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『―― 楽しい楽しい、カボチャ退治はいかがですか? ―― 』
猫宮 京香(ib0927)

 季節的にハロウィンイベントが様々な場所で行われている。
「町がオレンジ一色ですね〜、ふふ、今日が特別って気がします」
 普段はアヤカシ退治などを行う彼らも、今日ばかりは町の浮ついた空気にそわそわしていた。
「やっぱり、ハロウィンの雰囲気はいですね〜♪ 見ているだけでも楽しくなってきます」
 猫宮 京香(jb0927)はニコニコと笑みを浮かべながら、町の中を飾るカボチャの置物を見る。
「そうですね。普段は気を張ってますし、こういう時くらい羽目を外してもいいかもしれません」
 京香の夫である、真亡・雫(ja0432)は穏やかな笑みを浮かべながら言葉を返す。
「ハロウィンということもあるでしょうが、至るところにカボチャがありますね……」
 雪切・透夜(jb0135)も周りを見渡しながら呟く。
「けれど、不思議ですね〜。歓声というより、悲鳴に近い声が聞こえてきますよ〜?」
 ふたりが耳を澄ますと、確かに「きゃあああ」とか「助けてえええ」などの声が聞こえてくる。
「きっと、ハロウィンの催し物なんでしょうね〜」
 京香がおっとりとした口調で呟いた時、目の前にカボチャに扮した何かが現れた。
「キスしてくれなきゃ悪戯スルヨ!」
「……は? いやいや、おかしいですよね? ハロウィンってお菓子か悪戯じゃ……」
 透夜が目を瞬かせながら、考え込むように呟く。
「キスしてくれなきゃ悪戯スルヨ!」
 目の前のカボチャは先ほどと同じ言葉を繰り返し、雫は京香を後ろに下がらせ、透夜を前にズイッと差し出す。
「ちょっ、いやいや! 何で僕が差し出されているんですか!?」
「目の前のカボチャがキスをお望みのようだから」
「だったら雫くんでもいいですよね!?」
「僕はほら、妻がいるから」
「今日は来てませんけど、僕にだっていますよ!?」
「キスー、キスー、キススススススス」
 ふたりのイケメンぶりにカボチャは興奮しているらしく、既に『悪戯』という結論はカボチャの中からは消え去ってしまったらしい。
「つまり、きみは僕に妻の前で、そう妻の前で、他の人(カボチャ)にキスをしろと言うんだね」
「ぐぅっ……!」
「コフー、コフー……」
「あらあら、興奮して口や鼻から煙が出てますね〜♪」
 京香はにっこりと微笑みながら、穏やかに笑う。
「うううう、目の前はカボチャ、カボチャ……!」
 透夜は心の中で泣きながら、カボチャのほっぺにキスをする。
「キャアアアア、キスされた! もっとしてくれないと殺すよ!?」
「脅し!?」
「き、君たち何をしているんだ! ここはカボチャのアヤカシが大量発生して大変なんだぞ!」
 見知らぬ男性が3人に教えてくれて、目の前のカボチャがアヤカシであることを知る。
「なんだ、仮装じゃないんだ……だから無茶なことを言われると思ったよ」
「実行したの僕ですけどね!? 僕の唇が……っ!」
 透夜は愛用の武器を構え、目の前のカボチャに恨みをぶつけるかのように攻撃を仕掛ける。
「まあまあ、せっかくのハロウィンなのにアヤカシが大量発生だなんて……」
「これは放っておけないね」
「ええ、悪戯すぎるカボチャさんはお仕置きですよ〜♪」
「……僕がキスする前にお仕置きお願いしたかったです」
 がくっとうなだれながら、3人はそれぞれアヤカシ退治のために行動を開始したのだった。

