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『咲き乱れて、女子会! 』
日浦・知々田・雄拝ka2796


●花、集い語りて

 若葉越しの日差しが、笑いさざめくようにきらめく。
 日ごとに木々の緑は深くなる初夏。鳥達は愛を囀りあい、蜂達は蜜を求め咲き乱れる色取り取りな花を目指す、活力に満ち満ちた季節。
「あ、こっちこっち! 皆おっそ〜い、迷ってたのぉ〜?」
 華やかだが、少し太い声で日浦・知々田・雄拝が手を振る。
 白いテラスにしつらえられたテーブルには季節の花が盛られ、たくさんの食器が今や遅しと出番を待っていた。
 恭しくウェイターが引いた蔓草を模したデザインの椅子に軽やかに腰を下ろし、産砂 女々子が軽く肩をすくめる。
「ゴメンなさいねェ? あたしがちょっとココに来るのに迷っちゃってぇ」
「仕方がないわよ、一番遠いんだもの。女々子ちゃんってば良く来られたと思うわ」
 Non=Beeがふふっと優雅に笑うと、大荷物を抱えたヴルーテ・ジーニーも頷いた。
「ほんとよぉ。私だったらぁ、ひとりじゃ来られないかもしれないわぁ」
 明るく賑やかな笑い声が木立に吸い込まれて行く。

 日浦・知々田・雄拝、身長171cm、体重70kg。
 産砂 女々子、身長190cm、体重90kg。
 Non=Bee、身長170cm、体重67kg。
 ヴルーテ・ジーニー、身長186cm、体重66kg。
 生物学上の分類……全員、男性。
 だが心はどんな花よりも気高く美しく、女子力はそびえたつ山よりも高く。

「それよりも、ほらぁ。早速乾杯しましょ♪」
「「「はぁ〜い♪」」」

 まさに今、ウツボカズラ達の狂宴が開かれようとしていたのであった。


●花、色とりどりに

 ヴルーテが持参した薔薇を活けると、ふわりと甘い香りが広がった。
 びろうどの様に滑らかな花びらの一枚一枚まで瑞々しい花は、露を含んで頷くように揺れている。
「とっても素敵ね! なんだか見ていると自分もキレイになれるみたいだわ」
 雄拝という勇ましい字面に似合わず、知々田は目を細めて花を眺める。整った目鼻立ちにドワーフにしては長身で、普通に男性の服装をしていても目を引く存在だ。
 が、その心は乙女。かつては悩んだこともあるが、ありのままに生きようと決めた今はすっかり明るくなった。
 今日は特別な女子会とあって、パンツスタイルではあるが随所にオトナ可愛いアレンジが効いている。小麦色の肌を美しく見せるパールホワイトのシャツに、瞳の色を意識したオレンジ色のシフォンストールを優雅にあしらい、繊細な細工のチェーンベルトを重ねて巻いてみた。知々田が動く度に、金属がしゃらしゃらと涼しげな音を立てる。
「ふふっ、素敵な談笑の場を彩る花は、私たち以外にも沢山あった方が楽しいでしょう?」
 ヴルーテが悪戯っぽくウィンクすると、桃色の髪のポニーテールが揺れた。
 モスグリーンのシンプルなデザインのプルオーバーが細身の体によく似合う。腰に巻いているのは深い焦げ茶色の落ちついた布だが、フリンジが軽快に揺れ、重苦しさは感じさせない。
「あ、ここって持ち込みありだったわよねぇ? ちょっと奮発しちゃったぁ!」
 大荷物の中身は花だけではなく、上等のワインとチーズ。わっと歓声が上がる。
 続いてNon=Beeが大事に抱えていた風呂敷包を手品のようにひらりとほどくと、大きな甕が表れる。
「うふふ、私も今日は美味しい焼酎持ってきたわ。皆で飲みましょ!」
 少し大柄な女性と言っても通じるような、洗練された仕草。着物の袖を押さえつつ、てきぱきとグラスを集める。
 まあ、何よりも早く飲みたいという動機が動きを機敏にしていた。
 この世界で名乗る名前を決めるのに、尊敬すべき異界の伝説の酒豪(だと本人は思っている)の名を借り受けた程に、Non=Beeは酒を愛していた。きっと酒の方でも彼を愛してくれているはずだ。ちなみに根拠など無い。
「んもう、ふたりとも相変わらず気配りが凄いんだから! あたしも何か持ってくればよかったわん」
 女々子がテーブルの上で手を組み合わせ、顎を載せて嘆息する。
 組んだ足は網タイツに包まれ、その質感を際立たせていた。
「うふふ、いいのよぉん。……やだぁ、コルク開けるの失敗しちゃったぁ!!」
 ヴルーテが悲鳴を上げる。見れば、コルクが乾燥していたのか、瓶の口の途中で千切れてしまっていた。
「あらぁ、コレはちょっと面倒ねぇん。いいわ、貸して」
 女々子が小首を傾げて瓶を受け取ると、やおら立ち上がる。
「フー……フンッ!!」

 スパァン!!

