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『 ふたりのお茶会 』
セレニテス・ローシェka4911)&シュシュシレリアka4959


 秋の深まる庭には、そろそろ盛りを過ぎようとするバラが名残の香りを漂わせる。
 斜めに差し込む日差しは暖かな黄金色。
 まだ紅葉には少し早く、木々も日差しにうっとりとまどろんでいるような午後だった。
「こんなに素敵なお天気だもの。今日はテラスでお茶にしましょうよ!」
 セレニテス・ローシェはそう言うともう、白いクロスを抱えてテラスに向かう。
「あら、気の早いことね」
 戸口から顔をのぞかせ、シュシュシレリアが小さく笑った。

 キッチンのテーブルの上には、必要なお皿やカップが並んでいる。
 先に作っておいた焼き菓子やサンドウィッチは、今か今かと出番を待っているよう。
 シュシュシレリアは時計を見て、オーブンの具合を確認して、それからコンロに水の入ったケトルをかけた。
 そこにセレニテスが飛び込んで来る。
「もうテーブルとイスは用意したわ! クロスもかけて、お花も飾ったのよ。後は何を運べばいい?」
 かなり急いで用意したらしい。息は上がっているし、ほっぺはバラのように紅く輝いている。
 シュシュシレリアはその一生懸命さに、また少し笑ってしまう。
「ありがとう。じゃあこのトレイでお皿を運んでくれるかしら? もうすぐスコーンが焼き上がってよ」
「わかったわ!」
 小柄な体が重いトレイを抱えて、少し危なっかしくキッチンを出ていく。
 シュシュシレリアは心配しつつも、その背中を見送った。

 予定通りの時間にスコーンは焼き上がり、戻って来たセレニテスは歓声を上げた。
「とってもいいにおい! おいしそう!」
 胸一杯に焼き立てスコーンの香りを吸い込んで、うっとりと目を閉じる。
「上手く焼けたみたいで良かったわ。さ、これも運んで頂戴ね」
「ええ、もちろんよ!」
 籠いっぱいのほかほかスコーンにクロテッドクリーム、ベリーのジャム、マーマレード。
 セレニテスがそれをテーブルに置いたところで、シュシュシレリアがお茶のセットをワゴンに乗せて運んで来た。
「さあ座って頂戴。今お茶をいれるわね」
 シュシュシレリアは慣れた手つきで茶器を用意し、明るい琥珀色のお茶をカップに注ぎいれた。
 穏やかな風が吹き抜け、木々の葉がくすぐったそうに笑いさざめく。
 シュシュシレリアのペリドットの髪も揺れている。
 ふわりと漂うお茶の香り。
 秋の日差しに、それは何と似つかわしく溶け合うことか。
「さあ、召し上がれ」
「いただきます!」

 セレニテスは早速カップを取り上げて口をつける。そして目を見開いた。
「シュシュ! これ美味しいわ!」
 勿論、紅茶を始めて飲んだわけではない。
 けれどふくよかな香り、口に広がる甘やかな風味は、今まで飲んだどの紅茶とも違った物に思えたのだ。
「こんな美味しい紅茶、はじめてよ。……もしかしてこれ、高かったりするの?」
 恐る恐る、セレニテスは伺うような視線を向けた。
 シュシュシレリアは優美に微笑む。
「あら? ふふ、嬉しいわ、ありがとうね。でも、これはそんなに高いものじゃないわよ?」
「本当に? 信じられない!」
 セレニテスはじっくりとかみしめるように紅茶を味わう。
 それでは、今まで自分が飲んで来たあれはなんだったのだろう?

 セレニテスの白金の髪が、金色の陽光に煌めく。
 嬉しそうにお茶を飲む少女の姿は、まるで一枚の絵画のように穏やかで優しかった。
 シュシュシレリアはそこでふと思いついたように尋ねる。
「レナは自分で紅茶を淹れることはあるの?」
「あるわよ!」
 シュシュシレリアは少し首を傾げ、考えこむような表情を見せた。
「どんな風に淹れているのかしら?」
「淹れ方? 紅茶はお湯を注いで作るのよね! だからポットにお茶葉をこう、かぱっと入れて、それからお湯をどばっと注いで……」
 身振り手振りで説明するセレニテスに、少し困ったようにエルフは微笑む。
「そうね、確かにお茶を選ぶことも大事よ。でもね、丁寧に淹れれば、どんなお茶も美味しくなるのよ?」
「そ、そうなの?」
 シュシュシレリアの薄紅の瞳に宿るモノを察知して、セレニテスは僅かに身を引く。
「……少し練習してみましょうか?」
「え?」
 カップを持つセレニテスの手が中空で止まってしまった。



