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『■タイトル:【MV】伝え遅れた「ありがとう」 』
三日月 壱ka0244)&上霧 鋭ka3535

 ショッピングモールの前で待ち合わせ、と決めていたのだが、五分前に三日月 壱(ka0244)が到着した頃には、既に上霧 鋭(ka3535)はそこに立っていた。
 鋭は壱の姿を確認するや否や、不機嫌そうに言う。
「待ち合わせは十分前集合が基本だろーが」
「え? 五分前で十分だろ。遅れたわけじゃあるまいし」
「まぁ、待っているのも悪くはなかったな」
 くるりと鋭はショッピングモールへ向き直り、ちらりと壱を振り返る。早く行くぞ、という意味らしい。
「はいはい、行きますよっと」
 壱も一緒にモールに入ると、早速目をつけていたアクセサリーショップに向かった。新しいピアスとネックレスを探していたのだ。このモールに新店がオープンしたと聞き、本日の鋭とのデートスポットと相成った。
 ゴツいシルバーリングや、ゴシックなピアス、じゃらじゃらしたネックレスなど、十四歳にしては背伸びをしたアクセサリーを付けては外し、楽しんでいる様子の壱。その向こうで、鋭もいろいろと商品を見て回っていた。
 パワーストーンのブレス、ワイヤーのカチューシャ、どうやって使うのかわからない革紐……。店内にはさまざまなアクセサリーや雑貨が、ところ狭しと並べられていた。
「うん、これカッコイイよな」
 時間を掛けて、壱は気に入った商品を見つけたようで、鋭に見せようと店内を見回した。すると、青いリボンをプリンカラーの髪に付けようとしている鋭がいた。思わず壱は、ブッと吹き出す。
「ひゃははは! 何だよそれ! に、似合わねー!」
 他の客や店員の目を気にするでもなく、壱は鋭に駆け寄って背中をバンバン叩く。
 そんな壱に鋭は無言で肘鉄を喰らわす。鳩尾に入ったようで、壱は少しうめいた。
「急所狙うとか、卑怯だぞ! 痛ってぇ〜!」
 壱は自分の鳩尾辺りを撫で擦る。鋭は何も言わず、付けかけていたリボンを外して元の棚へ置いた。フン、と踵を返して、店を出ていこうとする。
「ちょっ、ちょっと待てよ! 俺、会計済ませるから!」
 壱はレジに数点の小物を持って行き、支払いを済ませた。慌てて鋭を追うと、彼女は店の外で待っていてくれた。壱は少しホッとするが、鋭は何も言わない。そのままくるりと背を向けて、フードコートに向かっていった。
 そうか、そろそろ昼か。混雑して席が取れなくなる前に、食事を済ませておくほうが良いかも知れない。
 二人はお互い黙ったままハンバーガーショップで注文を済ませ、トレイを持って空いている席に座る。
 せっかく二人で出掛けているのに、向い合ってただ黙々とハンバーガーにかぶりつくだけなど、なんと虚しいことか。しかし、鋭は一向に口をきかないし、目も合わせてくれない。ただ、帰ってしまわないだけマシかも知れなかった。
(確かに俺も悪かったけどさ)
 ぶすっとしながら反省の心が首をもたげる壱だったが、すぐにその心の中の首を横に振る。
(暴力はダメだろ、しかも急所)
 鋭に目を合わせられないので、炭酸飲料を飲みながら、壱が向こうの席に目をやると、カップルがいた。男が女に何かプレゼントを買ってやったようで、ホワイトデーがどうのと言って盛り上がっている。
「あ」
 壱は思わず声を上げる。さすがに鋭も何事かと壱を見た。
 バレンタインデーに壱は鋭からチョコレートをもらっていた。手作りだったが、本人は「市販のチョコレートを溶かして固めただけじゃんか」と素っ気なく言っていた。しかしその後クラスの女子の話を聞いていると、そのチョコレートを溶かすだけの作業が恐ろしく手間だということを知ったのだった。
「あの、さ」
「何だよ」
 アクセサリー店を出てから初めて、鋭は反応した。
「バレンタインのチョコ、ありがとうな……」
 改まって言うのも妙に照れ臭く、尻すぼみになってしまう。
 もらった時は、壱は相変わらずの具合で「鋭が手作り?! 似合わねー!」なんて言ってしまったような気がする。鋭はその場は無言で去り、鉄槌を喰らうことはなかったが、そう言えば礼の一言も言っていなかったのだ。
「別に。チョコレート溶かして固めただけだぜ」
 同じ言葉を鋭は口にするが、クラスの女子の話を聞いた後、チョコレートの簡単な作り方をググってみたのだ。そこには、粉々に砕いたチョコレートを、ユセンとかいうまどろっこしい地味なやり方で、時間を掛けて溶かすと書かれていた。
