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『夏色の一日 〜昼下がり〜 』
ルシアーノ=アルカナka4926)&シャガ=VIIka2292)&ヴィス=XVka2326)&クリスティーナ=VIka2328)&静刃=IIka2921)&カムイ=アルカナka3676)&ステラ=XVIIka3687


 とある夏の日。
 リゼリオ、とある洋館にて。
 控えめに門扉に刻まれた六芒星。それは『懲罰と救済』を掲げる組織の象徴。
 彼らは決して歴史の表舞台に立つことはない。彼らの舞台は歴史の裏側、社会の影……。故にその六芒星の意味を知るものは少ない。
 珍しく洋館に人が集まっていた。皆、六芒星を抱く者達だ。
「海に行きたいなぁ。青い綺麗な海」
 誰かが言い、「そいつはいいな」とまた誰かがのっかる。
「白い海辺の別荘、素敵ですわ」
「愛しい我が子達と過ごす夏の一時……良い思い出になるわね」
「静かな場所でゆっくりするのもいいね」
 いつの間にか話題は『海辺の別荘でバカンス』に。
 皆の話を笑顔で聞いていた男が立ち上がる。男に集まる皆の視線。
「では俺から恋人たちに素敵な夏の贈り物だ」
「……?」
「俺の別荘に皆を招待しようじゃないか」
 片目を瞑る男。ウィンクは露骨に避けれたり、叩き落とされたり、なかったことにされたり、笑顔で受け流されたり様々な反応をされたが海辺の別荘で休暇を過ごす、というのは概ね歓迎された。
 組織のボスから了承も得る。

 ……というわけでほんの一時、任務を忘れ彼らは夏を楽しむことにしたのだ。

● 昼の風景
 眩い陽射しを反射し海がきらめく。青空に湧き上がる白い雲、浜辺に咲くパラソル。なだらかな坂に並ぶ色とりどり建物の窓からは鮮やかな花が咲き零れ観光客の目を楽しませている。
 いかにも海辺のリゾート地といった景観だ。
「麦藁帽子が欲しいな。南国の花で飾られたやつ! それとお揃いのサンダルと……。あと貝殻のアクセサリー」
 跳ねるように石畳の上に落ちた椰子の影を踏んでいたルシアーノがくるりと振り返った。
「花に彩られたルシアーノ、本物の天使と間違えても許してくれるだろうか。勿論今もとても可愛らしいが。 だがたまにはこういった大人っぽいのも悪くないと思うが」
 クリスティーナが通りかかった店に並ぶゴールドの細かいチェーンが揺れるシンプルなサンダルを手にした。「履いてみたらどうだ? なんなら手を貸そう」と恭しく片手を差し伸べながら。
「クリスティーナ様ってばわかってないの」
 トトト、軽やかな足音と共に戻ってくるとルシアーノはクリスティーナを下から覗き込んだ。「ちっちち」と口で言いながら指を振る彼女に思わず「可愛い俺の恋人さん」とクリスティーナが抱きしめそうになったのは言うまでもない。
 ちなみにルシアーノとクリスティーナは付き合ってはいない。だがクリスティーナにとって組織に属する者は須らく『愛しい恋人』なのだ。一応18歳以下は恋人扱いはしないという線引きはしている。とはいえ未来の恋人だ。可愛い愛すべき人であることには変わりはない。
 彼は自身の六芒星に刻まれた『VI=恋人たち』をその身をもって体現しているのである。
「花に貝殻……とっても南国っぽいでしょ!」
 折角海辺のリゾートに来てるんだもん、とぷぅと膨らんだ頬もなんと愛らしいことか。やはり抱きしめてしまおう、と両手を広げた瞬間ルシアーノが勢い良く体を起こした。
 ブゥンと唸りを上げルシアーノの頭がクリスティーナの顎を掠っていく。
「ぅおっ……」
 衝突事故は思いっきり腰を反らしたクリスティーナのお陰でギリギリ回避された。腰が多少悲鳴を上げたが、それでも可愛い恋人が痛い思いをするよりは良い、と腰を摩る。
「ヴィス様と静刃様からも言ってよ。乙女心を勉強しなさいって」
 後ろからゆっくりとやってきたヴィスと静刃はルシアーノと腰を押えるクリスティーナを見比べた。
「恋人のに過剰な期待をするべきじゃあな……」
「それはありのままの俺を受け入れてくれるということでいいのかな?」
 手を取ろうとするクリスティーナ。ヴィスは電光石火で両手を背中に隠す。
「まったく、素直じゃない。だがそこがヴィスを一層魅力的に愛しく思わせてくれる」
 ほざいてろ、と視線に込めて一歩下がるヴィス。
「愛しい人のいつもとは違う一面をみてみたい、という男心じゃないでしょうか?」
 ヴィスとクリスティーナの間にさりげなく割って入った静刃は一応ルシアーノに対しフォローを入れる。
「ふぅん……そういうもの?」
 唇に人差し指を当てて首を傾げるルシアーノに「勿論」と送るウィンク。だがそのウィンクが届く前に「あ、あれかわいい!」と彼女は店の中へ。
「その軽やかな足取りも小鳥のよう愛らしいな」
 無視されてもクリスティーナはくじけない。それどころか「ねぇ、早く! 早く!」と手を振るルシアーノに「今行く」と返す笑顔。愛しい恋人たちに対してはいついかなるときでも前向きに捉えることができるタフな心臓なのだ。

