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『たのしいおしょうがつ 』
シグリッド=リンドベリjb5318)&矢野 胡桃ja2617)&夏木 夕乃ja9092)&華桜りりかjb6883)&ゼロ=シュバイツァーjb7501


「せんせー、せんせー起きてください!」
 ゆさゆさ、シグリッド=リンドベリ(jb5318)はベッドで寝ている門木の肩を揺さぶる。
 個室に鍵をかけるという発想はないらしく、その部屋はいつでもフリーパス、夜襲も夜這いも仕掛け放題だった。
 もっとも、だからといってそれを実行に移す者は多分いないだろうけれど。
「初日の出、見るって言ったのです…!」
 ゆっさゆっさ。

 昨夜と言うか、つい数時間前まで、このリビングには住民やその友人達が集まって、大晦日から元日にかけての夜更かしを楽しんでいた。
 ルーレットに人生を託す事で世の悲哀を知るゲームや、海賊に剣を刺しまくる事でS心を養成するゲーム、木片をひたすら積み上げて精神力を鍛えるゲーム、億万長者と無一文という格差社会の現実を知る為のシミュレーションゲーム等々――解説がおかしいとか、細かい事を気にしてはいけない。
 それらゲームの数々を時間を忘れて遊び倒し、漸く皆が寝静まったのは午前四時も過ぎた頃。
「でも今から寝たら、日の出までに起きられる自信ないのです」
 何としても初日の出を拝むのだという使命感に突き動かされたシグリッドは、かくして一睡もせずに朝を迎えたのだった。

 そして今、時刻は六時半を少し回ったところ。
「せんせー」
 ゆさゆさ。
「……ん…」
 もぞ。
「……あぁ、そうだったな…」
 眠そうに目を擦りながら、門木は体を起こした。
 あと五分とか、寒いから出たくないとか、多少はゴネるかと思ったが、寝起きは悪くない様だ。
「華桜さんも待ってるのですよ。リュールさんは……うん」
 誘おうかなーとは思ったけれど、きっと「寒いから嫌だ」って全力で拒否される。
 それで、ものすごーく冷たい目で見られて、一気に身体が冷えて、正月早々に風邪をひいて。
 障らぬオカンに祟りなしだ、うん。
「外は寒いですから、ちゃんと暖かくしてくださいね」
 毛布と温かいお茶を持って、いざ出発。
 とは言っても何処か遠くへ出かける訳ではない。風雲荘の屋根に上れば、そこからは水平線までよく見えるのだ。
 そしてこの場合、梯子もロープも必要ない。
「章治兄さま、お願いするの…です」
 毛布にくるまった華桜りりか(jb6883)が、ちょっと眠そうな目でぺこりと頭を下げた。
「……ん」
 飛行が苦手な門木も、ただ抱えて飛ぶ程度なら問題ない。
 二人を屋根の上に運び、自分も並んで座る。
 東の空は既に暁の色を帯び始めていた。
 やがて僅かに丸みを帯びた水平線に白く輝くラインが浮かび上がる。
「ご来光なのです…!」
 正確には山の稜線から昇る朝日の事をご来光と呼ぶらしいが、何となく語感がおめでたいことだし、水平線から昇る初日をそう呼んでも差し支えないだろう。
 太陽に向かって思わず手を合わせてから、改めてご挨拶。
「新年、明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます、です」
「……ん、おめでとう」
 無事に日の出を拝んだら、身体が冷える前に家に入ろう。
 もう一度布団に入って二度寝……は、だめですか。
「今日は皆で初詣に行くのですよ?」
 寝正月をしている暇はないのです(きりり


