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『家族写真 』
ウルシュテッド(ib5445)&ニノン(ia9578)&明星(ib5588)&宵星(ib6077)


 かすかな振動を響かせ飛空船は海原の上空を進む。旅行用の大型船は座席が広く思いのほか快適に過ごすことができた。
 窓に頭を預けぼんやりと外を眺める明星。穏やかに凪ぐ海は水平線の少し手前で灰色がかった緑から鮮やかな青へと変化をみせる。あの先が今回避暑ならぬ避寒旅行で行く泰国だ。
(……困ったな)
 飛空船の下を飛ぶ海鳥の群れを視線で追いかけ心の中で呟く。先ほどから明星は不自然なくらい外ばかり見ていた。
 父、母、妹、弟二人そして自分、泰へは家族で行くはずだった。だが出発直前、養父ウルシュテッドに急な仕事が入り、自分と養母ニノンの二人で先に行くこととなったのだ。
 当然今明星の隣にはニノンが座っている。妹や父がいれば話もできるのだが、二人きりだと何を話していいのかわからない。結果、沈黙が続いていた。
 「理想のお母さんができた」ととても喜んでいる妹宵星の顔が浮かぶ。
(僕だって……)
 と、思いかけ首軽く振った。続く言葉は判っている。だが改めて言葉にすると恥ずかしい。
 そう自分達の母となったニノンに対し照れがあるのだ。
 理由は簡単だ、と慎重に視線だけ動かしニノンを見る。誰がどう見ても自分達を親子だとは思わないだろう。似てる、似てない以前にニノンは明星と同じか1、2歳上の綺麗なお姉さんにしかみえないのだから。
 視線に気付いたニノンに飴の入った缶を差し出された。
「ずっと座っているのは退屈じゃろう? 気分転換に飴でもどうじゃ」
「あ……りがとう」
 飴を一つ口に放りすぐに外へと顔を向ける。
 それに……と思う。双子の妹やまだ幼い義理の弟達の事を思えば自分は兄として母から一歩引いた位置にいるべきではないか、とも。もしも自分がニノンの傍にいたら弟妹達は遠慮して母に甘えることもできないだろう。
(……そっけなかった、かな?)
 少し経ってから先ほどのやりとりを思い返す。
 自分の態度がこのぎこちなさを作り出しているのはわかる。ならばどうすれば?と問うても答えはでてこない。
 要はどう接すればいいのかわからないのだ。
(どうして二人で先に行けなんて言ったんだろう?)
 一応理由は説明された。今回の旅行は明星と宵星の実母の墓参りも兼ねている。だから先にい行って墓の掃除をしておいて欲しいと頼まれたのだ。
 その理由は納得できる。だがそれなら明星と妹でよかったのではないだろうか。一応自分も妹も成人した開拓者でもあるのだから。それに二人の弟には母が必要だとも思う。
 だというのに「皆の事は任せて」と父と弟達のことを請け負った宵星に、「お母さんの事、ミンシンがちゃんと護衛するの。任せたからね?」と念まで押されてしまったのだ。
(飴……甘いな……)
 コロンと小さくなった飴玉を口の中で転がした。

 慌てて飴を頬張り視線を外す明星にニノンはいかにも年頃の男の子じゃな、と笑みを堪える。
(年頃の男子と継母とは微妙なものじゃのう)
 互いの間のぎこちない空気にニノンも勿論気付いていた。尤もあの年頃の男子ならば仕方のないことだともいえよう。
 だから視線を外されたり、二人きりになると無口になるのも不快ではない。寧ろ妹や弟のために常に自分を律し兄らしく振舞おうとする彼が見せる思春期の少年らしさが微笑ましいくらいだ。
 間もなく昼時。ニノンは膝上の包みを開け弁当を取り出す。
「そろそろ昼食でもどうじゃ? わしの手作りじゃ。なかなかの自信作じゃぞ」
 弁当は明星の好きな生姜焼きである。出発前日からタレを仕込んで作った自信作だ。
「いただきます」
 一口食べた明星から「美味しい」と漏れる声にニノンは「そうじゃろう」と満足そうな笑みを浮かべる。
 しかしやはり目が合えば視線は背けられてしまう。
(そのうち仲良くなれるとよいが……)
 まあ焦る必要はない、と綺麗に空っぽになった弁当箱に思った。
「わしは少し眠るゆえ、何かあったら遠慮なく起こすがよい」
「うん、荷物は見ておくから」
「そう気張らなくともよいぞ。道中のんびり行こうではないか」
 生真面目に答える明星にニノンは笑ってから背もたれに身体を預け目を閉じる。
 そう旅も家族も始まったばかりなのだ。何を焦る必要があるだろうか