 右手に鮮やかな花が大胆にプリントされたワンピース、左手には目が覚めるようなマリンブルーのロングドレス。
「ん〜……どっちが似合うかな?」
 鏡の前でそれを交互に当てながらルシアーノは首をかしげた。
 どちらも普段街で着るには派手なデザイン。しかしその後着回せるかなどという判断よりも場の雰囲気に流されがちになるのがリゾート地での買い物の醍醐味だろう。どうしてこれ買っちゃったんだろう、と後日冷静になるのもまた良い思い出だ。
「気になるなら両方買ったらどうだ?」
「ほんと?! さすが、クリスティーナ様」
 しかも頼もしい財布もいるともなればその醍醐味も味わいたい放題。
 金のことは気にするな、というクリスティーナにルシアーノは嬉しそうにその腕に抱き着いた。
「ルシアーノが喜んでくれるのなら、店一つと言われても安いものだ」
 可愛い恋人に喜ばれて調子に乗らないはずがない。いや強請られれば本当に店一つ買ってしまいそうなところがクリスティーナのクリスティーナたる所以なのだから、調子に乗っているわけではなく通常運用中かもしれない。
 組織に属する者は全て自分の恋人だと豪語するクリスティーナがお財布になってくれることはいつものこと。今回の旅行も全て彼がお膳立てしてくれたものである。
 それでも喜んでみせるのは礼儀。どうせならば気持ちよくガッツリお金を出して頂きたい。ルシアーノはこういうところが上手い。
「じゃあ、これと〜、これと〜……」
 ひょいひょいと遠慮の欠片も見せずに選んでいく。此処で遠慮したら組織の幹部であるクリスティーナの面子を潰すことになりかねないし、というのは表向きの理由。
「あ、あれも気になる〜」
 どんどん店の奥へと進んでいくルシアーノ。持ちきれなくなったものは当然クリスティーナが受け取った。
「恋人っていうかお嬢様と従者だな、あれは」
 呆れたようにヴィスが静刃に耳打ちする。それから
「静刃、遠慮することはないぜ。財布役はあれのライフワークみたいなもんだ」
 どこか遠慮がちな様子の静刃に「財布なら使わなきゃ損だろ」と片目を瞑ってみせた。
「ん? 二人は何が欲しいんだ?」
 噂すれば影とは昔の人はよくも言ったものだ。先ほどまでルシアーノの後ろについていたはずのクリスティーナが二人の間からにゅっと顔を覗かせる。ヴィスの腰には手を回しつつ。
「気安くさわんな」
 すかさず手を払いのけ、距離を置くヴィスは人に触れられるのを嫌がり毛並みを逆立てる野良猫のようだ。
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
 赤くなった手にふぅふぅと息を吹きかけるクリスティーナに静刃は微笑んで頭を下げた。
 麦藁帽子を頭に乗せ鏡を探していたルシアーノはショーウィンドウから見える通りにかつての同僚、今は上司となった青年をみつけた。買い物には興味ねェな、と一緒に街に出てきたはいいが別行動を取っていたはずだ。何をしているのだろうか。
「って考えるまでもないよね〜」
 ナンパだ。大胆に肌を露出したナイスバディなおねーさんと何やら楽しそうに話している。
『なぁ、俺と一緒に遊ばない』
『えぇ〜、どうしよっかな〜』
 ちらちらと思わせぶりな視線を青年におくる女、ルシアーノから見て悪い感触ではなさそうだ。勝手に脳内でアテレコをしていたルシアーノはニヤリと悪戯な笑みを浮かべる。何か良からぬことを思いついた時の顔だ。
「クリスティーナ様、これもお願い」
 麦藁帽子をクリスティーナに渡し、ルシアーノは一度だけ硝子に向かって笑顔を練習すると店を飛び出して行った。
「シャ〜ガ〜!」
 いつも以上に甘ったるい声でナンパ中の青年に向けて手を振りながら。

 白い帽子が風にさらわれ空に舞う。広がるブルネット。「あ……」小さく声を上げた女性が咄嗟に手を伸ばすが届かない。
 そのまま海岸へと飛んでいこうとする帽子を横から伸びた手が掴んだ。
「どうぞ、お嬢さん」
「……」
「どうかしたかな? 僕の顔に何かついている?」
 短めに揃えられた銀髪、褐色の肌に蜂蜜色の双眸、帽子を助けてくれた相手に一瞬言葉を失う女性。我に返ると「ありがとうございます」と帽子を受け取った。
「とても艶やかで綺麗なブルネットだ。きっと風もあなたの髪に触れたくなってしまったのだろうね」
 銀髪のその人物はふわりと一房女性の髪を手にして目を細める。そうすると蜂蜜色の双眸が一層甘くとろけたように見えた。
 化粧っ気はなく、背も高いがその人物はれっきとした女性だ。だが女性とも男性とも違う、神秘的とも取れる中性的な美しさに見惚れるなという方が無理な話。
「今度はあなたが悪戯な風にさらわれたりしないようにね」
 手にした髪に口付けを落とす気障な仕草すら絵になる。女性にできたのは胸に抱えた帽子で恥ずかしそうに顔を隠しながら頷くことだけだった。

