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『赤い世界のハロウィン 』
青霧 ノゾミka4377)&奈義 小菊ka5257


 記憶というほど、定かなものではない。
 だが何か、うっすらと蘇って来るものがある。
 吸血鬼、ゾンビ、幽霊、狼男に魔女、ジャックオーランタン。
 様々な怪物たちが、こんなふうに群れる街中を、かつて自分は誰かと一緒に歩いていた。
(……あなたは……誰……?)
 心の中、面影しか残っていない誰かに、青霧ノゾミは問いかけてみた。
 もちろん返事はない。面影だけのその人が、心の中でただ微笑むだけだ。
 ぼんやりと、ノゾミは思い出した。
 幼い頃、安物のお化けになって、その人におどけて見せた事がある。
 その人は、お菓子をくれたのか、それとも何か悪戯をする事になったのか。そこまでは思い出せない。
 思春期になると、さすがにお菓子をねだるような事はなくなった。
 代わりに、その人と街を歩いた。
 ノゾミは半ば無理やり、獣の耳と尻尾を装着させられ、狼男に仕立て上げられた。
 その人は、ダンディな吸血鬼だった。
 2人で、ハロウィンに沸く街の中を歩いたものだ。同じく作り物の怪物たちが楽しげに徘徊する、10月の街を。
 だが今、この街を満たしている怪物たちは、生きた人間が変装したものではない。
 本物、と言うべきなのだろうか。
 ジャックオーランタン、吸血鬼。動く案山子に、フランケンシュタインの人造人間……様々な化け物の姿をした、禍々しい何かの群れだ。
 そして今。ノゾミの近くに、あの人はいない。
「……って誰なんだよ、あの人って!」
 思い出せぬまま、ノゾミは跳躍した。
 人造人間の剛腕が、目の前をブゥンッ! と通過する。
 かわし、着地したノゾミに、吸血鬼が食らいついて来る。幽霊が、覆い被さって来る。ゾンビが殴りかかって来る。
 襲撃の中、ノゾミは攻撃を念じ、その念を迸らせた。
 瞳が青く輝き、体内のマテリアルが燃え上がる。
 光が生じ、砕け散った。
 その破片1つ1つが、鋭利な針あるいは矢となって飛び、怪物たちの全身を穿ち切り裂く。
 吸血鬼が、幽霊が、ゾンビが、フランケンシュタインの人造人間が、ズタズタにちぎれて飛び散った。
 飛び散ったのは、血や肉片ではない。濃密な、霊気の飛沫だ。
 恐らく悪霊の類なのであろう怪物たちが、ノゾミの周囲で、まだ大量に群れている。
 吸血鬼が、ゾンビの群れが、狼男やジャックオーランタンが、夜闇の中から湧き出すように現れてノゾミを取り囲む。
 深夜。朽ちかけた建物の立ち並ぶ街。
 人間は1人も住んでおらず、その代わりのように怪物たちが大量に徘徊している。
 この怪物たちを、街から1歩も外に出さない。それが青霧ノゾミの、今回の仕事である。
 ハンターとしての仕事。
 あの海運商会に拾われた後、ノゾミは正式に契約を済ませ、ハンターになった。
 体内のマテリアルを、いくらかは効率的に使えるようにもなった。だが。
「だからって……この数を相手に、俺1人って……」
 息を切らせながら、ノゾミは呻いた。
 何体か倒しはしたが、怪物たちの数は、あまり減ったように見えない。もう1人ハンターが来る、という話は聞いているのだが。
 幸いにと言うべきか、怪物たちは街の外へと流れ出すよりも、ノゾミ1人への攻撃を優先させてくれている。
 ハンターズギルドの係員曰く、結界とも言うべきものが、この街全体を覆っているらしい。
 それはしかし、あまり強力なものではなく、複数の怪物が本気で破壊にかかれば容易に破られてしまうものであるという。実際ノゾミは、結界の外から簡単に街の中へと入る事が出来た。マテリアルの持ち主には影響を及ぼさない性質の結界であるようだ。
 ノゾミが力尽きて死ねば、怪物たちは次の標的を街の外へと求める事になる。吸血鬼が、案山子が、ミイラ男や狼男たちが、結界を破って外へ暴れ出し、近隣の村々を襲い始める。
 ひたすら生き延びて結界を守り、戦い抜く事。それがノゾミの仕事である。
 夜明けまで耐えるように。ギルドの係員は、そう言っていた。
