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『●開幕 』
エルレーン・バルハザードja0889)&ラグナ・グラウシードja3538)&レグルス・グラウシードja8064)&新崎 ふゆみja8965)&ルーガ・スレイアーjb2600)&命図 泣留男jb4611

「エルレェェェェン!!」
 大剣の一撃が地を揺らし、割る。だが、手応えはほぼ皆無。
 顔を上げたその男が見たのは、不思議な生き物――四足歩行で「^q^」のような表情で走る生き物の姿。それは彼の怒りに――火を注いだ。
「ふざ――っけるなぁ!」
 更なる、光を纏った連撃。然し、そのこと如くが、空に浮かべられたジャケットを切り裂くに終わった。敏捷に特化したその生物――正体はエルレーン・バルハザードなのだが――を捉えるのは、男――ラグナ・グラウシードにとっても困難であった。
「ホモォー」
 妙な鳴き声と共に、戦場を駆け巡り、掻き回すエルレーン。
「くっ…俺は…どうするべきか…!」
 空中で闇の翼を広げたまま、苦悩の表情を浮かべ、目の前の生き物に向かって攻撃するか考える、黒に身を包んだ男、メンナク。
 果たして、同じ人間に手を出すべきか否か。幾ら相手の方から襲撃してきているとは言え――
 が、その間、相手が黙ってみていてくれるとは限らない。
 背後から跳躍したエルレーンが、巨大な生き物の幻影を出現させ、それと共に体当たりを仕掛ける!
「ぐはっ……!?奇襲とはJusticeにそぐわぬ行為!BlackなHellに落ちることになるぞ!」
 常人を混乱させるに十分なその台詞は、然し脳内が「ホモォ」に埋め尽くされているエルレーンには届かないようだ。
 ――強い思い込みは、外部よりの精神干渉に対する盾とも成り得るのである。
 何より、そのエルレーンを追ってきたラグナの一撃が、眼前に迫っている。エルレーンが回避した関係で、その刃がそのまま、メンナクを襲ったのである。
「襲ってくるならば、Revengeもまた覚悟済みか…!」
 ズボンのチャックに手を掛ける。不思議な光が迸ると共に、光の槍がラグナの剣と激突し、その衝撃によって両者が後退する。
 ――相打ち。痛み分け…と言った所か。
「できればPeacefulに事を済ませたかったんだけどね」
 メンナクのその台詞の後ろで、新たなる敵が、彼ら三人をその瞬間、狙っていた。

「今日のディリークエストおしまいなう」
 携帯をパチン、と畳むのは、ルーガ・スレイアー。その背には黒い羽。今までずっと、空に浮いて、ゲームをしt…失礼。機を伺っていたようだ。
「さて、参戦なう…だね」
 一気にポイントを稼ぐため、右手に黒の光を溜め、そして一気に解き放つ。その波動は、エルレーン
ラグナ、そしてメンナクを一斉に飲み込む。
「稼げる時に一気に稼ぐのが、ソシャゲの真髄なのだ」

 ――しかし、彼女が稼いだのは、どうやらスコアだけではないようだ。
 闇の中から、エルレーンが飛び出す。
 身代わりのあの術では、範囲である闇の砲撃はかわせない。故に彼女のダメージも小さくは無いのだが――
「ホモォォ!」
 強引にラグナの肩を踏みつけ、跳躍。
「待ちやがれエルレェェェン!」
 振るう大剣に手加減はなし。故にラグナの一撃は、エルレーン諸共ルーガを薙ぎ払おうとしていた。