 日本の正月と言えば、やはり女子は振袖、男子は紋付袴だろう。
 近頃は正月だからといって特に着飾る事も少なくなっては来たけれど、やはり一年の節目には、襟を正す意味でもきちんと正装をしたいものだ。
 というわけで、りりかは薄桜色に濃い桃色で桜の柄が入った振袖姿。
 結い上げた頭には桜の簪、羽織ったかつぎにも桜柄の透かし模様が入っていた。
「章治兄さまには、紋付袴を着てほしいの」
 りりかのリクエストに応えて、門木は正装でお客様のお出迎え。
「お正月、ね」
 矢野 胡桃(ja2617)は、烏の羽のようなしっとりとした黒が艶やかな振袖姿。
 所々に散らした桃色の花模様が可愛らしさを出してはいるが、全体的に大人の雰囲気に仕上がっている。
「似合うかしら?」
 問われて、門木はとりあえず頷いて見せた。
 内心ではまだ少し早いんじゃないかとか、ちょっと背伸びしすぎかな、などと思っている事は秘密だ。
「ふぅん?」
 それを見透かしたわけでもない、と思いたいが、何しろ相手は陛下であります。
 嘘発見器の如き特殊能力を所持していても不思議はないのであります。
「それで、具体的には? どこが、どんな風に、似合うのかしらmgmg」
 早くも新年初mgmgであります。
 大人びた衣装に身を包んでも、中身は変わらぬ平常運転。
「陛下、りんりん、シグ坊、それに門木先生、明けましておめでとうやな! みんな今年もよろしゅうな〜♪」
 なんでもできる人ゼロ=シュバイツァー(jb7501)は、もちろん着物の着こなしも一流だ。
 紋付袴だけが男の着物ではない。
 粋な着流しに、上は前を開けたとんびコート――インバネスコートとも呼ばれる、ケープを合わせた丈長のコート――を羽織っている。
 まるで大正時代から抜け出して来た様な、レトロでエレガントな雰囲気だ。
 門木と並ぶと、これはまた何と言うか、逆ナンが捗りそうな……げふん。
「あけましておめでとうございます、です。今年もよろしくなの……」
 りりかがきっちりとお辞儀をすると、髪に挿した桜の簪がしゃりんと音を立てた。
「新年あけましておめでとうございます。みんな。今年もよろしくmgmg」
 胡桃陛下もこのmgmgさえ自重してくだされば、お淑やかなレディに見えない事もないのだが。
 あ、いえ、見えます! 見えますよ、ねえ?
「女の子は着物着たりで華やかなのですねー(ほわ」
 かく言うシグリッドは普段着にマフラーとねこみみニット帽という、正月らしさの欠片もない格好だった。
 ここは当然、ダメ出しをするべき場面だとは思いませんか?
 思いますよね?
 というわけで――
「振り袖じゃない、だと…」
 夏木 夕乃(ja9092)が出会い頭にネタを振る。
「夏木さん、ぼく男の子ですから…!」
「知ってますよ。オトコノコですよね」
 待って、今のそれちょっと漢字で書いてみてくれる?
「男の娘ですね」
「夏木さん違う、それ字が違うのです…!」
「うんうん、シグさんの場合は字が違うんですね」
 あかん、通じてない。
「それで、振袖は着ないんですか?」
 重ねて問われ、シグリッドはぷるぷると首を振る、が。
「シグ坊、着付けなら俺に任しとき、とびっきりの別嬪に仕上げたるで?」
「振袖なら、あたしがもう一着持っているの」
「きっと似合うと思うわ、よ」
「……うん」
 包囲網が完成しました。
「さあシグ坊、もう逃げられへんで? 観念せいや」
 とてもとてもわるいかおで迫るゼロさん。
 シグくんピンチであります!
「なんて、冗談ですよ?」
 新年の初弄りもこれくらいにしておこうか。
 にこりと笑った夕乃は、ついでにさりげなーくシグリッドの帽子に簪を挿した。
「全然さりげなくないのですよ…!」
 流石にこれは気付くか。
「……可愛いと、思うが」
 それを見た門木が不思議そうに首を傾げ、ぽつりと呟いた。
「……どうして、嫌なんだ?」
「だってこれ、女の子が付けるものなのです…」
「……似合ってるなら、どっちでも良いと思うが」
 それに、よく見ればそれは花手鞠で遊ぶ猫のデザインになっている。
 帽子に付ければ良いアクセントになりそうだ。
「……ほら」
 門木の手で挿し直されれば、拒否など出来る筈もないと言うか寧ろ歓迎。
 カワイイものが似合うカッコイイ男っていうのも、目指す方向として間違ってはいない気がする。多分、きっと。
 神様への願い事、追加で良いかな。
「それじゃ、皆で初詣に行くのですよ…!」
 あ、リュールさんは――
「寒い」
 その一言で、片付けられた。


