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『誕生日を記念の日に 』
アルファスka3312)&ユーリ・ヴァレンティヌスka0239

 二月十四日はバレンタインデーであると同時に、ユーリ・ヴァレンティヌスの誕生日だ。
 もっとも、ユーリはエルフであるため、バレンタインと言うことを余り深く知らない部分もある――のだが。
 しかし、彼女の恋人でもある、リアルブルー出身の青年アルファスにはこれ以上の日はないと言えた。
 ――アルファスは思い出す。ユーリが、自らの側にいてくれるようになった日のことを。

 それはとある依頼でユーリが瀕死の重傷を負った時だった。アルファスはわざわざ友人であるユーリのために見舞いに来てくれた――そして彼女のことを真剣に怒った。ユーリがアルファスにそのとき言われた言葉は、彼女のなかにそれまでとは異なる感情を沸き起こしたのは言うまでもない。
『こんなになるまで無茶をして。ユーリはまるで抜き身の刀のようだ』――
 アルファスが彼女に向けた言葉。それは確かに怒っている口ぶりだったが、その眼差しは同時にひどく心配そうに彼女に向けられていて。
 幼い頃からとある人のための『駒』に過ぎぬ存在だと思っていたユーリに、そんな風に、家族にも等しいその人物以外でまっすぐに自分に向き合ってくれた人はいなかった。だからそのとき思わずこう言ったのだ、
『それなら、アルファス。あなたには、私の鞘になって欲しい』
 と。
 鞘とはつまり、自らの傍にあって、時には戒めてくれる存在。
 そのときのユーリにとってアルファスは間違いなくそう言う存在になり得留、そう感じ取れたのだ。
 その日から、二人の関係は『友人』から『恋人』にレベルアップした。
 でも二人の関係を端から見れば、『恋人』と呼ぶにはまだ少し淡い関係にみえるのかも知れない。アルファス自身はユーリに何度もそれらしい言葉をささやくのだけれど、ユーリの方からは恥ずかしがってそう言う言葉を口にしてくれないのだ。
 目に見えないもの、聞こえないもの、絆というのはそう言うものだけれど、しかしアルファスからすれば少しばかり不安になる。
 だからこそ、アルファスははっきりと自分の想いを改めて告げようと思ったのだ。

 そんなこんなで数日後、ユーリの誕生日当日。
 その日はアルファスが彼女の誕生日を祝いたいからと、ユーリを部屋に招き入れていた。ユーリも当然ながら喜んでその招待を受け、ひとしきり歓談に花が咲く。
 用意していたドリンクやお菓子のたぐいを時折腹に収めながら、話はいくらでもすることが出来た。
 ――やがてふとユーリが外を見ると、ずいぶんと赤い色が空を覆っている。気づけばずいぶんと話し込んでしまっていたらしい、ユーリは
「もうこんな時間になっているんだね」
 そう言いながら慌てて片付けを始めようとしたのだが――次の瞬間。
 突然、どん、とアルファスがユーリのことを壁に追い詰めたのだ。
 これはいわゆる壁ドンという、リアルブルーでは人気のあるシチュエーションなのだが、当然というか恋愛ごとに疎い傾向のあるユーリはそれを知るよしもない。
 ただ、目の前に迫るアルファスの顔に、どきりと胸を高鳴らせた。
 そのまま、アルファスは己の顔をユーリの顔に近づけ――そっと唇をかすめる。その行為の意味がわかって、ユーリはいっそう顔を赤らめるばかりだ。
 それからアルファスは、しごく真面目な顔でささやいた。吐息が顔にかからんばかりの至近距離で、知らずユーリはその顔を見つめ返す。
「……鞘になってと言われた時から決めていたよ。相棒としてユーリを傍で守り続けようって……」
 そこでアルファスは、一度言葉を切る。
「……そして今はそれだけじゃない。僕はユーリのことを、一人の女性として……愛してる」
 そう語るアルファスの瞳から感じられる意志の強さに、ユーリは目を背けることも出来ない。いや、背けるつもりは元々ないとも言えるのかも知れないが。
「僕はユーリのこと、大切に想っているよ。もっとも、ユーリはいつも頷くばかりで応えてくれないけれど……一体どう思ってくれているの? 聞かせて欲しいんだけどな」
 悪戯っぽく微笑むアルファスだが、その瞳は真剣そのもの。それに気づかないユーリでもない。彼女は、しどろもどろになりながらも、それに対して返事をする。
「私も……アルのことを愛してる。傍で守ってくれる、大切に想ってくれる……そのこと以上に、私に対してまっすぐに向き合ってくれた……そのことが、何よりも嬉しかったから」
 ぎこちない言葉だが、それは逆に真実であるという証のようなもので。
 アルファスはわずかに微笑みながら、そう言ってくれる『彼女』の唇にもう一度優しく触れ、そしてそっと抱きしめる。
「……ふふ、ありがとうユーリ。そう言ってもらえると男冥利に尽きるよ。……そういえば知ってる? 二月十四日のバレンタインのこと」
 ユーリはその言葉にあいまいに頷く。
「ええと……男の人に女の人からチョコレートをあげる日、だっけ?」
 すると、アルファスはくすりと笑った。
「ああ、確かにそんな意味合いが世間一般では強いけどね」
 だけど、と青年は言葉を続ける。
「本当のバレンタインというのはね、男女が愛を誓い合う日なんだよ。どちらからチョコをあげても問題ない」
 そう言うと、アルファスは口にチョコレートを一欠片放り込む。そしてそのまま、ユーリの唇に己の唇をそっとそっと重ねた。口移しに、チョコレートの甘みがユーリの口中に広がっていく。
「……だから、僕からもチョコをあげるね。……ハッピーバースデー、ユーリ♪」
 ユーリは一瞬何が起きたのかわからなかった。が、すぐにその意味がわかったらしく、顔を一気に赤く染め上げる。
「あ、ありがとう、アル……大好きだよ、私も愛してます」
 一連の行動に顔を染めたまま、ユーリはぎこちなく微笑んで、そして頷いた。口の中にほんのりと香るカカオの香りが、何よりも甘く感じられる。
 ああ、きっとこんな出来事は一生忘れられないだろう。
 お互いが、お互いの本当の気持ちを確かめ合った日。
 そして何より、それがユーリの誕生日であることもとても大事なことで。
 空が藍の帳を下ろすまで、二人は語り合いながら、優しい優しい時間を過ごしたのだった。

 幸せはきっとこんな風に、思いもよらないかたちでやってくるのだ。
 ユーリも、アルファスも、お互いのことを想って幸せな気分になれることが、何よりも幸せなことなのだから。
 二人はきっとこれからチョコレートを食べるたびに思い出すのだろう。
 お互いに気持ちを確かめ合った、この日のことを。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka3312 / アルファス / 男性 / 二十歳 / 機導師 】
【 ka0239 / ユーリ・ヴァレンティヌス / 女性 / 十五歳 / 闘狩人 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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今回はご発注ありがとうございました。
納品の方、遅くなってしまい申し訳ありません。
乙女ゲーム! 乙女ゲーム! と脳内で何度も繰り返しながら執筆しておりましたが、どうだったでしょうか。
バレンタインは誰にとってもきっと特別な日。
お二人にとってもいっとう特別な日になりますこと、お祈りしております。
末永くお幸せに!
MVパーティノベル -
四月朔日さくら クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年03月11日

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