 銀髪の同僚ステラとブルネットの女性のやりとりを少し離れたところで見ながらシャガは面白くなさそうに眉を顰める。
 一緒にナンパに行かねぇ、とステラを誘ったのはシャガだ。しかし今となってはどうして彼女を誘ったのか、と朝の自分を問い詰めたい。
 今も彼女は可愛らしい少女たちに一緒にお茶をしないかなんて声をかけられている。だというのに自分はどうだ……。
「なぁ、この先にイイ店知ってんだけど一緒にどーよ?」
 ゴージャスな金髪の美女は立ち止まるとシャガの頭から爪先まで視線を走らせる。そして赤い唇を蠱惑的に笑ませると「アナタがもう少し大人になったらね、ボーヤ」と行ってしまう。
「なぁにが坊やだ」
 ガッと石畳を蹴り、美女の背中に吐く悪態。きっと幼馴染兼部下のルシアーノがいれば「そーいうとこが子供なの」ってしたり顔でツッコミをいれたことだろう。
 やってらんねェ、と手すりに寄りかかったシャガの前を黒髪の少女が通り過ぎていく。飾り気のない白いワンピースから覗く触れるのをためらうほどの華奢な手足。目を惹く美少女だが少々幼い。
 あと二年、いや三年か……。そんな事をシャガが思いつつ少女を見送っているとまた海から強い風が吹いた。
 少女の帽子が飛ぶ。
 反射的にその帽子をシャガが掴む。先ほどのステラの再現。
「ほらよ、次は気をつけろ」
 ぽん、とシャガはその頭に帽子を乗せる。
「……っ」
 いきなり知らない、しかも背の高い男に声を掛けられ驚いた少女は固まってしまう。零れそうなほどに瞠られた大きな黒い瞳。
 どうかしたのかとシャガは少女を覗き込んだ。
 突然視界いっぱいに映った男の顔にびくっと揺れる少女の肩。まん丸に開かれた瞳が揺れる。
 あ、これ泣くンじゃねェ、シャガは思った。
 純粋に帽子を飛ばされた少女を助けようと思ったのだ。

「お嬢さん、何かお困りかな?」
 風に乗って聞こえてくるステラの女性にしては落ち着いた柔らかい声。

 そう本当にこの少女に対してはあわよくば、などという疚しい気持ちも下心もなかったというのに。だがステラの時と比べてどうだ……。

「おや、貴女とは何処かで……おかしいな、こんな可愛い人、忘れる筈ないんだけど」
 ステラの言葉に「もう口が上手なんだから」と嬉しさを隠しきれない女の声。そして「このあと時間ある?」と女からの誘い。

 自分は……。
「あ、あ……のありがとうございました」
 下の方から聞こえる震えるか細い声。それだけ告げると走り去っていく少女。
「あ……あぁ」
 シャガの視界に翻る白いワンピース。その先に楽しそうに女と話してるステラの姿。
 シャガの中で俄然湧き上がるステラへの対抗心。
(見てろよ、俺だって)
 シャガは拳を握ると新しいターゲット、水着との差はあるのだろうかという程に大胆に肌を露出した女に笑顔で声を掛けた。

 「何、あの人?」「要人の警護とか?」道行く娘たちのひそひそ声に釣られるようにステラは通りに面したとある店に目を向ける。
「おや……?」
 クリスティーナ直属の部下カムイが店の脇、建物の影に立っていた。本人は隠れているつもりなのだろうか。ひょっとしたら単に多い客が多い店に入るのを避けているだけかもしれない。
 もしも物陰から主をひそかに警護しているというのであれば失敗だ。ぴしっと伸びた背筋に、鋭い視線。軍の青年士官と言っても差し支えの無い容姿はリゾート地に似つかわしく無く人目を惹いている。
 それでも普通に立っているだけなら要人警護だと言い張れたであろう。しかしながら首から提げたカメラで時折店内を撮影している姿が色々と台無しにしていた。どう見ても不審人物だ。
 あれのせいで余計に注目を集めていることを本人は気付いているのだろうか。
 ともかくあそこにカムイがいるということはクリスティーナ達があの店で買い物をしているということだ。
「ということは……」
 ステラに気付き律儀に目礼を送るカムイに片手をひらりと揺らして答えると絶賛ナンパ中のシャガを見る。あの愛らしい彼の直属の部下ルシアーノもあそこにいるということだ。
 シャガのナンパは今回どうやらうまくいきそうである。この先起こるであろうことを彼に忠告してやるべきか。
 ステラはしばし思案した結果、事の成り行きを見守ることにした。