「リュールさんの分まで、お参りして来るのですよ」
 残念だけど仕方がない。あの人は動かないと言ったらテコでも動かないのだ……目の前に余程の餌でもぶら下げない限り。
「でも、思ったほど寒くはないのです。ほら、じっとしているから余計に寒く感じるってよく言いますよね」
 シグリッドは足早に歩きながら、無理に笑顔を作って見せる。
 大丈夫、動けばそんなに寒くな……寒く、ない筈――
「さ、寒いのです…!」
 北風さん頑張りすぎ……!
 たまらず、シグリッドは門木の腕にしがみついた。
 それで温かくなるかと言えば、多分そんな効果はなさそうだけれど。
「気分の問題なのです」
 実際、多少は温かいし。
「やっぱりそこがシグさんの定位置ですよね」
 のんびりと歩きながら夕乃が笑う。
 反対側の定位置にはりりか、そして胡桃さんは安定の背中に貼り付いてmgmgであります。
 お陰で門木は背中ぬくぬく、しかしこれで良いのだろうか中三女子。
「問題ないきゅぃ、今はこももんがなのきゅぃ」
 人が多くなって来たら変身解除して、黒振袖のクールビューティに戻るから。
 クールビューティの定義って何だっけとか、言ってはいけない。
 そしてこの布陣は門木を逆ナンから守る為でもあるのだ。
「これならきっと、誰も声かけて来ないのです…!」
 シグリッドの視線の先で、ゼロは早くも両手どころか周囲に花。
「門木先生も自分から声かけてみたらどうや? 女の子の五人や十人軽く釣れるやろ!」
「ゼロおにーさん、せんせーを悪の道に誘うのはやめてください…っ」
「章治兄さまは、わたさないの…ですよ?」
 両脇の護衛は守りを固める。
 しかしゼロは全く動じず、二人の頭を両手で撫でた。
「シグ坊、りんりん、これは悪の道ちゃうで? 男として当然かつ必然の王道や」
 可愛い女の子や綺麗な女性を見かけたら、何はなくとも声をかけ、褒める。
 それが男の嗜み、いや礼儀というものだ。
 そう、ナンパとは決してやましい下心から行うものではない。
 綺麗なものを綺麗だと素直に認めて褒め称える、純粋で穢れのない心から生まれる、神を崇める行為にも似た崇高な行いなのだ。
 その結果、相手の女の子に気に入られて良い感じになる事も、稀によくあるかもしれない。
 しかしそれはあくまで結果であって目的ではない。ないのだ。
「モノは試しや、一度やってみぃ?」
 しかし門木はぷるぷると首を振る。
「……知らない人は、怖い」
 人見知りの激しい彼が自分から声をかけるなんて、とてもとても。
「残念やな。まあ、アドバイスが必要ならいつでも相談に乗るで?」
 気軽に声かけてやー。

