▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『Orakel小隊、全力温泉紀行! 』
アルヴィン = オールドリッチka2378)&ジュード・エアハートka0410)&ユリアン・クレティエka1664)&エアルドフリスka1856)&ダリオ・パステリka2363)&フレデリク・リンドバーグka2490


 それは余りに突然の出来事だった。
「ミンナー! 明日は6時集合ナんダヨー!!」
 アルヴィン = オールドリッチが満面の笑みで告げたのである。
 同じ小隊の見知った仲間、彼が割と唐突に物事を提案することには慣れているのだが、流石に今回は首を傾げるしかない。
 ダリオ・パステリが一同の疑問を代表してぶつけた。
「リッチー、あいすまぬが、もう少し順を追っての説明を所望したい」
 天真爛漫なアルヴィンだが、これでもダリオの言葉には多少は耳を傾ける。……比較の問題ではあるが。
「あ、大丈夫ダヨ。パッティの豊後丸も一緒に行こうネ!」
「なんと?」
 ダリオに代わって、エアルドフリスが尚も食い下がる。
「アルヴィン、6時に起きて何をするのか。分かっているのはあんただけだと思うがね」
「えー、温泉ダヨ温泉! 皆で行こうと思ッテ、申し込んだんダヨ! 楽しみダネ〜!」
「え、温泉?」
 ジュード・エアハートがエアルドフリスの肩越しに、期待に満ちた顔を覗かせた。
「すごく大きなお風呂もある!?」
「あるヨ、勿論! 明日は迎えが来るからネ、ここに集合ダヨ。遅刻シないでネ?」
 フレデリク・リンドバーグとユリアンは、揃ってこくこくと頷いた。

 そして翌日、迎えに来たのは不思議な乗り物だった。
「すごい! これに乗れるんですか?」
「魔導自動車の一種か? これは珍しいな」
 異文化に興味のあるフレデリクとユリアンは、乗り物の周りをぐるぐる回って熱心に観察している。
 いわゆる観光バスなのだが、クリムゾンウェストでは機械式の乗り物になど滅多にお目にかかれるものではない。
 宿は異世界からたどり着いた人々が経営しており、物珍しい雰囲気が評判で、迎えから凝りまくっているのだ。
「さ、行くヨ! ホラ怖くナイよ〜豊後丸!」
 アルヴィンは柴犬を抱きあげ、足取りも軽く車に乗りこんだ。


 旅館の建物も、実に変わったデザインだった。
「この柱は一体どうなって……」
 玄関先でしゃがみこむユリアンを、アルヴィンが引っ張る様にして連れて行く。
「中はもっと、スゴイと思うんだヨ!!」
 出迎えの人たちの前で靴を脱ぐの脱がないのから始まって、てんやわんやで部屋に入り、そこを落ち着いて見る暇もなく、全員浴用セットを抱えて大浴場へ連行という慌ただしさだ。
「わあ、大きなお風呂ですね……!」
 フレデリクの白い頬が薄紅色に染まる。
 むわっと押し寄せる湯気、ちょっとしたプールの様な浴槽。東洋式のお風呂のことは聞き及んでいたが、見るのは初めてだ。
「あ、急に浴槽に入っちゃダメだよー! みんなが使うところだからね」
 ジュードが手早く衣服をたたみ、後を追う。
 温泉の正しい入り方を知っているのは、この中ではジュードだけなのだ。
「……リッチー、豊後丸はダメ」
「えーっ、置いて行ったラかわいそうダヨ!」
「わふん」
 柴犬を抱きかかえながらアルヴィンが抗議するが、ルールはルールだ。
 ダリオが一つ咳払いすると、顔を近付ける。
「案ずるでない。豊後丸、ここで大人しく待っておれ。できるな?」
「わんっ」
「よし。それでこそそれがしの愛犬であるぞ」
 四角く土間に控える豊後丸に、ダリオは満足そうに頷くのだった。
「パッティーがソウ言うナラ、仕方ないネ」
 アルヴィンもようやく納得する。

