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『Heard me too. 』
ダグラス・タッカー8677)&フェイト・−(8636)





 ――――――是非ともうちに招待させて下さいませんか。





 何度も何度も何度も何度もそう言われ続けて幾星霜、と言う程の事ではさすがに無いが、そんな風に大袈裟に表現したくなるような頻度で、顔を合わせる度に――いや、顔を合わせなくても、電話やメールやら思い付く限りの通信手段で――事ある毎に「うちに招待させて下さい」とうるさいくらいに言って来る同僚が一人居る。

 ダグラス・タッカー。

 まぁ、同僚、と言い切ってしまうのも少々躊躇われる気がしないでも無い間柄の相手。同じIO2に所属するエージェント――『ホーネット』の名を持つエージェントではあるが、この彼と共に仕事をする事は、仕事が重なる事は――それ程頻繁でも無い。
 …そう、それ程の接点は無かった筈だ。そもそも互いに任地が離れている。…ダグラスはイギリス、そして俺の方は日本…もしくはアメリカの本部。そして任地が――所属する本部・支部が別の国である時点で、同じIO2と言っても気風から習慣やらかなり違ってくる。…支部によっては支部同士で所謂派閥争いみたいな、どうでもいい子供みたいな理由で仲が悪い場合すらもある。まぁ、IO2は結局、超国家的な――超常・怪奇現象専門の警察組織と言う事になるので、そもそもそういう面も出て来てしまうのはある意味では仕方無いのだろう。…結局、組織を構成してるのは人間だ。
 それでも勿論、何だかんだで、離れた任地に所属する者でも同じ任務に就く事はある。指令があっての場合もあるし、成り行きでと言う場合もある。…状況次第。IO2のエージェントは、必要とされた時に――誰の指令も無く己でそう認めた時にであっても――適宜迅速に行動するのが重要なのだから。
 ともあれ、このダグラスともそんな成り行きで、以前に組んだ事があるだけ…な筈で。





 ………………気が付けば、その時にどうも、懐かれた…らしい。





 一応、以前にこれまた成り行きで――弱い面を見せてしまった事もあるし、俺の方でもこのダグラスの事は――ひと癖ある人物ではあるが、友人と言ってしまってもいいか、とは認めている。いるが…それにしても気安くされ過ぎではないか、と言う気がする時もどうしてもある。距離感が掴み難いと言うか…家が金持ちでお坊ちゃま育ちのせいもあるのか、はたまた頭が良過ぎると言うのもあるのか…多少浮世離れしていると言うか…色々行動が読めないと言うか。反応に困る時があると言うか――取り敢えず、少々奇抜でマイペース。そのくらいは言ってしまって差し支えないんじゃないかとさえ思える。
 いや、それでいてこのダグラスは実家であるタッカー商会の幹部をしてまでいるのだから、ただマイペースなだけでも奇抜なだけでも無いとは思うのだが。…そもそも、IO2エージェントと兼任している――どちらが片手間と言う訳でも無く兼任出来ている、むしろそんな二足の草鞋である事を利用さえしている――時点で、相当に現実的な能力も持ち合わせているのだろう。…家のコネでのお飾りの幹部、と言うだけでは無い片鱗は俺の目からも時々見えている。…商人らしい利己的、打算的な部分も持ち合わせていると言えるし。…いや、その辺は良い意味でも悪い意味でも英国紳士らしいと言うべきでもあるかもしれないが。とにかく、甘やかされただけのお坊ちゃんでは無い、とは俺にもわかっている。
 まぁ、そのタッカー商会の方は家の事情からして放り出せないだけな可能性もあるが、傍でダグラスを見る限りは別にそれで特別嫌だと言う風でも無い。それで普通、それが義務。そこにそう生まれたからそうしているだけ。そんな感じに当然と心得て見えるのは――まぁ、諸々合わせてこいつが根っからタッカー家の人間――そして上流階級の人間だと言う事なのだろう、多分。
 結果的に、普段の服装コーディネイト――洒落たブリティッシュスーツに少し派手なネクタイ――も含めていかにもな英国紳士と言うか何と言うか。…正直、少々苦手に感じる事もあるが――その辺は、単に住む世界が違うが故に必然的に起きてしまうような微妙な齟齬が原因、とでも思っておくべきな気がする。何と言うか、慣れれば意外とどうと言う事も無いような。





