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『 サバトで女子会! 』
日浦・知々田・雄拝ka2796)&Non=Beeka1604


 右を見ればカボチャのお化け、左を見ればドラキュラ伯爵。
 ハロウィン当日の大通りは、まさに狂乱状態だった。
「Nonちゃんっ! ほら、あっちの狼男っ!!」
 日浦・知々田・雄拝がNon=Beeの腕をぎゅっと握りしめる。
「ふふっ、ちぃちゃんたら珍しいわね。素敵な人がみつかったのかしら?」
 口元に手を当てて、Non=Beeが品よくくすくす笑った。
「えっ、だってぇ、ほら! もっふもふでムッキムキよぉ!? 腕とか肩とかすっごくたくましいのに、腰がしゅっと締まってて、ぴったりパンツがすっごくセクシーだと思わないッ!?」
 めっちゃ見てる。
 でも、見てるだけ。鍔の大きな魔女の帽子の陰から。
 知々田の今日の衣装は、胸元が大胆に開いたカットソーに、深いスリットの赤みの強いオレンジのドレス。歩みを進めるごとにちらちらのぞく太腿はきゅっと締まり……というには、若干力強い。
 そんな知々田は、黒いレースを所々にあしらった真っ赤なドレスに身を包んだNon=Beeの背中に隠れるようにして、狼男をチェックしているのだ。

 Non=Beeはたおやかな微笑のまま、値踏みするように鋭く狼男の全身をスキャン。
「ちぃちゃん、声かけていらっしゃいよ」
「えっ!!」
 悪戯っぽく帽子の鍔を指で持ち上げ、Non=Beeはルージュを引いた唇を意味深に尖らせた。
「む、無理よぉ、わかってるくせにぃっ! もう、Nonちゃんのイジワルっ!!」
 知々田はNon=Beeの背中に顔を押し付けて、嫌々をするように首を振る。
「ごめんなさいね? でもちぃちゃんたら、あんまり可愛いんですもの」
 Non=Beeは背中を押されて、ころころと笑いながら通りを歩いていく。


 セクシーなドレスを纏う身体は、男の物。
 けれど包み込んだ心は、誰よりも艶やかに誇り高く。
 ふたりは魂の姉妹<ソウルシスター>、強い絆で結ばれた漢女<オトメ>たち。
 可憐な姫君に嫉妬して毒りんごを配るような魔女ではなく。
 在り様そのものが毒花と知りつつ、いっそそれなら甘い毒で魅了せんと、日々いっそう艶やかに咲こうとする、気高き魔女達なのである。
 とはいえ、今日は行き交う人々もびっくりする様な仮装をしているので、ほとんど目立たない。
 お陰で素敵な男性の観察にももってこいだ。

「でもね、素敵だと思ったら声ぐらいかけちゃいなさいよ」
 Non=Beeは腕にしがみ付いている知々田の手を、あやすように軽くポンポンと叩いてみる。
 だが知々田は俯いて首を振るだけ。
「無理よぉ、恥ずかしいんだもの!」
 ドワーフにしては長身で、すらりとした美男子という風情の知々田だったが、極度の人見知りなのだ。姉と慕うNon=Beeから色々学んではいるが、つい傍にいると頼りにして甘えてしまう。Non=Beeが優しく諭しながらも甘えを許してくれるのも心地よい。
「ちぃちゃんてば、もっと自分に自信を持っていいのよ?」
 Non=Beeの眼差しは、慈愛に満ちて穏やかだ。
 が、それが突然、帽子の陰で鋭く光る。
「やだわぁ……あのフランケンシュタインの怪人、超こ・の・み!」

 真っ直ぐ見つめるのは、通りの向こうにいる頭にネジの付いた大柄な男だった。
 周囲の人達よりひと際長身で、鍛え抜かれた胸筋が大きく破れたシャツから覗く。Non=Beeのお眼鏡にかなう、見事な胸板だった。
「うふふ、そちら、とっても良くお似合いよ?」
 Non=Beeはそう言って、傍を通りながら軽くウィンクしてみせた。
 体格は立派だが、常日頃の研究と努力の結果、Non=Beeは一見して「大柄な女性」としか見えない仕草を身につけている。
 フランケンシュタインはどうやら少しウブだったようで、大きな身体を屈めて照れ笑いを浮かべた。
 Non=Beeはトドメとばかりに、投げキッス。
 その様子を知々田はくっついたまま、目をマジマジと見開いて眺めていた。

「えっと……Nonちゃん、フランケンさんとデートなら、行っていいのよ……?」
 知々田がおずおずと顔を見上げると、Non=Beeが明るく笑う。
「今日はちぃちゃんとのおうちデートが先約よぉ。お買い物を早く済ませてしまいましょう?」
「……うん」
 知々田はほっとしたように笑顔を浮かべた。



 大荷物を抱えて魔女たちはようやく帰宅した。
「Nonちゃん、お疲れ様! さ、入って入って!」
「お邪魔しちゃうわね。あら、可愛いわぁ!」
 Non=Beeが歓声を上げた。
 扉を開けた知々田の部屋はファンタジーワールドだったのだ。
「まあ、ランタンも凝ってるわねえ。あら素敵、蝋燭をつけると後の壁に文字が映るのね!」
「うふふ、作ってるうちに楽しくなっちゃってぇ。どんどん凝っちゃったのよ」
 Non=Beeのびっくりする顔が見たくて、カボチャのランタンも、蜘蛛の巣柄のレースも、部屋を埋め尽くすぐらいに用意したのだ。
「ちぃちゃんてば本当に器用よねえ。もっとそういうところもアピールしていけばいいと思うわ」
 カボチャランタンを軽くつついて、Non=Beeが笑う。

