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『過激なるオタクライフル 』
ジルボka1732)&テトラ・ティーニストラka3565

 地球静止軌道上に実験型スペースコロニー【NGY01】が完成し、この後に開発される同型コロニーの先駆けとなったのが今から数年前。
 そこから時代は大きく動き、人類は火星探査計画を始動。それを発端とするかのように謎の敵が姿を現す。
「この時に調査団を襲った生物をヴォイドと呼んでいるのは皆も知っているだろうが、現在はそのヴォイドとの戦闘を想定した宇宙戦闘艦の研究と開発が進められている」
 宇宙歴史学。そんな授業がリアリブルーの学校で正式な教科として動き出したのは、火星探査計画以降。それまではなんとなくニュースなどで宇宙に関する情報を得ていた。
 それが大きく変わったのにはヴォイドの存在感が大きいだろう。
 人類が直面する状態を幼い内より教える事で、ヴォイドへの危機感と敵対心を育てる。そんな強制悪を生み出す授業が、この宇宙歴史学なのだ。
「つまんねぇ」
 蒼之学園高等部1年のジルボ(ka1732)は、そう零すと退屈な授業から逃避するように窓の外を見た。
 天気は上々。青空の中に薄らと月が浮かぶ姿なんてのは、たまらなく冒険心を誘う。
 こんな日はクソみたいな授業を延々と聞くのではなく、外でのびのびと遊びたい。そう。昨日手に入れたとっておきのエアガンを、青空目掛けてぶっ放した時の爽快感はたまらない!
「うおお、今すぐ飛び出して遊びて〜!」
 くぅ。っと妄想を膨らませて拳を握ったのも束の間。無粋な輩が現実に引き戻してきた。
「……ジルボ、ジルボ」
 背中を突きながら何かを訴える少女の名はテトラ・ティーニストラ(ka3565)。クラスのマドンナ的存在であり、ジルボの幼馴染でもある。
「なんだよ。今いいとこなんだけど?」
「君ねぇ……良いところなのは百も承知よ。それよりも前、前を見なさい」
 こそこそ言われる言葉に目が前を捉える。と、直後、全身から一気に血の気が引いた。
「ジルボ君。そんなに私の授業は退屈かな?」
「あ、あはは……嫌だな。先生の授業が退屈だなんていつ言いました? 先生の授業があるからこそ俺のエアガンが本来の姿を発揮――」
「ジルボ二等兵!」
「は、はい!」
「そのまま授業終了まで立っておれ!」
「ハッ!」
 立ち上がって即見せた敬礼に、教師は満足そうに、周囲は楽しそうに笑い声を零している。
「このオタク教師……いつかぎゃふんと言わせてやる……っ」
「いったい何度目の宣言よ……この分だと次も先生の勝ちね」
 テトラはそう呟きながら教師の声を頼りに教科書を捲る。その仕草に見惚れること僅か、ジルボは慌てて首を横に振ると前を見た。
(こいつ、また可愛く……い、いや、気をしっかり持てジルボ。こいつは確かに可愛いが、中身は完全なるオタクだぞ! オタクなんて人種に真面な奴がいるわけない!)
 かなりな暴言である。
 そもそも自分自身も他人の事を言えない程度にはオタクだと言うのにどういう了見なのか。
 ちなみにジルボを立たせた教師は軍事オタクだ。その証拠に、軍人でも何でもないジルボを二等兵呼ばわりしている。
「……良く考えると、教育委員会が出張って来ても良い問題なんじゃないか?」
「何か言ったか?」
「い、いえ、なんでもありません!」
 スチャッと再び敬礼をして居直す。
 こう云った時の女の地獄耳は怖い。ジルボはそう実感すると、今度こそ口を噤んで立ったまま授業の終わりを待った。