 ………………いや、そう思うのは俺が絆され過ぎている…と言う事もあるのかもしれない。





 そう。…実は、自分がこのダグラスを友人と思うのは――この「多方面に亘る攻勢」に絆されただけではないかとふと首を傾げて自問してしまう事すらある。…直接対話のみならず、メールや電話も含めての。結果として、気が付いたらこうなっていた、と言う感じ。
 …まぁそもそも、友人と言うのはなろうと思ってなると言うより、気が付いたらなっていた、と言う場合の方が多いかもしれないから――これはこれで別に構わない、と言えば構わないのだが。
 取り敢えず、押しが強い人物だとは言える。…逆を言うと俺の方が彼のペースに巻き込まれて、気が付けば流されてしまっている、とも言えるのかもしれない。





『フェイト』の名を持つIO2エージェントこと工藤勇太としては、そんな埒も無い事をふと考え込みつつ、当のダグラスから「また」届いた招待メールの文面をまんじりとも無く眺めている。…そもそもこのメール、完全にIO2の仕事のメールに紛れて届いている。ついでに言うなら今したメールチェック分では、この招待メールの本数は仕事で来ているメールより数が多かった。…下手すると迷惑メール分類に入れて良いかもしれない頻度である。…まぁ、入れる気は無いが。入れたら入れたで、逆に後が怖いし。
 ともあれ、そんな「いつものメール」が今、目に留まったのはちょっとした理由がある。





 ………………この招待を受けても良いかと思えるくらいの、休暇の当てが漸く出来たのだ。





 で、その休暇の取れそうな時期を記し、その時期にそちらに行く旨のメールをダグラスに返したら――そのほんの数日後には封蝋で封をされた「いかにも」な封書が手許に届いた。…当初、自分宛ての手紙とは全く思わず宛名を何度か見返し絶句した。…封筒からして明らかに金が掛かっている豪華な代物で、内心でうわあと思う。
 …そもそもどうやって開封したものかと言うところから地味に迷ったが(ペーパーナイフと言う考えてみれば当たり前の手段すらすぐに思い至れなかった)、中身は流麗な筆記体でしたためられた招待状の手紙、及びイギリス渡航の為の航空券だった。…それも、当然のようにファーストクラスの――まぁ、このくらいなら招待主を考えれば予想の範囲内ではあるかもしれない。

 …ので、折角だから有難く使わせて貰うべきか、とは思う。



 そして渡航当日。
 イギリスに――空港に到着して。

 フェイトが降りてくる到着口で当然のように待っていたのは――タッカー家の…ダグラスの執事。非の打ちどころが無い慇懃な所作でフェイト様ですねと迎えられ、持っていた荷物も目敏く運ばれて、車へと導かれた――と言うか、空港の出口に導かれ、その執事と共にほんの少しだけ待ったかと思うと――目の前に自家用らしい高級車がこれまた当然のように滑り込んで来て、どうぞお乗り下さいとばかりに後部座席のドアも開けられた。
 …その運転手付きの高級車もまた何と言うか、庶民にはまず手の届かないレベルの車両である事は――何と言うかもう当然過ぎて、説明の必要さえ無い気がする程で。

 で。

 その車に乗ってダグラスの屋敷に向かうのかと思いきや、辿り着いたのは何故かとある劇場。フェイトとしてはその時点で「?」と思う。…ファーストクラスの航空券に執事の出迎えと来れば、何か歓迎の前座?のつもりで劇場でオペラでも観せてくれるつもりなのだろうか? と乏しい想像力で思いはする。
 が、ダグラスの執事に案内されたホールには誰一人観客は居らず。けれど執事はそんな事を気にした様子も無く――何故か詳しい説明も無い。ただ、観客席の一列目中央に当然のように案内され、どうぞごゆっくりお楽しみ下さいとだけ伝えられた。素直に席に着きつつもなんだなんだと正直困惑するが――フェイトが困惑しているそこで、するするとこれまた当然のように舞台の幕が上がり始める。

 そして。

 幕が上がった舞台中央に居たのは――何やらヴァイオリンを構えているダグラス・タッカーその人で。







 ………………は?