「これで大丈夫じゃないかしらぁん?」
 うふふと笑いながら、手刀で綺麗に首を飛ばした瓶を見せる。
「やだあ女々子ちゃんてば、すっごぉ〜い!」
 ヴルーテがパチパチと手を叩いた。
「やだもう、掘れちゃう、じゃなかった、惚れちゃうわあ♪」
 知々田が茶漉しを手渡しながら黄色い声を上げる。
「うふふふ、惚れてもイイのよぉ? さ、早く飲みましょ!」
「飲みましょ、飲みましょ♪」
 涼しげな音を立ててグラスが回された。


●花、囁きかわす

 乾杯が済めば、それぞれ好みのお酒を手におしゃべりがはずむ。
 知々田は綺麗なピンク色のカクテルが入ったグラスを、色を確かめるようにして翳した。
「ねぇ知々田ちゃん、そのネイル自分でやったのぉ? とっても素敵」
 女々子がごつい指で、そっと知々田の指を摘むように持ち上げた。
 服に合わせた、オレンジに金のラメ、先端は白っぽく塗りあげられている。
「うふふ、有難うー! ちょっとここのラメがはみ出しちゃったからイマイチなんだけどぉ」
「ううん、そんなことないって! 上手だわぁ。あたしも最近、ネイルに嵌っちゃってぇ」
「うんうん、やりだすとすっごく楽しいよね! 女々子ちゃんには、そういう思いっきり豪華なのが似合うと思う!!」
 ちなみに女々子の指には、深い夜空が広がっている。10本の爪が場面に分かれ、月や星が散らばっていた。
 ヴルーテは覗き込みながら、少し残念そうな表情になる。
「いいわねぇ、見ると私もやりたくなっちゃう」
「やればいいわよぉ。何だったらこの場でやっちゃう?」
 女々子が目を輝かせて、大きなバッグを取り出した。取り出したのは簡易版とはいえ、ネイルセット一式。Non=Beeが驚いて目を見張る。
「女々子ちゃんてば、いつもそれ持ち歩いてるの?」
「外で取れちゃったりするじゃなぁい? 気になるのよねぇ。ほら、ヴルーテちゃん!」
「え……どうしよう、でもぉ、なんだかすぐにボロボロにしちゃいそうなんだものぉ……」
 ヴルーテは美の探究者であると同時に、考古学者でもある。綺麗な爪に憧れはあるが、作業の邪魔になってしまうのだ。
「じゃ、ね。今日だけ。んふふ、あたしとお揃いにしちゃうわ♪」
 女々子が嬉々としてヴルーテの手を取った。
「やだあ、女々子ちゃんずるい! あたしもやる〜!」
 知々田がきゃっきゃとはしゃぎながら、ヴルーテのもう片方の手を握る。

 Non=Beeはそれを見ながら、ちびちびと杯を重ねていた。面白い演し物を見ているようでもある。
「すごいわあ、ふたりとも器用ねえ」
 指をお湯につけ、手際良く形を整え、マニキュアを塗り、ピンセットでつまんだ飾りを置いて行く。知々田と女々子の表情は真剣そのものだ。
「うん、こんなものかしらん? どぉ?」
「すっごい、きれーい!」
 ヴルーテの爪が青に染まって、星を瞬かせている。
「うふふ、楽しいでしょ?」
「どうしよう、手を使いたくなっちゃうわヨネー!!」
 ヴルーテは何度も手をひらひらさせて嬉しそうにしている。
「あら、お酒飲むのに手を使わないでどうするのかしらん?」
 Non=Beeにからかわれ、ヴルーテはハッと我に返る。
「そ、そうね! グラスは持たなくちゃ!!!」
 コロコロと笑って、Non=Beeはヴルーテのグラスに酒を満たして行く。

