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『どんな水着が似合うかな? 』
シグリッド=リンドベリjb5318)&華桜りりかjb6883


 夏だ、プールだ、海水浴だ!
 でもその前に。

「学校指定の水着は持ってますけど、やっぱりプライベートにはちょっとカッコイイのが欲しいかなって」
 シグリッド=リンドベリ(jb5318)は中等部三年生、そろそろ男の子なりの色気が出て来た頃合いだろうか。
「あたしも、今年は新しい水着がほしいの……」
 華桜りりか(jb6883)は流行に敏感なお年頃、水着はやっぱりその年の流行を取り入れたいようだ。

 というわけで。
「章兄に」
「章治兄さまに、新しい水着を選んでほしいの、です」
「ほしいのです…!」
 キラキラした目で見つめる弟分と妹分。
 その勢いと期待に満ちた様子に、門木章治(jz0029)は思わず一歩後ろに下がった。
「……選ぶって…俺、センスないぞ?」
「そんなことないのですよ…!」
 シグリッドはそう言ってくれるが、その評価も恐らくは何重ものフィルタを通して見た結果なのだろう。
 それに男の子はまだしも、年頃の女の子がどんなものを喜ぶかなんて、さっぱりわからない。
 わからないから、その必要がある時にはショップの店員に選んでもらうのが常だ。
「それでも良いのですよ」
 とにかく三人で一緒にお出かけしたいだけなのだ。
 水着選びはその口実――いやいや、それだって大事なミッションだし、門木に選んでほしいのは本当だし。
「代わりに、ぼく達が章兄の水着を選んであげるのです!」
「……俺の?」
「ほしくないの、です?」
「……いや、選んでくれるなら…うん」
 とにかく、まずは行ってみようか。


 今日も久遠ヶ原は良い天気。
 つまり太陽がギラギラと照り付け、湿った熱風が肌に纏い付く。
 そんな中、三人は生徒達がよく利用するショッピングモールへと出かけて行った。
 シグリッドは猫プリントのタンクトップに上から淡い水色のシャツを羽織り、下は膝上の白い短パン、足元は黒いスポーツサンダル。
 りりかは清楚な白いワンピースに、少し踵の高いメッシュのサンダル、頭には勿論お馴染みのかづき。
 門木は紺鼠のTシャツに生成りのシャツを羽織り、下は麻のパンツに、足元は――下駄。何故か下駄。
 右近と呼ばれるタイプのその下駄が、どうやら最近のお気に入りらしい。
 そして男二人は麦わら帽子、りりかは優雅に日傘を持って。
「本当は華桜さんと二人で章兄をさんどいっちして歩きたいのです」
 しかし、この炎天下では流石に暑いし、りりかの日傘もちょっと邪魔。
 涼しい店内に入るまで、それはお預けだ。

 休日の午後、ショッピングモールは涼を求める人々で賑わっていた。
 エアコンの効いた店内で、二人は早速門木を両側から挟み、ひっつく。
 目当てのコーナーは水着や浴衣、夏向けのグッズを一纏めにした季節物の特設会場だ。
「まずは章治兄さまの水着を選ぶの」
 メンズの売り場はレディースに比べてだいぶ狭いが、それでもここは品揃えが豊富な部類に入るだろう。
「章兄はサーフパンツが似合うと思うのです…青か黒系の濃い目のが」
 こくり、シグリッドが頷き、適当に何着か選び出してみる。
 水着は大胆で派手な柄が多いけれど、あまり派手なものは好みではなさそうだ。
「濃い緑とか、濃紺…やっぱり濃い色の方が似合いそうなの」
 無地かラインが入っている程度、そこに猫のワンポイントが入っていたりしたら可愛いかもしれない。
「ねこさん…!」
 りりかの言葉を聞いてシグリッドは猫柄を探す気満々、売り場の水着を片っ端からチェックしていく。
「あっ!」
 見付けた、猫そのものではないけれど、肉球のワンポイント!
 左足の裾から中心に向かって、五つの白くて小さな足跡が斜めに連なっている。
「これ、ねこさんですよね? わんこじゃないですよね?」
「……多分」
 犬ならもう少し尖った感じに表現される事が多い気がする。
 ふと後ろを見ると、そこにはすらりと長い尻尾がプリントされていた。
 長めのS字フックのように右側に伸びたそれは、どう見ても猫の尻尾だ。
「章兄これ! これの緑と紺、どっちが良いですか!」
 既にデザインはそれ一択の勢いで押しまくるシグリッド。
「あ、でも他のが良ければそれで――」
「……いや、これで良いよ」
 門木は紺色の方を手に取った。
 少し薄めでくすんだ色合いが、ワンポイントの白を余り派手に際立たせることなく馴染ませている。
「あっ!」
 決まったところで、再びシグリッドが声を上げた。
 今度は何かと見れば、手にしているのは少し小さめのサーフパンツ。
 こちらはペイルブルーの地に少し濃いめのグレーで肉球が配されている。
 デザインは門木のものと同じだが、こちらは右足に模様があり、尻尾も鏡に映した様に反対側に付いていた。
「章兄、これ…! ぼく、章兄とお揃いにしても良いですか…っ!?」
「……ん、良いよ」
 目と鼻の穴をまん丸にしたシグリッドの頭を、くしゃくしゃと撫でる。
 これで二人の分は決まった。
 問題は、りりかの水着だ。