 明星と宵星はウルシュテッドに引き取られるまでの数年、泰の首都朱春より南にある小さな村で育った。老人ばかりの鄙びた村だ。
 覚悟していたとはいえ、久しぶりに訪れた村の様子に明星は言葉を失う。
 昼間だというのにひそりと静まりかえり、人や馬が往来していた農道には乾風に吹かれ落ち葉が転がっていく。
 おしゃべり好きの老婆の家は屋根が半分腐れ落ち、村で一番大きかった馬小屋には馬の姿がない。
 一人無言で明星は先を急ぐ。
 墓地までの道のりで見かけた畑も半分以上が荒れ果てている。廃村寸前、そんな有様。
 当然墓地も荒れるに任せた荒野となっていた。まともに立つ墓石の方が少なく、ぼうぼうと伸びた枯れ草の合間に崩れた石ばかりが覗いている。
 幸い明星、宵星の実母の墓は大きな柿木の近くにあったために見つけることができたが、二人を育ててくれた老人の墓はみつけることはできなかった。
 長いこと風雨にさらされ苔むし名も消えかけた母の墓……。
「……おかあさん……」
 暫し無言で墓と対峙した明星は声を搾り出す。
「今日は報告があるんだ……」
 鼻の奥がツンとして息苦しい。だがそれは気のせいだ、と自分に言い聞かせた。
「僕らに新しい家族ができたよ」
 振り返り「ロウのお嫁さん」とニノンを紹介する。
「驚いた? 僕もシャオもちゃんと二人の子供になって……」
 次第に早口になり最後は駆け足だ。そうしないと今にも声が震えだしそうだった。だがそれも途中で止まる。
 目の前にあるのは今にも朽ち果てそうな母の墓。
 グスっと鼻が鳴った。だが手を握り零れそうになる涙を堪える。
「星頼と礼文って……っ  弟も……」
 でも耐えることができたのは此処までだった。
 寒々しい風にカラカラと枯れ草が音を立て、昼間だというのに遠くで烏が鳴く。
 自分には家族が出来た。だというのに荒れ果てた場所に眠る母はいずれ一人ぼっちになってしまうのだろうか……。そう思った途端涙が後から後から溢れてきた。

『おかあさんが安らかな気持ちでいてくれますように』

 鬼灯祭で記した願い事。あの祭りで実母への気持ちを整理したはずだと思っていたのに。背後に養母となったニノンがいるというのに涙を止めることができなかった。
 ふいに明星の手が温もり包まれる。ニノンが隣に立ち明星の手を握ったのだ。
「二人とも家族を思いやり、開拓者として他人の為にも力を尽くす良い子に育った」
 一度明星へと視線を向けるニノン。明星を咎める色はなく、視線を合わせただゆっくりと頷く。
「今後も家族で助け合って生きてゆく。だから大丈夫じゃ……」
 明星が泣き止むまでニノンは何も言わず手を握っていてくれた。
「では墓掃除といこうかのう」
 袖を捲くったニノンが何事もなかったかのように「ほら、はよう準備せい」と明星を急かす。それがありがたかった。

 掃除を終えた墓地は荒野ではなくなったが、一層寂しさが募ったようにも見える。
 墓の前に佇んでいると視界ににゅっと現れる葉のついた枝。きょとんとする明星の手にニノンが枝を乗せた。
「家の庭の薔薇じゃ。土に挿せば育つぞ」
 ニノンの言わんとしていることに気付き明星が顔を上げる。母が寂しくないように、そして離れていても互いに繋がっていられるように、とニノンが用意してくれたのだ。

