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『旅は道連れ時々温泉 』
サクラ・エルフリードka2598)&シレークスka0752

 クリムゾンウェストの赤い大地。
 そこには、様々な神や精霊、祖霊、英霊達が存在している。
 それゆえ神や精霊に纏わる伝承が残る土地や、エクラ教の教会などが各地に存在し、信心深い者達の心の拠り所となっている。
 サクラとシレークスも、そんな聖地や教会を巡る旅をしていたのだが……その途中、こんな噂を耳にした。
 とある山中の巡礼地。そこに向かう途中に、自然と湧き出した温泉があるらしい。
 高い場所にあるため眺めも良く、お湯も適温で、巡礼の疲れを癒すにはうってつけなのだそうだ。
 ――温泉。
 その一言で、二人の目がギラリと輝いた。
 温泉と聞いたからには行かずに済ます訳にはいかない。
 もちろん巡礼には行く。温泉はあくまでもそのついでだ。ついでなんですってば。
 そんな言い訳をしながら辿りついた山の上。
 聳え立つ木立の間から見える滝。
 岩の間から滾々とお湯が湧き出て、滝壺が天然の湯船になっていて――。
 遮るものが殆どなく、空と、山の上からの景色を一望できるこの場所に、2人はうっとりとため息をつく。
「ここがそうみたいですね……」
「おー! いい場所じゃねーですか!」
「景色も良いし、空気も美味しいし……お湯も気持ちよさそうです。早速入りましょうか?」
「賛成でぇーすーー!!」
 笑顔のサクラに万歳を返すシレークス。
 自然にできている温泉なので、当然更衣室などはない。
 濡れないように脱いだ衣服を樹に引っ掛けて、二人は仲良く温泉に滑り込む。
「あぁ……これはいいお湯ですね……」
「あーーー。暖けーですねぇ。生き返るってやつですわぁ……」
「ここまで結構坂道きつかったですものね」
「本当、山の上というだけのことはありやがりますねぇ」
「折角ですし、良く筋肉解しておかないとですね」
 例え百戦練磨のハンターといえども、歩き慣れぬ山道は疲労が溜まる。お湯の中で足を解すように揉んでいるサクラに頷き返したシレークスは、あっ! と思い出しだように短く叫んで、荷物の中から何かを取りだす。
「シレークスさん、どうしたんです?」
「お酒ですよぉっ。さ、け! 温泉ときたら酒に決まってるでしょーが」
「もー。シレークスさんったらすぐそれなんだから……」
 苦笑するサクラ。シレークスは見るからに清楚な聖職者なのに、中身はとにかく豪胆な上に酒好きでかなりの量を飲む。
 そこはやはり、流石ドワーフといったところなのだろうか。
 とはいえ、小柄であること以外はあまりドワーフらしさを感じないのであるが……。
 サクラがそんなことを考えている間も、ゴクゴクと喉を鳴らして酒を呷るシレークス。
 それがあまりにも美味しそうで、サクラも釣られて喉の渇きを覚える。
「シレークスさん、美味しいですか?」
「そりゃもう! この1杯の為に生きているーー! ってなやつですよぉ」
「いいですねえ。私にも分けて戴けません?」
「……!!? サクラはダメ! ダメにきまってやがります!」
「えー。いいじゃないですか、ちょっとくらい」
「ダメったらダメ! ずぇーーーーったいにダメですよ!!」
 ジト目を向けてくるサクラに、シレークスはこれでもかとダメを連呼する。
 ――彼女がここまで拒否をするのにも理由がある。
 サクラ本人は、酒は嗜む程度に飲めると思っているが……その実、ものすごく酒癖が悪く、酔うとケタケタと笑いながら脱衣を始める。
 まあ、それだけならよくある話だし、まあ目の保養で済ませることも出来るが、酔いが進むと他人を巻き込むので大問題である。
 シレークス自身、酔ったサクラに服を剥かれたのは一度や二度ではなく。あまつさえあーんなことやこーんなことや(閲覧削除)までされた経験がありまして。
 ええ。そりゃもう言葉では言い表せないほど酷かった……。
 ――そこまでしておいて何故本人に自覚がないかというと、寝て起きると綺麗さっぱり忘れていて、一切記憶に残らないからである。
 だからこそ、性質が悪いとも言えるが。
 まあ、今は温泉に入っているので、剥かれる心配はないんですけどね!
 でもね! それだけじゃすまないから!! 大惨事確定だから!! ダメ!! 絶対!!
 ――気楽に酒飲みてーなんていいやがって、こっちの身にもなれってんです。
 内心毒づきつつ、杯を空けるシレークス。彼女が動く度、お湯にぷかぷかと浮いたたわわな双丘が揺れて……サクラは己の身体を見下ろしてため息をつく。
 シレークスはの胸は、そのほっそりとした身体に比べると驚くくらい大きく、ふんわりしている。丸いのは胸だけでなく、くびれるところとふくらむところがはっきりした身体で、男性のみならず、女性でも憧れてしまうようなスタイルの良さを誇っている。
