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『祭りで神輿、楽しいにゃ♪ 』
猫宮・千佳(ib0045)



「ちょいさ、ちょいさ〜」
 神楽の都の一角で、そんな可愛らしい声が響きます。
「にゅ?」
 この声にぴぴん、と反応する女の子がいました。
 ふっかり被った猫耳頭巾。
 黄色いエプロンドレスに、スカートのお尻には猫しっぽ。
 好奇心たっぷりにつぶらな目を見開く姿は、猫宮・千佳(ib0045)です。
 でも、通りはいつもの通り。どうやら遠くから聞こえているようですね。
「いったい……何かにゃ?」
 千佳、どこかからの声に心を奪われています。きょろきょろ周りを見回しても声の主は見つかりません。
「うにに、こっちの方から聞こえてきたにゃ〜っ!」
 思い出しつつ思い切りよく、狭い裏路地へと入っていきます。もう少し先にちゃんと回り込むことのできる広い道もあるのですが、声の聞こえた方に猫まっしぐら。狭い道もするすると器用に抜けていく姿は、本当に猫っぽいですね。
 やがて裏に抜け出ると……。
「ちょいさ、ちょいさ〜」
 地域の子供たちが揃いの法被姿で神輿を担ぐ練習をしていました。
「はい、練習終わり〜」
「これから大人の人も集まってきますから、その時が本番です」
「それまでは自由時間です。集合の合図が聞こえたら戻ってきてくださいね〜」
 保護者たちの説明が終わると、子供たちはわあっと解散。
「あら?」
 ここで保護者の一人が千佳に気付きました。
「あなたも担いでみる?」
「もちろんにゃ〜☆」
 うんっ、と大きく頷く千佳でした。



 ところ変わって、開拓者長屋。
「ふうん……これがシャツワンピか〜」
 大きな姿見の前で裾が膝元まである薄手の上着を合わせる姿が映っています。
 コクリ・コクル(iz0150)のようですね。白い着を手にしたまま「これを着て潮風に吹かれるのもいいね〜」とかぽわわんと想像していたり。
 そこへ。
 どどどどど……、すぱーん!
「コクリちゃん、いるかにゃーーーっ!」
 襖を全力で開けて猫宮・千佳、ただいま推参です!
「きゃああああっ!」
「近くでお祭りがあるらしいにゃ♪ 一緒に行くにゃー♪」
 白い上着を抱いて身を縮めるコクリですが、そんなのお構いなしに千佳はコクリの手を引こうとするのです。
「ちょっと待って、千佳さん。ボク、まだ着替えてないよう」
「うにに、ちょうどいいにゃ。ちゃんとあたしとコクリちゃんの法被や足袋を借りて来てるにゃ♪ 早速着替える……コクリちゃん、もう脱いでるのにゃ?」
 千佳、状況に気付きました。いつも脱がしてあげているので少し残念そう。
「う、うん。だから……」
「うにゅ! 褌も借りてきたから手伝ってあげるにゃ! お祭りの正装らしいからちゃんとお着替えにゃよ♪」
「いやぁぁぁん!」
 何があったかは以下略で。
「……あの、千佳さん? これって布がたくさん余るよ?」
「それでいいにゃ。引っ張るにゃよ〜♪」
「ダメっ! 食い込んじゃう〜っ!」
 何があったかは以下略で。
「って、千佳さんそれって前後反対じゃない?」
「うに? 尻尾みたいに垂れていい感じなのにゃ〜」
「ダメだよ、ちゃんと着なくちゃ! えいっえいっ!」
「うにゃーーーーっ!」
 何があったかは以下略な感じで、ようやく着替えも終わりました。
「それじゃ、行くよっ」
「行くのにゃ〜」
 指差すコクリに腕を上げて飛び跳ねる千佳。
 法被をワンピースのように着こなし頭に鉢巻き、そして足袋をはいた少女二人が駆け出します。



