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『幸せの音色 』
ヘスティア・V・D(ib0161)&北條 黯羽(ia0072)&リューリャ・ドラッケン(ia8037)&ユリア・ソル(ia9996)&ニクス・ソル(ib0444)

 木漏れ日の差す中庭。テーブルにかけられたレースが、穏やかな風に吹かれて揺れる。
「ユリア、今日はアップルパイを焼いてみました」
「ええ、良い香り。今日も完璧な出来栄えね、ひい。その服も良く似合っているわよ」
 レースをたっぷり使った淡い青のワンピースを纏う金髪の人妖はとても愛らしく、まるで童話から抜け出して来たようで……。
 満足気に微笑むユリア・ソルに、ひいと呼ばれた人妖は気恥ずかしそうに主を見る。
「あの……今日はお給仕に来たんですわよね。このような格好、場違いだったのではないでしょうか」
「今日は俺達のお茶会に付き合ってもらってんだからいーんだよ」
「そういうこと。さあ、お茶会を始めましょう。私がお茶を入れるわね」
 カラカラと笑うヘスティア・V・Dに、ティーポット片手に頷くユリア。
 そう。今日は、懐かしい友人達と、その子供達とが久しぶりに集まるお茶会の日なのだ。
 北條 黯羽も立ち上がり、華奢な模様が描かれた小皿を手に取る。
「じゃあ俺も手伝うとするかねェ。ふう、今日のお菓子はなンだい?」
「あたし達がやるから座っててもいいのに。今日はミックスベリーのマフィンを焼いたわよ」
 黯羽に笑顔を返しつつ、くるくると飛び回りながら食器を並べて行く青髪の人妖。
 ――ひいとふうは、天儀に混乱を齎した『狂気の人妖師』という二つ名を持つ賞金首が生み出した人妖だ。
 紆余曲折あった末に、ひいはユリアに、ふうはリューリャ・ドラッケンに引き取られた。
 創造主から何も教られていなかった彼女達は、最初は何も出来なかったけれど。
 引き取られた先で使用人として生活しているうちに様々なことを覚え、料理の腕も目覚しく上達していた。
 人妖達が作ったお菓子から何とも言えない良い匂いがして、子供達から歓声があがる。
「わあ……! アップルパイ美味しそうです。ね、お兄様」
「うん! ひいが作るお菓子はとってもおいしいからね!」
「ふうが作るお菓子だっておいしいんだよ!」
「じゃあ、どっちが美味しいか食べ比べしてみようよ!」
「いいよ! ボクのふうが負けるわけないけどね!」
 バチバチと火花を散らすアルバとグラディート。兄の背にしがみついてオロオロしているエステルにニクス・ソルとリューリャが顔を見合わせて苦笑する。
「アルバ、エステル。お菓子を食べるなら先に手を洗っておいで」
「ディもな。きちんと石鹸使えよ」
「「「はーい」」」
 父達に言われて、一旦休戦し素直に従う子供達。その背を見送りながら、ユリアが紅茶をカップに注ぐ。
「今日はジルベリア風に濃い目に淹れてみたわ。薔薇のジャムと一緒にどうぞ」
「ああ、ユリア。それはわたくし達がやりますから……」
「そうよ、あたし達の仕事なくなっちゃうじゃない!」
 働く主達におろおろする人妖姉妹を、リューリャがまあまあ、と宥める。
「最初に言ったが、今日は仕事をする為に連れて来たんじゃないよ」
「そうよ。貴女達、久しぶりに会ったでしょう? 折角だし、姉妹でのんびりするといいわ」
「でも……」
 微笑むユリアに、戸惑う人妖達。そんな二人の頭を、黯羽が順番に突く。
「あンた達真面目だねェ。ちょっとくらい休ンだってバチあたらないさね」
「そーそー。俺達は適当にやるからさ」
「ああ。子供達だけ気をつけて貰えると助かるよ」
 ヘスティアとニクスに、おずおずと頷き返すひいとふう。
 二人で連れ立って部屋を出ようとしたところで、戻ってきたアルバとエステルが金髪の人妖に声をかける。
「あっ。ひい、どこ行くの?」
「おかえりなさい、アルバ。妹とお話するのですわ」
「え。ひい、近くにいてくれないですの?」
「呼ばれたらすぐに参りますわ。安心なさいませ」
 順番に頭を撫でるひいに、ホッと安心する子供達。
 その様子を見て、ヘスティアがくすりと笑う。
「ユリアのとこの子供達は随分ひいに懐いてるんだな」
「そりゃあ、あの子達がお腹にいる時から一緒だしね」
