▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 だって夏よ! バカンスよ!! 』
日浦・知々田・雄拝ka2796)&Non=Beeka1604)&ヴルーテ・ジーニーka2946

●水着の引力

 空と海とが混じる水平線には白い雲。波は笑うようにキラキラ輝く。
 ビーチにはなにかドキドキすることが待っているように見える。
「素敵ねえ。やっぱり来て良かったわ」
 Non=Beeは笑いながら、なめらかな頬にかかる髪を両手でかきあげた。
 何度押さえても、いたずらな海風はつややかな長い黒髪に戯れ、吹き抜けていく。
 ついでに赤いパレオの裾もふわりと舞い上がっていた。複雑なカットデザインの鮮やかな赤の水着、そして赤銅色の腿が露わになる。
「あら、やだわ」
 慌てて前屈みになって膝を揃え、Non=Beeが僅かに眉をひそめた。
 その仕草に、ヴルーテ・ジーニーがくすくす笑う。
「いいじゃなぁい、せっかくの海なんだもの。少しぐらい足が見えたって!」
「やあねえ、からかわないで頂戴。あらちぃちゃん、どうしたの?」
 ビーチパラソルの下で日浦・知々田・雄拝がまだ海に背中を向けていた。
「うーん、どこいっちゃったのかしらん……サンオイルがみつからないのよぉ」
 知々田は両手を頬に当てて、心底困ったという声で嘆く。
「あら、確かさっきバッグに入れたわよね? デッキチェアに全部広げてみたらどう?」
「そうねぇ……」

「プリンちゃん、見つからないなら私のを使えばいいわよぉ。そういうときに限って、捜しても見つからないものなのよねぇん」
 ヴルーテがウィンクして、自分のサンオイルを軽くこつんと知々田の額に当てた。
 プリンちゃんというのは知々田の名前にかけた、ちょっと可愛い呼び名だ。
「そうなのよねぇ。ぜったい後になって、コロンと出てきちゃうのよ。嫌になっちゃう! じゃあ借りちゃおうかしらん。これ以上は絶対に焼きたくないもの!」
「使って使って! 私もついでに、もう一回塗っちゃうわねぇ」
 知々田は透ける生地の襞が美しい黒のパレオを外すと、デッキチェアの上に長い脚を伸ばした。身に付けたビキニは黒のホルターネックに、金属のポイントが付いた大人びたデザインのものだ。健康的な小麦色の肌に、黒の水着は良く似合う。
 ヴルーテもパーカーを脱いで、並んで座る。こちらはピンクの髪に映える、落ちついたモスグリーンのスポーツタイプビキニに、同系色のショートパンツ。オレンジのワンポイントが健康的で活発なイメージだ。
「ヴルちゃん、背中はちゃんと塗った? 届かないなら手伝うわよ?」
 相変わらず髪を押さえながら、Non=Beeが覗き込んだ。
「えっとぉ……じゃあお願いしていいかしらん?」
「当たり前じゃない。お姉さんだもの、もっと頼ってくれていいのよ?」
 くすくす笑いながら、Non=Beeはしなやかな指をヴルーテの背中に滑らせる。
「ヴルちゃんてば、背中綺麗だわ。羨ましくなっちゃうわねえ」
「ふふっ……やだぁ、くすぐったいじゃなぁい?」

 ビーチパラソルの下、そんな甘い戯れの声に釣られて忍び寄る影。
 Non=Beeのむき出しの背中をちらちらと盗み見しつつ、2人の若い男が近寄って来た。
「ねえ、カノジョ。良かったらあっちで一緒にボートを……」
「なにかしら?」
 流れ落ちる黒髪をかきあげて、Non=Beeが振り向く。
 にやけ面の男達の視線が胸元にすっと流れ、そこで凍った。
 そこに在るべき膨らみはなく、寧ろ自分達より立派な胸筋の張りがあった。
「えっと、ゴメン、ちょっと用事を思い出したから……!!」
 ちょっと大柄だけど、色か漂う背中に惑わされた男達は、すぐに踵を返して走り去った。
 そう、Non=Bee、知々田、ヴルーテの肉体は男の物。
 だがその心は、誰よりも気高く誇り高い、女子の中の女子なのである――!