 フェイトの感想としてはまずそれ。唖然呆然。正直、自分の招待主であるダグラスが――今ここで舞台に立つ形で現れるとは思いもしなかった。…と言うか、そもそもヴァイオリンが弾けたのかとその事自体にも驚いた。さすがお坊ちゃま育ち――驚いている間にもダグラスの持つ弓がヴァイオリンの弦に滑らされ、ゆったりとふくよかな音がホール内に響き渡る。
 演奏開始。背筋の通った姿勢の良いダグラスの立ち姿。その様は、優雅と言う形容が自然と浮かんでくるような佇まい。…フェイトとしては特に音楽の世界とは縁が無い為、弾かれている曲の名まではさすがに出て来ないし、この演奏が専門的な技巧としてどの程度のレベルになるのか等はわからなかったが――曲が先へ進むに連れて、様々に煌く弦楽の開放的で華やかな音律が劇場内に響き渡っている事だけはまったく疑いようがない。正直、思わず聴き入ってしまった。…少なくとも俺の耳には、なかなか巧い演奏に聴こえる。





 ………………これは、要するに。





 フェイトの為に、この劇場を貸切にして――自分だけのヴァイオリンリサイタルを開いて見せた、とでも言うところだろうか。
 …ここに連れて来られた時点で、フェイトは「ダグラスのしそうな事」を心の準備的に色々事前に想像してみてはいたが――さすがにこの発想は無かった。…劇場を貸し切ってたった一人の客の為に自分自身で弾いて見せるとは。驚くと言うか呆れると言うか――まったく金持ちのする事は、としか感想の持ちようが無い。

 フェイトにしてみれば、完全に想像の埒外である。



 そしてたっぷりとフェイトただ一人にヴァイオリンソロを聴かせた後、ダグラスはフェイトに向かって優雅に一礼。それから――お久し振りです。と漸く再会の挨拶。そうされたフェイトは――反射的に沈黙。何と言うか、この大仰な状況に圧倒されて少々間を置いてしまった。

「…どうしました? フェイトさん」
「…。…ああ。いきなりこんな歓迎のされ方をするとは思わなかったよ。英国紳士」
「おや、お気に召しませんでしたか。…ジョージ・フリデリク・ハンデルのヴァイオリン・ソナタなのですが…」
「…いや。説明されても正直全然わからないんだけど。でも、意外に巧くて驚いた」
 ヴァイオリン。
「ふふ。嗜み程度のものなのですがね」
「とか言って、自信が無きゃこんな真似出来ないと思うけど」
「そんな事はありませんよ。粗相をしないようにとひやひやものでした」
 他ならぬ貴方が私の招待を受けて下さるのですから、それなりの趣向を凝らさないと、とこれでも色々と考えに考えたのですよ?
「その着地点が「こう」なるってのがさすがあんただよな。ダグ」
 劇場貸切ヴァイオリンリサイタルなんて。
「お褒めに与り光栄です」
「…今褒めたのかな、俺」
「違うのですか?」
「まぁ、良いヴァイオリン聴かせては貰えたけど」
 曲名とか技術とか背景は知らない素人の感想だけど、心に染み入るみたいな良い演奏だったとは思うよ。
「有難う御座います。そう言って下さるなら何よりです。私の選択は間違っていなかった、と言う事ですからね」
「にしてもちょっと大袈裟だよな」
「何がです?」
「こんな真似がだよ。俺の歓迎の為だけに劇場貸切って」
「おかしいですか?」
「おかしくないのか?」