   ***

「はぁ〜……やっと終わった〜」
「お疲れー。いつになったら二等兵から上がれるのかね?」
「んなもん、上がんなくて良いつーの」
 二等兵呼びは教師が勝手に行っているものだ。そんなものに現実を求めて何になる。
 ジルボは足を投げ出して座り込むと、近付くテトラに目を向けた。
「で、昨日の小テストの結果は?」
「あんなの無効よ。地理歴史は君の方が得意なんだから」
 却下。そう告げながらも答案用紙を見せてくれる辺りテトラは優しい。
「89点……ふふふ、俺の勝ちだな!」
「だから無効だってば!」
「今日の焼きそばパンは俺に寄越すこと! これぞ勝利者の権利だ!」
「ちょっと、人の話を聞きなさいって!!」
 このやりとりを理解するのは1日ほど前に遡る必要がある――ので、省略して説明しよう。
 実は昨日の昼休みに、教科は伏せて小テストが実施されるという告知が成された。
 そしてこの時、ジルボとテトラは一緒にお昼ご飯を食べていたのだが、その内容は味のないコッペパンと牛乳と言う、かなり寂しい物だった。
『なあ、今日の小テストで勝負して、買った方が明日の購買争奪戦に参加するってのはどうだ?』
 もしかしたらこうした話になるのは必然だったのかもしれない。
 ともあれジルボのこの言葉を切っ掛けに、小テストの点数争いが起きたのだが、ここにはテトラの誤算があった。
「……なんで地理歴史だけは得意なのよ」
 ジト目を向けるが結果は変わらない。
 そもそもジルボが地理歴史に強いのは今に始まった事ではない。彼の趣味――つまり、彼のオタク度が高いが故に、この教科も強い。そういう世の理なのだ。
「意味わかんないー!」
「ははは、崇めたまえ清えたまえ〜、苦しゅうない〜」
「黙れー!!」
 胸を張って笑い出したジルボの頭を教科書の角で強打する。そうして覚悟を決めると、テトラは手裏剣を手に立ち上がった。
「こうなったら行くしかない!」
「……、……行くのは良いが……何で、殴った……?」
「ジルボが意地悪だからよ!」
 ふん! そうそっぽを向いて歩きだす姿を見て起き上がる。若干殴られた箇所から出血してそうな気もするが、まあ大丈夫だろう。
「……仕方ない。俺も行くか」
 テトラの機嫌を損ねるのは購買のパンが手に入らない以上に厳しい。何故って? それは彼女がジルボの隣の家に住んでいるからだ!
「はい。意味が分からないってツッコミはなしね。と言う訳で、俺の武器はこれで良いかな」
 誰にともなく言い放って持ち物を探る。
 そうして取り出したのはアサルトライフルとマシンガンのエアガンだ。その他にも荷物の中にはハンドガンやショットガンも装備されている。
「お。ジルボ二等兵出陣か? 嫁さん助けないとだもんなぁ!」
「二等兵言うな! つーか、嫁じゃねぇし!」
 どうやらこの光景、クラスメイトには慣れた物になっているらしい。だが一般常識からしてみれば異常だ。
 そもそも何故、手裏剣やエアガンが何事もないかのように出て来るのか。それは彼らがオタクだから――そう、ジルボはミリタリーオタクで、テトラは拳銃オタクと忍者オタクの二刀流。そして学園には彼らの他にも奇抜なオタクが複数ひしめき合っている。
「さーて、オタク的購買争奪戦開始だ!」
 ジルボはそう言うと、気合を入れるようにハチマキをして戦場に飛び出して行った。