 そして、神輿の出発前。
「うにゅ〜」
「……えーと」
 千佳とコクリが、仲良く万歳をしつつ何かにぶら下がっています。
「子供じゃないって言っても……」
 いなせに法被を着こなした大人が眉を捻じりながら難しい顔をしていますね。
「これじゃ担げねぇよな」
 同じく別の男性も腕組みして声を絞り出していたり。
 千佳とコクリ、大人の神輿の担ぎ手として駆けつけたのはいいのですが、背の高さが低すぎてぶら下がり懸垂運動状態だったのです。
「すまねぇが嬢ちゃんたちは、あっちな?」
 指差されて子供用神輿に行く二人の背中は、寂しそうで人生の敗北感にまみれているようで。
「ちょい悪かったかな?」
「仕方ねぇよ。後で埋め合わせだな」
 そんな言葉も二人は背中で聞きますが……。
「ちょうどよかった。二人足りなかったんです!」
 子供神輿で歓迎されて、顔を上げて頷き合いテンションを上げる千佳とコクリでした。

「そんじゃ、出発だ!」
「ちょいさじゃ、ちょいさ〜」
 合図の拍子木が鳴り、勇壮な太鼓の演奏に見送られて神輿の出発です。
 もちろん、子供神輿も出発。
「コクリちゃん、練り歩くにゃよ〜。でもどうして『わっしょい』じゃないにゃ?」
「沿道に人が多くなったら『身分なしにみんな一緒に』の意味の『わっしょい』で、坂道とか勢いをつける時には『ちょちょいのちょい』の意味の『ちょいさ』なんだって」
 コクリ、周りから聞いた話を答えます。
「それじゃ、ちょいさにゃ〜」
「ちょいさだよ〜っ」
 神輿は順調に進みます。



 やがて、沿道に物見の人たちが出て来ました。
 神輿はご神体の遊行ですが、氏子に広く見てもらうことも目的の一つです。だからご町内をうろうろとくまなく練り歩くわけですね。
「じゃ、千佳さん。揺すって高く掲げて見てもらうよっ」
「やるのにゃっ!」
 周りに合わせて掛け声を上げるコクリ。千佳もすっかりその気です。
「わっしょい!」
「わっしょい!」
 誰かが叫んで、誰かが呼応して。
「わっしょい!」
 沿道からも掛け声が響きます。
「わっしょい、わっしょい!」
 コクリが呼応したとき、少し神輿が斜めになりました。どうやら沿道の人に正面を良く見せるためのようですね。
 いえ、それだけではありません。
「一回転しますよ。それ、わっしょい!」
 先導の人が合図すると、ぐぐっと神輿が横に流れます。このまま緩やかに上下に揺らしながら回転するようです。
「わっしょい!」
 千佳とコクリの視界は、前に続く板塀の道から沿道の人々の顔に変わります。
 その顔の何と多いことか。
 わあっ、と目を見開く子供に、にこにこと拍手する高齢者。
 知人が担いでいるのでしょうね、手を振っているご婦人に、拳を固めて応援するお父さんらしき男性。
 みんな、神輿とその担ぎ手に注目しています。
 おや。
 囃してくれる人々にサービスなのでしょうか、もう一回転です。
「わっしょい! わっしょい! ……にゅふ、こういうのも面白いにゃねー♪」
「ホント。みんな期待してこっち見てくれてるよ」
 回ったことで風が感じられたこともあり、千佳もコクリも爽やかに。
 じっとりとかいた汗。
 合わせが乱れてずれたり、ぴとりと汗で肌に張り付く法被も気にならず。
 すべては神輿のため。
 見守ってくれる住民のため。
 千佳とコクリはほかの担ぎ手とともに頑張り……いえ、楽しみます。
「それじゃ先を急ぎますよ〜」
 この声を合図に次の場所へと行くのでした。



