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『チョコより黒き深い底から 』
矢野 胡桃ja2617)&加倉 一臣ja5823)&月居 愁也ja6837)&夜来野 遥久ja6843)&小野友真ja6901


 いつもと変わらぬ朝だった。
 いつもと変わらぬ日常が、そのまま始まると、いつから錯覚していた?


「良い天気、ね。素敵な依頼はあるかしら」
 現在、『魔法』を勉強中、ダアトへ転科している矢野 胡桃は、ピンクプラチナの髪をかき上げ空を見る。
 その向こうに、黒い翼が見えやしないかだなんて、思ったところで小さく自嘲する。

「友真? どうした?」
「……大学部、なんやなって」
「進学してから何か月経ったと……。時々、朝に立ち止ってると思ったら」
「だって、今までは学部棟の前でお別れやったやん!」
「まあな」
 感動に震える小野友真を、加倉 一臣はポンポン撫でる。
 時折、自分の想像していないところで可愛いことを考える恋人だ。
「この! 感動を! 一緒に一歩を踏み出せる感動を、俺はですね!!」
「滑り込みセェ――――ッフ! 見たか遥久、俺の俊足に掛かれば多少の寝坊も遅刻にあらず!」
「愁也。轢いているぞ」
「バックアタック、華麗に決まったな。気配も読めないようじゃ、まだまだだぜ友真☆」
 月居 愁也は誇らしげに胸を張り、夜来野 遥久は愁也の足の下から友真を救出すると、ライトヒールを掛けてやる。
「はよ。……相変わらずだな?」
「愛すべき日常に、変わりはないな」
 一臣と遥久は、軽く視線を交わして肩をすくめあう。

 それぞれが、それぞれの教室へ向かい、扉を開ける。
 いつもと変わらぬ日常の幕開けだ。



 ――扉を開けると、そこは黒ミサ集会所でした――


「「 ど う し て こ う な っ た 」」




 これは、時空の狭間に召喚されし七名の勇者による、土鍋とチョコレートと愛と勇気の攻防の記録である。




 薄暗い部屋の中。
「おにーさんたち、どうして中等部に?」
 胡桃が、大きな目をパチクリする。
「おっはよ、胡桃ちゃん! え、中等部?」
 愁也が振り返る。
「それにしては、黒いですね。室内の壁という壁を黒い幕で覆い、照明はロウソクのみ。教室というよりは、黒ミサという形容が合うでしょうか」
 説明ありがとうございます、遥久さん。
「なんでミサとか考えたらあかんて知ってる、ミサな…… そうな……」
 右の扉を開け、左の扉から戻ってきた友真の目からハイライトが消えていた。
「やぁ、筧さん。今年『も』堪能しよう……」
「……今まで俺が整理してきた書類の枚数を数えてやろうか……」
 一臣が微笑みを向けた相手、筧 鷹政の目も死んでいる。
「筧さんイエーイ…… ミサ一緒にやろうぜぇ……」
「こんな黒ミサして、何か召喚されなきゃいいけどな ……おい、何か増えてる」
 夜目を発動した一臣は、闇に紛れる存在を発見してしまった。
「わたしは、召喚獣になった覚えはないのだけれど」
 黒いコートに、黒いスーツ。肩辺りで揃えられている黒髪の間から、金の眼だけが色彩を持っていた。
(あ。……あ?)
 見覚えがあるような、無いような。一臣と友真は目を凝らす。
(誰だっけ)
 面識のない、愁也と遥久は顔を見合わせ首をかしげる。
「…………」
 胡桃一人が、その存在を凝視して二の句を告げずにいた。
「おや、胡桃。久しぶりだね」
「……そうね、濡羽の君。私の想いが、あなたを呼んだのかしら?」
 にこり。笑顔を交わす二人だが、間の空気は甘いだけではない、ような。どこか危うげで、それすら楽しむような。
「それにしても、大きな炬燵ですね……」
 どういうチョイスでこの七名かは横に置き、遥久は現状の把握に努める。
 七名が余裕で入れそうな炬燵の上には、土鍋が設置されていた。
「そうだ闇チョコフォンデュしよう……」
 土鍋の中に湛えられているのがチョコレートであることを知り、愁也は唐突に提案。
「土鍋でチョコは、洗うのが大変そうな気もしますが」
「ゴムベラでチョコを払ってから熱湯注いで洗剤……かな」
「食う順番も大事ですよこれ! くじ引きしよ!? 筧さんくじ作ってー!」
 真顔で対策を考えるのは鷹政の背中へ、友真アタック!
「友真。轢いてる、轢いてる」
「俺の精密殺撃も精度を増してきましたよね……」
「……フッ。――ここは既に、俺の間合いだ」
 掌底と共に鷹政復活、吹き飛んだ友真は天井へ激突したかと思うと床から戻ってきた。
「なんや、楽しくなってきますね?」
「完全放置も構わないんだが、軽く状況説明を頂けると有り難いかな」
 コートを脱いで畳みながら、カラスは胡桃へと訊ねた。
「仕方ないわね……」
 炬燵。土鍋。それらの傍らに、革張りの箱が設置されていた。サイズは1m四方程度。
 胡桃は歩み寄り、箱の上に貼られている紙を剥がす。読み上げる。


