▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『ドキッ☆二人っきりで無人島 』
黒の夢ka0187)&シグリッド=リンドベリka0248


 カラーンカラーンカラーン!
「おめでとうございます、特等大当たりぃ〜!」
 冒険都市リゼリオの一角。
 その日、とある商店街ではリアルブルーから導入された習俗のひとつである「福引き大会」が行われていた。
「特等はなんと、無人島の貸切ツアー! 素敵な南の島にペアでご招待します!」
 ぱんぱかぱーん!
 その幸運を引き当てたラッキーレディ、その名は黒の夢(ka0187)!

「うな、無人島? 誰もいない島に遊びに行けるである……?」
 その通り。
 清潔感溢れる海辺のコテージに、水道も風呂もトイレも完備しています。
 日常の喧噪を忘れ、ハンター稼業も忘れ、歪虚の脅威も何もかも忘れて、夢のような時間をお過ごしください!
「それはすごいのなー、良いものを引き当てたのなー♪」
 黒の夢は一緒に買い物に来ていたシグリッド=リンドベリ(ka0248)を思いきり抱き締める。
「うなー、シグリッドと一緒なのなー♪」
「え、ぼくで良いんです……は、はい、よろしく、お願いしまむぐぅ」
 黒の夢の豊満な胸に刻まれた深い深い谷間に顔を埋めて、シグリッドは赤くなったり青くなったりを繰り返している。
 でも、それも少し慣れて来たかもしれない――いや、谷間の柔らかい感触に、ではなく……長いあいだ息を止めていることに。
「鍛えられましたから(きりっ」
 肺活量も多くなった気がするし、これなら海で素潜りもばっちりだ。多分。
 ただ、油断すると鼻血が垂れてくるのはどうにも止められない。
 だって男の子だもん。
「あれ、でも待ってください、あんのうんさん」
 シグリッドは渡されたパンフレットを見る。
 目を懲らしてじっと見る。
 すると、紙面の端っこのほうに虫眼鏡で見なければ読めないほどの大きさで、注意書きが表示されていた。

『このツアーに食事は付きません。全て各自で現地調達となります』
『つまりサバイバルです。イキロ』

「うなー、楽しそうなのなー♪」
「ええっΣ」
 流石は魔女さん、何事にも動じない免震構造の心をお持ちです。
「きっとそんなに危ない所じゃないのなー」
 だって危険な歪虚がウヨウヨしているような所だったら、福引きの景品になる筈がないし。
 いくらハンター御用達の商店街で行われているイベントだからって、ねえ。


 そんなわけで、やって来ました南の島。
 送迎用の船が二人を置いて行ってしまうと、もう元の世界との接点は何もない。
 降り注ぐ太陽に、どこまでも続く真っ白な砂浜、ヤシの木、青く透明な海。
「島ごと独り占めーなのなー♪ ……うな? ひとりじゃないから二人占めー……?」
 リゾート、バカンス、ロマンス……は期待出来そうもないけれど、パラダイスには違いない。
 ただし、モンスターさえいなければ。

「あ、あんのうんさん、あそこ、何かいますよ!?」
 シグリッドは及び腰になりながら、ヤシの木陰を指差した。
 幹の後ろから半分ほど顔を出してこちらを見つめているのは――黒いオークだ。
 豚の頭に太った人間の身体を持つモンスター。
 身体が大きすぎて全然隠れていないが、それでも本人(本豚?)は隠れているつもりらしい。
 しかし敵意は感じられない。
 それどころか――黒の夢に向けられたその目がハート型になっている、ような。
 まさか。
 まさかまさか、一目惚れ?
 同じ黒い肌だから親近感を感じちゃった?
「うなー、そんな所に隠れてないで、出て来るのなー♪」
「って、ちょ、あんのうんさんだめです危ないです!」
 変な奴でもモンスターには違いないと、シグリッドは必死で止める。
 が、止めた時の掴み所が悪かったと言うか、既に水着に着替えているから他に掴む所がなかったと言うか。
 はらり。
 背中の紐がほどけて、何かがぷるんと露わに――なりかけた。
 まだだ、まだ大丈夫、見えてない。
 見えそうで見えてない。
 しかしその瞬間、木陰のオークは顔を両手で覆って脱兎の如く逃げて行った、豚だけど。
「あのオーク、シグリッドよりウブなのなー、可愛いのなー」
 可愛い、ですか?
 いや、それよりも。
「ぼくだって直視できませんから」
 お願いだから、早くきちんと着け直してください。

 さて、怪しいモンスターもいなくなったところで、何して遊ぼうか。
「ぼくは魚釣りしたいです……!」
 串に刺して焚き火で焼くの、やってみたかった……!
 魚を焼くにはまず薪を集めて火を熾さねばならない、なんて事はひとまず置いといて。
「遊びに来たんですから、それくらいいいですよね」
 食料調達も兼ねているから、完全に遊んでいるわけでもないし。
「あんのうんさんは完全に遊んでますけど」
 浮き輪を持って、ささっそく海でキャッキャしている。
 わかりました、任されましょう、狩りや漁は男の仕事です。
「もし魚が駄目なら猟もありますしなんとかなりますよね」
 シグリッドは銃を構えてみる。
 この島に食料になるような生き物がいるかどうかは知らないけれど。
 と、頭に乗った白猫が不安そうな声を上げた。
「大丈夫ですよ、シェーラさんのご飯はちゃんと持って来ましたから」
「みゃ」
 その声は「他に食べるものがなくなってもアタシのご飯はあげないわよ」と言っているように聞こえた。
「大丈夫、頑張ります……!」
 ほら、かかった!
 ……あれ、でも何だか引きが弱いよ、海藻でも引っかけたかな……
「って、これは……っ」
 釣り上げたのは、白さが眩しいビキニのパンツ。
 しかもかなり小さい、布面積的な意味で。
「シグリッド拾ってくれたのなー、ありがとうなのなー♪」
 手を振りながら波打ち際を駈けて来る美女、白いマイクロビキニがお似合いです。
 でもちょっと待って、何か変ですね、何かが足りない気がします。
 シグリッドは自分の手元を見る。
 そこにはソレがあって、ということは、つまり――
「あ、ああああんのうんさんだめですうぅぅぅ!!」
 これ、これ着けて早く!

