▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『―― 2月14日は漢の日 ―― 』
影山・狐雀jb2742

「わふ、イベントの参加ですかー?」
 影山・狐雀(jb2742)は同級生の女の子に誘われ、イベントに参加することになっていた。
(2月14日はバレンタインですし、きっとチョコが食べられるに違いないのですよー)
 誘われた当初、影山はそう思っていたのだが彼の期待は無残な形で砕かれることになる。

※※※

「こ、これはどういうことなのですかー!?」
 影山はイベント会場に着き、ひとり叫んでいた。
 影山は、女の子達からチョコが貰える夢のようなイベントを想像していた――が、なぜかイベント会場に集まっているのはムキムキマッチョ、しかも褌姿の男性ばかり。
「……な、なぜ褌!? チョコじゃなくてなぜに褌!?」
 大事なことなので、影山は2回言ったらしい。
 影山を誘った同級生が言うには、2月14日は褌の日であり、イベントに参加出来るのは男…しかも漢しか無理らしいので、入賞商品のために影山に出場して欲しいのだとか。
「競技は……か、寒中水泳!? こんな寒いのに水泳なんて、し、死んじゃいますぅ……!」
 影山は全力で拒否したが、それを許してくれる同級生ではない。
「……うぅ、チョコがどうしてこんなことに? で、でもなんとか頑張るのですよー!」
 勝負というからにはやはり勝ちたい。可愛い外見ではあるが、影山もやはり男の子なのだろう。

※※※

「うぅ、この格好……凄くすごーく恥ずかしいのですよ……」
 褌一丁になった影山は寒さと恥ずかしさにぷるぷると震えている。
 外見的に可愛い系に入る影山のぷるぷる姿に、周りのムキムキマッチョ男性陣が少しだけ妙な気持ちになっているのを影山だけは知らない。
(……何か酷いバレンタインの過ごし方になってますけど、とにかく頑張るですよー!)
 影山はグッと拳を強く握り締めながら、氷のように冷たい海へと飛び込んだ。
(つ、つめたっ…!? うぅ、このままでは凍死しちゃうのですよ……!)
 水温は影山の予想以上に冷たく、手足が千切れそうな感覚に一瞬意識が遠くなった。
(ぼ、僕を信用してイベントに誘ってくれたあの子のためにも……! ここで負けるわけにはいかないのですー……っ!)
 カッ、と目を見開きながら影山は一気に手足を動かしていく。撃退士ということもあり、他の参加者達を追いぬいて、影山は1着でゴールした。
(や、やった……! 僕はあの子の期待に応えられたのですね……!)
 感動と達成感で胸をいっぱいにしながら、影山は海から上がる。
 すると女性陣から黄色い悲鳴があがった。
(あ、あれ? 何でこんなにきゃあきゃあ騒がれてるのです? も、もしかして僕の勇姿に色んな女性達のハートを射止めてしまったのです?)
 女性達からの黄色い悲鳴に、影山はポッと頬を染めながら心の中で呟く。
「あっ! 入賞しましたよー! 景品は君にプレゼントなのですー!」
 影山は手を振りながら、イベントに誘ってくれた同級生に言葉を投げかける。
「きゃああああっ!」
 しかし、同級生からも黄色い悲鳴……しかも、全力で距離を取られてしまい、影山は「えっ」と驚いたように目を瞬かせた。
「下! 下ぁっ!」
「……下?」
 同級生の『下』という言葉に、影山は首を傾げた後に自分の足元を見る。
 すると、影山が身に着けていた褌が今にも落ちそうになっている。
 素っ裸になるのはギリギリで避けられているが、少しの衝撃で褌は落ちてしまうだろう。
「うわあああああああああああっ……!?」
 泳ぐのに必死だったせいか、影山は褌が外れかけていることに気づかなかったらしい。
「ぼ、僕の褌……!? わふ、わふぅ……っ!?」
 既に混乱状態に陥ってしまったらしく、どうすればいいのか分からくなっている。
 最善の方法は今すぐ褌を元に戻す事だろうが、混乱してしまった影山の頭の中からは、その方法はすっぽりと抜け落ちてしまっている。
「影山くん! 君がそんなに破廉恥な人だとは思わなかったよ! さいってー!」
 ぺちーん、と頬を叩かれ、影山がもぎ取った入賞商品を奪って同級生はその場から去っていく。
 頑張って商品をゲットしたのに、それは奪われ、影山の名声も地に落ちてしまった。
(バ、バレンタインなのに、何でこんなことになっているんですか……!? ぼ、僕が一体何をすれば神様はこんな仕打ちを……!?)
 競泳前は恥ずかしさと寒さでぷるぷると震えていたが、競泳が終わった後の影山は悲しみと絶望でぷるぷると震えていた。
 しかし、彼がぷるぷると震える姿は可愛くて周りのムキムキマッチョ男性陣は少々別な意味で悶えていたのは言うまでもない。

 影山は慌てて更衣室に戻って着替えを済ませ、今日のことは忘れようと決心していた。
 しかし……。

※※※

「あ、狐雀じゃなくて破廉恥さんだ」
「……さすがだな、俺には真似できないよ」
「いやいや、真似したくもないでしょ。大勢の女性の前ですっぽんぽんなんて」
「すっぽんぽんじゃないです! ギリギリですっぽんぽんは免れています!」
「いやー、でも実際に俺がその場面にいたわけじゃないしそうだったか、そうじゃなかったかは分からないなぁー」
 同級生によって事実が捻じ曲げられており、、他の同級生達に広められてしまって、影山はしばらくの間『狐雀』ではなく『破廉恥さん』とニヤニヤしながら呼ばれることになってしまったのだった。
(ば、バレンタインなんて滅びてしまえばいい!)
 破廉恥と呼ばれるたびに、影山は心の底からそう思っていたのだとか……。
 神様は非情だ。
 影山のように純真無垢な少年をバレンタイン撲滅隊員として目覚めさせてしまったのだから……。


―― 登場人物 ――

jb2742/影山・狐雀/11歳/男性/陰陽師

――――――――――

影山 狐雀様

今回はMVパーティノベルをご発注頂き、ありがとうございました。
テンション高くはっちゃけた部分がありますが、だ、大丈夫でしょうか?
影山様にも気に入って頂けるノベルに仕上がっていると幸いです。

それでは、また機会がありましたらご発注をお待ちしております。

今回は書かせて頂き、ありがとうございました。

2015/3/7
MVパーティノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年03月09日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.