【具材のお約束】
1 食べられるものであること
2 お残し禁止。完食する事(ただし、残さなければ誰が食べても。「誰が食べても」OK)
3 一人持ち寄る具材は2つまで

守らない子には、それはそれは恐ろしいチョコの呪いがあるとかないとか

具材は不思議ボックスの中からなんでも取り出せます

 
「覚悟は、良いかしら。……さあ、始めましょう?」
「今年も楽しいチョコパだぜぇ……」



●一巡目
 ほかほか、心地よい炬燵の中。
 土鍋からは、甘いチョコレートの香りが立ちのぼる。
「軽くディップして食べるのがチョコレートフォンデュだけれど、鍋だもの、ね」
 甘いものは大好きです。胡桃の目はうっとりとしている。
 くじを引いた者から、闇ボックスより具材をチョイス、投入して着席。
 そうして場は整った。
「カラスさんは初めましてー、だよなー? 闇チョコフォンデュは初めてか、力抜けよ」
 胡桃とは逆隣りに座る愁也が、ばしー、とカラスの背を叩いた。
「ふむ。二つ名に『闇を渡る』を冠する身として、多少の勇姿は見せておくべきかな」
 意外と乗り気であった、この天使。
「そちらは新タイプ社畜さんでOK?」
「定時上がりが信条だよ」
「ふふ、冗談。定時でなんて、帰らせませんよ……。楽しんでいこうぜい、……この恐ろしい鍋をな……」
 ハメる気全開で、友真は器と箸をカラスへ渡した。


「特攻隊長は俺、か……」
 どこからとなく怪しげな音楽が流れる、闇の中に浮かび上がるは馬マスクに黒の全身タイツ姿で踊る男。
 黒ミサ・チョコフォンデュの儀式の舞いである。
 遥久の眼差しが冷ややか? ご褒美です。
「神よ…… 貴方の声が聞こえます…… 私が選ぶべきはぁああああ!」
 ――カッ!
 愁也の箸が、迷いなく一点を引き上げる!!
「なんでチョコレートの油脂の中に油もの入れるんだよ!!」
「以前トンカツが入っていたから、今回は鳥だ。……不満でも?」
「さすが遥久、フライドチキンの皮は仕上げの黒コショウがスパイシーでチョコレートに合うな! ジューシィな身には、フォンデュの熱さとトロミが絶妙!!」
「えっ、愁也さんの美味しそう…… フライドチキンのチョコ掛けなのに、めっちゃ美味しそう……」
 迫真の食レポに、友真の身体がフラリと揺れる。
「遥久が投入したモノは俺のモノ…… 闇チョコフォンデュの神は確かにいたぜ……」
 案外と美味しかったです。
 愁也、愛の力も手伝って、難なく完食。