「でも本当に、女々子ちゃんてばすごいわねぇ。もしかしてその小物入れも手作りなの?」
 Non=Beeはふと、女々子がネイルセットをしまいこむ小袋に目を止めた。綺麗なパッチワークの、使いやすそうなデザインだ。
「そうなのぉ。最近、ハンドメイドにも目覚めちゃってぇ」
 女々子がふふっと嬉しそうに笑う。
「こういうのって、ついつい時間を忘れちゃうのよねぇ」
「わかるわぁ〜ボディのメンテナンスだって、幾ら時間があっても足りないもの!」
 知々田が強く頷く。爪、髪、肌。ベストな状態に保つには様々なお手入れが必要だし、睡眠だって必要だ。女子は大変なのである。
「ボディねぇ……」
 ふぅ、と溜息をついて女々子が暗い目をする。
「こればっかりは、どうしても劣化して行くのよねぇ」
 気がつけば歳を重ね、得たものも沢山あるが、失った物もある。
 理想のボディを保つための筋トレは頑張れても、水浴びの水を肌が弾かなくなり、じわっと広がるようになったのはかなりショックだ。
「何言ってるのよぉ! 女々子ちゃん、幾つになってもキレイは裏切らないわよ!!」
 知々田が発破をかける。Non=Beeは同意しつつも、少し憂い顔。
「そうよ? ……でもダイエットのバランスって難しいわよねえ。あたし、お酒好きでしょう? 太りたくないから頑張って運動するんだけど、頑張りすぎてちょっと筋肉質になっちゃって……」
 着物の袖を口元にあて、Non=Beeは眉をひそめた。
「何言ってるのよぉ! そこからがスタートラインじゃなぁい?」
 突然席を立ったヴルーテが、腰に手を当てて胸を張る。
「美は奥深いのよ、探究のし甲斐があるというものよぉ! 皆で頑張りましょう!」
「はっ、そうね! 私が間違ってたわ、ヴルーテちゃん!」
「そうね、そうね。とにかく今日の所は憂さを晴らすためにも飲みましょう!」
 今、皆の心は一つになった。


●花、夢を夢見て

 グラスを重ね、おしゃべりを重ね。日は落ち、闇がテラスに忍び寄りつつあった。
 宴はゆるゆると穏やかに続くと思われたのだが、ちょっとした事件が起きる。

 キャンドルを運んで来たウェイターに、知々田が声を掛ける。
「ねえ、お酒が足りないわ。追加お願いできるかしらん」
 ウェイターが立ち去った所で、囁きがかわされた。
「ねぇ今の子、ちょっと良くない?」
「可愛いかったわねぇ。悪くないと思うわぁ」
 くすくす笑うのはヴルーテ。
「そうね、どうせならここに残ってお酌して欲しいぐらいだわん」
 女々子は楽しそうに言うが、そもそも守備範囲が非常に広いので余りあてにならない。
「うーん、あたしはもう少し胸板がしっかりしてる方が好みかしら?」
 Non=Beeは軽く首を傾げて、ふふっと笑った。
「胸板? やだぁNon=Beeちゃんたら、ロ・コ・ツ♪」
 知々田が肘でつついたところで、近付く人影に気付いた。
 なんとなく目を遣ると、キャンドルの灯に照らされてひとりの男が立っている。
 裕福な商人風のいでたちに、愁いを帯びた青い瞳。少し乱れた黒髪が額にかかり、浅黒い肌を引き立てていた。
「何か御用かしらん?」
 女々子が尋ねると、男は実に魅力的な笑みを浮かべた。
「いえ、皆さんがとても楽しそうでしたので、つい見つめてしまいました。お許しください」
 中々声もいい。
「おひとりさま? だったらこっちで一緒にいかが?」
 知々田が流し眼をくれると、男は頷いて席に着いた。
「ではお言葉に甘えて、少しだけ」

 何とも不思議な空気が流れた。
 男は服装こそ商人風だが、近くで見ると意外と体つきはしっかりしていることがわかる。何よりも、かなりの男前だった。
 穏やかな声で会話に混ざるが、その話題も中々に気が利いている。
 暫くそうして会話した後、知々田とヴルーテが目を合わせて立ちあがった。
「ちょっと失礼」
「おほほほ」
 席を離れたところで、ふたりは顔を合わせる。
「ちょっと、あれどういうことなのぉ?」
「わかんないわよぉ。まさか本当に座るなんて思わなかったし!!」
 まさかウツボカズラにメンズが飛び込んでくるとは。
 ちらりと席を伺うと、女々子がブロックサインを送って来る。
『コレどうすんの?』
『ちょっと考えるから待って!』
 とりあえずそう返し、また知々田はヴルーテと物陰へ。
「まさか私たちの誰かを気に入ったとか!?」
「そういえば、Non=Beeちゃんのことすっごい気にしてるような?」
 胸板……Non=Beeの基準でどうだろう。こそこそと顔を出し、観察する。
 男は相変わらず、談笑している。
 そのとき、店の入口辺りで低い会話がかわされるのが聞こえて来た。
 衝立や壁が上手く隠しているので、店内はすぐには見渡せないのである。
「え? 警備隊……?」
 店の入り口で何やら話しこんでいるのは、警備隊の制服を着た数人の男たちだった。
 知々田と耳をそばだてると、何やら不穏な単語が漏れ聞こえる。
 ふたりは顔を見合わせて、店の入口に急いだ。
「ね、何があったのか、詳しく聞かせて貰ってもいいかしらん?」


