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『温泉旅行が当たったにゃ〜♪ 』
猫宮・千佳(ib0045)


「うににっ?」
 抽選箱を回して出てきたのは、きらきら光る金色の玉でした。
 間髪入れずカランカランとなるハンドベルの音。
「大当たり〜、一等賞〜!」
 ここは神楽の都のとある商店街。
 年度末決算大売出し会場に係員の威勢のいい声が響きます。
 そこで買い物をして抽選をした猫宮・千佳(ib0045)が、思わぬ幸運にびくっとしています。
「い、一等賞は何かにゃ?」
「一等賞は……なんと! 『憩いの湯』温泉旅館一泊二日ペアでご招待だよ〜」
 聞いた千佳にカランカラン鳴らしてテンションを上げる係員。「はいはい。一等賞はあともう一本残ってるからね〜」と周囲への呼び込みも忘れません。
「ペア……誰とでもいいにゃ?!」
「もちろん。家族や仲のいいお友達とゆっくりしてちょーだいね〜っ!」
 そう言って招待券を渡してきます。
「温泉旅館……仲のいいお友達……」
 じっと券を見る千佳。まん丸まなこがさらに大きく見開かれます。
 何度見ても、二枚。間違いなく二枚あるのです。
 にまっ、とその頬が緩みましたよ。
「コクリちゃん、温泉行くにゃ〜っ!」
 早速、どどどどど……と仲のいいお友達のところへ猫ダッシュする千佳でした。



 というわけで、旅行当日。
 「憩いの湯」温泉街で。
「へええっ。いろんな土産物店があるね〜」
 到着したばかりのコクリ・コクル(iz0150)がきょろきょろしています。
「お土産は温泉まんじゅうが定番かにゃ?」
 千佳も一緒に歩きつつきょろきょろ。
「あ。千佳さん、これなんかいいんじゃないかなぁ?」
 コクリ、白い猫の根付を発見していたり。
「うに、コクリちゃんこれ似合いそうにゃー♪」
 千佳は三毛猫の根付を手に取りかざします。
 ほぼ同時に、同じ格好で白猫根付をかざしているコクリと目が合って、うふふ。
「まいどあり〜」
 立ち去る二人に店主の声。仲良く買っちゃったようですね。

 そして温泉宿に到着。
「うわあ、いい景色」
「コクリちゃん、早速着替えるにゃ〜」
 からり、と障子を開けたコクリですが、千佳に手を取られ部屋の奥に。
「ふふー♪ 浴衣の下には何もつけちゃダメにゃよ? 脱ぎ脱ぎにゃー♪」
「千佳さぁん、開けた窓閉めようよぅ〜」
 どったんばったん音がしていますが、安心してください。二階なので部屋の奥なら外から見えません。
「下着を抜くから足上げてにゃ〜」
「んもう、後で同じことを仕返しだからねっ」
 とかなんとか言いつつ、脱がしっことか着せっことかしているようで。
 もちろんこの時、千佳もコクリも気付きません。
 後に、まさかあのようなことになってしまうことを。



 夕食は、部屋で。
「うに〜。美味しかったにゃ〜」
 仲居に膳を下げてもらって、ごろんと千佳が転がります。何とも幸せそうな顔で。
「うんっ。川魚の焼きもの、美味しかったよね」
「茶そばも良かったにゃ〜」
「お米もおいしかったからついつい……お櫃の中、空になっちゃったね」
 コクリはちょっと恥ずかしそう。
「少し運動した方がいいかにゃ〜?」
「それもそうだね。温泉前に一汗かくのもいいかも」
 ということで、確か大広間に卓球台があったはず、と移動です。
 運よく空いているようで、台もらけっとも置いてあります。
「じゃ、いくにゃよ〜♪」
 早速二手に分かれて、勝負!
「うに!」
 千佳、ちょんと緩いサーブ。
「はいっ!」
 すこん、とコクリは手堅い返球。
「うにに!」
「よっ!」
「うにゅ!」
「何の!」
 あらあら。
 だんだん球足が速くなっていますね。
「これはどう?」
 コクリ、右に振りました!
「にゅにゅ!」
「今度はこっち!」
 リターンを今度は次に左に。しかも速いようですっ!
「うにゅにゅ!」
 おっと千佳、逆を突かれていましたが鋭い反応で返しました。
「そんな……あ、そっか」
 愕然とするコクリですが、すぐに納得。
「千佳さんの弱点、分かったよ!」
 そう叫ぶとと真ん中に打ち込みます!
「うにゅ!」
 ぴしり、と額に球を当ててしまう千佳。どうやら左右に素早く動くものには手を出すようですが、正面に来たらじっと見てしまうようです。何とも猫的な動き方で。
「うにに。それなら動き回るまでにゃ〜!」
 すぱん!
「んあっ!」
 次はフットワークを駆使する千佳に狙いが定まらず、逆にストレートに狙われべったんこな胸元にぴしりと食らうコクリ。緩んだ浴衣の合わせから球が中に入ってしまいます。
「んもう。次こそは……」
 熱中しているせいか、手荒に合わせに手を突っ込んで球を出すとそのまままたサーブ。これを浴衣姿なのに元気に動き回る千佳が打ち返し、そしてまた返してと長い勝負が続くのです。

「コクリちゃんいい勝負だったにゃね♪」
「ふぅ、楽しかった」
 ようやく二人とも満足したようです。らけっとを置いたところで周りから拍手が。
「二人とも可愛いよ〜」
「とっても良かったよ。お疲れ〜」
 何と、たくさんギャラリーがいるではないですか。しかも男性ばかり。
 ――はっ!
 ここで二人は気付きます。
「……うに? 浴衣が肌蹴て、にゃーっ!?」
「あ!」
 二人とも着衣がゆるゆるで帯も外れそうな格好になっていました。合わせからぺったんこな白い胸元。下の裾も太腿が健康的にギリギリの位置まで覗いていたり。
「う……やぁん」
 真っ赤になった二人。急いで温泉に逃げ込むのでした。



