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『―― ドキッ! 兄貴が潜む射撃大会! ―― 』
弓月・小太ka4679

「射撃大会……腕の見せどころ、ですね」
 弓月・小太(ka4679)は射撃大会の広告を見ながら、小さな声で呟いた。
「……だけど、不思議な大会ですね。服装がなぜかブリーフ水着限定になっています」
 かくりと首を傾げながら、弓月は呟く。
 しかし、彼は大切な言葉を見落としている。
 射撃大会という言葉の前に、こっそりと『兄貴が潜む』という言葉を――……。

※※※

 そして……(兄貴が潜む)射撃大会当日。
「な、なんだかちょっと雰囲気が怖いのです……」
 射撃とは関係のなさそうなムキムキマッチョの男性がそこかしこに隠れている――というより、もう隠れる場所から姿を現して、堂々と参加者を見つめていることに。
「どうして、ああいう人達がいるんでしょう?」
 弓月は頭の上に『?』をいくつも並べながら呟いていると「あんた、知らないの?」と、隣に立っていた参加者らしき少年が驚いたように話しかけてきた。
「知らないのって、何のことですか?」
「今回の射撃大会、兄貴が潜んでるんだよ」
「え? 兄貴って……あなたの、ですか?」
「違う違う、俺の兄貴じゃなくて『A☆NI☆KI』だよ」
(……意味がわかりません! だけど、文字を変えただけでヤバそうな雰囲気たっぷりです!)
 弓月は慌てて射撃大会の広告を見てみると……。
(兄貴が潜む射撃大会!? ポロリがあるといいね!? な、なんですかー! これぇー!)
 弓月は声にならない悲鳴をあげて、参加辞退をしようとしたのだけど……時は既に遅し。
 スタートを告げる鐘の音が鳴り始め、何が何でもゴールを目指さなければならなくなった。
(こ、こうなったらさっさとゴールして帰るのですよ……!)
 最初は皮を渡りながら、吸盤付き弓矢で『A☆NI☆KI』をうち落とすというもの。
「そこだぁ!」
 弓月の言葉と同時に、背後に隠れていたマッチョ男性の額に弓矢がくっつく。
「……ふふふ、それがしひとつの矢で倒れるほど軟弱ではない!」
 ベシッと額にくっついた弓矢を取り、狙いを定めた獣のように弓月を追いかけてくる。
「うわああああああ! 何で川の中であんなに動けるのです!? あの人もハンター!?」
「ノー! それがしいっぱんじーん!」
 マッチョ男性に足首を掴まれ、弓月は勢いよく川の中に倒れこんでしまう。
 余談だが、倒れこむ時勢いがつきすぎたせいか、弓月は堅い板で叩かれたような衝撃を顔で感じていた。
(た、大会の詳細をちゃんと調べておくべきでした……!)
 最初は射撃の練習にいいかもと自分の心に言い聞かせていたけど、それも我慢の限界を迎える。
(このままでは、雑魔ではなく『A☆NI☆KI』に倒されてしまいます……!)
 弓月は必死に泳ぎながらゴールを目指す。
 既に今の弓月には射撃でマッチョ男を倒そうという考えはない、この責め苦から逃れるため、ただひたすらにゴールを求めて泳いでいた。
 その勢いは凄まじく、先行していたハンター達を抜いて見事1着でゴールに到達した……。

※※※

「レディースアーンドジェントルメーン! 今回の勝者はなんと子供! 弓月・小太くんだ!」
 3位までに入れば豪華景品がもらえ、1位はほかでは扱っていない、とっておきの物がもらえると広告には書かれている。
(とりあえず、苦労の甲斐がある物だと嬉しいのです……)
 ぜぇぜぇ、とまるで怪しげな人のように息切れをしながら3位、2位に贈られる景品を聞く。
「はい、お待たせ! 1位になった弓月くんには――――……!」
 会場に集まった人間達がゴクリと息を呑む。
「マッチョ兄貴との特別デート券だ! うらやましいねぇ、この!」
「いらねええええええ!」
 景品が公表された途端、弓月は叫んでいた。その姿は普段の大人しい彼からは想像もつかないような形相、そして声の大きさだった。
「あんなに苦労したのに、何で逃げた相手とのデート券ですか!? 嫌がらせですか!? いたいけな少年の心をもてあそんで、あなた達……鬼ですか! それとも悪魔! いいや、雑魔だ!」
 弓月は(心の中で)血の涙を流しながら「そんな物は認めません! よし、このまま返品だ!」と叫んでいるが、マッチョ兄貴は弓月とデートするつもりらしく、頬を赤らめている。
「ふぇ……! もう帰ります! 帰らせてくださあああい……!」
 マッチョ兄貴に囲まれながら、哀れな弓月の悲鳴だけが響き渡っていた。

--- 登場人物 ---

ka4679/弓月・小太/男性/10歳/人間(クリムゾンウェスト)/猟撃士(イェーガー)

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弓月・小太 様

初めまして。
今回はご発注頂き、ありがとうございました。
今回のANIKIノベ……いえ、WTアナザーストーリーノベルは
いかがだったでしょうか?
ANIKIを楽しんで頂けましたら幸いです。

今回はご発注頂き、ありがとうございました!
また、機会がありましたら宜しくお願い致します。

2015/6/19
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水貴透子 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年06月19日

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