 紅茶を口に運びながらいうユリア。
 ――アルバとエステルは、ユリアとニクス夫妻の子供達だ。
 長男のアルバは黒髪に青い瞳を持つ、礼儀正しく年齢の割にしっかりとした男の子だ。
 端正な顔立ちをしており、優しい目元は父親譲り……と言ったら、ニクスは嘆くのかもしれないが。事実なので仕方ない。
 将来は、父と同じ騎士になる! と剣術の修行に励んでいる。
 長女のエステルはふわふわの青い髪に目の覚めるような橙色の瞳を持つ可憐な女の子で、年相応に泣き虫で甘えん坊……と言いたいところなのだが、兄を慕うあまりに常にくっついて回っているような感じだった。
 この子は、兄とは違い魔術系の才能がある、とユリアは見立てている。
 いずれ彼女も、きちんと力の制御の修行をさせないといけないかもしれない。
 まあともかく、この兄妹が共通して言えることは、母の相棒で使用人でもある人妖が大好きだということだ。
「二人とも随分大きくなったが、それだけは変わらないんだよな」
「まあ、俺達のとこの子も人のこた言えないさね。あァ、うちの暁だけはちょっと違うかな……」
「そういえば、暁はどうしたんだい? 姿が見えないようだけど」
「さっき『修行がしたい。すぐ戻る』って飛び出していっちまってねェ……。約束は守る子だから、すぐ戻ってくると思うンだが」
 くつりと笑う黯羽に、首を傾げるニクス。それに彼女は肩を竦める。
 黯羽とリューリャの長男、暁は黒髪に赤い瞳、褐色の肌と、母の特色を強く受け継いだ男の子だ。
 キリッとした美少年だが、カッコいいのは見た目だけではない。
 幼いのに人に対する礼節を忘れず丁寧で、奢ることなく己の心身を鍛えるのにも熱心だ。
 子供らしく姉弟達と喧嘩することもあるが、それは大抵負けず嫌いの性質から来るもので……。
 このまま大きくなればきっと、心身共に素晴らしい男に成長するに違いない。
「本当、暁は親の俺から見ても男前さね。一体誰に似たンだろうねェ」
「そりゃあ俺だろ」
「いやいや。りゅーにいはあんなにド真面目じゃねえだろ」
「失礼な。俺は真面目だぞ?」
「いやァ……真面目の方向性が違うっていうのかねェ」
「どっちかっていうとあいつの方が似てるんじゃね? なぁ、黯羽?」
「どういう意味だ」
「そういう意味さね」
 ガクガクと首を縦に振る黯羽とヘスティアにジト目を向けるリューリャ。
 二人の妻達の目線は、ヘスティアとリューリャの末子、グラディートに注がれていて……。
 グラディートも黒髪に赤い瞳を持つ男の子で、見た目はどちらかというと母親似であろうか。兄である暁を小さくしたような印象だが、中身は全然違っていた。
 とにかく元気……いや。もう、そういったレベルを通り越したやんちゃぶりで、目を離すと何をしでかすか分からないミニ台風である。
 社交的な甘え上手で、愛嬌があって可愛らしいからか、女性には良く可愛がられているようだったが、もう一つ困った癖があった。
 そう、それは女性とあらば老若問わず口説き始めることである。
 こうしている今も、グラディートは早速エステルを口説き始めていて……。
「ねえねえ、キミかわいいね! 名前なんていうの?」
「あ……えと、エステル……ですわ」
「へえ。キミにぴったりの可愛い名前だね! ボクはグラディート。ディでいいよ。ねえねえ、エステル。キミ、可愛いよね。髪の毛ふわふわでボクの好みなんだ! だから、ボクと結婚しない?」
 ……この流れるようなプロポーズは一体どこで覚えたのか。
 天賦の才能だとしたら末恐ろしい話である。
 グラディートの女性の扱いは完璧だったが、元々人見知りのエステルはぼふっと音がしそうな勢いで赤くなると、慌ててアルバの後ろに隠れる。
「あっ……あ、あの、わたくしは大きくなったら、お兄様と結婚するので……その、ごめんなさいです」
「えっ。ぼく、大きくなったらひいと結婚するんだ!」
「えええっ!? そんなあああ!」
 さらっと、悪気なく続いた兄の言葉に、ガビーーン! とショックを受けるエステル。
 橙色の大きな瞳がみるみる涙に濡れて……彼女の泣き声を聞きつけて、人妖達がすっ飛んで来る。
「もー。ディったら、早速女の子泣かせたの?」
「ちがうよ! ボクじゃない!」
