▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『おんぼろハウスと愉快な居候達 』
鬼百合ka3667)&春咲=桜蓮・紫苑ka3668)&和泉 鏡花ka3671)&ファウストゥスka3689


 そこは自由都市同盟内…である筈の、何処か。
 陽もとっぷり暮れた山道を、三人のハンターが歩いていた。
「すっかり暗くなっちゃったね」
「もー、しおんねーさんが追っかけてトドメさそうなんて言うからですぜ?」
「しゃーねぇでしょぉよ、あのまんま放っといたらどんな悪さするかわかんねぇですし」
 その良く回る口と同じ様に足取りも軽く、という訳にはいかない。
 軽口は寧ろ、疲れて重くなる足を少しでも軽くする為に、自然と出て来るものらしい。
 今日の仕事はゴブリン退治、そろそろハンター稼業にも慣れた彼等にとっては、難しい仕事ではなかった。
「うん、確かにあれは、しーちゃんの判断が正しかったかな」
 口論を始めた凸凹コンビを取りなす様に、和泉 鏡花(ka3671)がにこにこと笑いながら頷く。
 手負いのゴブリンが逃げた先には小さな集落があった。
 止めを刺さなければ、そこに住む人々が危険に晒されていたことだろう。
「ほーら見なせぇ」
 春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)は鼻高々、傍らの鬼百合(ka3667)に軽くデコピンを喰らわせる。
「てっ! 何しやがんでぃ、キョーボーおんな!」
「だぁれが凶暴オトコオンナですかぃ!」
「お、オレそこまで言ってねぇでさ! ぼーりょく反対っ!」
 ひょいと小脇に抱えられ、ギュウギュウ締め上げられた鬼百合は、じたばたと暴れる。
 しかしその逞しく鍛え上げられた腕は、鬼百合の身体を万力の様に押さえ込んでビクともしなかった。
「はいはい、二人とも仲良しなのはわかったから、喧嘩しないの。ね?」
「「仲良しなんかじゃねぇでさっ!!」」
 鏡花にとりなされ、声を揃えて返事を返した二人は、やっぱり仲良しだ。
「まぁ、何はともあれ無事に解決したって事で、報酬もちったぁ弾みますかねぇ」
 鬼百合を解放した紫苑は、ハンターオフィスに張り出されていた依頼の文面を思い返してみる。
 一匹も逃さずに倒せば報酬は二割増し。元が十万だから、十二万か。
「手に入ったら、余分の二万でなんかパーッと美味いもんでも食いに行きやしょうぜ!」
 流石は江戸っ子、宵越しの銭は持たない主義らしい。
 だが、そんな紫苑に対して黒百合は渋い顔で首を振った。
「しおんねーさん、そういうのは使っちまえばアブク銭ですけど、ちゃんと貯めときゃいつかはでっかい事をやる為の資金になるんですぜ?」
 どう見ても立派な大人である紫苑より、遥かに大人びた事を言う。
 そんな鬼百合に、鏡花が訊ねた。
「鬼百合くんは、お金を貯めて何かしたい事があるの?」
「いや、べつに…特にこれってぇのは」
「目標もねぇのにただ溜め込んでんのは、守銭奴って言うんですぜ?」
 紫苑の言葉に、鬼百合は背筋が寒くなる様な冷たい目を向ける。
「守銭奴で何が悪りぃんですかぃ、世の中なんて金さえありゃどうにでもなるんですぜ?」
 逆に、金がなければ丸腰で敵に挑むのも同然だ。
 それは今までの、決して長いとは言えない人生の中でいやというほど味わってきた。
「うん、鬼百合くんの言う事も間違ってないと思うな」
 鏡花が言い、鬼百合の頭をぽんぽんと軽く叩く――紫苑には無言で「めっ」という顔をして見せながら。
「でも、まずはオフィスまで無事に帰らないとね」
 取りに戻らなければ報酬は貰えない。
 しかし今、彼等は完全に迷子になっていた。
「ここは一体どこなんでしょうねぃ?」
 紫苑が満点の星空を仰ぐが、見慣れない星座は何の目印にもならない。
 ゴブリンを追った先の集落で方角だけは訊いておいたが、本当にこの道で合っているのだろうか。
 土が剥き出しになった舗装もされていない道は、蒼界出身の紫苑と鏡花にとっては獣道も同然。少し油断すると本当の獣道に迷い込んで行きそうになる。
 だが、その度に鬼百合が「そっちじゃねぇでさ」と二人を引き戻してくれた。