「僕らのお母さんはニノンさんだけ。記憶にない生みの母とは比べられないから気にしないで」

 昨年末ニノンに伝えた言葉が耳の奥で蘇る。
(ああ……生みの母とニノンさんを比べていたのは僕のほうじゃないか……)
 墓の傍らに小さな穴を掘り、枝を傷めないようにそっと枝を挿しながら明星は思う。
 ずっと自分の心の中にあった蟠り。だから照れるからとか、弟妹達に悪いからとあれこれ理由をつけてニノンと距離をとってしまっていたのだ。
 顔を上げるとニノンが微笑んでくれる。明星も口元を綻ばせた。これだけで良かったのだ。
笑顔を向けられたら返す……とても簡単なことだった。
「……おかあさん」
 土で汚れた手を払い、墓に向き合う。
「……ニノンお母さんは、僕よりも僕らの事、解ってくれてるんだ……」
 だから大丈夫、と告げる気持ちは清々しい。
(ありがとう……)
 僕を生んでくれて。生みの母へ。
(ありがとう……)
 家族になってくれて。新しい母へ。
「ニノンお母さん、日暮れ前に待ち合わせの町に着くように急ごう」
 帰り道、明星はニノンと並んで歩いた。

 墓参りを済ませた後発のウルシュテッド、宵星、星頼、礼文と合流し泰国首都朱春へ向かう。
 柱や屋根、至る所が朱色に塗られた建物、軒下に揺れるのは黄金色の房飾りの付いた灯籠。所狭しと軒を連ねる土産物屋から日用品を扱う店、水路をしきにり往来する荷を運ぶ船。
 朱春は色鮮やかで賑やかな街であった。
「こっち、こっち!」
 地図を片手に宵星が家族を手招く。待ちに待った泰旅行。出発前からニノンに泰国の話を聞きながら、「一緒に買い物しよう!」と計画を立てていたのだ。行きたいところも観たいところも滞在中に回りきれるかというほど沢山調べた。
「まずはあそこで泰の民族衣装に着替えよう!」
 案内人よろしく、宵星がとある服屋の看板を指差した。此処は泰国の伝統的な民族衣装を扱っている店で、貸衣装や記念撮影まで行っている。
 光沢のある絹に豪奢な刺繍、華やかな泰の伝統衣装は女の子なら一度は憧れるものだろう。
 あれこれ衣装を選ぶニノンと宵星の楽しそうな声に男四人は苦笑を零した。
「二人ともおいで」
 宵星が弟二人を呼ぶ。ついでに父と兄には「ちゃんと着たいのを選んでおいてね」と一言。
「二人にはこれなんてどう?」
 ニノンと選んだ動きやすい丈の短い上着を二人に宛がう。泰結びと呼ばれる独特の結び方の留め具が可愛らしい。
「もう少し大きい方が良いんじゃないかな?」
「小さくなったらまた皆で買いに来れば良いのじゃ」
 二人ともすぐに大きくなるよ、とウルシュテッドが言えばニノンが「父と母を驚かせるほどにすくすく育つのじゃぞ」と二人の頭を撫でる。
「お母さん、お父さんこっちに来て!」
 呼ばれてやってきた二人に「じゃーーん」と嬉しそうに宵星が見せたのは鮮やかな紅色の泰の婚礼衣装だ。貸衣装らしい。
「これお母さんに似合いそう! こっちはお父さんにどうかな?」
 右手に女性用の、左手に男性用の衣装。
「シャオ、二人の婚礼衣装姿見たいなあ。で、家族で写真を撮るの!」
 お願い、と上目遣い。
 そういうことなら、と衣装を手にするニノン。そしてウルシュテッドに断る理由はない。寧ろ娘に「よくやった」と拍手を贈りたいところだ。
「やった、私泰のドレス着てみたかったんだ」
 万歳と手をあげる宵星も無邪気で可愛らしい。

 更衣室の扉が開く。中から金細工の髪飾りに紅の婚礼衣装を纏ったニノンが現れた。途端「わぁ」と誰ともなく上がる感嘆の声。
「お母さん、綺麗」
 深い青の泰ドレスを纏った宵星がうっとりとニノンを見上げる。
 ウルシュテッドはニノンの姿に言葉を忘れ見惚れていた。
 まるで彼女のために誂えたかのように、陽光のように煌く金色の髪、真珠のように輝く白い肌に映える紅色衣装。そして翡翠の目元に一刷けだけ置いた紅の艶やかさ……。

