲み物を片っ端から飲み干して来たので正直飲み物そのものはもういらないくらいだ。鍋だって最初に軍師に渡された一杯にさえも、ほとんど手を付けていない。別に武遠たちが作った鍋がまずいとかそういうわけではなくて。
(食べる位ならお酒飲みたい)
 水っ腹なんて気にしない、とにかくお酒、喉を潤すだけでなく、体を熱くさせるお酒が飲みたい。これまで飲んできたのは確かに味は悪くなかったと思うけれど、お酒でないというだけで道花の渇きを癒してくれなかった。
「ん‥‥あれ、殿ー?」
 気付けば隣に居た筈の杏琳が居ない。自分に様々な果汁で香りと味を変えた茶を出してくれていた彼女が体の反対側にさりげなく自分用の杯を確保していたことは知っている。でも匂いで気付いてはいたのだ。ただ止めてくれようと気を使ってくれただけとわかっているし。なにより大好きな主だからこそ言われるままに飲み続けていたのだ。
「居ない‥‥そうか、居ないんだ」
 止める誰かはもう居ない。説教を食らわせてくる幼馴染だって今ここには居ないのだ。
「居ないんだからしょーがねぇよな?」
 ちらりと視線を反対側に向ける。そこには期待通り、誰かが飲み切らないまま忘れ去った杯。まだ十分に残っている。
 そうと決めたら一息だ。
「っあーやっぱいいなあ酒!」
「樂殿、そこのあいた皿を取っていただけますか」
 飲み干した直後の道花と、片付けに立ち回ろうとしていた武遠の声が重なった。
「‥‥樂殿」
 道花の手にある杯を見て事態を察する武遠。道花の視線が既に自分の尻尾に注がれていることにもすぐに気付いた。
「遼だー尻尾今日ももふもふしてるー?」
 ふわふわが目の前で誘ってる。でもお腹もすいたなあ。これは食べ物じゃないから、何か別の物を探さなきゃ。もふもふするのはその後でもいいな。
 酔っぱらったせいで、先ほどまで飲みまくっていたお茶がまだ自身のお腹に残っているなんて感覚がすっかり消えていた。今はただ、あまり食べていなかった分何か美味しい物が食べたい。
「あーやっちまったか、しょうがねぇな」
 五黄も気づくが、時すでに遅い。飲んでしまったものはしょうがないから、出来ることと言えば道花の被害にあわない事くらいだ。
「食い物ー‥‥」
「あっれぇー樂さんどーしたんですかあ浮かない顔しちゃって! お鍋ですよーお酒ですよぉ? 楽しくやりましょーよ!」
「そうそう、樂ちゃんも楽しくやろー?」
 そこに混ざっていく二人の酔っ払い。普段から道花の酔い癖を知らないジャミールはともかく、常日頃から道花に鳴かされている鶴杜までもが彼女に向かっている。それもそのはず、鶴杜も道花同様、下手をするとそれ以上に酒に弱かったのだ。平常心なんてものはとっくの昔に、具体的には最初の一杯を飲んだ瞬間に吹き飛んでいた。
 ジャミールはただもふもふしていた鶴杜の尻尾が移動したからついていっただけである。鶴杜の行動が思っていたより早かったせいで、酔っていても正気が残っている彼への忠告は間に合わなかったのだ。
「あら‥‥お客様なのに、大丈夫でしょうか」
 少し離れた席から零すのは二香。騒ぎに巻き込まれないような安全圏に居る彼女は酒を飲まないため、追加の料理を出すタイミングを計るためと気を配るようにしていた。
 その彼女の声が広間中の同胞たちの耳に届く。その瞬間、賑やかな声は丁度鳴りを潜めていたのだ。皆が道花と鶴杜、ジャミールの動向に注目していた。
(あれーなんか場の中心になってる?)
 その時になってジャミールも周囲の空気に気付いた。ちらりと周りを確認し、道花の視線がどこに向かっているかを辿る。
「あ、じゃあ俺と代わる?」
 鶴杜の尻尾から手を離した。
「おぅ、じゃーこの黒胡麻団子遠慮なくぅ」
 がぶっ!
「おやー樂さんー?」
 がぶがぶ、かじかじ
 自分の尻尾に噛みつかれているのだが、鶴杜は笑顔のままのんびりと道花に声をかけている。犬歯も見えるので、そうとう痛いと思うのだが。
「しいたけ食べましょうよぉー椎茸え」
 酔っぱらったことで、緊張と一緒に痛覚も鈍ったのかもしれない。
 今、道花が違う場所に噛みつきなおした! ‥‥もふもふの毛のせいで、歯形は見えないのでどの程度本気で噛みつかれているかわからない。甘噛みに見えなくもないが、やはりきらりと光る犬歯が気になる同胞たちである。
「仲が良いな」
 杏琳はのんびりと微笑みを浮かべているが、神威人にとっては結構な死活問題だ。今の鶴杜が例外なだけで、彼も素面ならばもっと痛がるに違いない。

