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『謎に包まれた裸族の生態が、今、明かされる……!! 』
九 四郎jb4076)&三島 奏jb5830

 恋愛ごとの『初』は何もかもが新鮮で、そして貴重なものだ。
『初めて彼女を家に招待した』九 四郎にとっても、『初めて彼氏に家に招かれた』三島 奏にとっても、今日と言う火は特別なことには変わりはない。
 勿論、出会うまでは互いに全く違う環境で育ったのだから、知らないことは当たり前で、例え、自分的にはあり得ないと思う癖や習慣があったとしても、まぁ、それを受け入れていくのもまぁ恋愛ということなんだろう。
 そんな、恋愛ごとの『初』を積み重ねていって、互いのことを知っていくのだけれど――これって、ありなんですかね?




 【 悲 報 】 彼 氏 が 裸 族 だ っ た



 そんな悲劇をまだ知るよしもない三島 奏は張り切っていた。
 なんといっても、今日は初めて恋人である九 四郎の自宅に初めて訪問するのだ。
 まさに、一大イベントなのだ。準備しようとする心
 服だって今まで以上に力をいれてコーディネイトした。今日のポイントは落ち着いた印象の赤色のカーディガン。先週、一目惚れして買ったばかりの新品。勿論、四郎に見せるのも初めて。
 自分的には一目惚れして買ったわけだし、店員さんもよく似合っていると褒めてくれたから自信はあるのだけれど、四郎はどう思うのだろうか。
 無事、気に入ってくれたらいいのだろうけれど。
 そんなことを思いながら歩いていると目の前で信号が赤に変わった。立ち止まって前を見ると商店街が見える。朝を少し過ぎた微妙な時間帯ということもあって落ち着いている。
(人の家を訪ねるわけだし、手土産も必要かなァ)
 そこで、まず思いついたのが目の前に見える商店街の外れにあるケーキ屋さんだった。
 丁寧に手入れされた木々や花が洋風の店を包んでいる。商店街の外れという比較的静かな立地も手伝って、まるで別世界のようにとても雰囲気が良い店なのだ。
 初めて友人に連れていってもらった時は、その雰囲気と味に大変驚いた記憶がある。
(今の季節だったら、イチゴタルトとかかなァ……)
 確か、イチゴには特に力を入れているとのことで旬の今ならさらに美味しいものを出してくれるだろう。
 信号が青に変わる。横断歩道を渡り、一本小道を逸れようと思いけれど思いとどまる。
(やっぱ、やめとこうか)
 カジュアルを装った方がいいのかなと思って今回、手土産は持っていかないことにした。
(あのお店、シローと行ってみたいしサ)
 自分があの時驚いたように、彼もあの味に驚いてくれるだろうか。
 もし、驚いてくれるのならば、その顔を見るのは自分が初めてであってほしい。
 なんて、ちょっと思ってしまって頬が緩んだ。


●悲劇の準備なう
 そんな悲劇を起こすことを、自覚してもいない九 四郎は張り切っていた。
 今日はあの先輩が我が家を訪れる日なのだ。粗相をしでかしてはいけないと、先輩が訪れるその瞬間まで念入りに準備をしなければといつもより早起きをして色々していた。そう、色々。
 例えば、観葉植物を動かしたり、置物の位置を変えたり、窓をほどよく開けてみたり。
 ミリメートル単位のまるで職人芸の世界。少しでも場所がずれてしまうとインテリアは意味をなさない。
 そうして、こだわりにこだわり抜いてすべての用意を終えたのは約束の時間の10分前。
 心地良い疲労感が全身を襲い、抗うように背を伸ばすと窓から吹き込んできた初夏のさわやかな風が股の間をすり抜けていく。
 今日は良い天気だ。きっと、良い日になる。
 玄関のチャイムが鳴り響く。何も不都合はない、準備は万端だ。