「ニノン……綺麗だ……」
 漸くそれだけ言うことができた。万感の想いを込めた言葉。
 本当に綺麗だった。眩いばかりに……。いずれ式は挙げたい、だが具体的には決まっていない。きっと大分先になることだろう。
 だから思いがけず見ることのできた妻の花嫁姿に目頭が熱くなる。
 なんだか本番では本気で泣いてしまいそうだな……とそっと目頭を押さえた。
「そのように顔を下げると冠が落ちてしまうぞ」
 背伸びをしニノンがウルシュテッドの頭に乗る冠の位置を直す。それから頭のてっぺんから爪先まで見て満足そうに笑った。
「そなたも世界一の男前じゃ」
 どうやら先ほどの独り言を聞かれていたようだ。
「お父さん、お母さん、写真の準備できたって」
 婚礼衣装で微笑む妻の白黒の写真には残らない鮮やかな姿をこの胸の感動とともにしかと胸に刻み込んだ。

 盛装からごく一般的な民族衣装に着替えた一行は街の散策へと繰り出した。食料品の市場を抜け、独特の香りが漂う乾物や薬草などの問屋街を歩く。
 異国の街は歩いているだけでも楽しい。時折屋台で蒸かしている饅頭などの買食いも格別だ。
 店に立ち寄るたびに増える荷物を持つのはウルシュテッドの担当である。妻と娘二人が買い物の計画を立てているときから覚悟を決めていたからさほど問題ではない。
「お昼ご飯は行きたいお店があるんだけど、いい?」
 弟二人と手を繋ぎ屋台を冷やかしていた宵星が二人を振り返る。
「もちろんじゃ。どのような店か楽しみじゃのう」
 いくつか角を曲がり細い路地へ入ると、洗濯物が翻るような地元の人々が暮らす区画へと出た。
 辿り着いた食堂は、年季が入り草臥れた店構えとは反対に通りにまではみ出した卓を囲む客達が賑やかに飲み食いする活気のある店だ。
 品書きにも家庭的な料理が多い。酒も色々とあるが今は子供連れであるからそこは我慢。それに泰はお茶も美味しいのだ。
「よく見つけたなぁ」
 一通り注文を終えウルシュテッドはぐるりと店内を見渡す。観光客は少なく、いかにもといった大衆食堂だ。
「お父さん、このお店覚えていないの?」
「覚え……? 前に来たことが――……」
 首を捻って考えてから「あ」と声を上げた。
「そう、シャオ達が村を離れてからお父さんが最初に連れてきてくれたお店!」
 ね、と同意を求められた明星は「ああ、うん」と宵星の勢いに押され気味だ。
「思い出のお店に家族みんなで来たかったの……」
 はにかんだ笑みを浮かべる宵星はタイミング良く運ばれてきた料理に「あっついうちに食べちゃおう」と皿を配り始めた。
 白い皿に盛られた海鮮と青菜の炒め物、大根餅に蜆の黄酒漬け、重ねられた蒸篭の中には小籠包に翡翠餃子、春巻きなど点心。料理が卓一杯に並ぶ。
「このように美味しい店を知っておきながら教えてくれぬとは……。そなたも中々意地悪じゃの」
 小籠包に舌鼓を打つニノンにからかわれたウルシュテッドが「何せ君の料理に勝るものはないからね」と返す。
「ううん、この味! ほらこっちも美味しいよ」
 宵星が弟達の皿に料理を取り分けてやれば、明星は買ったばかりの服を汚さないように布巾を二人の首にかけてやる。
 胡麻団子に烏龍ゼリー、桃饅頭、甘味までしっかり平らげた。
「そういえば以前、歳を聞かれたことがあったの」
 ウルシュテッドが会計を済ませている間、外で待つ明星の隣にニノンがやってくる。
「あの時は返事し損ねておったが……」
 実は、と内緒話のように顰められた声。
「29じゃ」
「えっ?!」
 予想もしなかった年齢に目を丸くする明星にニノンが真面目な顔をする。
「わしはいいが、おなごに歳を聞くのはやめた方がよいぞ」
「うん、気をつける」
 二人で秘密を共有したように思えてくすぐったい。
「素直な良い子じゃな」
 ニノンが明星の頭をくしゃりと撫でた。