 Non=Beeは逃げた連中を見送り、首を傾げた。
「なんだったのかしらねえ?」
「ノンちゃんがあんまり綺麗だから、ナンパも気後れしちゃったんじゃないのぉ?」
 そう言ってヴルーテが笑うと、知々田は人差し指でつんとヴルーテの頬をつついた。
「ん、もう、ジーニちゃんてば! どうみてもNonちゃんの好みじゃないじゃない!」
「それもそうねぇん♪ 100年早いってとこだわぁ」
 明るい笑い声が傘の中から漏れる。
 傘の下に花咲くは、甘い蜜の香りで獲物を呼び寄せ、取り込むウツボカズラ達。
「そうよ。折角来たんだもの、害虫は無視して思い切り楽しまなくちゃ!」
 夏の商店街の福引で、知々田が気合で引き当てた宿泊券。
 これはもう運命。ソウルシスター達と共に過ごす、素敵な夏への招待券。
 高級リゾートホテルでのバカンスという、豪華な女子会がこうして実現したのだ。
「そうよそうよ! 害虫なんかムシムシ!!」
「ふふっ素敵な思い出を作りましょうね」
 3人は互いの手を取り合って、素敵な予感に胸をときめかせるのだった。


●素敵なリゾート

 ようやくオイルを塗り終え、それでもまだ知々田は黒いパラソルを開いた。
「準備万端ねえ」
 Non=Beeが感心したように溜息をつく。
「だって後の手入れが大変じゃない? 皮が剥けちゃったりしたら、あたし、外なんか歩けない!!」
「でもそれじゃ海には入れないわよぉ?」
 そういうヴルーテは大きなスイカを抱えている。
「どうしたのジーニちゃん、そのスイカ」
「うふっ。海に来たからには、海らしい遊びをしなくちゃ!」
 満面の笑みで幅広の布、長い棒きれ、ビニールシートをいそいそと並べるヴルーテ。
「あらヴルちゃん、スイカ割り? あたし一度もやったことないのよ」
 Non=Beeは興味津々という様子で、スイカの頭をポンポンと手で叩いたりしている。
「私もよ! だからやってみましょうよ。ほらほらぁ!」
 ヴルーテは浮き浮きと布を取り出し、Non=Beeの顔に巻きつける。
「あら、やだ、なんにも見えないわねえ」
「見えないようにしてるのよぉ〜」

 この中では一応、一番年上なのがヴルーテだ。だが風格というべきか、人格というべきか、一番のお姉さん格はNon=Beeなのである。
 Non=Beeから見れば、知々田とヴルーテは可愛い妹分。
 知々田にとってNon=Beeは実の姉の様に慕い甘えることのできる稀有な存在であり、ヴルーテは面倒を見てあげたいようなところがある可愛いコ。
 ヴルーテからすれば、ふたりとも何かと損な役回りを引き受けてしまいがちで、しっかり見ておいてあげなくてはならない存在なのだ。
 特に酒飲み仲間でもありいつもお姉さん格であるNon=Beeには、偶には羽目をはずして欲しいと思っている。

「さ、この棒を持ってねぇ。回すわよぉ? はーい、1、2、3! ほらプリンちゃん、ノンちゃんを呼んであげて!」
 軽くNon=Beeの肩を押し、ヴルーテはすぐに離れた。
「え? え? どっち、わからないわ!」
 足元をふらふらさせながら、どうにか踏みとどまるNon=Bee。知々田は傘を肩で押さえ、手拍子で方向を示す。
「こっちよ、Nonちゃん! 気をつけて、ああそのまま真っ直ぐよ! 上手上手!」
「そこよぉノンちゃん! 思い切り、棒でばぁんと!!」
「え? こうかしら……?」

 バキャ。

「わあああああごめんなさいいいいいいいいい!!!!!」
 Non=Beeからは見えていないが、ついさっきのナンパ男どもが、危うく足を殴られそうになって必死で逃げていく。
「わざとじゃないのよ。そう、これは天罰。不埒な輩には天罰なのよ」
 知々田は一瞬、本来のイケメン顔で呟いた。
 だがすぐに気を取り直して、Non=Beeを導く。
「大丈夫よ、Nonちゃん。もう少し左ね、そうそう、そのままあと3歩……そう、そこでばぁんよ!!」
「こう?」

 バキャ。

 ヴルーテと知々田が揃って手を叩く。
「すごいわぁ!! さっすがノンちゃん、狙った獲物は逃がさないわねぇん」
「いやあねえ。棒で追い回したことなんかないわよ?」
 目隠しを外し、Non=Beeが嫣然と微笑んだ。


 綺麗に割れたスイカは、近くの人達にも分けてあげて。
 少し波に足をつけた後は、デッキチェアに並んで寝そべる。
 Non=Beeは脛を手で軽く払う。乾いた砂はさらさらと零れて行った。
「綺麗な砂だわねえ……きゃっ!?」
 背後から近づいたヴルーテが、オレンジ色の飲み物が入った大きなグラスをNon=Beeの頬に軽く当てていたのだ。
「軽く、ね? そろそろ欲しい頃でしょ?」
「ふふっ、いただくわ」
 南国の花、南国の果物を飾ったブルーのグラスを手に、知々田がほう、と息をついた。
「来て良かったわねぇ」
 心からそう思った。

 だがしかし。この虚しさはどこから来るのか。
 ――理由はすぐに分かった。

 ヴルーテがデッキチェアの上で突然身を起こした。
「見て見て、ノンちゃん! あの人、ちょっと素敵よぉ!」
「え? どの人かしら?」
「ほらぁ、あの浜辺を歩いてる人よぉ! ノンちゃん好みの素敵な胸板じゃない!?」
 そう、目を楽しませる物が足りなかったのだ……!