 それからはふたり揃って、仲良くキッチンへ。
 知々田お手製のフリルのエプロンもバッチリ決まっている。
 山のように仕入れた食材を、腕によりをかけて料理していくのだ。
「お料理は大好きだけど、Nonちゃんと一緒だともっと楽しいわね」
 鼻歌を歌いながら、知々田は鍋に湯を沸かし、カボチャの皮を剥く。
「あら、嬉しいわ。楽しいのは私だけじゃなかったのね」
「もちろんじゃなぁい!」
 Non=Beeは玉葱の皮を剥きつつ、知々田の横顔をそっと見やる。
 人見知りで、優しくて、人を喜ばせるのが大好きな可愛いコ。誰よりも幸せになって欲しいと思う。
(でもさっきの狼男は、顔の相があまり良くないのよねぇ)
 酒豪のNon=Beeは、飲み代を持ってくれる心意気の殿方を見抜くのが上手い。
 その観察眼をもって選別すると、知々田が惹かれる相手は時々危なっかしく思えるのだ。
 経験を積むのも大事と一応はけしかけてみるが、知々田が行けないのをどこかほっとしてもいる。
 一夜限りの飲み相手と割り切るNon=Beeと違って、知々田は情が深い性質だ。たぶん、遊びのお付き合いなどとてもできないだろう。
(ちょっと過保護なのかしら……? でも、あたしの可愛い妹に酷いことしたら許さないんだから!)
 ゴキャ。
 生のカボチャが鈍い音を立てる。
「Nonちゃん、どうしたの!? 怪我はない?」
 知々田は目を丸くしてびっくりしつつも、Non=Beeの手をすぐに布で拭いてくれた。
「ごめんなさいね、あたしったら考えごとをしてて」
 おほほと笑いながらNon=Beeは握りつぶしたカボチャを片付け、今度は玉葱を刻み始める。
(こんなに可愛いちぃちゃんだもの、良い殿方に出会って幸せになるべきなのよ……)
 ぽろり。
 目の端から不意に涙がこぼれた。
「やだっ、Nonちゃん! ほんとに大丈夫!? 窓開けるわね!」
「大丈夫よ、ちぃちゃん。でも有難う」
 Non=Beeはまたもほろりと涙をこぼした。


 カボチャのサラダにポタージュ。真っ赤なトマトのジュレに、真っ黒なイカスミのパスタ。血の滴るようなローストビーフに、ブラッドオレンジのソースを添えて。その他にも沢山の料理が並ぶ。
「ちょっと作りすぎちゃったかしら?」
 賑やかになったテーブルを前に、少し困ったようにNon=Beeは眉を寄せる。
「ええっと……ダイエットは明日から、ってことにしちゃいましょ?」
 カボチャのプディングをオーブンから取り出し、知々田が誤魔化すように笑った。
「うん、今日は特別よ! ハロウィンは魔法の夜だもの。さ、Nonちゃん、座ってちょうだい!」
 知々田はとっておきのワインを取り出して見せた。
 Non=Beeが嬉しそうに口元に手を添えて、いそいそと席に着く。

 真っ赤なワインが入ったグラスに、カボチャランタンから漏れる光が妖しく揺れる。
 ふたりの魔女はグラスを軽く合わせ、何がおかしいのかくすくす笑い出した。
「ハロウィンの夜、魔女の女子会。魔女子会ってところかしら?」
「ねえちぃちゃん、もし素敵なお相手ができても、偶にはこんな風にあたしにつきあってね?」
 Non=Beeの言葉に、知々田が顔をあげる。
「なに、突然。Nonちゃんたらそんなこと……」
「もしもの話よ、ああもう、そんな顔しないで頂戴な?」
 手を伸ばして頬に触れると、知々田も笑顔を取り戻す。
「Nonちゃんこそ、もてるのに! とにかく、乾杯しましょ! お料理が冷めちゃうわ」
「そうね、乾杯しましょ。素敵な夜に!」
「いつか出会う、素敵なイケメンに!」
 ふたりは一緒に噴き出す。
「もう、やだあ! やっぱりさっきのフランケンシュタインさん、拉致ってくればよかったかもよ!?」
「ちぃちゃんたら、結構ダイタンね? いいのよ、同じ街にいるんだから。次に見つけたら絶対ゲットしちゃうわ」
 ワインを勢いよく飲み干し、ご機嫌になったNon=Beeが悪戯っぽく目を細めた。
「すごいわ、Nonちゃん……やっぱり尊敬しちゃう……!」

 誰も知らない、魔女たちの秘密のサバト。
 妖しく咲き誇る肉食女子達の宴は、まだ始まったばかりである。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2796 / 日浦・知々田・雄拝 / 心の女子 / 20 / 細マッチョ狼男派】
【ka1604 / Non=Bee / 心の女子 / 25 / 胸板フランケン派】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ハロウィンをちょっと過ぎてしまって無念ですが、ウツボカズラ・シスターズの宴をお届けします。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
ゴーストタウンのノベル -
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ファナティックブラッド
2015年11月05日

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