 ヒュッ。切り裂いたのはジャケット。身代わりの術は、こういった狭い範囲への攻撃には抜群の効果を発揮する。
 エルレーンは一撃を逃れ、ラグナの大剣がルーガに叩き付けられる。空中での制動は劣るとは言え、人工的に作られた小天使の翼は、体を空中に飛ばすだけならば十分。盾で一撃は防いだが、衝撃は殺しきれず。ルーガが、地面に叩き付けられる。
「ねらい目だよー☆」
 機を伺っていた新崎 ふゆみの狙撃から、今一度、盾で致命傷を防ぐルーガ。然し直後、彼女の周りを魔封じの陣が取り囲む。
「ちょ、それは卑怯なんだぞー!」
「すみません…ですが、僕は勝たなければならない」
 全てのスキルの発露を封じられたルーガ。翼によって空に逃げる事も出来ず、盾での防御ですら封じられた彼女が、ふゆみと――陣を展開した、レグルス・グラウシードのコンビネーションに勝てるはずは、無かったのであった。
 落ちる流星。そして、ふゆみの連射が一斉に彼女を襲い――
「ソシャゲでもこんな事はなかったんだぞー……」
 地に沈めた。

 ――尚、ルーガが倒れたフリをしてスマホを弄っていたのは秘密である。
 本当に戦えなくなったのではなく、面倒くさくなったという可能性も存分に含まれている。


●コンビネーション

 お互いを傷つけたくないレグルスとふゆみが共同戦線を張ったのは、また当然のことである。
 彼らの狙いが次に集中したのは――メンナク。兄に出来るだけ仕掛けたくないレグルスの場合、その兄――ラグナと激戦を繰り広げているエルレーンを狙うのも、またリスクは高い。
「うぉっ、何をするんだBrother!?Whiteに染められてしまったのか!?」
 狙われたメンナクが、一気にまくし立てる。エルレーンには効果が無かったこの手だが――
「え?White?え…え?」
 こと、生真面目なレグルスにはこの上ない程の効果を、発揮していた。
「だーりん☆大丈夫??」
 そのレグルスを心配して駆け寄るふゆみ。これによって、このペアは、一時的に戦闘能力を失った。

 一時的に危機を脱するメンナク。然しその後ろから、エルレーンが襲い掛かる。
「ホモォー!」
 体力を奪い、回復する。ラグナの強襲とて、避け易い物ではない。既に身代わり用のジャケットは使いきり、エルレーン自身もまた多少の傷を負っている。然しそれでも隙を伺っていた彼女は、フィールド上で最も弱っている者――メンナクを背後から襲ったのである。
「セメェ、セメェ!!」
 立て続けざまの連打。ヒールで持たせているとは言え、メンナクに他の防御魔法はない。
 ラグナのエルレーンに対する攻撃にも巻き込まれている以上、彼の体力は最早風前の灯であった。
「俺はここで、Defeatを味わうわけには行かん…すまんBrother!」
 再度、ズボンのチャックに手を掛ける。白い光が迸り、一気にラグナとエルレーンを貫かんとする。
 だが、
「ウケェ!」
 奇妙な動きで、エルレーンはそれを回避し。
「その程度――!」
 盾でラグナは一撃を受け止め、その強靭な体躯が。鎧が。ダメージを大きく軽減させる。
 返す刃が、空中からメンナクを地上へと叩き落す。

「エルレェェン!」
 飽くまでもラグナが主に狙うは、エルレーンなのだ。
 必殺の剣閃が、連続で煌く。いくらエルレーンが回避に優れるとは言え、まぐれで一発当たれば大ダメージ。加えて、吸血の技は鉄壁の防御を誇るラグナの前には効果が薄い。
 ――簡単に言えば、エルレーンのピンチなのである。

「ホモォ!ホモォ!」
 だが、彼女のホモォ魂が、諦める事を拒否する。
 ラグナから体力を吸い取れないのであれば、他の目標を探せばいい。彼女が目をつけたのは、まだ精神攻撃から立ち直っていないレグルス。
「……Brotherって僕のこと?けど僕はあの人とは血縁は……」
 けれど、エルレーンが接近する前に、攻撃が彼女を阻む。
「だーりんはやらせないんだから☆」
 吸収のためレグルスに意識を集中していた事もあり、ふゆみの疾風の突きに不意を突かれ吹き飛ばされるエルレーン。空中で振るわれたラグナの大剣を踏みつけて更に跳躍するが、ふゆみの狙撃が彼女を狙う。
 当たりこそしなかったものの、体勢を崩してしまい、続くラグナの一撃をかわす事が不可能になってしまう。
「ホモォォォ――」
 地に叩きつけられ、変化の術が解除されて元の姿に戻ってしまう。腕を交差させて一撃を受けるが――ラグナの、落下の勢いを載せた叩きつけは、余りにも重すぎたのであった。