 そうして暫く歩くうちに、鬼百合の足が遅れ始める。
「あぁ、子供の足にゃちぃとキツかったですかねぇ」
 気付いた紫苑が少し休もうかと声をかけるが、鬼百合はぶんぶんと首を振って笑顔を見せた。
「だいじょぶでさ、こんなとこで休んでたら危ねぇですし」
 早く帰って、美味しいものをお腹いっぱいに食べて、ふかふかのベッドで眠りたい。
 それに、足手纏いにはなりたくなかった。
 立ち止まったら置いて行かれるかもしれない。
 迷惑をかけたら邪魔だと言われて、捨てられてしまうかもしれない。
(…いや、それはねぇ、ですかね…)
 二人とも、優しいから。
 鏡花は見た目も中身もそのまんま、ふんわりと優しい美人で、憧れのお姉さんだ。
 紫苑だって、言葉遣いも態度も乱暴でガサツだし、女らしさの欠片もない様に見えるけれど、本当は優しくて、いつも自分の事を気に掛けてくれている事は、ちゃんと知っている。
 それに何より、貧しい故郷から連れ出してくれた恩人だった。
 だからこそ、迷惑をかけちゃいけない。
 足手纏いになっちゃいけない。
 嫌われたく、ない。
「ん、ん、だいじょぶ、でさ…」
 自分が言った筈の言葉が、何処か遠くで聞こえた。
「鬼百合、おい、どうしたんでさ!?」
 ふらふらと足元も危なっかしい様子の鬼百合を振り返り、紫苑が走り寄る。
 その腕の中に、鬼百合は倒れ込んだ。
「鬼百合!?」
 小さくて細い身体に触れた途端、紫苑はその熱さに驚いた。
「鏡花、ヒールを頼みまさ!」
 駆け寄った鏡花がその額に手をかざし、精霊に祈りを捧げる。
 柔らかい光が黒百合の身体を包み込んだ――が、効果はなかった。
「ごめんね、これじゃ治せないみたい」
 ヒールは傷を癒す為の魔法だ、それも無理はないだろう。
「とりあえず、これを当てておけば少しは良いかな?」
 鏡花は持っていたハンカチを水筒の水で濡らし、鬼百合の額に当てた。
「さすが鏡花、女子力高ぇですねぃ」
 なんて感心している場合ではない。
 額に当てたハンカチから、あっという間に湯気が立ち上る程の高熱だ。
 薬もない、ヒールも効かない、寝かせる場所もない。
「ここじゃなんにも出来やしねぇ」
 ひとまず、村でも町でもいい、何処か人のいる所へ連れて行かなければ。
 紫苑は鬼百合を背に負って走り出した。
「鏡花、はぐれるんじゃねぇですぜ!」
 油断していた。
 大人びていて、生意気で、殆ど甘えて来る事もない、手のかからないミニ大人。
 そう思って、気を抜きすぎていた。
 タフに見えても、まだたったの十年しか生きていない、小さくて脆い子供なのだという事を忘れていた。
 どうしよう。
 もしこのまま、どうにかなってしまったら。
 自分がもう少し気を付けていれば――

