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『日に、月に、絶え間なく 』
加倉 一臣ja5823)&月居 愁也ja6837)&夜来野 遥久ja6843)&小野友真ja6901


 成すべきことを成し遂げられるように。

 国家撃退士になるためにもっといろいろ頑張る。

 みんなが笑って過ごせますように。

 皆が笑顔でいられるように。

 健康第一、商売繁盛、交通安全、楽しく一年を過ごせますように。


 ――2014年・初春の誓いは、さてどのような形となっただろうか。




 2015年、初春。
 正月気分も抜けてきて、それでももう少し遊びたい。
 おせちやカレーにも飽きたところで、しっかりガッツリ焼肉どうよ?
 そんな頃合い。

「おー、揃ってる揃ってる。明けましておめでとさーん」
「いえーい、筧さん!!」
 待ち合わせの焼き肉店へ筧 鷹政が時間通りに到着すると、既に参加メンバーは揃い済み。
 高身長の一団から、弾丸のように元気な人影が飛び出してくる。小野友真だ。
「よ、元気そうd」
 はいたーっち、と見せかけてからの、
「空きっ腹にタックルとか!」
 吹き飛ばされ、と見せかけての、お約束スイング。
「おのゆうま:射程2」
「ちょっ、武器化しないで!! こっち巻き込まないで!?」
「よっしゃ、範囲攻撃行くぜー!」
「攻撃、と言いましたか。ならば、こちらにも備えはあります」
 微笑ましく見守っていた月居 愁也たちを巻き込みに行けば、スッと冷静な声が立ちはだかった。言うまでもない、夜久野 遥久である。
「遥久が乗るのかよ、誰が止めるんだよ」
 まさかの事態に、珍しく加倉 一臣が狼狽える。
「盾阿修羅召ー喚!」
 やばい、愁也もノリノリだ。
「あかん、筧さん、酔った」
「強制終了ーーー!!!」
 ここまでが、一連のお約束。


 年の瀬に大阪の街で、一臣と友真が鷹政と遭遇して。
 その際に、新年に焼肉しようと約束を交わして。
 互いにひと段落ついたところで、実現の日を迎えることとなった。
「餅もお節もいいけど、そろそろ肉だよねー。ヤッター!!」
「改めて。新年、明けましておめでとうございます。筧殿」
「こちらこそ。今年もどうぞ、よろしくお願いします。……なんだろ。夜来野君は前に会った時より、精悍になったね」
 ばっさばっさとメニューを捲る愁也の隣で、遥久と鷹政は新年のあいさつを交わす。
「『成すべきこと』を成せた?」
「……まだ、始まったばかり……でしょうか」
 成し遂げる。そう言いきるには、道程はきっととても長い。長くても、遂げるのだと誓った。
 きっと、想いは昨年よりも、深く。
「あけましておめでとさん、まーまー気楽にやりましょ。ご安心あれ、恨みっこなし・きっちり割り勘です」
「端数は幹事持ちだったか。……一万久遠未満は端数か、加倉?」
「遥久、お前の経済感覚どうなってんだよ。躾けろよ愁也」
「冗談だ。……ん、アルコールも良い銘柄が揃っているな」
「ふっ、食べ飲み放題120分コース、肉も海鮮もサイドメニューも酒の種類も豊富でこのお値段。幹事、頑張りましたよね……」
「えっとなー、とりあえずコーラやろー、そんで帆立…… 網焼きとガリバタと刺身な! そんでー…… そんで……」
「だから長ぇよ。タン塩、カルビ、ロース、サガリ、ハラミ、それぞれ5人前。海鮮盛り合わせは3人前あればいいか、とりあえず。で、俺ビールねー」
「俺も俺も。筧さんもだよね。遥久は?」
「最初の一杯は、同じで。ビール、4つですね」
「ごはん食べる人はー?」
「はいはーい!」
「あ、俺も」
「友真と筧さんもか。それじゃ、ライスみっつで!」
「あっ、からし菜…… サンチュも良い……」
「加倉さん、安心していいから。両方頼んでる」
「愁也、マジ焼き肉奉行」
「流れるような捌きっぷり」
 一臣と鷹政が、声を揃えて感嘆する。
「店にもよるけどさー、ビールを持ってくると同時に食事オーダー取るの辛くね? 泡消えるし」
「ああー」
「わかる。あのハンパないお預け感」
「だから、ドリンクオーダーの段階で突っ込むのが基本よな」
「……俺にはまだ、わからない世界」
 ふる、友真が首を横に振った。来年。来年の今頃には、最初のビールは5個になる。