●力の使い時

「――はっ!?」
「あ、だーりんやっと起きた☆」
 ふゆみが、やっと精神攻撃を脱したレグルスに駆け寄り、その無事を喜ぶ。
 ――が、しかし、レグルスの表情は暗い。

「どうしてもやらなきゃならないのですか、兄さん」
「ああ、お前とて『リア充』だからな」

 ――剣を彼に向けているのは、実の兄であるラグナ。
 出来れば戦いたくは無い。
「何か平和的に済ませる方法は――」
「この場に及んで、そんな甘い事を言うのか?」
 ラグナの表情からは、一寸の手加減もする気がない事が読み取れる。
 尚も迷いを抱えるレグルスに、ラグナが大剣を引きずるように突進。
「迷いが断ち切れないようのは命取りになるぞ!」
 一閃が、直接レグルスの首を狙う!

 ザン。
 然し、その剣が斬ったのは、レグルスではなかった。
「だー……りん……」
 ――身を挺して。ふゆみが、レグルスを庇ったのであった。
 倒れるふゆみ。それを抱き上げるレグルス。

「…分かりました、兄さん」
 ふゆみを横たわらせ、確かな炎をその目に宿し。レグルスが立ち上がり、ラグナを睨みつける。
「そちらがそのつもりでしたら。応じます…!」
「それでこそだ!」
 開戦の合図は横に薙がれた大剣。それを盾で受け流し、レグルスは地獄の炎を召喚する。それを、また銀の盾で防御するラグナ。だが――
「――!?」
 ピシリ。盾に纏った銀のオーラに、亀裂が走る。『使いすぎた』のだ。
「まだだ…ッ!」
 歴戦の強者であったラグナは、この程度で怯みはしない。強引に剣に滅砕の白きオーラを纏わせ、炎を引き裂く。
「――っ!?」
 だが、そこにはレグルスは居ない。いや、正確には、彼の盾だけがそこにあった。
「ここですっ!」
 盾を囮にしたレグルスは跳躍し、ラグナの頭上を取る。武器を放し、両手をラグナの頭に当てるようにして、魔封じの陣を展開する!
「ぐっ……!」
「もうスキルは使えません…降参してください!」
 心優しき彼の事である。この場に至って尚、兄を傷つけたくないという思いが、彼にはあった。
「甘い事を…言うなッ!」
 スキルが使えなくて尚、ラグナは大剣を振り回す。その強靭な腕力による一撃。例えスキルによる補助が無くとも、十分な威力を持っていた。
「っ!」
 何とか盾を拾い上げ、一撃を防ぐ。然し、続く連撃に。レグルスは防戦一方となっていた。
「その程度か…!何のためにふゆみは倒れた…ッ!!」
 その名前を聞き。レグルスの目に、今一度、炎が宿る。
「僕を……守るため…っ!」
 流星が落ち、ラグナに直撃する。手を止めず、次々と流星を落とし続けるレグルス。

 ――すべての流星を撃ちつくした後でも、尚ラグナは、立っていた。
「そうだ…それでこそ、俺の弟だ…ッ」
 バタン。
 レグルスの姿をその目に焼き付けたまま、ラグナが倒れる。

「はぁ…はぁ…っ」
 かくして、最後に立っていたのは、レグルス。
 ふゆみとの共同作戦、そして、最大の壁であった兄、ラグナが先の戦闘で消耗していた事。
 数々の幸運にも助けられ…彼は、頂点に立った。
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剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年06月04日

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