 走って走って、どれくらい走ったのか、もうわからなくなった頃。
「しーちゃん、町だよ!」
 時は既に真夜中。故郷の眠らない町と違って、ここは夜になれば明かりも消えて皆が寝静まる。
 それでも大通りや街道筋の何軒かの家には明かりが灯っていた。
 その明かりを頼りに、紫苑と鏡花は家々を訪ね歩く。
「この近くにお医者さんの家はありませんか?」
「急患なんでさ、お願ぇしやす!」
 しかし、反応は芳しくなかった。
 診療所だと言われて訪ねた家も、夜間は誰もいないのだろうか、いくら戸を叩いても反応がない。
「仕方ねぇ、どっか休める所を探して、朝まで待ちやしょう」
 黒百合をおぶったまま、紫苑は広場にある噴水の縁に腰を下ろし、大きく溜息を吐いた。
 とは言え、宿は何処にあるのだろう。
「宿屋くれぇは、24時間営業だと思いてぇんですがね…」
 ここには救急病院もなければ、夜間診療の当番医もいない。
 コンビニもファミレスもネカフェも、スーパー銭湯もカプセルホテルもない。
 それこそ金さえあればどうにでもなる、故郷の町の何と便利だったことか。
「ここじゃ、金があってもなんにもなりやしねぇじゃねぇですかぃ」
 背中が熱い。
 熱いのは、まだ生きている証拠――そんな事を考えて、縁起でもないと紫苑は首を振った。
「とにかく、ここで腐ってても始まらねぇ…鏡花?」
 立ち上がった紫苑は鏡花に声をかける。
 が、鏡花は先程からそこに立ったまま、じっと辺りの辺りの風景を見つめていた。
「やっぱり、そうだ」
 こくりと頷き、ぴょんと跳ねて紫苑に向き直る。
「しーちゃん、ここ知ってるとこだよ! ほら、ファウさんが住んでる…!」
「ファウ? …ああ、あのやたら目つきの悪りぃ、近寄ると噛み付かれそうな…」
 酷い言われ様だが、少なくとも外見から受ける印象に関しては、間違ってはいないだろう。
「ファウさん、確か薬も作れるって言ってたよね?」
「うーん、確かそんな事を聞いた様な、聞かなかった様な?」
 何しろ仕事で何度か顔を合わせたきりで、紫苑の記憶は何とも心許ない。
 だが、鏡花の記憶なら信頼出来る。
「町外れの一軒家に一人で住んでて、いつも夜遅くまで起きて薬とか作ってるって」
「なら、この時間でも明かりが点いてやすかねぃ」
 とにかく、じっとしていても始まらない。
 二人は明かりの点いた家々を片っ端から訪ねて歩き――


 ファウストゥス(ka3689)は、いつもと同じ様に、ひとり静かな夜を過ごしていた。
 誰にも邪魔されず、ひたすら己の趣味である植物の研究に没頭出来るこの一時。
 それは何物にも代えがたい貴重な時間で――

 ドンドンドンッ!

 しかし、ドアを叩く派手な物音に、思考の糸はぷっつりと切れる。
「こんな夜中に、一体誰だ?」
 面倒臭そうに腰を上げ、玄関に向かって声を投げた。
「そんなに叩いたらドアが外れるだろうが。鍵などかかっていない、入りたければ勝手に入れ」
 泥棒だろうと構わない、どうせ盗られて困る物など何もないし――第一、泥棒がドアを叩いて存在をアピールする筈もない。
 ファウストゥスが玄関に顔を出した直後、ドアを蹴破るような勢いで誰かが転がり込んで来た。
「た、助けてくだせぇ、もうここしか頼るトコがねぇんでさ!」
「お願いします、一晩泊めて下さい!」
 二人とも見覚えがある。
「貴様らは確か――いや、今はそれどころではないな」
 背中の子供が高熱を出している事は見ただけでわかった。
「事情は後で聞く、とにかく入れ」
 ファウストゥスは紫苑の背中から鬼百合を引き取り、寝室へ連れて行く。
 ベッドに寝かせ、汗を拭いてやるようにと二人にタオルを渡し、自分は再び実験室へ。
 次に現れた時、その手には何やら毒々しい色をした液体が入ったカップが握られていた。
「解熱剤だ、飲ませてやれ」
 目を覚まさないようなら、誰かが口移しで――
「じ、自分で、飲めま、さ…!」
 それを聞いて、朦朧としていた黒百合の意識が戻って来る。
「お、オレのファーストキス、こんなトコで奪われんのは、ごめんです、ぜ…!」
「何がファーストキスでぃ、このマセガキが」
 紫苑は軽口を叩きながらも鬼百合を抱き起こし、その背を支えてやる。
 鏡花がカップを持って、口元に近付けてやった。
 目を瞑って、鼻を摘んで、決死の覚悟で――ごくり。
「…あれ。思ったより、不味くねぇ、ですねぃ…」
 寧ろ美味い。
 ファウストゥスにも、子供の味覚に合う様に蜂蜜を入れる程度の気遣いは出来るのだ――どす黒く禍々しい色だけは、どうにもならなかったが。
「飲んだら休め、それが何よりの薬だ」
 そして容体が落ち着くまで傍に付いているつもりらしい二人には、甘いホットミルクと毛布を。
「ありがとうございます」
 鏡花は受け取って礼を言う余裕がある様だが、紫苑はカップを差し出された事にも気付かなかった。
「ほら、しーちゃん。そんなに根詰めてると、しーちゃんまで倒れちゃうよ?」
 鏡花に言われても上の空。
「俺が悪いんでさ…俺が、無理させたから」
「わかっているなら次からは気を付けることだな」
 ファウストゥスが言った。
「子供は自分の限界を知らん。倒れる直前まで元気に遊び回っているのは良くある事だ…だからこそ、周囲の大人が注意をしてやらねばな」
 どうにかして励ましてやろうと考えた末に、客観的な事実を提示してみる。
 結果としてそれが傷口に塩を塗り込む事になったとしても、ご容赦願いたい。
 耳に心地良い言葉をかけてやれるほど、彼は器用ではないのだ。
 しかし、甘い言葉には多分に嘘が含まれる。
 飾り気のない言葉は、だからこそ信を置く事が出来た。
「大丈夫だ、一晩ぐっすり眠れば、朝にはすっかり元気になる」