 そんなお喋りをしながら辿り着いた拝殿前。
「神社のお参りはこうするのですよ」
 作法を知らないであろう門木に、シグリッドが見本を見せる。
 まずは水舎で手と口を清めて、拝殿前で軽く一礼、お賽銭を入れたら鈴を鳴らし、深く礼を二回と柏手を二回。
(今年もみんな無事に過ごせますように…! それから――ごにょごにょ)
 お願いをしたら一回深く礼をして、最後に軽く一礼。
 神社によって作法に多少の違いはあるが、大体これで問題はないだろう。
 皆でお参りを済ませ、後は御神酒や甘酒をいただいて、おみくじを引いて。
「折角ですし、皆でおみくじ勝負しませんか?」
 夕乃が言い出した。
「一番良いのが出た人が勝ちという事で!」
 まずは言い出しっぺの本人が――あれ、どうしたの?
「凶でした」
 悦び事なし、病人本復叶いがたし、望みごと叶わず、失せ物は出がたし、売り買い悪し。
 唯一、待ち人だけは来るらしいが、ほぼ良い事なしの散々な結果だ。
 夕乃はがっくりと膝をつき、新年が始まってまだ数時間だというのに、もう既に終わった様な顔をしている。
「ま、まあ、夏木さん。おみくじって、そうならない様に気を付けましょうって、神様が注意してくれるものだそうですから…」
 シグリッドが慰めてみるが、夕乃は浮上する気配がない。
 しかし大丈夫、下には下がいるものだ。
「おみくじ? んなもん悪魔力で大吉やな」
 ほーら見ろ、見事に大吉を引き当て……ん? 大凶?
 万事障り多く艱難苦労あり、何事も慎まざれば命も危うし……だそうで。
 しかし問題ない。そんなものに左右されるゼロさんではないのだ。
「俺は悪魔やからな。大凶すなわち人間で言うところの大吉や。却って縁起ええんちゃうか?」
「んと、あたしは……中吉なの、です」
 りりかのくじには、その心正直なれば望みごと成就す、と書いてあった。
「うれしいの……」
「吉、ね。当然だわ」
 胡桃は憂い散じて喜びに向かい、病人本復、喜びごと十分、待ち人来り、旅立ち最も吉、物事障りなし。
「ぼくは大吉だったのですよー! せんせーは……」
 え、大凶?
「……万事心のままならず、甚だ苦労ごと多し……だそうだ」
「だ、大丈夫です! せんせー右利きですよね?」
 左手だけを使って木の枝に結べば、凶が吉に転じるという説があるそうだ。
 それに、どん底の運勢である大凶は、それ以上は下がりようがない。
 後はもう上っていくだけの最高に良い運勢であるとも言えるのだ。
「そんなもんは酒で流しちまえばええんや、御神酒ってのはその為に用意してあるもんやで?」
 ゼロが適当な解説をしながら門木を引っ張って行った先では、参拝客に御神酒と甘酒が振る舞われていた。
「あまくて、おいしい……からだが、あったまる、の」
 そして何だか、ふわふわ気持ち良い。
 甘酒も作り方によってはアルコール分が僅かに残るらしいが、もしかして、それで酔ったのだろうか。
 へにゃりと微笑み、りりかは門木の腕にしがみつく。
 いつもは控えめに袖を引く程度だが、今日は随分と大胆だ。
「にいさま、にいさま。むこうにやたいが、たくさんならんでる、の」
 りりかは門木をぐいぐいと引っ張って、沿道に並ぶ屋台の方へ連れて行く。
「ちょこばなな、たべたいの……」
 酔っ払っていても、りりかはやっぱりチョコ娘だった。
「右腕、私はクレープが良い、わ。寒いから、お汁粉も良いかしら、ね。あと綿菓子とリンゴ飴と、お土産にべっこう飴も」
 ゼロさん、胡桃陛下が甘いものを御所望です。
「ああ、あれやな」
 ちょっと待ってろと、珍しく素直にパシるゼロさん。
 しかし、戻って来た彼がその手に持っていたのは――
「右腕、違う。それはクレープ違うな?」
 ケチャップライスを卵とクレープ生地で巻いたオムクレープは、スイーツではない。
「それは右腕、自分で食べなさい?」
 食事は拒否、断固拒否、正月だからといって妥協はしないのだ。
 しかしゼロの方も正月だからといって妥協も手加減もする筈がない。
 今年最初のねじ込み、いきまーす!
「いや、食べなむぐぅ!」
 焼きそばクレープやお好み焼きクレープ、ピザクレープ、カレーピラフを巻いたクレープもあるよ!
「これは美味しいです」
 照り焼きチキンマヨクレープにかぶりついた夕乃は満足顔で微笑む。
 口の周りが照り焼きソースやマヨネーズでべったべただが、そんな事を気にしていては美味しいものも美味しく食べられない。
 え、さっきのおみくじダメージはどうなったって?
 そんなもの、とうに忘れましたね。
「次はお正月らしく、搗きたてのお餅をいただきましょうか」
 神社の一角では餅搗きも行われていた。
「ぼくはちょっと、お守りを買って来るのですよー」
 シグリッドは色々な種類の海運グッズが並んだ一角へ。
「お守り、せんせーは開運除災とか家内安全とかでしょうか…」
 悩む。真剣に悩む。
 心願成就守に交通安全、強化成功の為に必要なのは仕事運か、それともこの「必勝」と書かれたお守りか。
「あ、身代お守りなんていうのもあるんですね」
 何かあった時に、お守りが身代わりになってくれるのだろうか。
「何もないに越した事はないですけど、全部持っていれば間違いはないですね、きっと」
 それから、恋愛成就のお守りは自分用に。
「…気休めなのは解ってるのです(むぐぐ」
 後は破魔矢に達磨、お札に羽子板、熊手、招き猫、縁起物は全部買っておこう。
 絵馬も奉納した方が良いだろうか――


