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『這い寄る粘泥 』
樹導 鈴蘭ka2851)&十色・T・ エニアka0370

「……鈴蘭さん!? 突然何をするの!? こんなところ連れて来て……」
「何すると思う……? まさか、心当たりがないなんていわせないよ、エニアさん」
「……っ。ねえ、鈴蘭さん。こんなことやめようよ……」
「エニアさんが……エニアさんがいけないんだ! ボクにあんなことするから……!」
「あ、あれは夢中で……助かりたくて! 本当に仕方なかったの!」
「そんないい訳で許されると思ってるの……?!」
「ごめんなさい! 謝るから……!」
「ふふ。謝って許されることとそうじゃないことってあるよね……」
「あ、ああ!? やめてェ! 本当にやめてえええ!!」
「何言ってるの……? 本番はこれからだよ……?」
「いやああああああああああ!! たすけてえええええええ!!!」

 ――何だか最初からクライマックス状態ですが。
 薄暗い森の中に妙齢の女子二人……いや、女の子に見えるだけで、立派な男子だったりするが。
 ちなみに、足を荒縄に絡め取られ、樹から逆さに吊られているのが十色 エニア、その様子を見て恍惚の表情を浮かべているのが樹導 鈴蘭である。
 彼らがこんなところで何をしているかというと――まあ、内輪揉めというやつだろうか。
 本人達に聞けば、鈴蘭は『お仕置き』と言い、エニアは『騙された』と答えると思うが。
 どうしてこんな状況になっているかと言うと、それはまあ、聞くも涙、語るも涙な、海よりも深い事情がありまして……。


 ――先日、2人はこの森の奥に棲む歪虚に襲われた女の子を救出する依頼に参加した。
 女の子の救出には成功したのだが、その歪虚というのがまた厄介な奴だった。
 イソギンチャクのような姿をしたそれには無数の触手があり、服を溶かす溶解液は出す、触手に絡まれると力は抜ける、逃げようと思っても影ような姿に変身して一瞬で距離を詰めてくるととにかく最悪な相手だったのだ。
 ――先にその触手の餌食になったのはエニアだった。
 鈴蘭は逃げようと思えば逃げられたはずだったのに、救いの手を求めるエニアによって、触手の海に引きずり込まれたのである。
 具体的に2人がどんな目に遭ったのかはここでは割愛するが……それはもう、思い出したくもない、悪夢のような時間だった。
 エニアはわざと鈴蘭を引き込んだ訳ではない。悲しい事故だった。
 そういう人もいるかもしれない。
 だけど! 事故で済ませるには! あまりにも! あんまりだったんですよ!
 分かります!? 不気味な触手に体中を撫で回された挙句、■■を●●●●!!!
 
 ――ぴんぽんぱんぽーん♪ お聞き苦しい点がございましたので、音声にて伏せております。ご了承ください。
 
 とにかく、その時、鈴蘭は心に誓ったのだ。
『エニアさんは絶対許さない。いつか、くすぐりまくってやる……』と。
 そう。彼は今日、まさにその『お仕置き』を実行したのである。
 それもようやっと心の傷が癒えて来たエニアを、その原因となった場所でくすぐり抜くという鬼畜の所業!
 この人、傷口に塩を塗り込む気満々ですよ!
 うわー! 酷い! 鬼! 悪魔!!
「何とでも言って!! ボクだってものすごおおおおく! 傷ついたんだから!!」
「やっ。やだ……! 鈴蘭くん、ホントにもうやめて……!」
「何言ってるの! まだ始まったばかりじゃない!」
「あっ。ひゃあっ! ホントにっ! いやぁ! あはっ! あはははっ!!」
 鈴蘭にあちこちくすぐられて身を捩るエニア。
 避けたくても吊り下げられているので上手く避けられない。
 元々、敏感な肌を持っていて触られることすらダメなエニア。
 身動きが取れない状態でくすぐられるなんて、ただの拷問でしかない。
 しかもここは、先日触手にいいように弄ばれた場所。
 くすぐられる感覚と、見たことのある光景に、否応なしに嫌な記憶が蘇る……。
「あ。あ……や、だ……」
「……もう堕ちたの? 案外ちょろいんだねぇ」
 だんだんと目が空ろになっていくエニアに、にっこりと笑みを向ける鈴蘭。
 もう一度、彼の背中を撫でようとして……ずるり、と吊り上げていたエニアが落ちて来て驚愕する。
「……え? あれ? 縄解けちゃったかな?」
 慌てて縄を確認する鈴蘭。見ると、エニアの足首に縄が残っていて……途中から、変な風に切れている。
 切れた、というよりは溶けた、という方が正しいか……?
 視界のすみで何かが動いたような気がして、彼が顔を上げると……樹の上に、小さくてどぎついピンク色をした物体がぷよぷよと蠢いていた。
「……何これ?」
 小首を傾げる鈴蘭。その粘泥がぷるぷるっ! と身体を震わせると、どこからともなく新手の粘泥がわらわらと現れる。
「えっ? えっ? なに?!」
 彼が驚愕の声を挙げている間も増え続ける粘泥。それは爆発的なスピードで集まってきて、あっと言う間に取り囲まれてしまった。
 ――これが何だか良く分からないけど、とにかくヤバイものだと本能が告げている。
「エ、エニアさん! さすがにこれは逃げた方が……」
 言いかけて、絶句する鈴蘭。無理もない。地に伏したエニアは、既に謎の粘泥に圧し掛かられていたのだから。
「あっ。ああっ。あー……」
 エニアからあがる変な声。
 見ると、粘泥がエニアの華奢な身体を撫でるように包み込み……その部分の服がどんどん溶けている。
 あー。これ、もしかして。もしかしなくても、あかんタイプの歪虚ですよ!
 一体何なの、この森は!
 触手とかスライムとか、変な歪虚が多いの!?
 そこまで考えた鈴蘭。これはどう考えてもマズい。
 彼の脳裏に『戦術的撤退』という言葉が過ぎるが、エニアは逃げられそうにない。
 これはもう、戦うしかないのか……!?
 いやでも、この爆発的に増えたスライムと戦って勝ち目はあるのだろうか……?
「ああ! 悩んでる暇はない! エニアさん! 今助けるからね!」
 ……エニアが正気であれば、そもそもこんな目に遭ったのは鈴蘭さんがお仕置きなんて企てたからでしょうが! とツッコむところなのだろうが、残念ながら不可能である。