 上司のクリスティーナについて海辺のリゾート地までやってきたは良いか、想像以上の人の多さにカムイは些か気後れしていた。しかも真夏の陽射に対抗しているのか、と問いたくなるような派手な格好のものばかり。色の洪水だな、とそっと吐く溜息。
 しかし人通りに負けて自分の任をおろそかにするつもりはない、とカムイは怪しいものがいないか周囲に気を配る。尤もカメラを構え店内を撮影しているカムイ自身が周囲から見て怪しい人になっているのは本人のあずかり知らぬ所だ。
 カムイにとって大切なのは命の恩人であり敬愛すべき上司クリスティーナの身の安全を確保することと、双子の姉への土産としてクリスティーナの旅先での写真を撮ることである。
「うがっ!」
 店内で上がるクリスティーナの声。ファインダーの中では片足を押さえぴょんぴょん飛び跳ねている敬愛すべき上司の姿。立て続けにシャッターを切る。
 彼の身を守るためならば自身の身を投げ出すことすら厭わない。ただこのように同僚に過剰なスキンシップを試みては足を踏まれたりしている場合、クリスティーナ自身非常に楽しそうなので身の危険にカウントはしない。むしろ姉への土産のシャッターチャンスといっても良い。
「それにしても……」
 カムイはカメラを手にしたまま此処から少し離れた場所で『ナンパ』とやらをしているシャガとステラの姿を眺めた。目があったステラには目礼を返す。
 実はナンパというものを良くわかっていない。「皆、俺の可愛い恋人さ」と公言している上司の興味や愛が向かうのはあくまでその組織内においてであり外の不特定多数に向かうことは無く、彼と姉にとっては上司が世界なのだ。故に外部の誰かに何かを求めるという行為が不思議でならなかった。
 ステラが女性に声をかけるのも、かけられるのも日常として、シャガはどうなのだろうか。先程からしきりに女性に声をかけては肩を落としている。あの行為に何の意味があるのだろうか。
「シャガ様のこと、何かお考えがあってのことだろうが……」
 単に可愛い女の子と楽しいひと時を過ごしたいがため、とは欠片も思っていなかった。
 そんなカムイの前を店から飛び出したルシアーノが駆け抜けていく。
「シャ〜ガ〜!」
 何か緊急事態があったのか、と身構えるカムイにステラは何か思うことがあるのだろうか軽く肩を竦め苦笑に誓い笑みを零してみせた。

 小麦に焼けた肌を惜しげもなく晒す美女の感触は悪くない。シャガは内心拳を握って「どーだ」と言わんばかりにステラを向く。
「でさ、この後暇ならどっか遊びに行かねェ?」
 ここ詳しいなら案内してよ、なんて笑顔を浮かべて美女の肩に手を回す。女も「どうしようかしら?」と言いつつ満更でもなさそうだ。
 肩に触れる手、女が軽くシャガに体を預ける。
 よし、いける、シャガの予感が確信に変わったとき、「シャ〜ガ〜!」とやたら甘ったるい声が響いた。
「は……? ルシアーノ?」
 財布、いやクリスティーナと買い物にいっているはずのルシアーノが通りの向こうから手を振りながらかけてくるではないか。
「ごめんね〜? まった〜?」
 ルシアーノは無邪気な笑みと共に女の肩を抱いた腕の逆側の腕に抱きついてくる。
「もう、来ていたなら声かけてくれればいいのに〜」
 ぐいぐい体を押し付けつつ、ちらりとシャガを挟んだ逆側にいる美女に向ける意味深な視線。
「なンで此処に……って」
 離れろ、と腕を振るが「寂しかったの? 拗ねちゃって可愛い」とルシアーノは取り合わない。しかも浮かべる笑顔からは想像できない力で抱きついてきている。そう簡単に外せない。
「ンなわけ……」
 横顔に感じる視線にシャガがぎこちない仕草で美女を振り返る。胡乱な視線は「その小娘なに?」と語っていた。
「馬鹿マテ此れは違う! 誤解な……」
 バシっと高らかに肩に回した手を払いのけられた。
「馬鹿にしないで頂戴」
 美女は肩を怒らせ去っていく。
「シャガがお世話になりました〜」
 満面の笑みで手を振るルシアーノの横で「アァッ!!」と崩れ落ちるシャガ。
「ふ、ふっふ……」
 頭上からルシアーノのとても嬉しそうな声が降ってきた。