 その言葉通り――
「オレ、もうすっかり元気でさー!」
 昨夜の高熱は嘘の様に下がっていた。
「ごめーわくおかけしましたねぃ…」
「ガキがつまんねーこと気にするもんじゃねぇですよ」
 目が赤いのは徹夜で看病したせいだと、問われもしないのに余計な言い訳をしながら、紫苑は鬼百合の頭を掻き混ぜる。
 そして…ぱたり。
「しおんねーさん!?」
 今度は紫苑が倒れた。
「ねーさん! しっかりしてくだせぇ! 死んじゃやですよおぉ!! キョーカねーさん、ヒール! ヒールお願ぇしま…っ」
「鬼百合くん、大丈夫。しーちゃん、安心して気が抜けちゃっただけだから」
 涙目で縋り付く鬼百合にニッコリと笑いかけ、鏡花は紫苑をベッドに寝かせてやる。
「しーちゃんも、こっちに来てからずいぶん頑張ってたみたいだし…きっと色んな疲れが溜まってたんだね」
 丁度良い機会だし、暫く休むのも良いだろう。
「オフィスには私が行って来るから、二人ともここで休んでてね。あ、ファウさん。朝食の準備が出来てますから、良かったらご一緒しませんか?」
「ああ、すまんな。ではお言葉に甘えるとしよう」
 今の会話に何か微妙な違和感を感じた気もするが、きっと気のせいだ。
 二人に付き合って徹夜で鬼百合の様子を見ていたから、疲れているのだろう。