 まだ早い時間のせいか、他に入浴客はいなかった。
「ここで体にお湯をかけて、身体を慣らすんだよ」
「こう?」
 ユリアンは言われた通りに、手桶のお湯を体にかける。一見華奢な印象を与えるが、常に敵に身を晒す前衛職だけあって、若い身体には無数の傷跡が残っていた。
 だが当人は全く気にすることもなく、興味津々という風情でそろそろと湯船に足をつけ、やがて肩までお湯につかる。
「おぉぉ……温泉気持ち良い……!」
 目を細め、呻くような声を漏らすユリアン。
 とろけるようなお湯が身体を包みこみ、身体の中に溜まった澱の様な物を溶かし出して行くようだ。
「お風呂が大キイのって、気持ちいいンだネ!」
 アルヴィンは手拭をお湯につけてはいけないと言われ、ターバンのように器用に頭に巻いて乗せていた(※なんだか面白いのでみんな黙っていた)。
 アルヴィンの身体にも無数の傷が刻まれている。
「アルヴィンさんも結構すごい傷だね。それも結構古そう?」
 ユリアンの問いに、アルヴィンはこともなげに笑う。
「日常茶判事ッテいうのカナ? 僕の家は皆コンナ感じなんダヨ」
 ユリアンはほんの僅かだけ真面目な顔つきになる。
 家の事情はそれぞれだ。名門には名門の事情があるらしい。
 だがそんな境遇であっても、いやだからこそ、アルヴィンは皆で笑いあえる場所が好きなのかもしれない。
 ダリオも爪先をお湯につける。
「どれどれ、ではそれがしも……」
 そこにフレデリクが大真面目な顔で声を上げた。
「ふわあ、おかしらが入ったらお湯が溢れ出しちゃいますよ!」
「何、それは誠か!」
 真に受けて動きを止めるダリオに、フレデリクが声を上げて笑う。
「冗談ですよ! とっても気持ちいいから、おかしらも早く入ってください!」
 エアルドフリスはさり気なくジュードの右肩に手拭を掛け、先に立って湯船に向かう。
「俺達も入ろうか」
「え……あ、うん」
 ジュードは手拭の端を握り締め、ほんの少し微笑むのだった。
 傷の話、家の話。どう説明すればいいのか判らない自分を、エアルドフリスはこうしてフォローしてくれる。
 それがたまらなく嬉しかった。


 いくら気持ち良いと言っても、長風呂は慣れないと却って疲れることもある。
 ほどほどの所で上がり、ユリアンは浴衣をひっかけた。
「あとは瓶牛乳を飲むのが身体に良いんだろ? あれ、ええと……こっちがこうで……」
 見よう見まねでなんとか浴衣を着付けるが、お約束で合わせが逆だ。
「それじゃ死んだ人になっちゃうんだよ? ほら、フレデリク君も、ちゃんとサイズを確認して……」
「あれー? 手はどこに通すんですかー?」
 ジュードは皆の着付けに呆れながらも、それぞれがさまになる様に直して回る。
 いち早く浴衣を身につけたエアルドフリスは、脱衣場に備え付けられた飲用の温泉水に気が付いた。薬師だけあって、効用や成分が気になるらしい。
「成程、こちらは飲めるのだな。どれどれ」
 少し硫黄臭い不思議な味わいだ。
「ユリアンも飲んでみるか」
 最近助手をしてくれている僚友に声をかけると、ユリアンは頷いてコップを煽った。
「……温泉と少し味が違いますね」
「あちらを飲んだのか!!」
「飲んでも効くと書いてありましたので気になって」
 真面目なのだが時々信じられないことをしでかす助手に、エアルドフリスは開いた口が塞がらない。
「古代の神様ではない、何でも調べる前に口に入れるのはやめた方がよいぞ」
「そうですね、気をつけます」
 ユリアンは神妙な顔で頷いた。


 湯上りの身体を、ひとまずは休憩所で休める。涼しい空気がほてった体に心地よい。
 ダリオは良く冷えた牛乳を、男前な所作で一気に飲み干した。
「成程、これは美味い」
 腰に手を当てて息を吐くダリオに、通りすがりの浴衣姿の女性達がくすくす笑う。
「うむ、なかなかに良い眺めではあるな」
 エアルドフリスが口調とは裏腹の紳士的な微笑みを向けると、女性達は笑いさざめきながら小走りに通り過ぎていった。
「何がなのかな?」
 ごん。
 エアルドフリスの頭上に、ジュードの声と共に牛乳瓶が落ちて来た。