●危険な誘惑

 波打ち際に出て足元を濡らしながら、Non=Beeはさり気なく巡回中のライフセーバーを確認した。
 流石は海の男、精悍な顔立ちも、小山のような筋肉も申し分ない。勿論、頼りがいのありそうな素敵な胸板だ。
 砂浜を鋭く見渡していた男が、ふとNon=Beeの視線に気がついた。動揺するそぶりも見せず、正面からその視線を受け止めて、Non=Beeは魅惑的な微笑を浮かべる。
「Nonちゃんてば、大胆……!」
「あら。ちぃちゃんがちょっと奥手すぎるのよ」
 Non=Beeの背後で傘に隠れるように、知々田はライフセーバーを覗き見た。
 確かにいい男だ。これぞ目の保養だと思う。だが知々田としては、できれば他の所を見ている横顔を、こっそりと丹念に舐めるように眺める方が好みなのだ。
 そんなことを考えていると、突然の風。
「あっ……!」
 お気に入りのパラソルは風をはらみ、あっという間に知々田の手を離れてしまった。
「やだ、パラソルが……って、きゃあああ!!!」

 ばっしゃーん。

 波に足を取られ、盛大に知々田が転んでしまったのだ。
「え? ちぃちゃんどうしたの……!?」
「プリンちゃん、大丈夫!?」
 Non=Beeとヴルーテが慌てて膝をつき、びしょぬれになった知々田を助け起こした。
「やだわ……恥ずかしいっ!」
 そのとき、背後から渋い声がかかった。
「こちら、貴方の物ですね?」
「え……?」
 振り向くと、年の頃50がらみと見える白髪交じりの男だった。船乗りなのだろうか、深い皺を刻んだ赤胴色の顔は如何にも頼もしそうだ。
 男は知々田の傘を拾い上げ、軽く水を切ると畳んで手渡してくれる。
「すぐに真水で洗えば大丈夫でしょう。どうぞ」
「あ、あの……」
 またも後ろに隠れてしまう知々田に変わって、Non=Beeが微笑んだ。
「まあ有難う。やだ、この子ったらちょっと照れ屋なの。ふふっ、でもそんなとこも可愛いでしょ?」

 手を振って別れた後、ヴルーテは軽く知々田の横腹をつついた。
「ん、もう。じれったいんだからぁ。素敵なおじさまだったじゃなぁい?」
「ふふっ、あそこで引いちゃうのがちぃちゃんの可愛いところよねぇ」
 そう言って、たおやかに微笑むNon=Beeの紫の瞳が、突然きらりと輝いた。
「でもね。素敵な人は、すぐに誰かに盗られちゃうのよ?」
 そう言うや否や、噴射音と共にNon=Beeの姿が消えた。
 いつの間にジェットブーツを装着していたのか、沖に向かって疾走する赤い水着姿。
 その先には件のライフセーバーが、ゴムボートを漕ぎだそうとしているところだった。

 知々田がごくりと唾を飲み込む。
「すごいわ、Nonちゃん……」
 Non=Beeは絶妙のタイミングでジェットブーツの噴射を切り、ゴムボートの少し手前で水飛沫を上げて水中に突っ込んだのだ。
「あらぁ。しっかりイケメンの胸に縋りついちゃってるわねぇ」
「あたし、やっぱりNonちゃんにもっといろいろ教わらなくっちゃ……!!」
 そう、時に女子は女優にならねばならない。
 自分を磨き、自分を律し、ある瞬間に自分を最高に輝かせるのだ。
「今日は部屋に戻ったら、いっぱい質問しちゃおうっと!」
「え〜、もしもよぉ。もし、ノンちゃんが戻って来なかったらどうするぅ?」
 ヴルーテの流し目に、知々田は思わず頬を染めて叫んだ。
「やだっ、ジーニちゃんてば! 大胆すぎよっ!!」

 こうして日々、ウツボカズラ達は進化を続けるのである……!


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka2796 / 日浦・知々田・雄拝 / 心の女子 / 20 / ハニカミ女子】
【ka1604 / Non=Bee / 心の女子 / 25 / ダイタン女子】
【ka2946 / ヴルーテ・ジーニー / 心の女子 / 28 / イタズラ女子】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お待たせしました、女子会・リゾート編のお届けです。
今回も魅力的な笑顔と女子力で、向かうところ敵なし状態。大変楽しく執筆致しました。
気になる点がありましたら、お申しつけください。
またのご依頼、誠に有難うございました!
野生のパーティノベル -
樹シロカ クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年08月14日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.