 それに引き換え、サクラは小柄な上に身が薄い。勿論、戦う為の筋肉はついているのだが、女性らしい丸みというものはないような気がする。
 シレークスに聞けばきっと『無駄な肉がついていない、しなやかな良い身体』と言うだろうし、艶がある陶器のような滑らかな肌は、誰しも羨ましいがるほどだと思うのだが……。
 そういったことは、本人には分からないものだし、サクラも年頃の女の子なので。
 欲しいんですよ! 丸みが! もっと分かりやすく言うと胸が!!
 それじゃなくてもささやかで、製造工程を間違えて膨らまなかったケーキみたいな胸が、覚醒すると更に削れて壁ですよ、壁!! 絶壁!! まっ平ら!!
 どうしてこうなのか……と己を呪うが、そうしてみたところで胸が大きくなる訳でもない。
 胸が膨らむように色々努力はしているけれど実る気配もないし。
 その上で、自分とさして変わらぬ体格であるシレークスがこうも肉感的な身体を持っていると、どうしても嫉妬の感情が頭を擡げて……。
 ――ちょっとだけ、悪戯しちゃおうかな。
 そんな感情がむくむくと沸いてきて、サクラの手がシレークスの身体に伸びる。
「えいっ! ……わぁ。相変わらずすごい胸ですねえ」
「ちょっ!? こら! 何しやがりますか!」
「そりゃあ見ての通り、シレークスさんの胸触ってるんですよ」
「だから何で触ってるんだって聞いてんですよー!」
「羨ましいなー。分けて貰えないかなーと思って」
「……残念ながら分けることはできねーですよ?」
「そうですよね〜。はぁ。どうやったらこんなに大きくなるんですかねぇ」
「気づいたらこうなってたですし、聞かれても困……っていうか、揉むんじゃねぇですよ! くすぐってーです!」
「いいじゃないですか、減るものじゃなし。むしろ増えるんじゃないですか?」
「ちょ……っ。サクラ、やめ……! ……酒飲んでねーですよね……?」
「飲んでないですよ? わー。胸って重たいんですねぇ。やわらかくって気持ちいいなー」
「だ、ダメですよサクラ。やめるです……っ」
 サクラの手の中でむにむにと形を変える豊かな胸。シレークスから甘い声が出始めて、変な雰囲気になって……。
 シレークスは慌ててサクラの手を引き剥がして身を離す。
「だあああああ!! ストップ! いつまでも触ってるんじゃねえです!」
「えー。気持ちいいですのに。残念」
「これ以上触ったら金取るですよ!」
「何ですか。その聖職者にふさわしくないお言葉……!」
「サクラが変なことしやがるからでしょうが! わたくし、のぼせそうだから上がるですよ」
「そうですねえ。十分堪能しましたしそろそろ私もあが……」
 言いかけてぴきーんと固まるサクラ。何事かと彼女の目線の先を見たシレークスもまた、目を見開いて固まる。
 そこには、複数の男性……身なりからして巡礼者であろう者達が、鼻血を流しながらこちらを見つめていて……。
「きゃああああああああああああ!? いやああああああああああああああ!!」
「す、すみません! わざとじゃ……!」
「わざとでもわざとじゃなくてもいいからおめーら殺されたくなかったら回れ右しやがれです! こっちみるんじゃねえです!!」
「いやああああああ! もうお嫁にいけないいいいいいい」
「それはこっちの台詞だっつーんですよバカああああああ!! サクラ! おめーのせいなのです!」
「えええええ! シレークスさんだって喜んで入ってたじゃないですかあああああ!! 流石に男性が来ることまでは予想できませんよおおおおお!!」
「うるせーーーですよ!! 責任者でてこいってんですこのやろーーーー!!」
「あ、あの本当すみませ……」
「いやあああああ!! 見ないでえええええ!!」
「おめーら覚えてやがれよおおおおお!!」
 鼻血を流しながらぺこぺこと頭を下げる巡礼者達と泣き叫ぶサクラ、そしてガチギレするシレークス。

 二人の温泉での息抜きは、とんでもない嵐を巻き起こしそうだった。


 余談:うっかり2人の入浴を覗いてしまった巡礼客達は、この後シレークスさんからがっつり正座でお説教されたそうです。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka2598/サクラ・エルフリード/女/15/平たい胸族
ka0752/シレークス/女/20/酒豪の姐さん


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。

二人の賑やかな温泉の光景を書かせて戴きましたがいかがでしたでしょうか。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
野生のパーティノベル -
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ファナティックブラッド
2015年10月29日

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