▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『虹に追われて 』
ラシェル(ic0695)&リーズ(ic0959)

 二人が今までの住処を手放したのは、リーズが面白いものを見に行こうと言いだしてラシェルに声をかけたことから始まる。
 ラシェルとしては、当初は違う考えであったが、リーズに根負けして一緒に行く事になった。
 出発の朝は眩い朝日がラシェルとリーズの道案内役となる。


「どこへ行くんだ」
 ラシェルの問いかけにリーズは「武天と朱藩の国境近く」と答える。
「前に、その辺りから流れてきた行商さんから聞いたんだ。面白いものがあるよって!」
 いつの間に聞いてきたんだとラシェルは呆れてしまっているが、リーズ当人は全く気にも留めていない。
「面白いものとは?」
 一抹の不安と確信を抱えたラシェルが問う。
「わからない」
 にっこり笑顔のリーズに、ラシェルは呆れの表情を見せる。
「でも、楽しみは最後見た時でもいいんじゃないかな」
 ラシェルの顔を覗き込むリーズに不安なんて見当たらなかった。
「行った時にどんなものがあるのか、楽しみだし♪」
 くるっと、ターンをするリーズだが、背負ったリュックサックの重みでよろけてしまうも、バランスをとって持ちこたえる。
 あれもこれもと詰め込んだリュックに詰め込んだリーズとまだ何か入りそうな肩掛けカバン一つのラシェルはとても正反対だ。
「朱藩の国境近くとはいえ、どっちの方向へ行くんだ?」
 ラシェルが問うと、リーズは地図を広げた。
 自分達が現在いる神楽の都をリーズが指を差す。そこから真直ぐ指を滑らせて止まった場所が目的の場所の模様。
「この距離なら、何事もなければ一泊か二泊か……」
 丁度よく、大きな街道もあるので、難なくいけそうだとラシェルは思案する。
「道も決まったし、いざ!」
「そっちは石鏡へ行く方向」
 あさっての方向よろしく、歩こうとするリーズの襟を掴んだラシェルは軽やかにリーズの方向を反対に向ける。
 リーズの方向を正しい方向に向けたラシェルはリーズの手を握り、歩き出した。


 大きな街道を沿って歩いていく。
 同じ地図を見ているはずなのに、リーズは半分の確率なのに、逆の未知へと向かってしまう仕様にラシェルは「逆に凄いな」と思いながらもリーズを正しい道へと連れて行ってた。
 街道から外れて行き、道が少しずつ、細くなっている。
 人の通りも少なくなっている為か、地面も大きな街道を歩いているときよりはでこぼこして歩きにくい。
 地図上では間違ってはいないので、二人はそのまま歩いていく。
「……休憩するか」
「……うん」
 リュックの重さか、リーズの体力は削られており、志体を持っているはずなのに、肩で息をしている。
 丁度よく、日も高くなっていた。
「お昼ごはん!」
 しな垂れていたリーズの耳がぴこんと、はね上がる。
 お昼ごはんは街道沿いの御茶屋で売っていた炊き込みご飯の握り飯。
 冷めても頬張れば、出汁の味がしみている。
「歩いた後のごはんって美味しいね」
 生き返ったようにリーズがしみじみ唸る隣でラシェルはリーズの私物が溢れんばかりのあの部屋を思いだす。
 本当、全部捨ててしまえばよかったなと、よぎったのは口には出さなかった。
 特に遅れがあったわけでもなく、順調だとラシェルは握り飯についていたたくあんを齧りつつ、地図とにらめっこしている。
 たくあんの塩気が少し強く感じたが、春の陽気でじんわり汗をかいているので、塩分補給には十分だ。
「お水、飲んだ方がいいよ」
 水筒を手渡すリーズにラシェルは「……ありがとう」とだけ言って水筒を受け取る。
 リーズが空を見上げており、ラシェルもつられて空を見上げた。晴天の中、春風で雲が流れている。
「もう少ししたら行くぞ」
「うん」
 リーズの支度が終わればすぐに動いた。