 ヴィスと静刃は互いにアクセサリーや服を当てては、これはどうだ、あっちのが似合ったなどとやっている。
 棚に並んだアクセサリー、そのうち一つが静刃の目に留まった。赤みの強い黄玉をあしらった銀細工。少し荒削りだがそれがヴィスに似合いそうだ。
「これなんか似合うと……」
 通りを眺めているヴィスは静刃の声に気付いていない。
「ヴィス?」
 静刃が呼ぶと、ようやく気づき「こっち、こっち」と手招く。そこに何があるのだろう、と横に並ぶ。
 眩いほどに明るい通りではちょうどルシアーノがナンパ中のシャガのところに突撃したところだ。
「あら、あら……」
 ナンパが失敗に終わったシャガが何事か言い、ルシアーノが笑っている。戦車とその部下は主従というよりはじゃれ合う兄と妹というほうがしっくりくるかもしれない。
「仲が良いですね」
「まったく、ナンパするなら場所選べってなぁ」
 ルシアーノがみつけたら邪魔するに決まっているじゃないかとヴィスが呆れたように息を吐く。
 通りではさらなる事態が進行していた。こそり大きな背を丸めシャガの背後に忍び寄っていくクリスティーナ。
「アイツ、気づいてねぇぞ」
 静刃の肩に手をおき、吹き出しそうになるのを堪えるヴィスである。

「おい、ルシアーノ……」
 ゆらりと陽炎を纏いシャガが立ち上がった。何も知らない誰かが見れば背筋を震わせそうな迫力だ。だがルシアーノは気にする様子も無く「あぁ、楽しかった〜」と満足気である。
「折角上手いこといってたってェのに、なンてことしてくれやがる!」
「あれくらいで怒るようなの止めておいて正解よ」
 悪びれた様子も無くルシアーノはシャガの前を通り過ぎ、海へ向かって手摺から身を乗り出した。
「明日は泳ぎに来ようかな〜」
「あ〜……また誰か……」
 灰色の髪を掻き回すシャガの腰をいきなり抱き寄せる逞しい腕。「俺が慰めてやろう」やたらと耳障りの良い声が耳を擽った。
「お前の嘆きは俺が全部受け止める。だから笑ってごら……ぐがっ」
 全部言い終える前にシャガの拳がクリスティーナの鳩尾を抉った。
「どさくさに紛れて何しようとしてンだ。こンの変態ジジィ」
「くぅ……愛が痛い」
 腹を押さえ蹲るクリスティーナ。
「でも素直じゃないだけなんだよな、俺知っている……」
 だから大丈夫、問題は無い。これも愛のコミュニケーションと顔を上げれば「もう一発イっとこうか?」と不穏な声。あまりにも力強く握りすぎたためシャガの拳がふるふると震えている。
「モテモテだね?」
「どこをどうみたらンなこと言えんだよ!」
 笑み混じりに流石シャガだ、と拍手を送るステラに思いっきり顔を顰めてみせる。
「両手に花じゃない!」
 右手にルシアーノそして示し合わせたように左手に復活したクリスティーナ。
「クッソ、こンなモテ方嬉しくねェ……」
 ぼやくシャガに「っ……ははは!!」と高らかな笑い声が重なった。
 やって来た静刃とその背後でヴィスがとうとう耐え切れなくなったのか体をくの字に曲げて笑っている。
「ダァッ! ヴィス、テメェゲラゲラ笑ッてンじャねェよ!!」
「大いにもてもて……っ くくっ は……はは……もぅ」
 吠えるシャガはいまだ両手に花状態。つい自分の呟きがハマってしまいヴィスは笑いに歯止めが利かなくなった。
「静刃、夏の日差しを受けたあなたの瞳は一層深みを増してまるで深い湖のように美しいね」
「ありがとうございます、星の方。あなたの瞳も星々の輝きを閉じ込めたように魅惑的ですよ」
 挨拶代わりのステラの言葉に静刃も笑顔で応える。互いに慣れたものだ。
 クリスティーナは人通りから少し距離を置きこちらを見てるカムイを振り返る。
 狭い店内では人の多さに慣れないカムイを呼び寄せるのは可哀そうに思い、そのままにしておいたが此処ならば問題ないだろう。
「おいで」
 柔らかく笑う。そして未だ占領したままのシャガの手を自分の手代わりに振ろうとして、シャガに蹴りをくらった。
「だから調子に乗ンじゃねェ」
 容赦のない一撃にカクンと膝から崩れ落ちるクリスティーナをカムイが支える。
「なに、もてもて大いに結構だろ。で、だ……もてもてついでに荷物持ちに付き合え」
「うぇ……なんだって俺が……。俺はナンパしに……」
 がしっと首に腕を回し引き寄せるヴィスに嫌そうな顔をするシャガ。幼馴染で喧嘩仲間と来れば互いに容赦はない。
「成功しないナンパより荷物持ちのほうが幾分有意義に過ごせんだろ?」
「ぐっ……」
 言葉に詰まったシャガが「テメェが手綱握ってねぇのが悪い」と半ば八つ当たり気味にクリスティーナの後頭部を叩いた。
「この痛みにも愛を感じる。照れ屋さんだな、シャガは」
「ンなもん込めるか」
 賑やかな一行に何事かと道行く人が振り返っていく。
 手摺に腰かけ、ルシアーノは自らの上司である青年を見つめる。はしゃぐ彼は散歩に喜ぶ大型犬のようだ……本人には言わないでいてあげるけど。
「……シャガ、楽しそう」
 自然と口元に浮かぶ笑み。
「あ……なるほど!」
 ポンと手を打つ音に皆の視線がカムイへと集まった。
「どうかしたのか?」
「……その、つまり『ナンパ』というのは、社会性を試す儀式のようなものなんですね……!」
 シン……沈黙が下りる。
 冗談で言っているわけではなさそうだ。すごく真面目な顔をしている。きっと一生懸命考えた結果なのだろう。皆、無言で顔を見合わせた。
 あれだけ騒がしかった集団を黙らせる発言の威力に気付いていないのは本人ばかり。どうですか、と皆に向けられる純粋な瞳の輝き。
「カムイ君、そこに気付くなんてするど〜い!」
 誰かが訂正を入れるまえに動いたのはルシアーノ。同じ小アルカナとして密かに尊敬の念を抱いているルシアーノに褒められカムイが恐縮する。
「ナンパはねコミュニケーション能力を鍛える訓練なの。組織の諜報活動を優位に進めるためには必要不可欠な能力だもの」
 適当な理屈をさも当たり前のことのようにルシアーノが講釈する。立て板に水とはまさにこのことだ。それに異を唱える者はいない。どうやら皆、カムイの誤解は解かない方向で一致したらしい。
「合点がいきました。俺もご一緒してもよろしいでしょうか?」
 少しも疑わないのか、と誰しも思った。口から出まかせを言ったルシアーノですら、これで納得しちゃうの、と思ったほどだ。
「おう、当然だろ。検討を祈るぜ」
 とてもいい笑顔でシャガがカムイの背を叩く。
「はい、シャガしゃま!」
 憧れている戦車の激励にカムイがビシっと背筋を正した。
『シャガしゃま!!!』
 またもや皆心の中で一斉に突っ込む。
 指摘したい、ツッコミを入れて反応を見たい。そんな誘惑に駆られる者もいたが、此処でそれを指摘した結果カムイが意気消沈したら面白くないと誰もそこに触れることはしなかった。
 同じ組織に所属しているが彼らは決して一枚岩ではない。組織の理念の下、それぞれ思惑や信念を持っている。そんな彼らが珍しく心を一つにしていた。
 カムイのナンパをみてみたい、と。
 皆に見送られ意気揚々と出陣する背。
「おい、戦車の……」
「今のは一蓮托生だろーが」
「カムイ君に怒られる時は皆一緒ね」
「それにしたってチョロ過ぎるぞ」
 不安になるほどの純粋さだ。哀れなガキ、と自分で焚きつけておきながらシャガは内心零した。
「あまりあの子をからかってくれるなよ」
 シャガの心の内を知ってか知らずか肩を竦めるクリスティーナ。
「恋人の方 、止めなかったあなたも同罪ですよ」
 静刃の言葉に「だよなぁ」とヴィスが同意する。
「僕たちに今できることは彼のナンパの成功を祈って見守ってあげることだろうね」
 ヴィスお手製の棒付きキャンディをポケットから取り出しステラは咥えた。