「俺も踊った方がええんやろか。え? 時間の都合? ……わかった、おとなしくする」
 姿勢を正し、友真は鍋と向き合った。
 鋭敏聴覚で耳を研ぎ澄ませ、鍋の『声』を聞く。
 夜目で、闇の中に浮き沈む美味しいものをピンポインt ……誰かが俺を見ている気がする。どこから? 鍋から。
「今年の俺は一味も二味も違う……何せ大学生やからなぁ!」
 呼びかけるならば、応じよう!
 いざ!!!
「……」
「友真、どした? 泣くほど酷かったか?」
 とんとん、一臣が背を叩いて水を差しだしてやる。
「……い」
「うん?」
「めっちゃウマイー!! え、なにこれ 甘くてすっぱい、噛みごたえがあって、すっごいチョコと美味しいん!! オランジェットみたいなん!」
「ああ。わたしが入れたものだね。ドライフルーツ三種をピックで留めてあるんだ。あんず、マンゴー、パイナップル。どれも相性はいいだろう?」
 興奮する友真の向かい側で、カラスがにこりと笑った。天使の隣の胡桃の肩が、小さく震える。
「本気を……出したのね、ヴェズルフェルニル?」
「いつだって、手を抜いた記憶は無いよ。胡桃が、一番よく知っているはずだが」
(かかかかかずおみさん)
(どうした?)
(これ、あの、俺、引いたらアカンやつだったでしょうか……)
(完全に飲み込んでるから、そのまま空気ごと飲み込んでおきな……)
(……そうする)


 今のところ、引き当てる具材は順調に良いものだ。
 かといって、この先もそうであるという確信は皆無。遥久は、よく知っている。
「安心して良い、去年の過ちは繰り返さないぜ……」
 オチャメ心で投入したらっきょうを、遥久が引き当てた。
 あの時の恐怖を一臣は忘れていない。
 どうか、遥久が怖いものを引きませんように。
(自分以外のことで神様に祈るなんて久しぶりだな……)
 固唾を飲んで、一臣も様子を見守る。
「…………」
 薄闇の中、遥久の眼差しは真剣そのもの。
 箸先が、流れの中の一つを捉えた。

 <○><○>

「……加倉」
 にっこり、遥久は斜向かいの一臣へ圧力の籠った笑顔を投じた。
「アッ、ハイ」
(光ったな、今、目が、光ったな!?)
 ――来る、
 一臣が身構えるも、
「愁也、あーん」
「あーん!」
「!?」
 なんたる引っかけ、遥久は隣に座る愁也へと獲物を―― 渡すと見せかけての
「薙ぎ払いパァーーース!!!」
「その連携は酷い!」
 油断した一臣の口へ、チョコでコーティングされた何かがシュートされた。
 甘い、硬い、大きい、なんかガリッといった、からの
「ツーンてキタァアアアアアアア!!」
「わ、おみおにーさん、大当たり! 山葵まるっと一本、なのです」
「こももちゃんからのぷれぜんとならかんしょくもたやすいぜぇ……」
「モモちゃん……こういう時容赦ないよな、それもいいとこな……」
 お水とお茶と、どっちが良い……?
 貰い涙しつつ、友真は一臣の背をさすってやった。
「前回に続いて削りものが当たるねぇ、加倉」
「逆サイドから食べてくれてもいいんですよ、筧さん……」


 鮮度のいい山葵で、大量に涙を流した後は思考がシャッキリしているから不思議なものである。
「怪我の功名とでも言おうか……。今なら、美味しいものを引き当てられる気がする。いや、確信がある」
 一臣の目つきが、戦場における狙撃手のそれとなる。
 標的を定め、そして――!!
「むっちりとした弾力、ほのかな甘み、そして最後までチョコぎっしり! このちくわ…… 俺が入れました」
 完食の後、床に両手を突いて絶望している。


「私は辛い・苦い。以外なら平気。むしろチョコ鍋は私の領域ね」
 ふふっと笑顔。胡桃は幸せな気持ちいっぱいで、鍋に挑む。
「……」
 引き上げた瞬間、甘味を愛する者として直感が囁いた。
 これは、甘くない。
「どした、モモちゃん? 顔色悪いで。キツそうやったら、代わりに食べたるで!」
「ほんと? ゆまおにーさん……」
 アップルグリーンの潤んだ瞳が、友真を見上げる。小動物のような愛らしさだ。
「もちろん」
 庇護欲をキュンキュンにくすぐられつつの、
「ただし俺とは限らないけどな!! カラスさんパース!」
 ぐいっ
 胡桃の手を軽く方向転換、隣に座る黒髪の男の口元へ。
「…………」
「うん? それほど辛くはないね。何と言ったっけ…… そうそう、タマネギだ。玉ねぎの天ぷら、だね」
「…………っっっ」
「美味しかったよ、胡桃。きみは、玉ねぎが苦手なのかい?」
「…………っっっっっ」
 長い髪を耳へ掛けつつ、悪戯っぽくカラスが胡桃の顔を覗き込む。
 ばふっ、無駄に端正な顔へ座布団を押し付け、胡桃はくるりと背を向けた。
 至近距離『あーん』は、たぶん、とても心臓に悪いやつ。
(借りを返したつもりやったけど…… これはあれ、カラスさんも確信犯やね?)
(たぶん わかっててやってるよな)
 赤くなって小さく丸くなる少女へ、友真と一臣は言葉を掛けてやれるでもなく闇鍋は続く。