 まずは普段通りに。
 そう言われてセレニテスは困ってしまった。
「えっと、こう……」
 普段はお茶缶の中身を直接パラパラっとポットに入れることもあるが、流石にそれはダメだろうと思い、一応ティースプーンを使った。
 二杯ほど入れてみて、沸かしたお湯を注ぎ入れる。適当に置いて、色がついた頃を見計らってカップに注いだ。
「じゃあ飲んでみましょうね?」
「……渋いわ」
 どうしたことか。さっきシュシュシレリアが淹れてくれたのと同じお茶葉を使っているのに、全く美味しくないのだ。
 眉を寄せるセレニテスに、シュシュシレリアはそっと溜息をつく。
 これまで本来の力を発揮できずに終わったお茶葉が、少し哀れになったのだ。

 だが、知らないことは仕方がないとも思う。
「一度覚えれば簡単よ? 一緒にやってみましょうね」
 そうしてシュシュシレリアは、丁寧にお茶の淹れ方のレクチャーを始めた。
 お湯の沸かし方に始まり、茶器の扱い方、淹れる前の準備。それから茶葉ごとの適量から、蒸らし時間、ひいては時間や目的ごとのお茶の選び方まで。
「……ごめんなさい、一度には覚えきれないわ!」
 セレニテスが絶望の表情になる。
「ふふ、手を動かしていれば自然と覚えることもあるのよ? ひとまずは、今ある道具でやってみましょうね」

 今度はちゃんと茶葉を正しく量り、温めたあと水気を拭き取ったポットに入れるセレニテス。
 沸騰直後のお湯を注ぎ、蓋をして、砂時計を逆さにして時間もきちんと計った。
 その間にティーカップを温め、茶漉しを用意して、砂時計の砂が落ち切ったと同時に色が均等になるように注ぎ入れる。
「……これでいいのかな?」
 少し不安げなセレニテスに、シュシュシレリアは優しく微笑んだ。
「一緒にいただきましょうね」
 目の前で師匠の顔を伺いながら、緊張の面持ちのセレニテスがお茶を口に含む。
「……あ」
 美味しい。
 少なくともついさっき自分が淹れたお茶に比べれば、格段に。
「上手にできたわね?」
 シュシュシレリアがそう言って頷いてくれる。
「すごいわ! お茶って淹れ方だけでこんなに変わるのね!」
 それはセレニテスにとって、大きな発見だった。

 シュシュシレリアは嬉しそうな少女に、一番大切なことを伝える。
「今、レナはお茶を淹れている間、どんなことを思っていたのかしら?」
「どんなこと……?」
 セレニテスは考え込む。
「そうね。シュシュが美味しいって言ってくれるといいなあって。そう思ってたわ」
 そう言った後で、セレニテスは気付いたのだ。
 シュシュシレリアの表情が、花が開くように輝いていくことに。
「そうね、それが一番大事なこと。飲んでくれる相手の事を思って、おいしくなぁれって淹れることよ?」
 改めて、シュシュシレリアはカップに口をつける。
「レナの思いが籠っているから、このお茶はとても美味しくなったのだと思うわよ?」
 セレニテスは何かを思いついて、ぱっと顔を輝かせる。
 だから最初のお茶が、あんなにも美味しかったのだ。
 大好きなシュシュが自分のために、おいしくなあれと淹れてくれたお茶。
 びっくりするほど美味しくて当たり前ではないか。

 だから次は、自分が大好きなシュシュを喜ばせたい。
「ねえシュシュ、またお茶のこと教えて!」
 セレニテスが微笑む。
「もちろんよ。こうして一緒にお茶を楽しめるのはとても素敵だもの」
 シュシュシレリアが頷く。

 寒い冬には、ワインやスパイスを入れて暖炉の前で。
 春には、花の下でれんげのはちみつやバラのジャムを添えて。
 夏には、爽やかな摘みたてミントの葉を浮かべましょう。

 ひとりで飲むお茶もいいけれど、ふたりで一緒にいただけばもっと素敵。
 だからこれからもずっと、一緒にお茶を淹れましょう。
 心を籠めて、おいしくなぁれの呪文をかけて。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka4911 / セレニテス・ローシェ / 女 / 15 / 人間(CW) / 聖導士】
【ka4959 / シュシュシレリア / 女 / 19 / エルフ / 聖導士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせしました、ちいさなお茶会のエピソードをお届けします。
場面設定等ご指定のなかった部分はかなり好きなようにアレンジ致しましたが、お気に召しましたら幸いです。
この度のご依頼、誠に有難うございました。
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2015年10月26日

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