「それじゃあ、飲み物も来たところで!! 改めておめでとさんです、乾杯ー!」
「かんぱーい!!」
 息ピッタリに5人がグラスを鳴らし、のどを潤す。
「はーーー。甘酒やお屠蘇もいいけどさー。やっぱコレだよな、爽快感が違う。あと開放感」
「炭酸は素晴らしいやんな……!!」
 帆立の到着を待ちながら、友真は愁也へ頷いた。
「あれ、そういえばホルモン頼んでねぇの? 愁也、好物じゃなかった?」
「チッチッチ、タイミングがあるんだよ加倉さん。まぁまぁ、焼いていきまs 勝手に並べるな友真、網の上は整然と!」
「……愁也、マジ焼き肉奉行」
「意外というか、らしいというか」
 一臣と鷹政が、声を揃えて感嘆した。(本日二回目)
「あれ。愁也さん、それ、塩?」
「おう。肉の味はシンプルに味わうのが一番」
「いい肉は塩、食放題ならタレ……や、ないん?」
「ふっ、上手く焼いた肉に雑味は不要。ほら、食ってみ」
「んぐ、……!!! ふおおおお……」
「友真が肉で餌付けされてる」
「美味! うっまーーー! なんやのこれ!」
「カルビ。特上ではないんだぜ? 遥久には特上なーー」
 絶妙に、肉汁と旨味を閉じ込めて焼き上げたカルビに友真の目が潤む。
「すっげえ。月居君に対する見方が変わった」
「筧さん、俺を何だと……」
「そういえば、海の家でも特大お好み焼き作ってたもんね。なるほど、焼きには一家言あり、なのか」
「パンケーキは、焼き担当しなかったけどね。なー、遥久すみません」
 遥久さん、まだ何も言ってません。そっと愁也さんを見ただけです。
「っても、たしかここの店のはタレも美味いからさ、色々楽しむのが一番だよな」
「……愁也」
 何とはなしにメニューを眺めていた遥久が、クイと従弟の袖を引っ張る。
「エゾシカ肉のジンギスカン。食べてみたいんだが」
「3人前追加お願いしまーす!! 絶対これ美味いやつ!!!」




 お腹もひとここちついて、雑談が主軸となってきた。
「そだ。年末年始の特番でアレコレやってたけどさ、俺たちもやろうぜ。『個人的ランキングベスト3』とか!」
 サンチュで巻いたサガリを味わいつつ、一臣が一つ提案を。
「個人的、か。また抽象的だな」
 遥久はエゾシカ肉が気に入ったらしく、何品か追加していた。
 勢い任せに食べるのではなく、良いものを、ゆっくりと楽しみながら。


「個人的ランキング? 勿論遥久の好きなところベスt ……話聞けよ!」
「愁也、これも追加で」
「遥久……安定のスルースキル」
 テーブルばぁんする愁也、淡々とした態度を崩さぬ遥久へ、一臣はいつも通りの安心感。
「まあ語ると長くなるけど、一番好きなのはねー。何かに挑む時の眼差しかな」
「なんで照れるんだよ」
「っていうか、続けるんだ」
「愁也、そっち焦げてるぞ」
「愁也さん、こっからこっち、俺のんなー」
「話聞けよ!!」


 二杯目のビールを乾して、次は違うものにしようかとドリンクメニューを手にしていた一臣が顔を上げる。
「あ。流れ的に、次は俺? そうだな。じゃあ、銃以外で好きな魔具とか」
 インフィルトレイターを専攻していることもあり、今でこそ任務に向かう時は殆ど銃だけれど。
「昔は喧嘩っつーとケリ主体だったから、レガースも好きなんだよ。それが3位だとしたら、2位は太刀だね。好きで1本だけ持ってる」
「へぇ、意外。刀で手合わせって言ったら夜来野君や月居君とかなって思ってたけど、加倉ともイケる?」
「現職阿修羅がやだァ。……機会があれば?」
 身を乗り出す鷹政へ、一臣は笑いつつ。
「で、1位はやっぱ弓。それも和弓がいいな。こっちも、大事にしているものがあるんだ」
 学生時代に弓道部だったことから手にもなじむし、インフィルトレイター専攻の理由の一つだった。
「レガースとは縁が無いんだけどねぇ」
「V兵器の開発も目覚ましいし、遠くないうちに踏まれたくなるレガースとかも登場するんじゃない? 椅子にもなれるとか」
「……筧さん、すでに酔ってます? 大丈夫です? よそでは言っちゃいけない何かが飛び出ましたよ?」