 カムイはステラとシャガの様子を思い出す。声を掛けていたのは主に女性だ。そういえば女性は色々と噂話が好きだと聞いたことがある。
 組織の幹部が多数見守る中、失敗し上司の顔に泥を塗るわけにはいかない。見ていてくださいクリスティーナ様、と心の中で入れる気合。ターゲットはあそこでアイスを食べている女二人連れ。
「あのすみません……」
 実は来たばかりでこの街にあまり詳しくなく、そんな風にカムイは切り出した。
 清潔感のある真面目そうな青年、カムイの外見は女たちに余計な警戒心を抱かせないことに成功したらしい。しかも世間慣れしてなさそうなところが母性本能を擽るのか「どうしたの、何か困りごと?」と積極的に話を聞いてくれる姿勢だ。
 話しを続ける女たちとカムイ。時折笑い声も聞こえ中々順調に話が進んでいるように見えた。
「どうやら上手くいっているようだね」
 やるなぁ、と感心するステラ。
「俺と何が違うんだ……」
「戦車のは下心が滲み出てるんじゃないのか」
 人の悪い笑みを浮かべるヴィスにシャガが「っせェ、猫被り」と毒吐く。ヴィスには『スフェール』というお嬢様としての表の顔があった。実を言うとシャガの初恋が猫かぶりのヴィスである。俺の初恋を返せと言いたい。
「戦車様も十分に魅力的ですよ」
「お、おぅ、ありがとうな」
 フォローを入れる静刃に対するシャガはヴィスに対するよりもどこか遠慮がある。
 そうこうしているうちにカムイが女たちに笑顔で礼を述べてこちらに戻ってきた。
「この先にパンケーキの美味しいカフェがあるそうですよ」
 無事情報を入手したカムイはやり遂げた誇らし気な表情だ。
 買い物のあときっと皆でお茶をすることになるだろう、とカムイは美味しい店を聞いてきたのだ。本当に素直に情報を入手してきたらしい。
「パンケーキ! 買い物終えたら行きたいなぁ」
 わぁい、と嬉しそうにルシアーノが手を挙げて喜ぶ。
「初めてにしちゃよくやったじゃないか」
 クリスティーナにくしゃりと髪を掻き回されカムイは嬉しそうにはにかんだ。
「じゃ、買い物再開といこうか?」
「お手をどうぞ、お嬢さん」
「よろしくお願いしますわ、星の君」
 ダンスに誘うよう差し出されたステラの手を同じく、芝居がかった仕草でヴィスは取る。そして振り返ると静刃の手を強く掴んだ。
「ほら、行こうぜ」
 買い物継続はどうやら決定事項らしい。あからさまなシャガの溜息は華麗にスルーされた。