 ふうにあらぬ疑いをかけられてプンスコ怒るグラディート。
 それに苦笑しつつ、ひいはそっとエステルの髪を撫でる。
「……エステル? どうなさいましたの? わたくしに教えてくださいな」
「うわあん! ひい〜!! お兄様がひどいですのーー!! わたくしと結婚してくれないってええええええ!!」
「だ、だってぼく、ひいが大好きなんだもん。だからひいと結婚するって言ったんだもん」
 妹に泣かれ、慌てつつも事情を説明するアルバ。
 金髪の人妖は深々とため息をついて彼を見つめる。
「……アルバ。お気持ちは嬉しいのですが、わたくしとの結婚は難しいのではないかと……」
「えええっ!? ダメなの!?」
「ダメ、というよりは立場的に難しいのですわ。わたくしは人妖で……人妖はモノですから。そのような権利もありませんし」
「ケンリは良く分からないけど、ひいはモノなんかじゃないよ! ひいはぼくのこと嫌い?」
「あ、あの。アルバ……」
 純真な瞳で迫る少年に、言葉に詰まるひい。
 こうしている間もエステルは泣き続けている上に、彼女には兄妹で結婚するのは不可能だという事実を教えなくてはならない。
 さて、どうしたものか……。
 いつも冷静な彼女がたじろいでいるのが珍しくて……ふうはニヤリとして姉を見る。
「ひいも堅いこと言うわねえ。相手は子供なんだから少しは乗ってあげたらいいのに」
「……無責任に期待を持たせるようなことは言えませんわ」
 この兄妹が真剣だからこそ、迂闊なことは言えない。
 涙目のアルバをよしよし、と宥めつつ、ひいは妹をちらりと見る。
「……そう言うふうこそグラディートの求婚は受けたんですの? 怒涛の求愛を受けていたようですけれど」
「え? だってあたしはほら……リューリャの嫁だから。それに、ディ、今はエステルに夢中みたいだし?」
「エステル、泣かないで。ボクが結婚してあげるから!」
「わたくしはお兄様がいいんですのおおおおお!!」
 再度アタックするも光の速さでフラれるグラディート。
 そっかー。じゃあしょうがないねー、とやけにあっさりと頷いた彼はくるりとふうに向き直る。
「じゃあ、ふう。ボクと結婚しよう!」
 ――ちょっと待て。どうしてそうなる。
 リューリャ、ヘスティア、黯羽が心の中で同時にツッコミを入れる中、ユリアとニクスの目線がリューリャに突き刺さる。
「……何だ、二人共。言いたいことがあるなら言えよ」
「ううん、別に。随分面白い教育をしてるのねと思って」
「俺はそんな事教えちゃいねぇよ」
「本当? じゃあ、あれは血筋ってことね」
「血は争えないってやつだな……」
「二人揃って納得するなよ……」
 妻の適切な一言に、うんうんと頷くニクス。
 抗議するリューリャの両手はしっかり二人の妻の身体に回っていて、説得力は皆無で……黯羽とヘスティアの髪を弄びながら、彼は息子に目線を向ける。
「ディ、ナンパは程々にしておけよ」
「ナンパじゃないもん。本気だもん」
「……そうか。なら仕方ないな」
「そこで納得すんなよ!!」
 きっぱりと言い返す息子に、ふむ、と頷いたリューリャ。
 ビシィ! とヘスティアが突っ込む間にもグラディートの言葉が続く。
「ねえねえ、ふう。いいでしょ? 結婚しようよ」
「ディ。あたしは、あなたのお父さんの嫁なの。だから結婚できないって何度も言ってるでしょ?」
「ちちうえはお嫁さん二人いるし、ふうがボクと結婚してもきっと怒らないよ!」
「だから、そういう問題じゃなくてね……」
「ダメだよー。ふうはボクのだもん! それにボク、エステルにフラれちゃったんだよー。可哀想でしょー?」
「それは可哀想だけど……」
「じゃあ結婚しようよ!」
 何だろう。この『イエス』と言うまで永久にループしそうなやり取りは……。
 ふうはため息をつくと、グラディートの黒髪をわしゃわしゃと撫でる。
「もー。困った子ね……。分かった。分かったわよ。リューリャより男前に育ったら考えてあげてもいいわ」
「やったぁ! じゃあ、ふうはもうボクお嫁さんだね!」
「どうしてよ」
「だってボク、絶対ちちうえよりいい男になるもん」
 一体その自信はどこから来るのかと苦笑するふう。グラディートの真っ直ぐな瞳が、自分を追いかけている時間は、そんなに長くはないはずだ。