 初詣の後は真っ直ぐ家に帰るのが良いらしい。
 寄り道をすると、せっかく神様にいただいた福を落としてしまうのだそうだ。
 というわけで、お参りを済ませたら元旦から開いているデパートの初売りセールも福袋も、ちょっとお菓子を買いに寄りたいコンビニの誘惑も振り切って。
 しかし、家に帰ってもまだまだ今日は終わらない。
「皆でお正月遊びをするのですよ…!」
 やっぱり、まずは凧揚げかな!
「シグ坊、何言うとるねん」
 正月と言ったら羽根つきだろう常識的に考えて。
「ゼロおにーさん、それはただ皆の顔で遊びたいだけなんじゃ…!」
「よぉわかったな、しかし女の子の顔に墨を塗るのもアレやし、代わりにシグ坊を筆にして書き初めでもするか!」
「どうしてそうなるのです…っ!」
 さあ究極の選択です、羽根つきか書き初めか!?
「羽根つきで、お願いします」
 ぐぬぬ。
「そういう事やから、顔に墨塗られたらシグ坊のせいやで?」
「ご心配には及びません」
 羽子板を手に、夕乃が颯爽と立ち上がった。
「まず最初に、私がお相手しましょう」
 羽根つきにはちょっと自信があるのです、ふふふ。
「夏木さんか。よし、この俺の圧倒的な実力見せ付けたるわ!」
 ゼロのサーブで試合開始!
 しかしその直後「キィィン」という高周波音がギャラリーの耳を圧した。
 それは二人の間を羽根が超高速で飛び交う音。
 羽根の軌跡はレーザー光線の如く空間を切り裂き、その余りの速さに動体視力が追い付かない。
「何が起きているの、です?」
「……」
 りりかの問いに、胡桃は黙って首を振る。
 もはやそれは、常人には垣間見る事さえ叶わない別世界。
「これはぼくの知ってる羽根つきではないのです…」
 えーと、この超次元羽根つきはひとまず放置して、こっちはこっちで普通の羽根つきをして遊ぼうか。
「んと、これはどうすれば良いの…です?」
「バドミントンと同じだと、思えば良いわ、ね」
 ただし打ち損ねるごとに、顔に墨を塗られるところがバドミントンとは違うところだ。
「じゃあ、女の子同士で楽しくやりましょう?」
 言いながら、胡桃は着物の袖をたすき掛け。
 対するりりかも見よう見まねで袖を纏めあげ、羽子板を構える。
 楽しくやろうと言いながら、二人とも目が本気だ。
 大きく上段に振りかぶって――キイィィン!
「やっぱりこれも、ぼくの知っている羽根つきではないのです…」
 流石には撃退士、普通にやっているつもりでもパワーとスピードが尋常ではない。
 いや、シグリッドも撃退士だが、とても真似出来そうには思えなかった。
「せんせー、ぼく達は普通に楽しむのです」
 羽子板を下手に構えて、下から上に、カコーン。
 はい、それを打ち返して――スカッ。
 さすが見事な空振りですね。
「初めてなら、打てなくても無理はないのですよー」
 なでなで、シグリッドは門木の頭を撫でる。
「暫くは練習ということで、墨も塗らないのです」
 でもそれが終わったらちゃんと墨塗りますからねー。
 髭とか書いちゃっても良いかな。
「うわあぁぁぁ負けましたあぁぁっ!」
 向こうでは夕乃vsゼロの勝負が付いた様だ。
「ほな遠慮なくオモロイメイクさせてもらうな♪」
「くっ、仕方がないのです。でも次は負けませんから……!」
 あ、これ顔じゅう真っ黒になるフラグかも。
 胡桃とりりかの勝負は、落としても見なかった事にするという紳士、いや淑女協定が結ばれた様だ。
 そして。
「右腕、レディにはハンデを付けるもの、よ?」
 というわけで、女子三人が手を組んだ。
「三対一で良いわよ、ね?」
 拒否権? 知らない子ですね。
 ふふふ、いくら腕に覚えがあってもこれでは勝てるまい!
 いざ、ゼロを黒く染め上げるのだ。
 真っ黒にしたら、次は凧揚げと独楽回し。
 お腹が空いたらお雑煮とおせちを食べて、後は部屋の中で遊ぼうか。
 リュールも巻き込んで、福笑いに、すごろく、かるた――
「最後にゼロおにーさんからお年玉をもらうのです」
「なんでや、そこは――」
 門木先生やろと言いかけて、ゼロはとても悪い顔をした。
「せやな、シグ坊を落として落とシグ坊玉や!」
 そーれゼロコースター発車!
「どうしてそうなるのですうぅぅぅーーー!」

 今年も、彼等はみんな仲良しであります。
 めでたしめでたし。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb5318/シグリッド=リンドベリ】
【ja2617/矢野 胡桃】
【ja9092/夏木 夕乃】
【jb6883/華桜りりか】
【jb7501/ゼロ=シュバイツァー】
【jz0029/門木章治】
【未登録/リュール・オウレアル】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、STANZAです。
いつもありがとうございます。

遅くなりまして、申し訳ございません。

皆さんの門木に対する呼び名は、変更があったリプレイを基準に判断させて頂きました。
もし何か間違い等ありましたら、リテイクはご遠慮なく……!
snowCパーティノベル -
STANZA クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年02月10日

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