「はい! 三番、小野友真でっす! 絶賛メインディッシュ中ですが、好きなケーキベスト3、行きます」
「焼肉屋で甘味テロか……!」
「さすがにこればっかりは薄いってところを、友真!」
 愁也と一臣が呻くのをよそに、マイクよろしくグラスを握り、友真が語りに入る。
「じゃじゃん! 第3位! さっぱりレモンタルト!! 一度でええから、最高品食べてみたいなー……」
 焼き肉の後なんかにも、きっとスッと入ってしまうようなさわやかさ。
「そして! 第2位! あえてのコンビニのスフレチーズケーキ! ふわふわ好きー」
 今日の帰りがてらにも買えるしー?
 と、華麗なる甘味テロ。
「そんでなー、1位はなー。へへ。今年の誕生日に食べたサンシャインのシャルロット……!」
「え、なにそれ特製っぽい」
「一臣さんの付き合い先のケーキ屋さんでな、特注品やってん!
すっごい美味しかったん、もう本当に最高で。味も勿論、思いもこもってて嬉しくて、1位てか殿堂!」
「……ああ、美味かったなぁ」
 穏やかな表情で頷く一臣を見て、それがどういったものだったかを他の三名は察する。
 一臣から友真に宛てた、とっておきのプレゼントだったのだろう。
「うらやましいのか、愁也?」
「えー、なんか良いなって思うわ、さすがに。三が日に特注ケーキ作ってくれる店ってあるかな」
 てっきり愁也が欲しがるのかと思い、からかいを交えた遥久だったが、こんな時まで従弟の頭の中は自分でいっぱいだったらしい。
「お前が作るという選択肢もあるが?」
「……メレンゲのこと、根に持ってないよね?」
 それは、秋の祭りの事でした。


 不安げな愁也をスルーし、考えをまとめた遥久が四番手。
「そうですね。『欲しいスキル』にしましょうか」
 一つの専攻を極めるもよし、あらゆる専攻を経験し能力に幅を付けるもよし。
 正式に転科が可能になってから、遥久は自身の可能性の探求に余念がない。
「まずは3位、シールドバッシュ。相手に技を使わせない、というのは非常に魅力的です。
2位は、薙ぎ払い。……さすがと言いますか、ジョブ専用というだけありますね」
「阿修羅の遥久は…… うん、…………うん」
 ナイトウォーカーも、アレだったけれど。
 転科してしまえば、他専攻のスキルは威力がダウンしてしまう場合が多い。
 それでも、磨いた能力が下がるわけではなく。
 ちょっとした脅威を思い出し、愁也はそっと目を逸らした。
 彼が欲しいと思う技に、自分のジョブの物があるのは少しだけくすぐったいということもある。
「1位は瞬間移動ですね。使い道が多そうですし」
「なにを」
「追掛けるの」
「むしろ、先回り……?」
 輝く笑顔を見せる遥久へ、愁也を始め一臣や友真も震えた。
「使い道が多くて手段が増えると、そういうことですよ」
 何の、とは言わず。


「ていうか、筧さんは彼女の好きなとこベスト3だろ」
 愁也の一言に、鷹政が盛大に焼酎を噴きだした。
「いやいやいやいやいや。本人がいないところで、ねぇ」
「そういうことは、二人っきりでやってください」
 一臣がおしぼりを差しだし、背をさすってやる。
「えー、じゃー、うーん…… 変則的だけど、四人それぞれの好きなところベスト1」
 遥久以外が噴き出した。
「夜来野君。今度、剣道で模擬試合をしたいです。あれ、好きなところとは違うか。
俺が顔を合わせる時は、いつもストッパー役でいることが多いからさ。一対一で、向き合う機会があると違う一面を覗けるかなって」
「あっ、あのねー筧さん、剣道やってる時の遥久ってすっげーオトコマエd」
「一対一で向き合う……そうですね、機会があれば」
 天魔対応、特に最近は国内で大きな規模の招集も頻発していて、学園生とフリーランスとではなかなかタイミングが合わないだろうけれど。
 それ故の希望もあるのかもしれない。
「月居君。お肉美味しかった」
「今日一日で引っくり返る程の評価!!?」
「はは、それは本気と冗談として。どんなことにも、熱く本気で取り組む姿かな。誰だって持っているところだけど、本心に素直で真っ直ぐなのは、憧れる」
 阿修羅という同職だけに、戦い方の違いも目指す方向も、掴みやすい。
 鷹政にはないものを、愁也は持っている。
「小野君はー…… 元気の良さもだけど、気持ちの強さと優しさ、な。いつも、ありがと。鍵を持っているのが君で良かったって思ってる」
「な、なんか、死亡フラグみたいなこと言わんでください……」
「えーーー」
 泣きが入りかける友真の髪を、ぐしゃぐしゃにかき回して、鷹政は笑った。
「加倉は―― ……略」
「なんで!!」
「今更だし!? なんて。『付き合い』の良さかな。絶妙のタイミングで、甘えさせてくれるとこ。たまには俺のことも頼ってね」
 それまでの経験があって、今の一臣という人間が出来上がっていることを、知った上で。
 絶妙のタイミング、というのはそれが『そう』であると、経験しているからだ。
「こうやって、皆でワイワイ過ごすのは良いね、楽しい。普段、なかなか話せないこともあるしね……」
「今年も、皆で楽しく在れたら良いですね」
 遥久が、静かに頷いた。