 折角なので――
 そう遥久が切り出した。鷹政が鍋と睨めっこしている時だ。
「筧殿、カラス殿、それぞれにバレンタインの思い出なんてありますか?」
「……天使って、そういうのあるの?」
 鷹政がカラスを見遣る。
「残念ながら、無縁だねえ。人界には長くいるけれど、あまり人前に姿を見せないから特定の誰かと親密になることは無かったしね」
「過去形」
「過去形」
 鷹政と愁也の声が重なる。赤髪二人の反応は、こういった場合だいたい被る。
「え、じゃあ、これからはそういう予定があると?」
 友真がレポーターよろしく箸を向ける。
「どうだろうね。わたしだって命は惜しい、戦争の最前戦はもう御免だよ」
 闇チョコ鍋の最前線にいながら。
「天界にはこうしたイベントは特にないし、縁があるとしたなら人界、わたしが人界に降りるとしたなら平和な用事じゃない。そういうことだね」
「そこで『ビジネスライク』発揮するんすね……」
 遊びに来たっても良いんですよ……?
「筧殿は―― 最近に関しては聞くに及ばずでしょうけれど」
「ははははは、ドウモ。高校時代の罰ゲームがあってな。
バレンタイン当日の朝イチに学校最寄りのコンビニで仲間内の人数分、チョコレートを買ってくるって言う」
「なにそれ切ない」
 想像して、一臣は両手で顔を覆う。
「紙袋を持参して、『値札はがして全部これに入れて下さい』までがセット」
「やめて! もうやめて!!」
 愁也が耳を塞いだ。
「でもな……。放課後、最終的に1個ももらえなかった奴らへ分配する儀式が、一番つらい……。全員がつらい」
「バレンタイン、罪深い……」
 胃の辺りを抑えて、友真が呻いた。
「自虐的行為により、他の痛みを紛らわす……。ある意味で合理的な手法でしょうか」
「遥久、最後まで聞いて感想がそれかよ!」
 

 友真の投入したいちご大福は、皮の部分が熱で溶け、とろりとチョコレートと絡み合い絶妙な美味さだった。
 ほくほく顔の鷹政の順番を終え、一巡目ラスト、カラス。
(ハズレ引け、ハズレっ)
 大人げない念を送るは一臣。
「さぁ濡羽の君? 辛いのと甘いの。貴方は得意? 苦手?」
 復活した胡桃が、座布団を抱きかかえながらカラスの様子を伺う。
「ははは。何が当たっても驚くとは思うけど……」
 悩むだけ無駄。
 意外と綺麗な箸使いで、天使はひょいと一品選ぶ。
 器に入れ、半分ほど切り分けてから口へ運ぶ。
「……。…………?」
 軽く、眉間にしわが寄る。
「胡桃。どう思う?」
 残る半分を『あーん』。
(愁也さん。思うんですけど、あの天使、素で悪い奴なんと違いますか)
(解説の友真さん。俺も同じこと考えてました)
 カラスが引き当てたのは、鷹政の持ち込んだ具材だった。
 甘い甘いサーターアンダギーのチョコレート掛け。
 仕様以上の甘さに感じたのは気のせいですか。



●二巡目
 興が乗ってきました第二巡目。
 折り返すかのように、再びカラス。
「なるほど」
 大きさや食感は、先のものに似て――
「…………」
 真顔になる。
「生地から液体が溢れ出し、甘さが暴れまわる…… と、いったところだろうか? 全体的には先と似た雰囲気だが、香り付けが違うな」
「おめでとう、濡羽の君。それは人界で一番甘い食べ物、『グラブジャムン』ね?」
 自分が入れたものを引き当てたのだと知り、胡桃が手を叩いた。
「甘いもの、好きになってもらえたかしら」