 Non=Beeは謎の男のグラスに酒を注いでやりながら、戻って来ない知々田とヴルーテを目で追った。
(おかしいわねえ、御手洗いそんなに混んでるのかしら?)
 そのとき、ヴルーテがひとりで姿を見せる。指を口元にあて、そのまま続けろという様にサインを送ってきた。
(……何かあったのかしら?)
 そう思いながらも、Non=Beeは穏やかな笑みを浮かべている。
 一方、女々子はテラスの外に数人の人影が潜んでいることに気がついた。
(なにかしらん?)
 だがそのうちのひとりは知々田で、何か合図を送って来る。
(ん? 何、この人が動いたら捕まえろ???)
 そこで突然、男がにっこり笑って立ちあがった。
「……ああ、少しお邪魔が長すぎましたね。僕はそろそろ失礼しますね」
 と同時に、知々田が叫ぶ。
「女々子ちゃん、Non=Beeちゃん、そいつ捕まえてぇ!!!」
 叫ぶが早いか飛び出し、テラスに手を掛けて懸垂の要領で身体を持ち上げる。
「何? 何?」
 女々子が戸惑う内に、男は走り出そうとした。が、ヴルーテが回り込んで叫ぶ。
「この男、手配中の結婚サギ師なのよぉ! 逃がしちゃだめよぉ!!」
「ぬあんですってぇ〜!?」
 女々子、起動。ハムストリングスが力を漲らせ、物凄い勢いで身体が前へ。
「うああ!?」
 男も中々のスピードで逃げ出すが、見る間に距離を詰めて来る女々子の鬼気迫る表情に押されて足がもつれる。
 それで諦めたか、突然男は膝を折り、Non=Beeに縋りついた。
「酷い誤解なんです! 信じてください!!」
 Non=Beeの手を取り、潤んだ瞳で見上げる。
「貴女にだけは信じて欲しい……」
「ごめんなさいね、ちょっと胸板がたりないの」
 Non=Beeは空になった焼酎の甕を男の頭にぶつけた。


●花、乱れて後に

 騒動が一応収まり、結婚サギ師は引っ立てられていった。
「ん、もう! 折角の集まりが台なしじゃないのよ」
 知々田が口を尖らせると、Non=Beeが袖を口元にあててくすくすと笑った。
「あら、でもあたしはちょっと楽しかったわよ」
「実はあたしも♪ イイ男は好きだけど、女心を弄ぶような男は絶対に許さないわよん」
 女々子が拳を握って見せる。しぶとく逃げ出そうとする男は、この拳を自慢の顔に食らったのだ。
「うふふ、お店からこんなお酒も貰っちゃったしねぇ? 私たちらしい女子会じゃない?」
 ヴルーテが最高級のワインを大事そうに抱えて笑う。
 知々田は尖らせていた唇を、突然ゆるめた。
「……実は私も、ちょっと楽しかったのよねん♪」
 華やかな笑い声が湧きおこる。
「早速開けましょうよ」
「あ、私、また失敗しちゃいそう……! だれか開けてぇ」
「大丈夫よぉ、また女々子ちゃんに開けてもらえばいいんだしぃ」
「やだあ、やめてよもう!」

 
 百花繚乱の宴はハプニングもアクセントに変えて、まだまだ続きそうである。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2796 / 日浦・知々田・雄拝 / 心の女子 / 20 / 女子力∞】
【ka1604 / Non=Bee / 心の女子 / 25 / たおやか系女子】
【ka2946 / ヴルーテ・ジーニー / 心の女子 / 28 / 探究系女子】
【ja3059 / 産砂 女々子 / 心の女子 / 28 / 無敵系女子】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせしました、素敵な女子会の一幕をお届します。
登場人物一覧、今回は『性別:男』って書けなかったですね。
どんな男よりも潔く、どんな女よりも美しく。これからも唸る女子力に期待しております。
尚、最後の辺りはかなりアドリブが入っております。余りにもイメージと異なるようでしたら、お申し付けください。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
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2015年06月19日

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