 やがて朝食を終え、鏡花が「行って来ます」と言って出て行った時も、「ただいま」と言って帰って来た時も、やはり微妙な違和感を感じた気がするが――
 気のせいだ。
 この家が彼等に乗っ取られかけている気がするなんて、気のせいに決まっている。
「やですねぃ、乗っ取るだなんて人聞きの悪りぃ」
 三日ほど寝込んだ後ですっかり元気になった紫苑が、カラカラと笑った。
「あ、世話んなった礼と言っちゃ何ですがね、屋根の雨漏り直しときやしたんで」
「それは手間をかけたな」
 この家は何しろボロで、それ故に広さの割には格安の値段で手に入ったのだが、必要な場所以外は修繕する余裕もなく放置していたところだ。
「いやいや、礼には及びやせんぜ」
 なんたって、これから必要になる所ですからねぃ――なんていう心の声は、聞こえなかったよね?
「ついでに使ってねぇ部屋なんかも片付けておきやしたから」
「いや、そこまでする必要は…」
「あるんでさぁ、これが。何しろ明日には引っ越しの荷物が届く手筈になってやすんでねぃ」
「おい」
 今、何と言った?
 引っ越し?
 聞いてないぞ?
「言った思えもありやせんね」
 にったぁー。
 紫苑が実に悪い顔で笑う。
「ほら、家ってな人が住んでナンボでしょうよ? 誰も住んでねぇ家は痛みが早ぇって言いますしね」
 命の恩人が、このボロ家に少しでも長く住んでいられる様にという、ちょっとした心遣いでありまして。
「しおんねーさんがここに住むなら、オレはねーさんのいるとこにいますぜ」
 というわけで、鬼百合は屋根裏部屋を勝手に占拠。
「すっげぇでさ! 本がいっぱいありやすぜ!」
 梯子の上から顔を覗かせ、キラキラした目でファウストを見る。
「これみんな、ファウにーさん読んだんですかぃ?」
「ああ、私の蔵書だが」
「オレ、読んでも良いですかねぃ、良いですかねぃ!?」
「…勝手にしろ」
 もう、そう言うしかないではないか。
 どうせこいつら反論なんて聞きやしないのだ。
「ご心配なく、お家賃はちゃんと払いますから」
 鏡花がにっこりと笑う。
 常識人に見えたのに、やはり彼等の仲間であったか。
「…いつの間にこうなった?」
 いつの間にか、ですね。
 その見事な乗っ取り手法には、脱帽する他はなかった。
 だが、悪くない。
「この家も、一人で住むには広すぎるからな」
 ファウストゥスは近寄ったら噛み付かれそうな笑顔を見せた。

 かくして、ボロボロだけど広くて意外と住み心地の良いこの家で、なし崩し的に共同生活が始まったのであった!



 そして数ヶ月。
「しおんねーさん、部屋は片付けましょうぜ…」
 紫苑の部屋は、立派な汚部屋と化していた。
 服や小物が散乱し、足の踏み場もない部屋を見渡して、鬼百合が溜息を吐く。
「良いでしょぉよ、汚れたまんま放り出してるわけじゃねぇんですし」
 箪笥や長持に仕舞うのが面倒だから、目に付く場所に重ねて置いてあるだけで。
「これ、オレが片付けちまっても良いですかねぃ?」
 良いですよね、でないと絶対片付かないし。
「って、し、下着はちゃんと片付けてくだせえよ!」
 服の山にさりげなく混ざったぱんつを発掘してしまった鬼百合は、思わずそれを放り投げる。
 あかん、ほんのり淡い恋心が形になる前に砕けて散りそうだ。
「もう少し恥じらいや慎みがあれば可愛げもあろうに…」
 貴様も苦労するな、と鬼百合の頭を撫でながらファウストゥスが首を振った。
 多分きっと、使用済みのぱんつを「今日ファウが洗濯当番な」なんて放り出す日も近い。
「しーちゃん、女を捨てるのは、まだ早すぎると思うよ…?」
 ちゃんとすれば美人なのに勿体ないと、鏡花までが溜息を吐く。
「…父さんに拳骨でも貰えりゃ、ちったぁ片付きますかねぃ」
 ぽつりと呟いた紫苑は、その考えを振り払う様に首を振った。
 いつかまた会えたら、思いっきり拳骨と…ハグを貰おう。
 それまでは、ここで。
「鏡花、買い物行きやしょ買い物!」
「あっ、オレも! オレも行きやすぜ!」
 置いて行かれては大変と手を上げる鬼百合だったが。
「良いんですかぃ、下着売り場に直行ですけどねぃ?」
 ニタァと笑った紫苑に慌てて首を振る。
「じゃ、じゃあオレはファウにーさんと薬草採りに…」
「冗談でさ、黒百合もファウも、皆で一緒に美味いメシでも食いに行きやしょうぜ!」
 ファウの料理は食べ飽きた、などと余計な事を言わなければ可愛げがあるものを。
 いや、それが彼女なりの可愛げ、かもしれない――?



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

押しかけ居候ズ
【ka3667/鬼百合】
【ka3668/春咲=桜蓮・紫苑】
【ka3671/和泉 鏡花】

押しかけられ家主
【ka3689/ファウストゥス】
MVパーティノベル -
STANZA クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年03月23日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.