「そのチョコレート溶かすのが大変なんだろ? 手間も掛かるし、時間も掛かるって」
「知ってんのかよ」
 さすがに調べたとは言えず、壱は言葉を濁す。
「聞いたことくらいはある」
「……」
 鋭は壱から目を逸らし、あらぬ方向を見る。その頬は少し赤い気がする。
「あの時はバカにしてごめん。それから、サンキューな。美味しかったよ」
「オレがしたのは溶かして固めただけだ。味ならチョコレートメーカーに言えばいい」
「溶かし方によって味が変わるって知ってるか? 雑に溶かすと、味も雑になるらしいぜ」
「……!」
 壱の豆知識に、鋭も驚いたようだった。
「……まぁ、時間は掛けたからな。美味かったんなら、それでいいじゃねーか」
 素直に認める鋭が愛おしく、壱は手持ち無沙汰にドリンクのカップを弄んでいる彼女の手を包んだ。
「何っ──?!」
「プレゼント」
 見ると、壱の手には小さな箱が握られていて、鋭の手をドリンクカップから外し、それを渡した。
「開けてみろよ」
 ハンバーガーのトレイを横に避け、食べかすをペーパーナフキンで拭き落としてから、鋭はそっとその小箱を開ける。丁寧にリボンを解き、包装紙を開封していく。手つきがいつになく慎重だ。
「うわ……壱、これは」
 それは赤いリボンのモチーフのバレッタだった。
「さっきリボンを付けようとしたら、すげーバカにしたじゃんか」
 鋭い目をして鋭は壱に嫌味を言う。
「あれは、青いリボンだったから似合わねーって言ったんだよ。お前の金髪には、赤のほうが映える」
「壱……」
 リボンが似合わなかったわけではない。色のチョイスが悪かったのか……。
 鋭は妙に納得して、その赤いリボンのバレッタを箱から取り出した。先ほどの店の名前がプリントされた包装紙を見て、わざわざ個包装してくれたのだと気付く。
「勘違いすんなよ! これはついでに買ったモンだ! ホワイトデーとか考えてなかったし」
 会計にやたら時間がかかって、なかなか店から出てこない壱が、店員に「プレゼント包装で」とか言っているのを思い浮かべて、鋭は黙って肩で笑う。ついででも構わない。それがツンデレ壱の優しさなのだ。
「あの……ありがとう……」
 少しだけおしとやかになった鋭は、少し頬を染めて俯いた。
「貸してみろ」
 壱はバレッタを鋭の手から取り、プリンカラーの境目辺りにバレッタを通す。慣れないのでうまく留められない。
「あれ? ここは押すのか?」
「いてーよ。これはこうやるんだよ」
 鋭は壱の手の上に自分の手を添え、バレッタを髪に留めた。少し髪がクシャっとなってしまったが、敢えて鋭はそれを直さなかった。壱と一緒に付けたから。
「ほら、やっぱり断然赤の方が似合うだろ」
「鏡がないからわからない」
「俺が似合ってるって言うんだから大丈夫だ」
「なら、いい」
 それから二人は席を立ち、ゲームセンターの方に向かった。コインゲームやクレーンゲームをして時間を潰し、笑い合いながら楽しい時間を過ごした。
「もうこんな時間かぁ」
 言いながら、壱はすっと鋭の手をつないだ。鋭もぎゅっと握り返す。
 大切にしたいバレッタ、大切にしたい気持ち、大切にしたい恋人──。
 俺は持っている。
 壱はそれを逃すまいと、より一層鋭の手を強く掴んで、帰路に着いたのだった。夕焼けを背に、鋭の金髪に赤いリボンモチーフのバレッタがよく映えていた。



【登場人物一覧】
ka0244/三日月 壱/男性/14歳/人間(リアルブルー)・霊闘士(ベルセルク)
ka3535/上霧 鋭/女性/15歳/人間(リアルブルー)・霊闘士(ベルセルク)

【ライター通信】
三日月 壱さま。
上霧 鋭さま。

ご指名ありがとうございます。
桜井直樹です。
甘々……というよりは、ツンデレ度高く仕上がってしまいましたが、お気に召していただけましたら幸いです。
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします。
このたびは素敵なご参加、ありがとうございました。
いつまでもお幸せに♪
MVパーティノベル -
桜井直樹 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年03月10日

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