 ヴィンテージの小物を扱っている店。とある棚の前で静刃は足を止める。棚に並んぶ眼鏡。その中、自分が掛けているものと同じものをみつけた。
 それに手を伸ばしかけ止める。代わりに触れるのは自分の眼鏡。
 静刃の顔に対して少しだけ大きい、男物の眼鏡。この眼鏡の持ち主は本来静刃ではない。
「……」
 静かに目を閉じる。瞼の裏に浮かぶのはかつてこの眼鏡をかけていた人の、此処にはもういない殿方の姿……。先代の『女教皇』。
 僅かに震える睫毛。何か言いたげに唇が動き、だが結局音になることはなく引き結ばれた。
 ゆるりと手が眼鏡から落ちる。
 何でもない、と自分に言い聞かせるように首を振る静刃を抱き寄せる腕。
「ヴィス……」
 返事代わりにこつん、と米神同士がぶつかる。ヴィスは何も言わない。でも言葉の代わりに温もりが伝わってくる。
 彼女の腕の温もりが何度静刃の心を救ってくれたことだろう。その腕に自分の手を重ねた。
 大丈夫、ありがとう……そんな想いを込めて静刃はヴィスの頬に口付けを送る。柔らかく細められる左右色味の違う金色の双眸。
 ヴィス、もう一度誰にも聞かれないように彼女にだけ伝わるように名を呼んで静刃はヴィスの背に腕を回した。

 清冽な水を思わせる蒼い石の髪飾り。その澄んだ蒼はステラにパートナーである女性の瞳を思い起こさせた。夜空に輝く月のように美しい彼女。
「これは……きっとあなたに似合うだろうね」
 女性にかける声よりも甘い声音で囁くと、その静謐な美しさを損なわないようステラはそれを慎重に掌に乗せる。
 買い物では荷物持ちに徹し、自分のものは何一つ買う予定はなかったが、別荘で海でも眺めながらのんびりと過ごしているであろう彼女のためにステラはそれを買い求めた。
 当然プレゼントにしたいから、と言って淡い青色の薄紙とリボンで包装してもらうことも忘れない。