 更に二人が歩いていくと、坂道が待ち構えていた。
 緩やかな上り坂を二人は登る。
 青空に近くなってくるようで、リーズは歩きながら空を眺めてしまう。
 ふと、上から微かな物音が聞こえたラシェルは顔を上げると、何かが転がってきた。
 石かと思ったが、石ではない。片手で流れるように掬ったのは芋。
「芋?」
「芋だね」
 二人確認しあったあと、更に芋が三個ほど転がってきた。
「何で芋が?」
 リーズは頭の上に疑問符を浮かべつつも、芋を拾い上げて二人は坂の上を駆け上がる。
 坂の上で、お爺さんが荷車の修理をやっていた。
 車輪が壊れていたようで、替えの車輪と取り替えていた模様。
 荷台には芋や南瓜、人参が載っており、転がってきた芋はその荷台からこぼれた物と推察できる。
「おじいさん、大丈夫!?」
 リーズが老人へと駆け寄ると、老人は皺まみれの顔をくしゃくしゃにして「大丈夫だよ」と答えた。
「ボク達も手伝うよ!」
 安請け合いをするリーズにラシェルはぎょっとしたような表情を見せるも、リーズは気にも止めずに目の前の老人を気遣う。
「助かるよ。老人には堪えるでな」
 思いがけない助けに喜ぶ老人に応えるようにリーズはリュックを道の端に置き、どうすればいいのか、老人の指示を仰ぐ。
「荷車を少し浮かせてくれ」
 そう言われたリーズは腕まくりをして荷台に手をかけて浮かそうとしている。
「うーーん!」
 唸りつつも持ち上げるリーズだが、荷物を載せた状態では、中々浮かないしリーズも辛そうだ。
 リーズが安定してないおかげで、老人が車輪をはめようとしても、上手くいかずにいる。
 見ていられないとばかりにラシェルもリーズの隣で荷台を持ち上げた。
「ラシェル!」
「いいから、集中しろ」
 歓喜の声を上げるリーズだが、ラシェルは注意をする。
 志体持ち二人が何とか荷台を持ち上げて、安定させると、老人は替えの車輪をはめて固定させた。
「終わったぞ」
 老人の言葉に、二人は荷台をそっと降ろす。重たい音が響き、ラシェルとリーズはため息をつく。
「本当に助かった。お二人さんのお陰じゃ」
 笑顔で礼を言う老人にラシェルは疲れた表情を見せ、リーズはにこにこ笑顔だ。
「少しばかりの礼じゃ。よかったら食べてくれ」
 荷台を漁っている老人が取り出したのは八朔。
「わ、ありがとう!」
「これ、売り物じゃないのか?」
 嬉しそうに受け取るリーズの隣で問うラシェルに老人は首を横に振った。
「気にする事はない。これはわしが買った物だからなぁ」
「じゃぁ、坂を降りる所まで一緒に行くよ!」
 車輪が外れたりしたらまた大変だから。
「助かるのう」
 リーズの提案に老人は笑顔で頷き、三人は坂道を降りる。
 三人の背後から厚い雲が追ってきていることに気づいてはいなかった。

 老人は坂を降りて少し先にある村で米農家を営んでいるという。
 米を売って、野菜や生活必需品を買ったりして生計を営んでいると言っていた。息子が風邪を引いたので、代わりに仕入れに行った帰りに荷台の車輪が壊れたそうだ。
 老人を分かれ道まで一緒に歩いて別れた。
 背後から、風の音が強くなり、唸っているようにも聞こえる。
 風の匂いを嗅いだリーズがはっと気づく。
「雨がくるかも!」
 リーズの声にラシェルは周囲を見回すが、雨宿りが出来そうな場所がなかったが、先に大きな木を見つけた。
「走るぞ!」
 ラシェルが一目散に駆け出すと、リーズは目を丸くしてラシェルの背を追いかける。
「ま、待ってよ!」
 二人を追いかけるように雷鳴が響いた。


 ラシェルが見つけたのは葉がよく茂っている大きな木だ。
 そこで雨宿りをしようとした。
 距離があったためと、リュックの重みでリーズの足が遅く、最終的にはラシェルがリーズの手を引っ張って雨宿り場所へ走る。
 実際、雨降りには間に合っておらず、雨に少し当たってしまった。
 雨は少しずつ、強くなっていく。
 ラシェルは手ぬぐいで濡れた服を拭いていた。その表情は不機嫌。さっきまでの晴天もどこへやら、厚い雲に覆われて曇天となっている。
「きっと、通り雨だよ」
 リーズがラシェルを慰めるように声をかけた。
 雲が来た方向を見やれば、雲の向こうの切れ目があって、そこは晴れているから。
 早く止んでほしいとラシェルは空を見上げる。
「果物でも食べて待とうよ」
 手にはしっかりと先ほど貰った果物があった。
 走ったお陰で喉が渇いているので丁度いい。
 八朔の皮を剥けば、酸っぱそうな香りが広がり、一房を口の中に頬張れば、甘酸っぱい汁が口や喉を潤す。
「美味しいね」
 リーズの言葉にラシェルは無言で賛同する。
「おじいさん、濡れずに済んだかなぁ」
 ぽつりと呟き、リーズが心配をうに食べかけの八朔へ視線を落とす。
 そんなリーズの姿を見たラシェルは彼女の髪が濡れていた事に気づくと、手ぬぐいを無造作に頭の上に落とす。
「大丈夫だろ」
 髪が濡れていると付け加えると、リーズはそのままラシェルの手ぬぐいで髪を拭く。
 八朔を食べ終わる頃には雨も通り過ぎて、晴れてきた。
「やっぱり、通り雨だったね」
 一安心とばかりに二人が木から離れてまた歩き出す。
「あ、見て!」
 リーズがラシェルの手を引っ張って歩くのを止めさせた。顔を顰めるラシェルだが、リーズが指差す方向に目を見張る。
 大きな虹がかかっていたのだ。
「綺麗だね」
「ああ」
 リーズの言葉にラシェルは声にして同意する。
「雨は嫌なところが目に付くけど、いつかは晴れるよ。こうして、虹も見れる」
 でも、濡れるのは嫌だなとラシェルは思った。

 これから二人が無事に目的地に着くかはまた別の話。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ic0695 / ラシェル / 男 / 15 / リーズの隣】
【ic0959 / リーズ / 女 / 15 / ラシェルと一緒】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
この度はご発注ありがとうございます。
お二人の道中が優しさと楽しみで満ちてますように。
WTツインノベル この商品を注文する
鷹羽柊架 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年09月24日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.