 鈴蘭の こうげき!
 ピンクスライム10に 2005の ダメージ。
 ピンクスライム10を たおした。
 ピンクスライム11は ぷくーっと ふくれあがって エニアに のしかかった!!
 エニアは いきなり 鈴蘭を わしづかみにした!

「鈴蘭君、たすけ……」
「ダカラナンデツカムノ?!?!」
 溺れる者は藁をも掴む。
 お約束の展開で、2人はピンクスライムの海に仲良くダイブすることになった。


「う……。あっ。あっ」
 スライムが身体を這い回る度に、身体がビクリビクリと跳ねるエニア。
 身体にダメージはない。だが、じわじわと服を溶かされ、ねっとり湿った柔らかい物体に、じっとり撫でられる感覚が続く。
 全身が嘗め回されているようで気持ち悪い。気持ち悪いのに、敏感過ぎる肌はその刺激に耐えられず反応してしまう……。
 強すぎる刺激に息も絶え絶えで、意識を手放しそうになる。
「ぅあっ! やっ。そこダメ……!」
 分け入ってくる刺激に、目を見開く彼。次の瞬間、ぎゅぎゅーっと胸とお尻が丸みを帯びて、女性の身体になる。
 何とエニアは覚醒すると女性の身体になってしまうという厄介な能力の持ち主なのだ!
 いや、本人も好きでこんな風になった訳じゃないし、こんな事のために強くなったわけじゃない!! と主張しているので何とも哀れな話であるが。
 まあ、相手は知能のないスライム。相手の身体が女性になろうが男性になろうがやることは一つなのだ! 残念!!
「うわあああ! いやああああ! きもちわるいいいいい!!」
 一方、まとわりつく粘泥を振り払おうと必死でもがく鈴蘭。
 暴れれば暴れるほど服は溶けてなくなって行くし、スライムは減るどころかどんどんまとわりついてくる。
 更には、目の前にエニアの砲弾のような丸い大きな胸に、ふっくらとした臀部。
 健康的な男子には、ものすごい目に毒な光景である。
 彼の女体化した身体はこの間も見たばかりだけれど、こればっかりは! 慣れるとか! 無理なんで!!!
 そんな状況なのに、ぬるぬるさわさわと……延々と続く粘泥のソフトタッチ。
 ぬめぬめとしたそれは、触れて欲しくない、敏感なところにも伸びてきて……。
 主に貞操とか、理性が大ピンチです!
「いやーーー!! ダメ! ダメえええええ!!」
 悲鳴をあげる鈴蘭。次の瞬間、彼の胸とお尻もぽよん! とボリュームアップ!!
 何と! エニアさんに続き鈴蘭くんまで女の子になりましたよ!
 すごいぞ鈴蘭くん! ところで女体化って伝染するんですかね!?
 ああ、でもこれで一線越えても大丈夫かも……?
 
 ――ブチィッ!!
 
「一体何がどう大丈夫なんですかああああああ!!! ふざけないでくださいいいいいい!!」
 あっ。キレた。とうとう鈴蘭くんがキレましたよ!
「一体なんなんですか! 触手に続いてスライムとか趣味悪すぎるでしょ! どっちも服溶かすし! この森はアレですか!? 変態の歪虚しかいないんですか!?」
 殺気立つ鈴蘭にびくぅっ! と震え上がるスライム達。
 彼……もとい彼女は目が据わったまま、豊かな胸をぷるんぷるん震わせながら地に伏してカクカクしているエニアを睨む。
「大体エニアさんもエニアさんですよ! 毎回毎回ボクを巻き込んで! 本当に反省してるんですか!?」
「あ……あ?」
 目から光が消えうせているエニアがまともに返答出来る訳がない。
 鈴蘭は怒りに燃えたまま彼女をスライムの海から引きずり出し、どっせーーーい! と遠くに放り投げた。
「うふふ……。次はお前達の番ですよ……!」
 どす黒いオーラを放ちながらゆらりと立ち上がる鈴蘭。
 彼女は全てを曝け出した状態で、スライム達に襲いかかり……。
 そして――。

「もうやだ。お婿に行けない」
「…………」
 その後に残ったのは、静かな森の中、服もなくさめざめと泣く鈴蘭と、空ろな目で震えるエニア。
 ――この2人が心の傷から立ち直るには、長い時間が必要そうだった。


 ピンクスライムの脅威はこうして去った。
 この事件は、2人に新たなトラウマを植え付けることになり……この森は『変態の歪虚が集まる森』として、ハンター達の間で噂になったとかならなかったとか。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka2851/樹導 鈴蘭/男/14/お仕置きに失敗した藁
ka0370/十色 エニア/男/15/復讐された溺れし者


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。

ピンクスライムにご指名戴きましたので、ご登場願いましたが如何でしたでしょうか。
お二人に更にトラウマを植え付ける結果になって可哀想な気がしているのですが、少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
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2015年09月03日

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