「おおっ、豪華ナご飯デスネ!」
 アルヴィンがうきうきと箱膳の前に座る。
 部屋には糊の香りも清々しい布団が既に敷き詰められており、別室には心づくしのごちそうが並んでいた。
「今度ハ豊後丸も一緒でイイんですヨ!」
 柴犬を抱っこしながら、ちらりと覆いの紙をめくってみる。
 その後頭部をエアルドフリスのハリセンが強かに打ちすえた。魔法(物理)と書いてあるので、多分結構痛い。
「行儀が悪いであろう」
「み、皆、早く席につくんダヨ!!」
 頭を押さえながらアルヴィンが前方を指さした。

 最初に並んでいる小鉢や小皿の料理をつつくうちに、刺身にあつもの、煮物にてんぷら、茶碗蒸しと、次々と料理が運ばれてくる。
 どれも美しい器に繊細な飾り付けで、目にも楽しい。
「うん、美味しい! 偶にはしっかり栄養もつけないとね」
 細い身体の何処に入るのか、ユリアンはぱくぱくと料理を平らげて行く。
「こちら火をつけますね」
 それぞれの膳の上に置かれた小さな鍋に、給仕の女性が火をつけた。
「すごい! これ、ひとりずつある?」
 フレデリクの声が余りに嬉しそうだったので、相手が思わず笑い出した。
 魚介と野菜の鍋は優しい味の出汁で煮え、何とも言えないい香りが漂う。
「わあ、美味しそう……」
「もういいと思うんだ♪ 熱いから気をつけてね? そのたれにつけると美味しいよ」
 ジュードが説明しながら、海老の天ぷらを箸で器用につまみ上げる。
「エアさん、これ」
 口元に持って行くと、エアルドフリスはパクリと食いつく。
 気持ちいい程の健啖ぶりで、エアルドフリスの御膳はあらかた綺麗になっていたのだ。
「ん、やはり旨いな。どれ、ジュードにもお返しをしようか」
「ありがと……ってエアさん、鍋の野菜押しつけてない?」
「気のせいだ気のせい」
 快活に笑うエアルドフリスに、ジュードも呆れながらも笑ってしまう。

 アルヴィンは刺身をじっと眺めながら、ダリオに尋ねた。
「パッティー。コレ、豊後丸にもアゲテいい?」
「構わぬが……リッチーは食わずともよいのか」
 アルヴィンがこくんと頷く。
「だって、豊後丸も一緒ニ来たノニ。ご飯ぐらいハ、一緒ニ楽しみたいヨネ」
「そうかあい判った。豊後丸、心して食うのだぞ」
「わふん」
 お相伴にあずかり、豊後丸も嬉しそうである。


 たらふく食べて、ここでオヤスミ……になる筈もなく。
「サッキね、お風呂の向こうカラ、こう、良い音がシタンダヨ!」
 アルヴィンが目を輝かせて、片手を振る仕草をする。温泉卓球である。
「ははは、アルヴィンは子供みたいであるな」
 エアルドフリスが笑うと、アルヴィンが横目でちらりと見返して鼻を鳴らす。
「ああ、判ったヨ。ルールーは卓球、下手ナンダネ!」
「……そんな筈はないだろう?」
「じゃあ、逃げたりシナイヨネ?」
 にこにこにこ。
 負けず嫌いと賑やかし好きが微笑みの応酬。
 他の面子に異議もなく、全員で遊戯室へと移動する。

 コーン。
 音を立てて、ボールが台の上で跳ねる。
「イイね? 負けタラ恥ずかしい話、ダヨ?」
「そっちこそ覚悟はできてるんだろうね?」
 アルヴィンの挑発に、ユリアンが浴衣の袖をまくって爽やかに笑う。美味しいご飯でしっかり英気を養って、気力も充分だ。
 カン!
 白いボールがかなりのスピードでネットを超える。
「疾影士の機動性にかけて……っ!」
 浴衣の裾を踏ん張り、ユリアンも負けじと打ち返す。
 カン! コン! カカン!
 壮絶なラリーを、他の4人が首を左右に振って目で追い掛ける。
「しかし思ったのだが」
 エアルドフリスが呟く。
「罰ゲームになる様な恥ずかしい話って、ジュードにそんなものがあるのか?」
「……リッチーって、元々何でも話してくれるしね」
 ジュードがこくんと頷いた。
 これでは賭けが成立しないんじゃないか?
 そう思ったが、ダリオは気にしない。
「どんな理由であろうと、戦は戦。勝つことそのものが目的なのであるぞ! いざ、尋常に勝負!!」
「うわーい、そう簡単には負けませんよ!」
 フレデリクが満面の笑みで力一杯ラケットを振る。
「その意気やよし! 流石は我が同胞である!」
 筋骨隆々のダリオと、女の子のように華奢なフレデリクが卓球台を挟んで向かい合う。
「わん!」
 柴犬の豊後丸も脇で控えて気合を入れているようだった。