 子供の成長は早い。自分のことなど忘れて、いつか世界に飛び立って行くだろうから。
 ――でも、それまでは……。
「……私の天使達も落ち着いたみたいね」
「ああ。一時はどうなるかと思ったが……」
 座ってお菓子を食べ始めたアルバとエステルに目を細めるユリアとニクス。
 親が手出しをするのは子供達が泣いた時だけと決めていた。
 言葉に詰まったひいから子供達を引き受けて、少し話をして……今の状況がある。
 アルバもエステルも小さいが、話せば分かる賢い子に成長してくれた。
 それがとても嬉しいし、そうなったのも、この目の前の聡明な女性が共にあったからだ。
 ニクスは、子供達を見つめる妻をそっと引き寄せて首に顔を埋める。
「……ニクスったら。急にどうしたの?」
「いや、君はとても良い奥さんだなあと思ってね。良妻賢母っていうのかな」
「あら。今頃気付いたの?」
「まさか。ずっと前から知ってたよ。……あの子達も、いつか良い相手と出会えるといいな。君みたいな素敵な人にね」
「素敵な人って胸が大きい人?」
「……ユリア? 何を言ってるんだ?」
「ニクスが腰より胸が良いって言った事は一生忘れないわよ? ふふふ」
「俺、そんなこと言ったっけか……」
「ええ。でも、それも許せるわ。ニクスはそれだけ素敵な旦那様だから。あの子達も、私達のような家庭を築けるといいわね」
 困惑するニクスににーっこりと艶やかな笑みを向けたユリアはそっと彼の頬に唇を寄せる。
「……相変わらずラブラブなのな。あの二人」
「ん? 俺達だってそうだろ?」
「どーだかねェ」
 親友夫妻の様子に乾いた笑いを浮かべるヘスティアに真顔で答えるリューリャ。
 肩を竦めた黯羽に、彼は眉を上げる。
「おやおや。そんな事を言われるなんてな。愛情が足りなかったかな?」
「そう思うかい?」
「足りないことがあれば何なりと聞くぞ」
「そうかい? じゃあ、俺から一つお願いがあるンだが……」
 そう言って、夫に凭れかかる黯羽。彼の顎をつつつと指でなぞる。
「……あと何人か、子供が欲しいンだが。要望に応えてくれる気はあるかい? 旦那サマ」
「何だそんなことか。……勿論、奥方様が望むならね」
 黯羽の腰を引き寄せて、その背を撫でるリューリャ。
 そんな二人にヘスティアは仰け反って驚く。
「子供って……もう沢山いるじゃないか! このままだと二桁の大台に乗っちまうぞ?」
「何だ、ヘス。ヤキモチか?」
「なんでそーなるんだよ!」
「勿論、ヘスとも仲良くしたいンだがね、俺は」
「あー。俺も仲良くするのは嫌いじゃないけどさ……。黯羽の肌、気持ち良いし」
「心配するな。二人まとめて可愛がってやる」
「おーおー。言ってくれるさね」
「りゅーにぃのえろがっぱー!」
 妻達を纏めて抱えるリューリャ。口から出る言葉に反して、夫に身を預けた黯羽とヘスティアは、ひょっこり戻ってきた暁とばっちり目が合った。
「ただいま、父さん、黯羽母さん、ヘス母さん」
「おかえり、暁」
「思ったより早かったさね。修行はどうだった?」
「少し内容減らして帰って来た。今日はアルバ達が来てるからな」
「そうか。身体動かして腹減ったンじゃないか?」
「うん。空いてる」
「ひいとふうがお菓子焼いてくれてるから、暁も食べて来いよ」
「分かった。ありがと、ヘス母さん」
 目の前で親達が抱き合っているのに全く動じる様子もなく、軽く頭を下げて見せる暁。
 これはアレか。普段から見慣れているからですね。
 リューリャ夫妻も人のことは言えないラブラブっぷりのようで……。
 暁がテーブルに向かうと、ひいとふうが笑顔で出迎える。
「あら。暁、おかえりなさい」
「こちらにどうぞ」
「ただいま、ふう。ひいは久しぶりだな。お茶会に間に合ったか?」
「うん。今みんなでお菓子食べてたとこだよ。暁もたべる?」
「兄さんって呼べよ、ディ。……じゃあ俺も戴くとするか」
「暁! 久しぶり!」
「やあ、久しぶり、アルバ。エステルも元気そうだな」
「はいです。元気ですの!」
「アルバ、お菓子を食べている時に席を立つのはお行儀悪いですわよ」
「あっ。そうだった。ごめんなさい」
「ひい、アルバが立ったのは俺が来たせいだから、叱らないでやってくれ」