 荷物持ちと財布、両方を携えた女性陣の買い物は、時に苛烈な『懲罰と救済』を掲げる組織の幹部であるシャガが恐怖を覚えたほどに容赦の欠片もなかった。
 カムイが調べてきたパンケーキが美味しいと評判のカフェに辿り着いたころにはくたくたである。
「楽しかったぁ〜」
 別荘に帰ったらファッションショーしなきゃ、とはしゃぐルシアーノ。クリスティーナは今日、一日だけでかなり出費したのにも関わらず、恋人たちが楽しそうに休日を謳歌する姿を堪能できて上機嫌だ。足の甲や脛に痣ができていてもそんなこと些細なこと。むしろそれは愛の証、と胸を張って言える。
「さてと、何を頼むかな」
 メニューを広げるヴィスは「なぁ」と甘えた仕草でクリスティーナを呼ぶ。
「なんだい」
 恋人からはどんなに邪険にされても気にしないある意味とても前向きなクリスティーナは甘えられれば一層相好を崩す。
「好きなもの頼んで良い?」
 ヴィスはどちらかといえばクリスティーナが苦手だ。嫌っているとか憎んでいるわけではない。苦手なのだ。その様子は見る人が見れば思春期の娘が父に対する態度に似てるというかもしれない。
 だからなるべく距離をとる。今も一番離れた席に座っていた。だが財布として利用できるときはきっちり利用する気満々であった。
「遠慮されるほうが悲しいな」
 クリスティーナの投げキスはメニューで防がれる。
「ではお言葉に甘えて、僕もクリスにご馳走になるとしよう」
「勿論、喜んで。ご希望とあれば食べさせてあげようか」
 言葉の後半は無視してステラはウェイトレスの女性を呼び止める。「お勧めはなにかな?」と「制服とても似合っているね」を同時にこなすのは流石であろう。
「どれも美味しそう……」
 広げたメニューとにらめっこするルシアーノ。
「何も一つだけ選ぶ必要はないぞ」
「じゃあ、ルゥはここからここまで全部〜」
 かわいらしい笑顔でメニューの端から端まで指さした。いっそ清々しいまでに容赦がねェ、と思わずシャガがクリスティーナに同情したくらいである。
 海に面してテラス席からは次第に夕暮れにそまっていく空が見える。昼間は少しべたつくように思えた潮風も今は心地良いくらいだ。
「おや……あそこにいるのは」
 ステラがテラスから見える通りを指さす。その指の先には赤毛を一つに縛った中年男。
「あぁ、俺の恋人だ」
 とクリスティーナが言い切った。彼にとって組織に所属している人間は性別年齢関係なく皆等しく愛しい恋人なのだ。
 どうやら屋台で花火を買い求めているらしい。
「花火いいなぁ、楽しそう」
「皆への土産に買って帰るか」
「夜の浜辺で花火! 楽しそう〜」
 だが花火を抱え帰る赤毛の男の背中に漂うのは哀愁。朝はパリっとしていたはずの麻のジャケットも草臥れて見える。とても花火で盛り上がろうぜ、という雰囲気ではない。
 なんとなくだが声を掛けてはいけない空気を察することはできた。
「で、ナンパの成果はどうだったんだよ?」
 人の悪い笑みを浮かべるヴィスに、聞くなとそっぽを向くシャガ。
「人には向き不向きというものがあるからね」
「おい、ステラ、それフォローになってねェからなってルシアーノ、テメ、俺の皿から取んな」
「だって人が食べているものって美味しそうに見えるんだもん」
 もう一口、と大きくカットされた果物を狙うルシアーノからシャガは皿を守る。
「私も戦車様と同じものを頼んだので、どうぞ」
「わぁい、静刃様ありがとう」
 静刃が口元に運んでくれた果物をパクリと頬張りルシアーノが「美味しい」と頬を押えた。
「俺にはないのかな?」
 あ〜ん、と口を開けるクリスティーナに無言でフォークを構えるシャガ。
 静刃のスプーンに乗ったクリームはヴィスに食べられてしまう。
「どうして俺を差し置いてイチャコラするのか……」
 恋人たちの楽しそうな姿は嬉しい、でも寂しいとわざとらしく顔を伏せるクリスティーナ。何時ものことだと幹部たちは取り合わない。
 ただ一人彼の部下であるカムイだけが困ったようにオロオロと周囲を見渡してから「俺のでよろしければ」と自分の皿からパンケーキを切り分けてクリスティーナな皿に乗せる。
「惜しい、あと一歩の踏み込みが欲しいとこだ。でもその気遣いが嬉しいな」
 美味いよ、とクリスティーナはカムイが分けてくれたパンケーキを口に運ぶ。
「麗しき主従愛だね」
「恐縮です」
 背筋正し真面目に返すカムイにステラは一瞬目を丸くしてから顔を逸らして肩を震わせる。
「ステラ様?」
「いや、ごめん。気にしないで欲しい」
 片手を上げるステラに「はい」とこれまた生真面目にカムイは返事をした。彼は天然なのかもしれない。
「此処を出たら市場で食材を買って帰りましょう」
 カムイが預かってきたというメモを取り出す。別荘での食事を一手に引き受け、パンまで自分で焼く元傭兵からのリクエストがびっしり書き込まれていた。
「さらに荷物が増えンのかよ……ってまァ、美味いモンのためなら仕方ねぇか」
 自分の分は自分で持てよ、とシャガの視線に応えてくれた者はいない……。

 夕暮れの道、賑やかに帰ってきた一行を眼鏡をかけた穏やかそうな青年が迎えた。別に彼らを迎えるために玄関先にいたわけではない。海辺の猫を堪能していただけだ。
「ただいまの抱擁と熱いキスを……グガっ!」
「おかえりなさい。まもなく夕食ができますよ」
 両手を広げたクリスティーナを迎えたのは熱烈なアイアンクロー。
「お、良い匂いだな。夕食はなんだっけ?」
「魚介のパエリアと聞きましたが」
「酒、買ってきたぜ」
「スイーツもばっちり〜」
「食材を厨房に運んでおくよ」
 口々に言いながら皆別荘にへと入っていく。
「やれやれ照れ屋さんの多いことだ」
 赤い指の形が残る頬を一撫でしてクリスティーナが笑う。
 その笑顔をカムイはパチリとカメラに収めた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ルシアーノ=アルカナ(ka4926)
シャガ=VII(ka2292)
ヴィス=XV(ka2326)
クリスティーナ=VI(ka2328)
静刃=II(ka2921)
カムイ=アルカナ(ka3676)
ステラ=XVII(ka3687)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました。桐崎です。

海辺の別荘のお話(お昼編)いかがだったでしょうか?
きっとリゾート地においても目立つ集団だったのではないかな、と思っております。
皆さんがワイワイとしている様子が伝われば何よりです。

イメージ、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクを申し付け下さい。
それでは失礼させて頂きます(礼)。
野生のパーティノベル -
桐崎ふみお クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2015年10月14日

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