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『たまにはドレスアップして 』
ロザーリア・アレッサンドリka0996


 ロザーリア・アレッサンドリ。
 普段は優雅な立ち居振る舞いと目だつ服装のせいか、まるで小説から抜け出したかのような――と言われることの多い彼女。エルフと言うこともあってか人間世界にも好奇心旺盛で、とても明るく社交的な女性なのだが――
 
「お願いします! あなたを街で見かけて、わたしのデザインしたドレスを着て貰いたいって思っていたんです……!」
 ある日のリゼリオ。
 ロザーリアはファッションデザイナーの卵という少女に、目の前で頭を下げられて目を白黒させていた。
 何でも、一週間後に開催される、この季節恒例のウェディングドレス・ファッションコンテストというのがあって、彼女はそれにエントリーしているらしい。そして、そのモデルに、ロザーリアを指名してきたのだ。
「え、いや、突然言われても」
 当然ながらあたふたするロザーリア。しかし目の前の少女――二十歳になるかならないかというくらいの年のころだろうか――は、目をきらきらと輝かせて、そしてまた熱っぽい口調で言葉を紡ぐ。
「ロザーリアさんって言うんですよね。リアルブルーに同じ名前の主人公のでる小説があるって聞きました。それからずっと思ってたんです、きっとロザーリアさんにはこういう服が似合うんじゃないかって……」
 少女の見せてくれたデザイン画は、繊細でかつ柔らかいタッチだった。明らかにロザーリアを意識した雰囲気の顔立ちの女性が来ている想定になっているが、確かに――ロザーリア自身もため息を思わずついてしまう。それほどに美しいものだった。
 ドレスはローズをモチーフにしたプリンセスライン。可愛らしいと言うよりも、ロザーリア同様に華のある、と言う表現のほうが似合う、ボリューム感のあるドレスである。普段着ている颯爽とした、どちらかというと格好いいという言葉の似合う軽戦士の出で立ちに比べても随分と豪奢で、確かに彼女によく似合うことだろう。
「……本当に、あたしでいいのかな」
 ぽつりと呟くと、
「もちろんです!」
 少女は嬉しそうに頷いた。
 ……むろん、ロザーリア自身もまたとない機会に、胸を高鳴らせていた。見栄っ張りな彼女は、直ぐに心を動かされたと思われたくないのだろうが、同時に目立ちたがりでもあるので、瞳の輝きだけはどうにもできなかった――ようだ。
 

 それからは試着に次ぐ試着。つまり細部の調整をきっちりと行なったわけだが――おかげで随分しっくりくるものになったと思う。
 コンテストは参加者が多いこともあってか、基本的に写真撮影されたものに投票してもらうシステムなのだという。理想のウェディングドレス――そんなもの、女性ならば参加したいというヒトの方が多いに決まっている。おかげでコンテストの主催者側は随分儲かっているだとか、いろいろなきな臭い噂もあったりするが――まあ、それは些末事である。
 女性の心はそんなことよりも、美しいドレスに釘付けだからだ。そして、それを纏ったモデルたちにも当然スポットが当たる。
 そんな中で、ロザーリアの写真はとても目を引いた。
 エルフの女性が身に纏っているというのも一つの原因だろうが、何より其れがひどく似合っているのだから文句のつけようもない。誰もが写真の前で足を止め、その美しさに息をのむ。
 薄めの、自身の持ち味がしっかり出るメイクを施し、更に真っ白いブーケを手にすれば、ドレス姿の彼女はまるで麗しの姫君。写真撮影の時も、教誡を借りて行なったのだが、カメラマンたちもが思わず息をのむ出来だったのは言うまでもない。
 純白のロングトレーンはヴァージンロードに映えている。髪にはティアラを挿してまさしくプリンセスという風体にしている。ヴェールはあえてショート丈だ。ドレスとのバランスを考慮した結果だという。
 文字通り彼女の為に作られた彼女の為のドレス――誰が見てもそう見える。本人もまんざらではないようで、満面の笑みを浮かべている。まるで幸せな花嫁のように――。
 

 後日、彼女の着たドレスはコンテストで最優秀賞を取ったという報告を受けた。むろん依頼人の少女も、ロザーリア自身も、喜びを隠せない。とくに、普段身につけないような華やかなドレス姿が評価されたのは嬉しかった。
 ……また機会があれば、こういうのもいいかも。
 そんなことを思う、ロザーリアであった。
 
 
 
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka0996 / ロザーリア・アレッサンドリ / 女性 / 21歳 / 疾影士 】



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。
納品までお時間頂いてしまいまして申し訳ありません。
ロザリーさんの着飾った姿というのは、確かに貴重かも知れませんね。こちらもアドリブを多くさせて貰いましたが、書いていてとても楽しかったです。
お気に召されるとよいのですが……。
では、今回はどうも有難うございました。
水の月ノベル -
四月朔日さくら クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年08月14日

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