 …他にも何か『理由』があるならいざ知らず。

 そう含んだフェイトの科白に、ダグラスは小さく微笑する。貴方には敵いませんねとフェイトに返すと、少し劇場内を歩きましょう。と、脈絡無く持ち掛けてきた。



 歩く音と互いが話す声以外は何の音もしない。この場に居るのは、ダグラスとフェイトの二人だけだとそれだけは言い切れた。ダグラスの執事は外で待機させているらしく、今はその姿も無い。…貸切と言う通りに、今この劇場内には他には誰も居ない。
「って何処行くんだよ」
「…興味はありませんか?」
「? 何に?」
「こういった場所に入って来られるような機会は、貴方にはあまり無いでしょう?」
「否定はしないけど。…でも今ダグは…明らかに『何処か』に向かってるよな?」
 何か目的があって。
 この劇場の中の、何処かに。
 …そう突付いても、ダグラスは緩く小首を傾げるだけで素知らぬ顔。
「そう見えますか?」
「違うのか?」
「違いませんが」
 …ただ、彼もまた否定はしない。

 舞台袖から裏に当たる場所。控室やら道具室やらと様々な部屋に、表とは違った簡素な通路が続く。やがて、二人が暫く歩いた先にあったのは――舞台装置の管理室。…一見、古風に見える劇場であっても、演出の為の設備は最新の機材が色々と揃えられているものなのですよ。ダグラスにそう説明を受けつつ、フェイトはダグラスと共にその管理室へと足を踏み入れる。





 と。





 入った時点で、え? と思う。
 フェイトは軽く目を瞬かせた――見間違いか、とまずは考えて。…それは、イギリスの古い建物は幽霊が多い――と言うか、ある意味それが売りになっている観光地さえあるのは仕事上結構知っている。即ち、幽霊を見掛けたからと言って無闇にどうこうしない方が良い場合もある事は知っているが、これは、そういうのとは何かが違って――――――

 ――――――何より、まだ、『新しい』と、そして見間違いでも無い、とすぐにわかって。





「ダグ」
「はい」
「…『理由』は、これか?」





 この劇場にまで――そしてこの部屋にまで俺を連れて来た理由。
 見間違いか、とまず考えてしまった程の、今にも儚く消えてしまいそうなその『姿』。





 この管理室に入った時点でフェイトの視界に飛び込んで来たのは、部屋に置かれている機械類をじっと見上げて佇んでいる、まだ小さな女の子の――『幽霊』。
 そう言って良い、姿だった。





「やはり…貴方の目には『視』えるのですね」
 私には霊感はありませんから、悔しいながら何もわからないのですけれど。ダグラスはそう返しつつも、フェイトの『視』ている先を自分の目でも追っている。…それで自分に『視』える訳では無いのは自覚していても。…そこに、話すべき他者が居ると扱う事をする。
 フェイトはそんなダグラスの様子を見、ゆっくりと首肯した。
「ああ。まだ年端も行かない小さい女の子…が居るよ」
 …まだ、六歳くらいかな。淡い色のドレスを着て。髪飾りも着けて。精一杯のおめかししてるのかな。でも、舞台に立つ側の子役…じゃなさそう。多分、観客として来た子…じゃないかな。
 何か興味があるのかも。ここの機械類を見上げて、そこに立ってる。
「…そうですか。やはり貴方を連れて来て正解でしたね」
「…。…今回はプライベートで招待って話じゃなかったのか?」
「充分にプライベートだと思いますが。それこそ、大袈裟に騒ぎ立ててはこのリトルレディに大変失礼をしてしまう事になるでしょう?」
 まさか、IO2を通してどうこうなどと騒いでは。
「…ま、そりゃそうだな。そう考えれば、確かにプライベートか」
「そう言って下さると思っていましたよ。フェイトさん」

 この、彼女の事を知ったなら。



 …数ヶ月前に、この劇場で痛ましい事故がありました。
 ある歌劇が公演される前の事。二階の客席から幼い少女が落ちて――亡くなってしまったのです。
 ちょうど今、フェイトさんが仰ったような年の頃で、そんなドレスを着ていた、笑顔の可愛い、女の子。