 そもそも温泉卓球には厳密なルールはないに等しい。くすぐろうが足元をすくおうが変顔をしようが、相手にボールを打たせなければいい訳なのだ。
 という訳でいつまでも決着はつかず。
「あの〜、そろそろこちら閉めますので……」
 白熱のラリーも、電気を消されては続けようがない。
「ふふっ残念ですケド、勝負はお預けデスネ!」
 ラケットで顔を煽ぎながら、アルヴィンは満足そうだった。
 ぞろぞろと部屋に戻ると、それぞれが自分の布団の位置を決める。6人なので、3人ずつが細い通路を挟んで頭を突き合わせたような格好だ。
「うむ、成程。なかなかに良い枕であるな」
 ダリオがニヤリと笑った。蕎麦ガラだろうか、小ぶりだがどっしりとした枕だ。
「このように使うには、丁度良いぞ……っ!」
 言うが早いか逞しい腕がしなり、枕は空を切って飛んで行く。
「……見切りました」
 涼しい顔でユリアンが布団をまくりあげて、飛んできた枕を受け止める。
「小癪な……! ッムゥ!?」
 悔しがるダリオの後頭部に突然の衝撃。犯人は布団の上で転がって笑っているアルヴィンだ。
「パッティー、油断禁物、ナンダヨ!」
「宣戦布告、しかと受け取った!!」
 別の枕をサイドスローで投げつけるダリオ。アルヴィンは素早く身を捻ると、エアルドフリスを盾にする。
「ぶッ!?」
「おう、すまぬな。だが避けきれぬはうぬの不覚ぞ」
 からからと笑うダリオに、エアルドフリスが顔をしかめる。
「備品を壊すのは感心しないぞ。それに他のお客だっているのだからな、夜中に騒いでは迷惑だ」
 このもっともな苦言に、ダリオと何故かユリアンが真顔で答えた。
「備品に当てぬように投げるのも技の内ゆえ」
「着地で音を立てるのは下手ってことなんじゃ」
 かちん。
「あの、エアさん、ちょっと……」
「そこを動くなよ!!」
 ジュードが浴衣の袖を掴もうとする寸前、既にエアルドフリスは枕を手に飛び出していた。
「エアルドフリスさん、私も援護しますよー!」
 大人しそうな顔をしているが、フレデリクもやはりここのメンバーだ。
 浴衣の裾をはだけ、嬉々として枕をぶん投げる。
「じゃあ3対3だね♪ 猟撃士の力、見せてあげるよ?」
 ジュードも飛んできた枕を受け止めては、狙いを定めて投げ返す。
 
 いつまでも終わりそうにないじゃれあいを横目に、豊後丸は大あくびをして寝そべった。


 とはいえ、お湯に使ってたっぷり食べて、その後の運動ときては、流石に程良く疲れも回ってくる。
「はぁ……はぁ……ちょ、ちょっと休戦……喉乾いちゃったよ」
 布団の上に寝そべるジュードが頬を紅潮させながら荒い息をついた。乱れた裾を片手で直す仕草が、無駄になまめかしい。
「さすがに夜も遅いからな、そろそろ大人しくしておこうか」
 エアルドフリスはそう言いながら、さりげなくジュードに丹前を投げかけた。