 あの街の怪物たちは、夜明けの光と共に消えて失せる。それまで彼らを街から外に出さない事。それが君の、今回の仕事だと。
「それにしても……ハロウィンって、こっちの世界にもあるんだな……」
 ノゾミは呟いてみたが無論、そんな場合ではない。
 背後で、ジャックオーランタンが牙を剥いている。
 その牙が、ノゾミの細い首筋を噛み裂く寸前。
 閃光が走った。斬撃の閃光。
 ジャックオーランタンは細切れとなり、霊気の飛沫となって散り消えた。
「すまない、遅くなった」
 女の声、と言うより少女の声。
 軽やかな気配が、ノゾミの傍にふわりと降り立つ。
 舞い上がる髪が、ノゾミの視界をかすめた。きらびやかに月光を跳ね返す、銀色の髪。
「よく生きていてくれたな、青霧ノゾミ。お前が死んでいたら、父に会わせる顔がなくなっていたところだ」
「あ……ええと……」
 ちらりと、ノゾミは視線を動かした。
 黒いセーラー服と、長い白銀色の髪。
 その幻想的な取り合わせが似合う、小柄な少女である。たおやかな両手に、抜き身の長剣が握られている。
 聞き間違いではない。この少女は今、確かに、青霧ノゾミの名前を口にした。
「……どこかで、会ったのかな。俺ちょっと記憶が曖昧でさ、申し訳ないけど知り合いの顔とか忘れちゃってるかも」
「安心しろ。お前と私は、初対面だ」
 言いつつ少女が、ゆらりと細身を翻す。
 襲いかかって来た吸血鬼が1体、叩き斬られて霊気の飛沫に変わった。長剣が、一閃していた。
「お前の事は、父から聞いている。お前を連れ戻す事、それを私は父から任されたのだ」
「連れ戻す……って、どこへ?」
「言うまでもなかろう。ここではリアルブルーと呼ばれている世界へだ」
 死神のような案山子が、巨大な鎌を振り下ろして来る。ノゾミと少女、2人の首をまとめて刈り取る勢いだ。
 その斬撃を、少女は長剣で受け止めた。左右の繊手でしっかりと柄を握り、懸命に防御の構えを取る。
 火花が散った。
 長剣と大鎌が、刃こぼれを起こしそうなほどに激しく噛み合う。
「くっ……!」
 少女が、愛らしい歯を食いしばりながら後退りをする。防御の姿勢のまま、大鎌に圧されている。やはり腕力の勝負になると不利だ。
 ノゾミは、攻撃を念じた。
 無数の光の矢が、死神のような案山子を穿ち、切り裂き、粉砕する。霊気の飛沫が、キラキラと散る。
 大鎌から解放された少女が、そのまま軽やかに身を翻しながら跳躍した。
 狼男とゾンビがそれぞれ1体ずつ、背後からノゾミに襲いかかったところである。
 その2体の眼前に、少女は猫の如く着地していた。銀色の髪がふわりと舞い上がり、長剣がピタリと停止する。
 狼男が縦に、ゾンビが横に、両断されていた。真っ二つの屍が、血飛沫の代わりに霊気を噴出させながら萎び崩れてゆく。
「やるな……父から聞いていた通りだ」
 まだ大量に群れている怪物たちを、油断なく見据えながら、少女が言う。
 彼女の父親が、どうやらノゾミの事を知っているらしい。
「その、お父さんって……いや、それよりまず君本人の事なんだけど」
「奈義」
 少女は名乗った。
「奈義小菊という。聖導士だ……神に仕えて導きだの癒しだの、はっきり言って性に合わないのだがな。契約の結果、何故かそうなってしまった」
「俺も契約したら魔術師になった。目指したわけじゃないんだけど」
 そんな事よりも、とノゾミは思った。
 この少女の「奈義」という姓には聞き覚えがある、ような気がする。ノゾミの曖昧な記憶の奥底に、その奈義という単語は、不気味な虫のように貼り付いている。
「神などいない……リアルブルーにも、ここクリムゾンウェストにもな」
 襲い来るミイラ男とゾンビを、長剣で雑草の如く刈り捨てながら、小菊が呟く。
「いもしない神を心の中で捏造し、拠り所としなければ生きてゆけない……そんな連中を守り導く仕事を割り当てられてしまった。やっていられん、早急に帰るとしよう。青霧ノゾミ、お前を連れてな」
「君も……リアルブルーから、来たのか」
 魔女が杖を振り上げ、火の玉を発射してくる。