   ***

「ぐああああああ!」
「わああああああ!!」
 購買に響き渡る数多の悲鳴。そこかしこに転げる屍は、本日の戦場が激化している事を現している。
「ここから目標の確認は……無理そうね。となると聞くしかないか。おばちゃん、今日の焼きそばパン残りいくつー?」
 テトラは人垣の最後方からそう叫ぶと、聞こえて来た「2つだよー!」の声に口角を上げた。
「まだある。よし――……え?」
 いざ出陣。そう踏み出そうとした腕を誰かに捕まれ振り返る。とその直後、彼女の目が見開かれた。
「ジルボ?」
 何でここに。そう言外に問い掛ける姿に「うっせ」と零してジルボは素早く現状の確認に入る。
 人垣は全部で3層。いつもなら5層は出来ているから、まだ授業が終わりきっていない面子もいるのだろう。
「のんびりはしていられないか。遅れればそれだけリスクが高まる。テトラ、ここは協力して攻め込むぞ」
 言うや否や駆け出したジルボに、テトラも慌てて駆け出す。そうして2人で第一の層に辿り着くと、ジルボのエアガンが火を噴いた。
「おらおらおら! 当たりたくない奴らはそこを退けぇーー!!」
 凄まじい勢いで撃ち込んだプラスチック製の弾。これに外郭でたむろっていた連中が振り返る。
「やべぇ。ジルボが来やがった!」
「テトラ嬢も一緒だぞ!!」
「第一防衛線を敷け!! 緊急フォーメーションA――うああああああッ!」
「やはー! あまいあまーい!」
 スカートの中が見えるのなんて気にしない。だって中にはジャージを履いてるんだもん♪
 そんな声が聞こえそうな勢いで振り上げたテトラの足が、防衛線を指揮しようとした生徒の顎を打つ。
 これで外郭を指揮する者はいなくなった。
「ジルボ、ここを一気に攻めるよ!」
「はいよ!」
 指揮系統が崩れ、隙が生まれればあとはそこを攻めるだけだ。ジルボは手早く弾を装填すると、テトラの指示した箇所に向かって弾丸を撃ち込んだ。
 これに阿鼻叫喚の叫び声が上がる。だが焼きそばパンのため、容赦はしない!
「俺は今日こそ焼きそばパンを食べるっ!」
 ここのところ食べ続けているコッペパンは争奪戦敗者の食べ物。流石にそろそろ購買売上ナンバーワンの焼きそばパンを食べたい!
 そんな一心で駆けた先、2人は最期の砦を前に足を止めた。
「またあんたか」
「今日こそ負けない!」
 スチャッと武器を構えたジルボとテトラ。そんな2人の前に立ち塞がった宇宙歴史学の教師は、不敵な表情を浮かべるとデュランダルの模造刀を手に踏み込んで来た。
「テトラ!」
「大丈夫!」
 左右に飛んだ2人の視界に焼きそばパンが飛び込んでくる。それに透かさずテトラが手を伸ばすのだが――
「きゃああああっ!」
「くそっ、風圧で飛ばすとかどんな怪力だ! 脂肪たっぷりの胸だけでキャラ付は充分だろ!」
 ハッキリ言って怪物である。
 振り下ろした剣圧でテトラを吹き飛ばした教師は、彼女が手にしようとした焼きそばパンを奪ってほくそ笑む。それを視界に留めながら、ジルボは勢い良く地面を蹴った。
「――ッ」
「……、え……ジルボ!?」
 テトラの体が床に付く直前、ジルボは彼女の体を抱えて転がり込んだ。
 テトラ自身は衝撃に備えて受け身を取っていたし、あの程度なら怪我をしない自信もあった。
 なのに――「なんで」そう口にする先で、残り1つの焼きそばパンが奪われてゆく。
 もし自分を助けなければ、焼きそばパンはジルボの手に渡っていたかも知れない。でも彼はパンではなくテトラを取った。
「……焼きそばパンはまた奪いに来ればいい。それに、お前が怪我すると戦闘が不利になるだろ」
 だからだ。そう告げて手を放すジルボの耳が赤くなっている。
「……ふふ、そっか」
 ありがと。テトラはでそう囁くと、制服に着いた埃を払って立ち上がった。そうして購買のおばちゃんに言う。
「おばちゃん、コッペパン2つ。とびきり甘いジャムもちょうだい!」
 甘酸っぱい気持ちと同じイチゴジャム。今日はそれをジルボと一緒に食べたい。
 そう思うテトラであった。

―――END...


登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka1732 / ジルボ / 男 / 16 / 人間(クリムゾンウェスト) / 猟撃士 】
【 ka3565 / テトラ・ティーニストラ / 女 / 14 / エルフ / 疾影士 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、朝臣あむです。
このたびはご発注、有難うございました。
かなりハチャメチャな感じに仕上がってしまいましたが如何でしたでしょうか。
何か不備等ありましたら、遠慮なく仰ってください。

この度は、ご発注ありがとうございました!
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2015年06月04日

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