 そしてくまなく町内を練り歩き、出発した神社前の広場に戻ってきました。
「うに? もう一つ神輿がいるにゃ?」
「ほかの地区からも神輿が出たんだって」
 合計二基が集まった様子に千佳とコクリは大人しく成り行きを見守ります。
「おおい、小さい女の子たち」
 ここで千佳とコクリが呼ばれます。
「これから喧嘩神輿をするから、一人ずつ乗ってくれ」
「ええっ?!」
「うにゃっ!!」
 言われて腰に手を添えられて肩車される二人。そのまま大人の神輿の前部に立たされました。
「け、喧嘩するのかにゃ?」
 足を開き神輿の担ぎ棒に立った千佳が下の大人に聞きます。
「なあに、ぶつかるんじゃなく組み合わせて揉み上げるだけだ。激しくはないが、落ちるんじゃないぞ? そりゃっ、行くぜ!」
 大人たちは上を見ようともせず前進です。
「おぅさ、こっちの嬢ちゃんもびびって落ちるんじゃないぜ? 掛け声頼むぜ?」
「うんっ。……うわっ! わっしょい!」
 コクリ、素直に返事したところで二つの神輿が組み合った。
「うにゅにゅっ! びっくりしたにゃ……わっしょい! わっしょいにゃ〜!」
 千佳もぐらっと来ましたが、あとは揺れる神輿に身を任せ元気よく掛け声。
「……今年の上は、かわいらしいねぇ」
「よくまあ似たような背丈の女の子がいたもんだ」
 周りの見物客も感心しつつ、わっしょいと心を一つに盛り上がります。
「みんな……みんな来てるにゃ。頑張るのにゃ〜っ!」
「わっしょい、わっしょい!」
 千佳とコクリも、神輿の上のいわば神様の目線から多くの人々が集まってきていること、たくさんの担ぎ手が汗だくになって盛り上げていることを知るのです。
「わっしょい、にゃ!」
 みんな頑張って、みんな期待して視線を送って……。
「わっしょい!」
 最後に組み合ったまま回って、太鼓が激しく打ち鳴らされて、そして――。



「ふぅ、楽しかったにゃー♪」
 どさっ、と道端の縁石に千佳が腰を下ろします。とても爽やかな表情です。
「うんっ。最後はびっくりしたけど、盛り上がったよね〜」
 横にはコクリが座っています。汗をかいて上気した顔で答えます。
「少し休憩したら今度は屋台巡りに行くにゃ♪ 美味しい食べ物いっぱいあるらしいのにゃー♪」
「うんっ。これももらったし、金魚掬いとかでもご利益ありそうだしね♪」
 コクリ、ちりん、と鈴のついた招き猫の根付を掲げます。
「射的でもいいことあるといいにゃ♪」
 千佳も、ちりん、と同じものを掲げてこつんとコクリの根付て合わせます。どうやら参加した記念品のようですね。
 二人、視線を合わせてくすり。
「じゃ、行こう!」
「にゅ、行くにゃ!」
 こうして二人はいつも冒険に行くように屋台の並ぶ通りへと駆け出していきました。
 周りの人がはっとして二人を振り向いたりしてるのは、法被がずれ、汗ばんで上気した肌がちらちら見えていたりするから。でも二人はそんなのお構いなしです。
 だって、今こうして二人で楽しんでいるのに夢中なんですから――。



 以下、おまけ。
「はっ!」
 二人がコクリの部屋に帰った時、立ち尽くしました。
 何と、褌が一つ部屋に落ちているのです。
「ええと……」
 ちら、と自分の裾をたくし上げるコクリ。異常はない。
 千佳も真似してみたところ……。
「うに!」
 一瞬固まりましたが、「まあいいかにゃ」とか。
 何があったかは、内緒です。





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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 まさか六月の大祭ネタで来るとは、とびっくりしたというのはさておき、変わらず元気な二人をお届けまします。小さいと神輿を担ぐのに問題がある半面、体重が軽いので上に、とかの利点はあるものです。
 ではでは、ミニスカ法被にくるぶし程度の白足袋姿、ご堪能ください。

 この度はご発注、ありがとうございました♪
水の月ノベル -
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舵天照 -DTS-
2015年06月26日

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