 で、一体なぜそんな事に?
「んな、遊んでたら脱げたのなー」
 正確にはエロクラゲが触手を伸ばして来て、あんなことやこんなことをされたのですが、具体的な描写は自主規制させていただきます。
 その結果、脱がされたパンツが波間を漂い、シグリッドの釣り針に引っかかったという次第。
「でも今度は大丈夫なのなー」
 ほら、ぴっちぴちのスク水だよ!
 これならそう簡単には脱げない筈だ。
 でもぴちぴちすぎて苦しいね。
 苦しいから脱いじゃおう。
 すぱーん!
「きゃあぁぁぁっ!」
 目と鼻を押さえて背中を向け、蹲る少年。
 でも大丈夫、ほら見て、ちゃんと貼ってあるから、すっぽんぽんじゃないから!
「え……?」
 言われてみれば確かに、何かが貼ってある。
 ちゃんと見えないようになっている。
 でも、でもね。
 それが却って妄想を掻き立てて余計にエロいことになるんですよ、わかりますか!?
 少年、死す。
 ちーん。

「結局、食料何も手に入りませんでしたね……」
 夕方になって、とぼとぼと帰途に就くシグリッド。
 だが黒の夢は鷹揚に構えていた。
「大丈夫、何とかなるのだー」
 あ、ほら。
 コテージのデッキに何か置いてある。
 山の様なトロピカルフルーツと、川魚が何匹か――そして例の木陰には全然隠れていない黒オークの姿が。
 これは、彼(多分彼だと思う)の貢ぎ物だろうか。
「ありがとうなのなー♪」
 にっこり笑顔で手を振ると、黒い顔を赤く染めた黒オークはまたしても脱兎の如く逃げ去ってしまう。

 だが、彼は次の日も現れた。
 次の日も、その次の日も、休むことなく、貢ぎ物を持って。
「おかげで食べ物の心配をしなくて済みますね……!」
 もちろん頑張って釣り糸を垂れてはいるけれど、釣れないものは仕方ない。
 シグリッドはシェーラさんと一緒に砂浜で穴掘りをしたり、砂の城を作ってみたり、リゾート気分を満喫していた。
「砂風呂は天国です、お昼寝最高……」
 夜は黒の夢に抱き枕にされているから、殆ど眠れないし。
 ところで、サバイバルってなんだっけ。

「サバイバルとは? 逃げることであるーーー!」
 黒の夢は走る。全力で走る。
 島に来て数日、恥ずかしがり屋の黒オークは進化を遂げていた。
 すっかり積極的な肉食系に生まれ変わっていたのである。
『ぶもぉーーーーーーー!!!』
 鼻が曲がる様な臭気を放つ毒々しい花を手に持って、愛しい人を追いかける。
 黒の夢は貢ぎ物を受け取ったのだ。
 それは即ち、彼の愛を受け入れたことを意味する。
 黒オークにしてみれば、彼女は既に「俺の嫁」なのだ。
 なのに何故逃げるのか。
『ぶもーん!』
 解せぬ。
「シグリッド、助けるのな!」
「ええっ!? そんな、ぼく戦いの準備なんて……!」
 黒の夢はシグリッドの後ろに隠れる。
 全然隠れていないけど、気分だけは隠れているつもりで!
「わ、わかりました……!」
 シグリッドも男の子、頼りにされれば頑張るしかない。
 精一杯に胸を張り、自分を大きく見せながら黒オークの前に立った。
 大きく息を吸い込んで――
「あ、あのっ! ここはひとつ、話し合いで解決しませんか……っ!」
 戦ってます。
 頭脳戦だって立派な戦いです。
 しかし、その時。

 すっ。

 くっさい花が、シグリッドの鼻先に突き出された。
 これは匂いで攻撃しようというのか。
 いや、違う。
 黒オークの瞳に浮かぶハート、そこに映るシグリッドの姿。

 ごめん、こっちが本命だった。

「ええぇぇぇっ!?」
『ぶもっ☆』
 確かに、貢ぎ物はシグリッドも美味しくいただいた。
 また川魚のお陰で念願の串焼きにも挑戦する事が出来た。
 その点については感謝している、けれど。
「こっ、困ります、って言うか無理ですごめんなさい!」
 黒の夢を追いかけていたのは邪魔者を追い払う為だったらしい。
 この黒オーク、メスだったのか。
 いや、オスかもしれないけれど、どっちでもいい、いやよくない。
 どっちにしても、丁重にお断りさせていただきます!
「あんのうんさん、逃げましょう……!」
「うなぁー」

 どこへ?
 どこまでも!

 いつまで?
 船が迎えに来てくれるまで!

 そして、サバイバルは続く――


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

【ka0187/黒の夢/くらりんとたたかう】
【ka0248/シグリッド=リンドベリ/もんすたーのあいとたたかう】

お世話になっております、STANZAです。
いつもありがとうございます、楽しく書かせていただきました!

お楽しみ頂ければ幸いです。
野生のパーティノベル -
STANZA クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年09月29日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.