 ミンシンはお母さんの前であんな風に笑っただろうか、とニノンと内緒話をしている兄の姿に宵星は瞬きを繰り返す。
 美人で優しくて家事万能でしかも巫女の先輩でもあるニノンは宵星にとって理想のお母さんだ。ニノンがお母さんになってくれると聞いてとても嬉しかったのを覚えている。
 明星も喜んでいたし二人の結婚を祝福していたのは確かだ。だが実の母のことが気にかかっているのか、それとも幼い弟達に遠慮しているのか、いつもどこか遠慮し距離を置いているようでもあった。
(お父さんの作戦が成功したのかな?)
 自然口元に笑みが浮かぶ。ニノンと明星を二人で先行させようとウルシュテッドが言ったとき、実のところ宵星はあの二人を一緒に行かせて間が持つのかと少しばかり心配した。
 だが父はその場の勢いで物を言う人ではない。何か考えがあってのことだろうと思い、話を合わせたのだ。
 店から出てきたウルシュテッドに作戦成功の意味を込め親指と人差し指で丸をつくってみせる。伝わったのかどうかウルシュテッドは笑顔で親指を挙げて返してくれた。

 その後も有名な庭園を散策したり、水路を船で下ったり朱春を楽しんだ。天儀に比べ、温暖な泰は晴れた日の昼間は春先のように暖かく、梅はもう満開だ。
 とある工芸品店の前でニノンが足を止める。
「茶葉も買ったことだし泰茶専用の茶器はどうじゃ?」
 店先に並ぶ白磁や華やかな彫刻が施された様々な茶器。
 皆であれこれ話し合い、最終的には艶を消された褐色に近い小豆色の急須に茶杯、そして茶盤を選んだ。茶盤の側面には泰では珍しく龍や鳳凰ではなく狼が彫られている。
 ニノンが受け取った包みはウルシュテッドが貰うよりも早く「ニノンお母さん、僕が持つよ」と明星に奪われた。
「……」
 荷物をしっかりと抱く息子の背をウルシュテッドは見つめる。
 明星は無理をしていないかと心配になるほどに弟妹達に対し兄として振舞おうと気を張っていた。
 しかし開拓者であり成人もしているとしても明星はウルシュテッドからみればまだ子供である。それこそ初めての母との生活に戸惑うような。
 だから今回わざと急ぎの仕事を作り二人を先に送り出した。明星が背伸びせずにすむような母子水入らずの時間を作るために。
「明星とわしを先行させたのは、そなたの思惑かの?」
 ニノンに肘で突かれ、さあ、と肩を竦める。
 彼女にこのことを話していなかったがきっと、うまくやってくれるだろうと信じていた。
 そしてその思惑は予想通り、いや予想以上の成功を収めたのだ。
 歩く時はちゃんと前を見て、と弟妹達に注意する明星は楽しそうで、そこに思いつめた表情はない。その横顔にウルシュテッドは双眸を柔らかく細めた。
「……ありがとう」
 告げた言葉に今度はニノンが「なんのことやら」ととぼけてみせる。
「さて頼もしい荷物持ちが増えたことだし、買い物を楽しむとしようかのう」
 楽しげに笑ったニノンが子供達を追う。
「お父さん早く!」
 少し先でニノンと子等が手を振る。ウルシュテッドは自分を待つ家族の姿を、その笑顔を心の中に焼き付けた。
 それは色褪せる事のない自分だけの大切な家族写真だ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名       / 性別 / 年齢   / 職業】
【ib5445  / ウルシュテッド   / 男  / 32歳   / シノビ】
【ia9578  / ニノン       / 女  / 29歳   / 巫女】
【ib5588  / 明星        / 男  / 14歳   / 志士】
【ib6077  / 宵星        / 女  / 14歳   / 巫女】

【星頼/NPC】
【礼文/NPC】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼いただきありがとうございました。桐崎です。

泰国への家族旅行いかがだったでしょうか?
こうして日々を重ねて一歩ずつ家族になっていくのだな、としみじみとした気持ちになります。

イメージ、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクを申し付け下さい。

それでは失礼させて頂きます(礼)。
MVパーティノベル -
桐崎ふみお クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年03月03日

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