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『―― シスター・レミ、隠し子疑惑!? ―― 』
天川 麗美ka1355

 その日、天川・麗美(ka1355)はいつものように酒場で飲んでいた。
 そして、意気投合した男と飲み比べをして、一夜を過ごしていたのだが……この日だけは、いつもと違うことが起こった。
「ママぁ!」
 宿を出てすぐ、見知らぬ小さな女の子が天川に抱きついてきて、彼女を『ママ』と呼んだのだ。
「……ママ?」
 天川は周りを見渡すが、周囲には自分の他に誰もいない。
「ママ、どうしたの?」
 女の子は天川にしっかりと抱きつきながら、小首を傾げ、問いかける。
「あんた、誰? わたしに子供はいないんですけどぉ」
 抱きつかれた場所が何気に痛くて、天川の言葉もやや黒オーラを含んでしまう。
「……ママ、どうしてそんなことを言うの? 私、何か悪いことしちゃった? ……もしかして、捨てられるの? やだぁ! 私、ママと一緒にいたい! お願いだから捨てないでぇっ!」
 女の子は何故か過剰に泣き叫び、珍しく天川の方が狼狽えてしまうほどだ。
「ちょっ、ちょっと! こんなところで大声を出したら目立つじゃないの……!」
 天川は周りを見る。
 すると、タイミング悪く通りがかってしまった人達から冷ややかな視線を向けられた。
「……可哀想に、あんな子を『捨てる』って脅しているなんて」
(いやいやいやいや! わたし、本当にこの子を知らないんですけどぉっ!?)
「同じ親として恥ずかしいわ、あんなに可愛い女の子なのに」
(親経験はもちろん、結婚経験すらないんですけどっ!? イケメン旦那様募集中!)
 天川は心の中とは言え、願望が最後に現れてしまっている。
「ちょっと、あなた! 自分の娘を泣かせるなんて、どういうつもり? しかも聞いていれば『捨てる』とかそんな言葉も聞こえて来たんだけど」
 少々お節介なおばさんが、天川に話しかけてきた。
「あ、あはは、あのぅ、この子、わたしの子供じゃないんですよぉ」
「何を言ってるの! そっくりなのに、自分の子じゃないなんて言葉が通用するとでも?」
(わ、わたし、ここまで腹黒い顔してないんですけどぉ……!)
 ちらり、と女の子に視線を向けると『ニタァ』という表現がぴったりのようなどす黒い笑顔を向けられた。
(こ、この子、分かっててわたしを困らせてるって言うんですかぁ…!?)
「あの人、麗美さんだよね? 聖職者なのに、育児放棄だなんて……ちょっと幻滅だよ」
(えええっ!? あの人、ちょっといいなって思ってた人だったのに!)
「ちょ、ちょっと来なさい……!」
 このままでは自分の評判は下がる一方だと考え、天川は子供を抱きかかえて、ひと気のない場所へと向かった。

 ※※※

「それで? お嬢ちゃんはどういうつもりかしらぁ?」
 にっこりと笑顔のまま、天川が少女に話しかける。
「ふふっ、まーだ気づかないの? やだぁ、もう鈍いったらないんですけどぉ」
 今までしおらしい声を出していた女の子は、ふんぞり返るように言葉を返してくる。
「気づかない?」
 天川が訝しげに女の子に答える。
 すると、女の子はニッと不敵な笑みを浮かべ――。
「わたしの名前は、天川麗美よ」
「いやいや、それはわたしの名前だから」
「鈍いなぁ、これが未来のわたしだと思うとちょーっと情けなくなるんですけどぉ」
「……未来?」
 天川の声が震える。
「そう、どういう理屈か知らないけど、わたし、未来の自分のところに来ちゃったみたい」
 子供にもかかわらず、肝が据わっており、さすがは天川と言うべきだろうか。
「まぁ、とにかく未来の自分が見られて良かったわ。それで? わたしの旦那様はどこ? もちろんイケメンの金持ち男なんでしょうね?」
「……そ、そういうのは先に見ない方がいいと思う」
 天川は言えなかった。
 まだ『イケメン彼氏or旦那様募集中』だということに。
(くっ、自分に見栄を張るなんて、なんて情けない……!)
 表情こそ笑顔だが、天川は心の中で血の涙を流していた。
「まぁ、いいわ。とりあえず、帰るから」
 女の子は小さなため息をついた後、立ち上がる。
「え? 帰る? どうやって?」
「あんた、馬鹿ぁ? ドアから帰るに決まってるじゃないの」
「ドア!? そんな便利な道具が!?」
 突然現れたドアに驚き、天川は思わず後ずさってしまう。
「さようなら、面白いものがみられて良かったわ」
 黒い笑顔と共に、嵐とも言える女の子は消えて行った。
 ……ピー、ピー、ピー……。
「ん? 何、この音」
 ……ピー、ピー、ピー……。
「えっ、何!? まさか爆発!?」
「無理無理ぃ! まだイケメンの旦那様を見つけてないんだからぁっ!」
 バッ、と起き上がるとそこは見慣れた自分の部屋だった。
「……え、夢?」
 天川の服装は、昨夜飲みに出かけた時のままで、どうやら帰って来て早々寝入ってしまったことが伺える。
「そ、そうよねぇ、小さい頃の自分がいきなり現れるとかありえないし……」
 ずきずき、と痛む頭を抑えながら、天川は苦笑する。
(しばらく、悪酔いするようなお酒は控えよう……)
 二日酔いのまま、天川は心に決めたのだが、テーブルの上に置かれた『未来のわたしへ』と書かれた手紙に気づくのは、これより数分後のこと――。


登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka1355/天川 麗美/女性/20歳/人間(クリムゾンウェスト)/機導師(アルケミスト)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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天川 麗美様

こんにちは、いつもお世話になっております。
今回は「WTシングルノベル」にご発注頂き、ありがとうございました。
今回の内容はいかがだったでしょうか?
気に入って頂けるものに仕上がっていますと幸いです。

それでは、また機会がありましたら宜しくお願い致します。
今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2015/8/31


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水貴透子 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年09月01日

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