「樂殿、いい加減に離しなさい」
「本物の胡麻団子はこっちだぞ?」
 いくらなんでも長いだろうと、見かねた武遠と五黄が近寄っていく。五黄の手には二香が作った胡麻団子の皿、それでひきつけようという作戦らしい。
「あーお二方ー差し入れですかー? 椎茸ないんですかーははは!」
 まだ椎茸か。好物だと聞いた覚えもないのだが。
「狼殿にではなく‥‥」
「あー遼とー‥‥海苔巻き卵? 食べるー!」
 狙い通り鶴杜の尻尾は解放された。五黄の尻尾が囚われの身となったけれど。
「‥‥」
 人として認識されたことを喜ぶべきだろうか。
「武遠は綿菓子だな」
「あっそうかもー」
 杏琳とジャミールの呑気な声が聞こえてくる。
「でも、そうしますと齧るのではなく、毟る、になるのではありませんか?」
 二香の指摘に少しばかり寒気が走った。食べ物に思われなかったことを喜んでおこう。

●夜に至りて人の熱恋し

 ふわ〜ぁ
 温かい部屋で暖かい食事。お酒も飲んで、時間も遅くて。ジャミールが欠伸を堪え切れないのも、無理はなかった。
「んー、あと五黄ちゃんをもふもふしてないんだけどー‥‥」
 既に足がおぼつかなくなっている。けれど仲良しの彼の尻尾は外せない。
「どうしたジャミール。って、ずいぶんとまた眠そうだな」
 まあうちの宴会に付き合ったらそうなるのも無理ないか、そう続いているのだが、その五黄の声も半分くらいしか頭に入ってこない。ジャミールの意識は殆ど夢の世界に旅立ちかけていた。
「五黄ちゃんのー、尻尾ー‥‥」
「構わねぇけど、もう寝たほうが、ってか泊まってく流れだよなあこれは」
「雪だよ、雪!」
 窓の外を見た同胞の声に確信を持つ。
 見回す五黄の周囲には、既に床で眠りに落ちている同胞もちらほら。二香や武遠が眠った者達に毛布をかけたりと対応に回っている。
 道花は武遠の尻尾を囮に五黄から離れたので、ジャミールに貸してやる弊害もなかった。
「操、泊まってくのは問題ないよな?」
「うむ、部屋の手配もさせてある」
 まだ飲んでいる輪の中に見つけた主に声をかければ、二つ返事の答え。既に手配も済んでいるらしい。尻尾をにぎにぎと撫でられる感触にこそばゆさを感じながらも、今度は武遠達に声をかけた。
「二人とも、俺も後で皆を運ぶの手伝うから‥‥」
 その前にジャミールが先かなと視線を落とせば、既に五黄の膝を枕にして眠ってしまっているのだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ic1174 / 衛 杏琳 / 女 / 11歳 / 砂迅騎 / 衛家主人】
【ib9792 / 二香 / 女 / 25歳 / 武僧 / 知恵ありし鬼神】
【ic0451 / ジャミール・ライル / 男 / 24歳 / ジプシー / もふもふハンター】
【ic1182 / 樂 道花 / 女 / 14歳 / 砂迅騎 / 酔いの嵐鬼】
【ic1183 / 五黄 / 男 / 30歳 / サムライ / 兄の精神(酒豪)】
【ic1184 / 浪 鶴杜 / 男 / 26歳 / 巫女 / 齧られる参謀】
【ic1210 / 遼 武遠 / 男 / 45歳 / 志士 / 尻尾の説教役】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
夏に引き続きご縁をいただきまして、今回も楽しく書かせていただきました。
計11名、合わせでのご発注ということもあり、出来る限りの趣向を凝らしてみましたが、皆様のご希望に添えていれば幸いです。

発注内容や口調、イメージとの相違などありましたら、お手数をおかけいたしますがリテイクをお願いいたします。
ご発注ありがとうございました!
snowCパーティノベル -
石田まきば クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年01月23日

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