 布団を綺麗に整え直し、飲み物を飲んだり寝転んだり。
「今日はアルヴィンさんのお陰でとっても楽しかったです」
 フレデリクが枕に顎を乗せて、嬉しそうに笑った。
「温泉旅館って楽しいんですね!」
「喜んでモラエタなら、僕も嬉しいんだヨ! ワイワイ遊ぶのも偶にはイイヨネ!」
 隣の布団のアルヴィンが、身を起こしてフレデリクの上に乗った。
「デモネ、彼女さんと来るト、もっと楽しカッタリするらしいヨ?」
 含み笑いでぎゅーっとフレデリクの顔に顔をくっつける。
「えっ、じゃあアルヴィンさん、カノジョさんと来たことがあるんですか?」
 フレデリクが目をキラキラさせる。どうやらこういう話題も結構好きらしい。
「んー、カノジョとかそういうのはナイヨ! ま、色々経験はなくもないケドネ?」
 これも貴族の嗜みという訳だ。
「未経験、ではない、ですか……」
 フレデリクが神妙な顔つきになった。
「何も急ぐことはないであろうよ。日々が充実しておればそのうちに機会もあろう」
 ダリオが寝そべりながら笑う。いつも礼儀正しく、かわいらしい見た目の割にどこか鋭い知性を感じさせるフレデリクの瞳が、素の表情をさらけ出しているのが妙に面白かったのだ。
「なあ、エアルド殿!」
 声を掛けた事に他意はない。精々、年齢が近かったことぐらいだ。

 だが何故かエアルドフリスはほんの一瞬、虚をつかれたような表情を覗かせ、ジュードは布団に鼻まで潜りこんで行く。
「ま、そうだな。あんたにもそのうち機会はあるだろうから、気にしない方が良いだろうよ」
 そう答えるエアルドフリスの顔は、いつも通りの緩い笑みを浮かべていた。
「おい。今さり気なく、それがしを慰めるかのような物言いではなかったか」
「おやー? 心当たりでもあったかな?」
 とぼけたやり取りに、ユリアンは布団の中でひたすら笑っていた。
 何がこんなに可笑しいのか分からない。でも、こうして互いの体温が伝わるような距離で、くっついているのが訳もなく楽しいのだ。
 恋も素敵だろう。
 だがいまこうして仲間と過ごす時間も、とても大事なもの。
「他人事ミタイに笑ってるケド、ユリアン君はどうナノカナ?」
 アルヴィンの腕がにゅっと伸びて来て、ユリアンの髪をくしゃっと撫でる。
「え? ……俺は、そういうの……まだだし」
「ふふっ、マダってことは、これから楽しみガあるってコトダヨ!」
「え、ちょ、アルヴィンさん!?」
 アルヴィンは今度はもっと勢いをつけて髪を撫で、ユリアンの頭をぐしゃぐしゃにしてしまった。
 ユリアンが抱えている悩みは、自分にも少し心当たりのあることだ。
 だからこそ、もっと日々を楽しんで、多くの事を経験して貰いたいと思ってしまう。

 エアルドフリスが立ち上がり、部屋の電気を落とした。
「真っ暗じゃない方がいいだろう? 少しつけておくよ」
「有難うございますー! でも寝られるかな?」
 フレデリクの呟きに、ユリアンも枕の上で仰け反っていた。
「なんだか寝るのが勿体ないよね」
「ですよね……!」
 そんな囁きも、次第に安らかな寝息に変わっていく。
 心地よい疲れが眠りの国へと誘い、きっと続きは夢の中で。
「おやすみ」
 優しい囁き声と、そっと触れあう指先に、ジュードは心からの安息を感じながら眠りに落ちて行った。


 束の間の安息が終われば、また厳しい戦いに身を投じる日がやって来る。
 互いに背中を預けられる仲間だからこそ、喜びも苦しみも分かち合っていこう。
 今は唯、絆の心地よさに身をゆだねて――。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka2378 / アルヴィン = オールドリッチ / 男 / 26 / エルフ / 聖導士】
【ka0410/ ジュード・エアハート/ 男 / 18 /人間(CW)/ 猟撃士】
【ka1664 / ユリアン / 男 / 16 / 人間(CW)/ 疾影士】
【ka1856 / エアルドフリス / 男 / 26 / 人間(CW)/ 魔術師】
【ka2363 / ダリオ・パステリ / 男 / 28 / 人間(CW)/ 闘狩人】
【ka2490 / フレデリク・リンドバーグ / 男 / 16 / エルフ / 機導師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お届けにお時間を頂戴しました、温泉旅行の一幕です。
男子校の修学旅行(にしては渋い?)という感じで、楽しく執筆致しました。
皆様にとっても楽しい思い出となりましたら幸いです。
この度のご依頼、まことに有難うございました!
snowCパーティノベル -
樹シロカ クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年02月10日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.