「へえ、デザートにスクラッチカード…… ハズレなしって面白そうだね」
 最後のアイスと一緒に、配られたカード。
「お年玉キャンペーンなんですって。ギリ期間内、ヤッタネ」
「おみくじ勝負の代りになるか?」
「凶とかないもんな、ええと思う……」
 昨年を思い出し、友真の声が僅かに震えた。
「それじゃあ、名残惜しいですが〆ということで…… 何が当たったかと今年の目標を1つ。発表といきますか」
「あっという間だなー。早いなー」
「時間は最大限に活用しましたね。有意義な時間でした」
 メインからサイドまで、各種メニューを満喫した。バニラアイスをすくう遥久の表情は柔らかい。


「それじゃあ、っと。俺から行くねー。……あっ、すごい。カタログギフト、3000久遠分!
今年の目標――…… 健康第一。今年は年男だしさ、元気にやってれば色々と舞い込んでくるかなって」
 
「ドリンクサービス券…… 地味に嬉しいな。
今年も目指すは……やっぱ誰もが認めるヒーロー、かな!」

「ソフトクリームサービス(コーン・カップ選択可、バニラのみ)。友真と一緒に、また来店どうぞってことかな……
今年の目標か……。寝落ちしないこと、ですかね」
「一臣は目標頑張れ……」
 にこ。
 そっと微笑みあう恋人同士の間に流れる空気は、甘いだけではない何かを感じさせた。

「お米券、3000久遠分。……これでどれくらい買えるんでしょうかね。
目標は『友に恥じぬ己であること』。毎年の目標ですが」

「遊園地パスチケット2名様ぶーん!! え、これ一番すごいんじゃね? 遥久、いつ行く? なぁなぁ!!」
「男二人で行くものなのか……?」
「俺とだったら絶対楽しいって! 遊園地より俺が楽しいって!! だから行こうぜ、遥久!!」
「お前が酔ってることだけは解かった」
「ホロ酔いですー、ご機嫌なだけですーー。で、目標な。『阿修羅としての方向性をもっと確かに』。盾阿修羅の道は長い!」




 店を出ると、空には船に揺られるような上弦の月。
 ほわりと白い息が闇夜に浮かんで消える。
 気が付けば、こうして5人で新年のひと時を過ごすのは三度目になるだろうか。
 都度都度で状況は違うけれど、楽しい時間であることに変わりはない。

 日進月歩。
 日に、月に、絶え間なく進歩している。
 あの頃から、少しでも先の場所に、今がある。

 来年は、どこで何を食べような。
 誰からというでなくそんな言葉はふわりと浮かんで、
 来年は、どんな目標を描いているだろうかと
 誰が言うでなく、心に浮かべた。


 今年もどうか、実り多き一年でありますよう。




【日に、月に、絶え間なく 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja6837 / 月居 愁也  / 男 / 24歳 / 阿修羅】
【ja6843 / 夜来野 遥久 / 男 / 27歳 / アストラルヴァンガード】
【ja5823 / 加倉 一臣  / 男 / 28歳 / インフィルトレイター】
【ja6901 / 小野友真   / 男 / 19歳 / インフィルトレイター】
【jz0077 / 筧  鷹政  / 男 / 27歳 / 阿修羅】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました。
気が付くと恒例行事の新年会。非常に楽しく書かせていただきました。
ラストのデザートスクラッチを、独自選択肢&ダイス判定で。
毎年、引きの強い方がは本当に強い状態に…… なんたる。
皆様にとって、幸多き一年となりますように!
snowCパーティノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年01月28日

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