 予感は、紙一重と言っている。
 ぐぐぐぐ。胡桃は器へと乗せたソレを見つめ、エイヤと食いついた。
 チョコレートと、ふんわり生地。その奥に…… ジューシィな挽き肉が待っている。豚まんである。
「相性は抜群、ね」
 少女が、幸せそうに微笑む。
 一臣はスマートな所作で綺麗に残された『豚まんの魂』である部分を頂戴した。
「こちらは、おにーさんたちが食べようね」
「今度は、アイスバー入れるなー……」


「……よく、出汁が染み込んでいます」
「奇遇ですね、筧殿。こちらもです」
「「…………」」
 どうやら、互いに相手の投入したものを引き当てたらしい。
 筧は、遥久がチョイスした『おでんの大根』。
 遥久は、筧の投入した『はんぺん』。
「ハズレってほどでは、ないんだよなぁ。俺、甘いもので酒飲むし。アリかナシかで言うならアリ。日本酒欲しい」
「こちらは、マシュマロ感覚で楽しめますね」
「なんか、思ってたより平和な鍋っぽいな。おっしゃ、俺も波に乗る!」
 無警戒で、愁也が挑む。
「アツアツの、ホクホクの、香り豊か ……にんにくの丸焼きってどういうことなの!!」
「『風邪の予防』に良いらしいね。人間であるきみたちに、有意義なものをと思ったのだけれど」
「よぉっしカラス、人畜無害な笑顔してねぇでそこ座れ」
「カオスレートの変動が凄まじいぞ、愁也」
「気合で変動するものなの!!?」
 立ち上がる愁也を、遥久がたしなめる。その言葉にこそ、一臣はツッコミを入れずにはいられなかった。


 口に含むと、チョコレートと一緒に磯の香りがトロリと広がる。
 生臭さは無く、口どけはどちらかと言えばミルキーとも表現できるこれは……
「ホタテやない…… 牡蠣、それも三陸産のプリッとしたやつ!!」
 友真が震えた。絶妙に火が通っていて、旨味が溢れている。
「どうよ、牡蠣も美味いだろ! たまには違う路線で攻めてみた!」
 身を乗り出して、愁也が得意げに歯を見せた。
「……」
「どしたん、一臣さん。牡蠣、食べたかった?」
 鍋を見つめたまま、沈痛な面持ちでいる一臣へ友真は振り返る。
「ふむ。そうか、加倉は……」
「うわぁあああん!!」
 遥久が察し、形のいい顎へ手をあてて言葉を紡ぐ、その前に一臣は叫んだ。
「なんで! 俺だけ! 二回とも自前なの!! 美味しいんですけどね! ラスクさくさく!!」
「まあ、山葵も食べたし、豚まんも食べたし」
「思い出させないでください、筧さん」
 山葵のツーンは、思い出すだけでしばらく泣ける。




 こうして黒ミサは終わりを告げる――はずだった。

「戻らないんだけど」
「……加倉が二回とも同じものを引いたから、か? 全員が違う相手の物を引くまで終わらない、とか」
 天井を見上げる愁也、推察する遥久。
「はるおにーさん! それかもしれないです」
「えっ、俺なの!?」
 胡桃が腰を浮かせ、一臣の肩がビクリと跳ねる。
「楽しいもんな、俺は何度でもいいぜぇ。よっ、カラスさん。残業確定おめでとー!」
「残業代は現物支給か。まあ、たまにはね」
 手を叩く友真へ、カラスは軽く苦笑い。
「じゃあ、今度は全員が『バレンタインの思い出』披露しながら回すとしますか」
 鷹政が、ニヤリと笑った。



 さぁて。今しばらく、楽しくスリリングな黒ミサを。




【チョコより黒き深い底から 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja2617 / 矢野 胡桃  / 女 / 15歳 / ダアト】
【ja6837 / 月居 愁也  / 男 / 24歳 / 阿修羅】
【ja6843 / 夜来野 遥久 / 男 / 27歳 / アストラルヴァンガード】
【ja5823 / 加倉 一臣  / 男 / 28歳 / インフィルトレイター】
【ja6901 / 小野友真   / 男 / 19歳 / インフィルトレイター】
【jz0077 / 筧  鷹政  / 男 / 27歳 / 阿修羅】
【jz0288 /カラス(ヴェズルフェルニル)/男/28歳/天使】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました!
個性豊かな闇鍋チョコフォンデュ、阿鼻叫喚をお届けいたします。
順序と引きは、ダイスにて。神様は<○><○>見てる……
お楽しみいただけましたら幸いです。
MVパーティノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年04月13日

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