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『―― ドタバタ☆お正月 ―― 』
彩咲・陽花jb1871)&葛城 縁jb1826

 彩咲・陽花(jb1871)と葛城 緑(jb1826)はふたりでまったりとしたお正月を過ごそうと前々から決めていた。
 年末年始を一緒に過ごすため、二人でお茶を飲んでいた時に、今までのまったり感を崩す一通の電報が届いた。
「あれ、実家から電報……? 何だろう……?」
 予想していなかった電報に、陽花は首を傾げながら電報の中身を見る。
 そして、今まで穏やかだった表情が一気に険しいものへと変わってしまった。
「陽花さん? どうしたの〜?」
 表情を険しくした陽花を見て、緑も何かあったのかと心配して立ち上がる。
「チチキトク、スグカエレ――って、お、お父さんが危篤!? そんな、だってそんな様子なんて今まで全然なかったのに……!」
 年末にまさかの危篤通知が届き、陽花は恐怖で身体が震える。実の父親が危篤だと知らされて、平気でいられる娘はいないだろう。
「陽花さん、とりあえず落ち着こう? それですぐに帰る準備をしなきゃ。大丈夫、私も一緒に着いていくから、ね?」
「う、うん……ありがとう、緑……」
 混乱しそうになる陽花とは違い、緑は的確に今するべき事を告げてくる。
 そのおかげで陽花は少し冷静さを取り戻し、震えながらも帰宅準備を始めた。

※※※

「お父さん!」
 あれからすぐに陽花の実家である神社へと戻る。
「おう、予想よりも早かったな」
 けれど、陽花と緑を出迎えたのはお雑煮を食べている父の姿。
 もちろん、危篤な様子など一切ない。
「あれ? すごく元気そうだけど……ど、どういうこと!?」
「いやー、普通に連絡しても帰って来ないだろ? だからまぁ、ちょっと嘘を吐いたんだ」
 陽花の父親は悪びれた様子もなく、2人にもお雑煮を食べるように告げてきた。
「嘘って……! もう! 本当に心配したんだからね!?」
 陽花は持っていた荷物をその場に置き、ぷりぷりと父親に怒る――けど、その様子は怒っているというより、嘘で良かった、という安堵の表情が伺えた。
「……は、陽花さん、えーっと、お父さんが無事で良かったね?」
 陽花と父親のやり取りを見ながら、緑は苦笑している。
「あー、もう……緑、こんなことに巻きこんじゃってごめんねー」
 がっくりとうな垂れながら陽花が謝るけど「ううん、冗談なら冗談に越したことないから」とにっこりと笑顔を見せながら答える。
「でも、どうして陽花さんのお父さんはそんな嘘を吐いたのかな」
 かくり、と首を傾げながら呟くと「今日は正月だからね、家の仕事を手伝ってもらおうと思って確実に陽花が帰って来る方法をしてみたんだよ」と陽花の父親はニコニコと満面の笑みで言葉を返してくる。
「キミも可愛いし、一緒に巫女さんをやってみないかね」
「ちょ、ちょっと! お父さん! 緑を巻き込まないでよ!」
「もちろんバイト代は弾むから、正月の神社はありえないくらい忙しいんだよ」
 パン、と両手を合わせ『お願いのポーズ』で訴えかけてくる陽花の父親の言葉に「いいですよ」と緑はさらっと言葉を返す。
 そんな緑に陽花は「ごめんね……」と2度目の謝罪をしたのだった。

※※※

「お父さん、来た以上はしょうがないから手伝うけど、こういうのはやめてよねっ」
 巫女装束に着替えた陽花がジロリと父親を睨みながら言葉を投げかける。
「手伝いが必要なら、ちゃんと言えば来るから! こういうタチの悪い事をしたら、本気でお父さんのことを嫌いになるから!」
「わ、わかったよ……」
 陽花が本気で怒っているのが分かり、父親はたじろぎながら頷く。
「ふふ、電報が来た時、陽花さんって本気で心配していたもんね」
「緑! そんな事を言ったらお父さんが調子に乗るでしょ!」
 緑の呟きに、陽花は顔を真っ赤に染めながら言葉を返してくる。その言葉を聞き、ひっそりと陽花の父親は感動していたのを二人は知らない。

※※※

「すみませーん、おみくじくださーい」
「は、はーい! ちょっと待って下さいねー!」
 お正月の朝、陽花はお守り売り場、緑はおみくじ売り場で端から端までを走り回っていた。
「もー! お正月の神社って本当にありえないくらい人が来るよね……」
 慣れているはずの陽花でさえ、泣き言を言いたくなるほどの人の数。
 しかも歩きづらい&走りづらい巫女装束を着ているのだから、疲れは倍増だろう。
「緑、大丈夫? 巫女装束なんて着なれないから大変でしょ?」
 途中で陽花が緑に問い掛ける。
「わぅ〜っ、ちょっとキツいかな? でもでも、全然平気だよっ! 私のやってるモデルのバイトにも付き合ってもらう事があるし、今回は私が陽花さんの手伝いをする番だよっ」
 疲れを感じさせるのない笑顔を見せながら、緑が答える。
「それに、ちょーっとお小遣いがピンチだったからこういうバイトは嬉しいんだよね」
 緑は苦笑しながら呟き「わぅわぅ、お仕事がーんばるぞー!」と任されているおみくじ売り場に戻って行った。
「元気だなぁ、緑は……」
 その姿を見て、陽花は苦笑し、自分も頑張ろうと心を奮い立たせたのだった。

※※※

「つ、つかれたー……」
 売り場が閉まった後、陽花と緑は居間でバタンと倒れこんでいた。
「あ、足がもう動かない……み、緑、大丈夫ー?」
「う、うん、大丈夫……疲れたけど、楽しかったから」
 そうは言っているけど、僅かに声が震えているのは気のせいだろうか。
「いやー、お疲れお疲れ! 陽花と緑ちゃんがいてくれて助かったよー。これはバイト代ね」
 陽花の父親は二人に封筒を渡す。
 バイト代と言うには、少し分厚く、ふたりは互いに顔を見合わせて首を傾げた。
「バイト代兼お年玉って事で! 良ければ来年も頼むよ。さすがに人数不足でなー」
 父親の姿を見て「仕方ないなぁ」と呟く陽花と「また来年もよろしくですっ」とバイト代を見ながら喜ぶ緑。
 その後、家族そろって食事をして、陽花と緑は自分達の部屋へと戻っていく。
 お正月にゆっくり過ごすことは出来なかったけど、たまにはこういうのもいいかな、と思う陽花と緑なのだった――……。

―― 登場人物 ――

jb1871/彩咲 陽花/20歳/女性/バハムートテイマー

jb1826/葛城・緑/20歳/女性/インフェルトレイター

――――――――――

彩咲 陽花様
葛城・緑様

初めまして、水貴透子です。
今回はイベントノベルをご発注頂き、ありがとうございました!
ギリギリになってしまってすみませんー……!
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただけましたら幸いです。

それでは、また機会がありましたら宜しくお願い致します。

2015/1/30
snowCパーティノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年01月30日

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