 それを光の矢で迎撃・粉砕しながら、ノゾミは言った。
「わけがわからないうちにハンターの仕事をやる羽目になった、と……俺と、同じだな」
「私がな、向いてもいない聖導士になってまでハンターの仕事をしている。その目的は2つ!」
 ジャックオーランタンの1体を叩き斬りながら、小菊は何やら怒っているようだ。
「1つは青霧ノゾミ、お前を発見して身柄を確保する事だ!」
「なるほど、俺は君に確保されちゃったのか」
「そして発見・確保すべきものはもう1つある。リアルブルーへの帰り道だ」
「それが2つ目の目的……って事は、要するに」
 魔女とミイラ男と吸血鬼を、光の矢の雨でまとめて穿ち裂きながら、ノゾミは少しだけ思案した。
「俺の身柄を押さえた、のはいいけれど……元の世界に戻れるわけじゃあないと、そういう事かな」
「こんな事態は想定外だ! 一刻も早く、お前を連れ戻さねばならんと言うのに!」
 怒りに任せて、小菊が長剣を叩きつける。
 大型のゾンビが1体、真っ二つになった。
「青霧ノゾミ! お前がな、こんな異世界などに来たりするから!」
「そ、そんな事言われてもな。俺だって好きで来たわけじゃないし……いや、もしかしたら自分の意思で来ちゃったのかも知れないけど。ごめん、何しろ記憶がないもんで」
「後頭部にでも一撃食らわせて、思い出させてやりたいところだが……その前にだ」
「そう、こいつらを片付けないとね」
 まだ大量に群れているハロウィンの怪物たちに、ノゾミは青く光る両眼を向けた。
 小菊が、左右の細腕で凛々しく長剣を構える。
 いつの間にか、背中合わせの体勢になっていた。


 背中合わせのまま、2人は力尽き、石畳に座り込んでいた。
 小菊の細い身体が、ノゾミのあまり広くない背中に、ぐったりともたれかかっている。
 東の空が、明るい。
 夜明けを告げる鐘の音が、どこからか聞こえて来る。
 怪物たちは1体残らず、夜明けの光を浴びて砕け散り、霊気の粒子と化し、キラキラと輝きながら漂い流れ散ってゆく。
 その様を見つめながら、ノゾミは呆然と呟いた。
「何だったんだろうな……こいつら」
「古の、聖人たちの霊魂だ」
 聖人、という部分で、小菊はいくらか言い淀んだようだ。無神論者らしい、とは言えるか。
「彼らが冥界より解き放たれる日、それが万聖節すなわち今日だ。リアルブルーにおいては、ハロウィンなどというわけのわからないお祭り騒ぎに押し潰されてしまっているのだがな」
 わけのわからないお祭り騒ぎも、あの人と一緒なら楽しかった。かけがえのない思い出だった。
 ノゾミはふと、そんな事を思った。
「清らかな聖人たちの魂が、ハロウィンの夜には異形の悪霊と化す……まあ吸血鬼やらカボチャやらに化けての乱痴気騒ぎは、ここクリムゾンウェストでも行われているようだからな。その俗臭に満ちた波動を浴びて、本来は清らかなはずのものが邪悪な怪物に変わってしまう。そういう事だろう」
 怪物の姿ではなくなった聖人たちの霊魂が、キラキラと散ってゆく光景を、小菊もぼんやりと見つめている。
「乱痴気騒ぎの終わった、万聖節の夜明け……彼らは、ようやく解放されたというわけだ」
「ハロウィンの乱痴気騒ぎ……俺は、結構好きだったけどなあ」
 ノゾミは言った。
「小菊ちゃんは、そういう思い出ないのかな? お父さん、いるんだろう。可愛いオバケに変装してさ、お父さんに向かってトリックオアトリート」
「……くだらん事を言っていると、本当に後頭部を殴るぞ」
 そんな事を言いながらも小菊は、ノゾミの背中にもたれたまま、しばらく動けそうにない。
 殴られる前に逃げるべきか、と思わない事もないが、力尽きて動けないのはノゾミも同様であった。


登場人物一覧
 Ka4377 青霧ノゾミ(人間、男性、26歳 魔術師)
 Ka5257 奈義小菊(人間、女性、14歳 聖導士)
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2015年10月29日

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