「暁に免じて今回は見逃して差し上げますわ。さあ、アップルパイを召し上がれ」
 わいわいと盛り上がる子供達と人妖達。
 賑やかな光景に、親達の顔が自然と緩む。
 ――連日、子供達に振り回されて。くたくたになってベッドに倒れこむ日もあったりして……。
 煩くて、駿馬に乗ったようなスピードで目まぐるしく過ぎていく日々の繰り返し。
 だけど、これがきっと『幸福』と言うものなのだろう。
 ――護大との戦いが終わって早数年。自分達が遺したここで、子供達は生きていく。
「親として、『良く生きる』って事を教えていかなきゃな……」
「あら、リューリャ。どうしたの急に? お酒でも飲んだ?」
「俺は素面だっつーの」
 ぼそりと呟いたリューリャに、目を丸くしたユリア。
 その切り返しに、互いの配偶者達がぷっと吹き出す。
「まあまあ、難しい話は後にしてさ。とりあえず飲もうぜ!」
「……ヘス、まさか酒を持ってきたのか?」
「そりゃあこうして久しぶりに皆で集まったんだ。飲まない手はないだろ?」
 呆れたように言うニクスにニィ、と笑うヘスティア。ユリアが小首を傾げて続ける。
「一体何を用意してくれたのかしら。当然美味しいんでしょうね?」
「紅茶に入れられるようにブランデー持ってきてるぜ! あと黯羽とワイン選んできた!」
「この間飲ンだが、美味かったぜェ。味は保障するさね」
「俺の奥さんの勧めなら間違いないな。しかし、ケーキで酒っていうのもな……」
「そう言い出すだろうと思って、肴も用意しておいたわよ」
「さすがふう、気が利くな」
「慣れてるって言ってちょうだい」
 主にツレない返事をしつつもフフンと胸を張るふう。そんな妹に、ひいはため息を漏らす。
「褒められて嬉しいなら素直にそう言えば良いですのに……」
「べ、別にあたしは当たり前のことしてるだけだし!」
「ふうも変わらないさねェ」
「う、うるさいわね!」
 黯羽にニヤリとされて、頬を染めるふう。そこに子供達の『おかわりー!』という声が聞こえてきて……。
「あらあら。皆食いしん坊ね。人妖さん達も一緒にお茶にしましょう。淹れ直してあげるわ」
「ありがとうございます。その前にお菓子の追加を持って参りますわね」
「肴も用意するわ」
 にこにこと笑いあうユリアとひいとふう。いそいそと準備をして、皆の輪の中に戻り――。


 聞こえてくる子供達の歓声と大人達の笑い声。
 漂う紅茶とブランデーの香り。
 賑やかなお茶会は、まだ始まったばかりだ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ib0161/ヘスティア・V・D/女/21/リューリャの男前な奥様
ia0072/北條 黯羽/女/25/リューリャの隠れデレな奥様
ia8037/リューリャ・ドラッケン/男/22/博愛主義な旦那様
ia9996/ユリア・ソル/女/21/ニクスの鷹揚な奥様
ib0444/ニクス・ソル/男/21/ユリアの妻子煩悩な旦那様

子供:グラディート/リューリャとヘスティアの台風な息子
子供:暁/リューリャと黯羽の泰然たる息子
子供:アルバ/ニクスとユリアの優しき息子
子供:エステル/ニクスとユリアの天使な娘

ひい/人妖/ユリアの相棒(NPC)
ふう/人妖/リューリャの相棒(NPC)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お世話になっております。猫又です。

幼馴染ご夫妻の皆さんと、そのお子様達の賑やかなひととき、とても楽しく書かせて戴きました。
お子様達のやり取りはかなり色々アドリブ利かせてしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか。
ラブラブでほのぼのというより、コメディになってしまったようで心配です。
話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
水の月ノベル -
猫又ものと クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年08月31日

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