「親子共々楽しみにしていた観劇だったのに、ほんのちょっとした不注意と不運が重なって」
 最悪の結果に至ってしまった。
 今はもう、そんな痛ましい、不幸な事故が起きないように劇場の側でも施設の管理が徹底されています。彼女に向けた追悼公演も行われました。先程貴方にお見せしたあの舞台で。彼女が楽しみにしていたのと同じ歌劇を。…無論、御遺族へのお見舞いも――補償も行われています。
 劇場側では、出来るだけの事はしました。でも、それでも彼女はまだ、満ち足りていないのでしょうね。…当然です。
 …だからこそ、ここに居るのでしょうから。
「まぁ…そうなんだろうけど」
 …でも、この子にはそれ程強い執着がある感じは、無いよ。
 それ程に悪い霊にはなっちゃいない。
 これなら――ここに居る事で何か霊障が起きたとしても…こういう言い方も何だけど、たかが知れてる。放っておいても、いいくらい。…いずれきっと、自分自身で「向かうべき道」を見付けられそうな。 
 …そんな、霊。
「ええ。直に『視』る事が出来ずとも、話を聞く限りは…私たちのような者にしてみれば――そう思えます」

 ですから、出来る限りはおおごとにはしたくない。
 それは確かに、彼女の事故があって以降、この劇場では怪奇現象が起きている。…起きてはいるが――どれも人の気を惹く為の悪戯に等しい程度の、ほんの軽いもの、ちょっとした事でしかない。

 例えば。
 …照明が突然消えたりついたり。…勝手に緞帳が開いたり閉まったり。…一時的に楽器が無くなったかと思えば、いつの間にか戻って来る。…楽器以外にも、あった筈の場所から物が無くなって、全然違う有り得ない場所から出てくる事がある。…鍵が勝手に閉まっていたかと思ったら開いている――どの現象も、本当に必要になる時には、元通りに戻っている。致命的に他人を困らせるような、洒落にならない事まではしていない。
 そして、女の子の幽霊が、舞台裏で時々目撃される――それも、主にこの舞台装置の管理室で。

「どの霊障も実害らしい実害は全く出ていないのですが、そろそろスタッフが気味悪がって次々と休んだり辞めたりしてしまっているそうで。観客の間でも噂になりかけているとか…それで、巡り巡って私にまで話が回って来た、と言う次第なのですよ」
 幾らIO2が秘密組織と言えど、こういった業界では――私がIO2のエージェントである事を、知っている方もそれなりに居ますから。
「…で? 俺に何をさせたいって事?」
 俺をここに連れて来た本当の訳は?
「それは。貴方の口から、このリトルレディに伝えて欲しい事があるのです」
「?」





 ――――――「ここに居て演奏を聴いていても構いませんが、悪さはしないで下さいね」、と。





 そう、彼女の霊に伝えて欲しい。
 ダグラスはそう告げて、フェイトの視線の先を見る。『視』えてはいないが、そこに居るのだと、見る形に扱って。フェイトの感覚を頼りに、伝えたい意思を以って。
 ダグラスがそうしていたら、フェイトは拍子抜けしたように、不意にきょとんとして。
 今度はダグラスの方が、頭上に疑問符浮かべる羽目になる。
「? フェイトさん?」
「…いや。今ので伝わったみたいだよ」
 俺が伝えるまでも無く。





 私にも聞こえたよ、って。あの子、こっちに――ダグに頷いてる。





「…」
「何だよ変な顔して」
「でしたらこの件はフェイトさんに頼るまでも無かったのでしょうか。いや…ですが今フェイトさんがいらっしゃらなければ彼女に伝わったと確かめる事すら出来ませんでしたし…さて」
「そんないちいち考え込むような事でも無いだろ。…あの子もこっち見て笑ってるぞ」
「おや、そうなのですか。これは失敬」
 言ったかと思うと、ダグラスは少女の霊が居るだろう方向に向かって、微笑みながら軽く会釈。
 それからまた、フェイトを振り返り――こちらにもにこやかな笑顔を見せる。
「…ではフェイトさん、私の屋敷へ行きましょうか」
 今度こそ。

 ――――――そう、今度こそ純粋に。
 小さな事件が解決出来たところで。改めまして、貴方を私の屋敷に招待しますよ。フェイトさん。

 どうぞ、ゆっくりと羽を伸ばして寛いで行って下さいね。
 …で、何ならそのままこちらに住み着いて下さっても一向に構わない、と言うよりむしろ歓迎なのですが…多分、そうは行かないでしょうねぇ。

 他ならぬ、フェイトさんの事ですから。

【了】
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2015年01月28日

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