「……まずはデザインからだな」
 カラフルな水着が並ぶ一角で、門木は辺りをざっと見渡す。
 保護者的な立場から言えば、露出はなるべく少ない方が良いだろう。
 だが近頃は必ずしも露出の高さばかりが男の視線を集めるわけではないようだ。
 結局は本人が気に入ったものが一番、という事になるだろうか。
「……りりかと言えば、桜にチョコ…か」
 だが、たまには敢えてその枠からはみ出してみるのも良いかもしれない。
 悩みながらも、門木はいくつか選び出してみた。
 ひとつは上下共に二重のフリルが付いたフレアトップ、下のスカート部分は取り外しも可能だ。
 もうひとつは最近の流行らしいバンドゥビキニ、胸の部分の布が大きなリボンの様に幾重にも重なり、その真ん中にハート型のチャームが付いている。下は通常のパンツとフリルのミニスカート、ショートパンツがセットになっていた。
 最後に選んだのは、小花柄のひらひらワンピース。オーガンジーの様な透ける素材に小花が散り、その下にビキニタイプの水着が透けて見える。ワンピースの方は勿論取り外しが可能だ。
「……こんなもの、かな」
 さっきから店員のお姉さんが不審者を見るような目でチラチラと見ているが、りりかとシグリッドがすぐ横にいるから大丈夫、多分。通報されることはない、はず。
「……色はピンクかオレンジ、白、水色あたりか…」
「んぅ…えと、どれも素敵なの…」
 とりあえず一通り試着して、それでも悩むりりか。
 いっそのこと全部買っちゃう?
「んと…でも、やっぱり今年らしいのが良いの、です」
 今年らしいと言えば、バンドゥビキニか。
 色はいつもの定番から少し外して、オレンジの濃淡と白を組み合わせたもので、胸元のチャームはライトグリーン。
 オレンジムースのように美味しそうで、見ただけで元気が出そうな色合いだ。

 他には上に羽織る薄手のパーカやビーチサンダル、浮き輪やボート、イルカが描かれた水玉模様のビーチボールなどなど、必要な物やそうでもない物を色々と買い込んで。
 目的を果たしたら、後はどこか美味しいスイーツの店で一休み。
 店の中は肌寒いくらいに涼しいから、少し温かいものが欲しい気分だった。
「あ、ここのパンケーキが美味しいのですよー」
 シグリッドに誘われて、まずは熱い紅茶で喉を潤す。
「パンケーキ、どれにします?」
「んと…あたしはこれが良いの…」
 メニューを見てりりかが指差したのは、ミックスベリーチョコ。
「ぼくはアップルシナモンなのです。章兄はどれが良いです?」
「……んー…よくわからないな、任せて良いか?」
「じゃあ、キャラメルナッツがお勧めなのですよー」
 注文を決めて、待つこと暫し。
 三人の目の前に置かれたのはボリューム満点の巨大なパンケーキだった。
 りりかのミックスベリーチョコは、分厚いパンケーキにホイップクリームとたっぷりのイチゴを挟み、宝石の様なラズベリーとブルーベリー、アクセントにミントの葉をトッピング、その上にたっぷりのチョコソースをかけたもの。
 シグリッドが頼んだアップルシナモンは、リンゴのプレザーブをサンドし、上にもリンゴをどーんと置いてホイップクリームをトッピング、そこにアップルソースとキャラメルソース、仕上げにシナモンパウダーをかけてある。
 キャラメルナッツは熱々のパンケーキに冷たいバニラアイスを乗せ、その上からナッツのトッピングとキャラメルソースがかかったものだ。
 流石にどれも美味しそうだが――
「……でかいな…」
 直径も高さも15cmはありそうなその大きさに、門木は見ただけでお腹一杯になりそうだった。
 だがシグリッドとりりかは平気な顔をしている。
 甘い物は別腹という、これが女子力なのだろうか。
「大丈夫ですよ、三人で分けっこすれば色んな味が楽しめて、あっという間に食べ終わるのです」
 そう言いつつ、自分の分を切り分けたシグリッドが門木にあーん。
 その隣では、りりかが自分のケーキを食べさせようと待ち構えている。
「みっくすべりーちょこも、美味しいの…」
 うん、確かにどれも美味い。
 美味いけれど、多いよやっぱり。
「……二人とも、手伝え」
 って言うかこれ早く食べないとアイスが溶ける!
 門木は自分のケーキを三等分に切り分けて、二人にどーんとお裾分け。
「ところで章兄」
「……ん?」
「少しは泳げるように、なったのです?」
「……、…うん…まあ、ただ浮いているだけなら、なんとか」
 それはいわゆる立ち泳ぎというやつで、普通の泳ぎ方は犬かきさえ出来ない。
 普通に泳ごうとすると、何故か沈むのだ。
 プールの縁に捉まったり、誰かに手を持ってもらえば浮いていられるのだが。
「立ち泳ぎの方が、普通に泳ぐより難しいと思うのですよ…?」
 ですよねー。
「海に行く前に、プールで練習する、です…?」
「……それはちょっと、遠慮したい、かな…」
 まあほら、全然泳げないというわけでもないし。
 いざとなったら飛べば良いんだし。
「水の中でも、飛べるのです?」
 ペンギンみたいに?
「……うん、まあ…出来ないことはないだろうな」
 多分、飛行が得意なら。
 しかし門木は――

 そんな他愛もないお喋りを楽しみながら、美味しいパンケーキを味わった後は。
「この近くに、チョコケーキの美味しいお店があるの…」
 まさかの二件目、スイーツ梯子!?

 ……ケーキはお持ち帰りで、良いかな。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb5318/シグリッド=リンドベリ/ねこらう゛】
【jb6883/華桜りりか/ちょこらう゛】
【jz0029/門木章治/通報一歩手前】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、STANZAです。
いつもありがとうございます。

門木がと言うより背後にセンスがないので、チョイスは微妙だったかもしれません。
一応、今年の流行などは調べてみたのですが……!
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エリュシオン
2015年08月21日

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