 で、温泉「憩いの湯」の大浴場。
「ふぅ」
 かぽん、と洗い場の一角に檜の椅子を置き、細く白い背中が腰掛けます。
「さっきはびっくりしたなぁ」
 そう言って細い手を伸ばし、石鹸の泡をしっかりと伸ばして泡々に。
 濡れた前髪がぴとっと額に張り付いている顔は、コクリ。
 その目が「わっ」と見開かれます。
 ずしりと背中に圧力を感じて前のめりです。
「コクリちゃん、身体をしーっかり綺麗に洗って上げるにゃ♪」
 千佳が抱きついてきたようです。裸のまま、コクリの背中にむぎゅ〜。
「えー。大丈夫だよぅ」
「でもでも、さっき汗もいっぱいかいたにゃ? しっかり洗ってキレイキレイになるにゃよ〜」
「ああん、千佳さん〜、くすぐったい〜」
 前の伸ばした手をわしわしわしして泡々に。背中に合わせた体も動かして泡だらけ。
「コクリちゃん、着替える時になんて言ってたかにゃ〜?」
 コクリを手玉に取って上機嫌の千佳が、「にゅふふん♪」と鼻を高くしながら聞きました。
「……う、『後で同じことを仕返し……』」
 真っ赤になって小さく縮こまったコクリ、かろうじてそれだけ答えます。
「仕返しされる前にたくさんたくさん綺麗にしてあげるのにゃ〜♪」
 というわけで、ごしごしふんふん♪

 その後、仕返しタイム。
「んもう、千佳さんったら隅々まできれいにするんだから……」
「にゃ、にゃぁぁ〜……」
 すっかりへろへろになってしまったコクリは千佳の背中に身を預けるようにしなだれると、夢中で前に回した手を動かしています。千佳、んんんと身を縮めて我慢我慢。
 ところが、千佳は長髪なのでたまにコクリの顔に髪がかかってしまうようです。
「あ。んんん……」
「うにゃぁぁぁ……」
 コクリ、これを避けようにも両手は前なのでやんやんと密着したまま体を揺すったり動かしたり。おかげでさらに泡はぶくぶくと広がったりも。
「はぁ、はぁ……」
「うにゃ〜」
 二人とも綺麗になるころには、すっかり脱力してしまいました。

「はふぅ、凄くいい気持ちにゃー。何かお肌がすべすべになりそうにゃ♪」
 その後、湯船に漬かってのんびりゆったり。千佳はたおるを頭の上に載せたまま首まで沈み、ぷはーと満足そうに息を吐いています。
「そうだね。白くて絡んでくるようなお湯で肌に良さそう」
 コクリは小さな肩に湯を掛けてまったり。「ホワイトデーにぴったり」とか言ったりも。
「のんびりにゃね〜」
「うん、幸せだよね〜」
 いつしか二人は肩をぴとっと寄せ、静かに幸福感を共にするのでした。



 やがて、深夜。
 湯上りほこほこな二人は部屋で町の案内図を見て明日の予定を立てたり、お茶を飲んで茶菓子を食べてときゃいきゃい楽しく過ごしましたが、もうさすがにおねむの時間です。
 部屋にはお布団が二組。仲居さんが準備してくれていたのです。
「じゃ、ボクはこっちで」
 コクリは入り口側の布団に入りました。
「うに……それじゃあこっちにゃ」
 先ほどまでの楽しそうな様子が一転した千佳は、しゅんとなりつつ窓際の布団に入ります。
「……明かり、消すにゃよ?」
 千佳が寂しそうに上蓋を持って蝋燭に手を伸ばした時でした。
 くるっ、とコクリが寝返りを打って千佳の方を向いたのです。
 そして、にこっ。
「こっちの布団で、寝る?」
 掛け布団をふわりと上げて聞いてくるのです。
 千佳はぱああっと笑顔に。それはもう、消そうと手を伸ばした蝋燭よりも明るく。
「うににっ、行くにゃ。そっちで寝るにゃ!」
 瞬間。
 がばっ、したたっ、とまっしぐらにコクリの胸元に収まるのです。
「んもう、千佳さんたら」
「やっぱり一緒がいいにゃ。こうすると温かいにゃ♪」
 抱きしめるコクリに、ごろごろと頬を擦り付ける千佳。
「じゃ、明かり、消すよ?」
 コクリ、そう呟いて千佳を胸に抱いたまま手を伸ばし、蝋燭に上蓋をかぶせるのです。
 闇に閉じた後、ごそりとコクリが戻って布団をかぶり直す音がしました。
 やがて静寂。
 寝息だけが一定間隔で響きます。
「……コクリちゃん、またこようにゃね♪ これからもずっと一緒にゃー」
「うん……これからも、ずっと一緒」
 静かに動いた掛け布団の音。
 コクリが千佳を優しく抱きしめた音か、あるいは千佳がコクリに強く抱き着いた音か。
 どちらなのかは、二人だけの秘密です。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 ホワイトデーの温泉旅行をお届けします。まさか温泉卓球とは、と思いつつ千佳さんなら猫っぽく球を見るのかなぁ、とか。とっても楽しかったです。
 あ、そうそう。
 最近、夜は寒いかな〜と思ったら暑かったりしますよね。
 さて、二人は目覚めた時どうなっていることやら。
 前回と同じく、秘密で物語は幕を閉じるのです♪

 ではでは、可愛い温泉旅行をお楽しみください。
MVパーティノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年03月23日

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