●RAZOKU〜悲劇の始まり〜

 呼び鈴を押す指は緊張していた。
 それでも、決心をしてチャイムを鳴らす。

「ようこそっす、先輩!」
 元気よく自分を迎え入れた四郎は、大変、開放感に満ちた格好をしていらっしゃった。
 一糸まとわぬ姿。ありのままの姿を見せるのよと宣言しているような堂々とした出で立ち。自分の顔が引きつっているのが解る。もし、今自分の顔を鏡で見ることが出来たのならば、きっと面白いくらいに赤や青に輝いているだろう。
 きっと、まるで信号機のようにそれはチッカチカと点滅し続けているのだろう。けれど、奏は女のせめてもの気合いで笑顔を作り。
「う、うン……シロー、あの、サ」
「何っすか? 先輩?」
 奏は今この瞬間、ケーキを買わないという選択肢を選んだ自分を褒めたいと思った。
 もし、ケーキを持ってきていたら落としていただろう。
 彼の裸を思いがけないタイミングで目撃して落とされて犠牲になったなんて理由はケーキにとってもたまったものではない。人に食べられる為に生まれてきた彼らが、なんでこんな理由で犠牲にならなければならないのだろう。
 とりあえず切りだそうと声をかけたはいいものの、なんと言葉を続けようか迷っているうちに四郎が。
「あ、ああ! ちょっと待っててくださいっす」
 そういって扉を閉めた。自分の格好に気づいたのだろうか。
(ケド、それにしては恥ずかしそうにしてた様子無かったような……)
 そう、奏が安堵したのも直ぐに
「お待たせっす!」
「シロー、変わってな……」
 彼は、相変わらず肌色面積がやたら広い姿を続行していた。あ、そういえば最近は肌色のことをペールオレンジとか言うらしい。って、いやいや、そんなの今は別にいいじゃん。
 下着を――トランクスを。って、あれ? シローってブリーフ派かなァ? いやいや、そんなこと、今は関係無い。
「もしかして、タイミング悪かった? お風呂入ってたりして……」
「朝シャンは二時間に済ませたっす! 粗相するわけにもいけないっすからシャンプーも念入りにしたっす」
「シャンプーするンだねェ……」
「ちゃんと、ノンシリコンのシャンプー使ってるっすよ」
 奏は我ながら頓珍漢な返答だったと思ったが、かろうじて返せたのはその言葉だけだったのだから仕方が無い。四郎は奏の内心に気づく様子なんぞ1ミリも見せずさらっと答えてみせた。そのさわやかさ、一周回って羨ましい。
「玄関先で話すのもアレですし、入ってくださいっす」
「そ、そうだねェ……」
 四郎の提案に奏は素直に同意した。というか、同意するしかなかった。
 年頃の若い娘と、生まれたままの姿のスキンヘッド男子が玄関先で話している――もし、そんな光景をご近所さんに見られて、四郎が裸族という噂(というか事実)が広まってしまったら? どうしよう、そうしたら生きていけない。
 なるべく、四郎の体を見ないようにして部屋を見渡す。
 四郎の格好に反して、彼の部屋はシンプルながらも洗練された印象の一般的な部屋だった。彼の格好と比較して言ってしまえば、早々それ以上のインパクトがある部屋なんて無いとは思うけれど。
 窓際に置かれた椅子の上には新聞が乗っている。彼は、いつもここで新聞を読んでいるんだろうか。
 窓から見える庭には木が植えられているらしい。格子窓を通して柔らかく降り注ぐ日差しに軽く逃避してみた。現実から。
「先輩、アイスコーヒーでいいっすかー?」
「あ、あァ、うん、お願い……」
 キッチンカウンター越しに四郎が話しかけてみて、振り向いたが。でも、やはり生まれたままの姿だ。何度見たってありのままの姿だ。
 四郎はグラスにコーヒーカップを注ぐとストローを注して持ってくる。からんと鳴る氷の音がとても涼やかではあるが、全然そんな音ではこのテンパった思考を沈めることは出来ない。
(ッてちょっと待ってよシロー普通に過ごしてるけどなにそれなにそれなにs……はっ! インテリアがモザイクに?! 無駄にすごい!!)
 ふと観察してみると四郎は観葉植物や間接照明を利用して男の大事なところを隠しながら歩いていた。努力の迷子過ぎる。
「今日の先輩、綺麗っす。そのカーディガン、新品っすか?」
 四郎の問い。それを、待っていたはずなのに。
(どうしよう……あンなに楽しみにしてた言葉が全く入ッてこない!!)
 気づいてくれたのに、もう思考が色々追いついてなくて言葉が出てこない。

 何だか様子がおかしい奏の姿。
 四郎はようやく、気づいた。
(あれ? 先輩が家に居るってやばくないっすか? やっぱ綺麗だなー……いやいやいやいやいや)
 意識してはいけない。今の自分は生まれたままの姿なのだ。意識してしまって変なものを先輩に見られでもしたらそれこそ朝シャンを忘れる以上の大失態だ。
 此処で慌ててしまってもいけない。素数でも数えて落ち着こう2、3、5、7、11、13、15……あれ?

 一方、奏は逆に落ち着きはじめていた。
 四郎がふと会話するのを止めたというのもあるけれど、この部屋の扉が開かれてからおよそ10分の間、混乱の限りを極めていた奏の頭はパンクし、思いっきり思考停止の方向に向かっていた。
 人間、悲しいことながら慣れることが出来る生命体だ。それをよしと取るのか、否と取るのかも自由ではあるが奏はもうそんなことも考えられなかった。
(自分の家で寛いでンのは普通だよね? シローはあの姿が寛げるンだろうから、つまりこれは……当たり前……?)
 うん。結論が出た。
 それで、よしとしよう。それ以上考えたら正気度が下がってしまう。
 無理矢理結論づけた奏はアイスコーヒーを飲む。いつもよりやけに苦く感じた。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb4076 / 九 四郎 / 男 / ルインズブレイド】
【jb5830 / 三島 奏 / 女 / 阿修羅】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 ノベルお願いします!←わーい、四郎さんと奏さんじゃんやったー!
 TPにノベルつけてみたかったんすよ←私もやってみたかったんですよね!
 裸族です←ファッ?!

 まさにこんな感じでした(真顔)
 裸族って言葉のインパクトがすごいですよね。改めてTP確認してみると四郎さんがほんとーにごく普通の自然な表情をしていて「あれ? 私がおかしいのかな」と奏さんと同じような心境になりました。
 一旦、書き上げたものの自分の中では全く裸族の生態が明かされていないので再び研究しようかと思います。
 ご発注ありがとうございました!
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
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エリュシオン
2015年06月23日

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