※※※

「キャハハハハハッ、イケメンイケメンイケメン――!」
「……やれやれ、煩悩まみれのアヤカシだね。こんなアヤカシ見たことないよ」
 雫は呆れたように呟くと、高らかに笑い声をあげるカボチャを切り刻む。
 1体1体は大したことないのだが、如何せん量が多すぎる。
「ハロウィンだからって、これはサービスしすぎでしょう? ハロウィンにカボチャアヤカシ……縁起がいいのか、悪いのか――……いえ、僕にとっては縁起が悪いですね」
 唇を奪われた(むしろ奪わせた)恨みをこめて、透夜はカッと目を見開き、攻撃を行う。
「気合が入ってるねぇ、まぁ、僕達にも被害が来そうだから頑張るけどさ」
「うふふ、あなたってばうっかり悪戯されないように気を付けて下さいね〜?」
「大丈夫だよ、悪戯をされるなら愛する奥さんにしてもらうから」
「ちょっと――ッ! そこのふたり、もう少し真面目に戦ってくれませんかねぇ!?」
 透夜の悲痛な叫びに、ふたりは少し照れあいながら戦闘に参加するのだった。

※※※

「ヒドイ! 私とのコトは遊びだったノネ!?」
「カボチャと遊んだ記憶なんてないよ!」
 透夜は泣きまねをするカボチャに太刀を振るいながら答える。
「……っ!?」
「アナタ、私好みダワァ、ちょっと向こうで――……」
「何もやらないよ!」
 オカマ風の口調をするカボチャを切り伏せ、透夜は叫ぶ。
「もう20体は倒したと思うんだけど……」
 住人達を怯えさせないように、3人は目立たない場所にカボチャアヤカシを引き込み、そこで
退治をしていた。
「雫くん達はどうかな?」

※※※

「ヒドイワァッ! この子はアナタの子供なのにぃっ……」
「あらあら、カボチャアヤカシの中では昼ドラが流行っているんですかね〜?」
「僕、カボチャとの間に子供を持った覚えなんてないよ……」
 楽しそうに笑う京香と、呆れながらカボチャアヤカシを切り伏せる雫。
「テメェにカボ美はやらねぇ! カボ美を欲しけりゃ俺を倒して――ぐはっ!」
 チンピラ風カボチャアヤカシに絡まれ、雫は冷めた表情のまま斬る。
「ワタシ、アナタなら彼を乗り越えてやってきてくれると――……キャアアッ」
「あらあら、あなたってば可哀想なことを……」
「いやいや、カボチャアヤカシの世界の昼ドラに付き合う気はないからね?」
 雫は苦笑しながら、京香に言葉を返す。

※※※

 そして、数時間が経った後、ようやく町を襲撃してきたカボチャアヤカシをすべて殲滅することが出来たのだった――……。

「せっかくのハロウィンなのに、散々な目に遭いましたね……まぁ、おふたりがいたので、連携も取れてアヤカシ退治には困りませんでしたけど……」
 透夜は苦笑しながら町を歩く。
「けど、こういうハロウィンも楽しいですし、たまにはいいんじゃないですか?」
「……楽しいかどうかはともかく、来年は遠慮したいね」
 京香の言葉に、雫も困ったように言葉を返す。その言葉には透夜も賛成らしく、うんうん、と頷いていた。
「ふふっ、そういえば運動をしたのでお腹が空きましたね〜、何かご飯でも食べに行きましょうか」
「そうだね、予定外の運動にちょっとお腹空いたかな」
 雫が呟いた時、ちょうどタイミング良く食事処を見つけ、3人揃って店内に入るのだが……。

※※※

「こ、これは……」
「まあまあ……」
「かぼちゃ退治第2幕、ですかね」
 上から雫、京香、透夜の順番だ。
 入った食事処ではハロウィン特別仕様メニューになっており、すべてカボチャが材料となっているものばかり。
「ふふ、此方はかなり美味しそうです」
「確かに。こういうカボチャ退治なら、僕も大歓迎だね」
 カボチャの煮物を食べながら、雫と透夜が笑顔で呟く。
(うふふ、こういうふたりを見るのは楽しいですね〜。今度、私もふたりを喜ばせられるように、何か美味しいカボチャ料理を作ってあげましょうか〜)
 しかし、この時、雫と透夜は気付いていなかった。
 今回のカボチャアヤカシ退治を再現した、京香の料理に数日後見舞われることに――。
 やけにリアルなそれは、さすがのふたりも言葉にならず、ニコニコと笑顔の京香を前に『食べない』という選択肢はなく、カボチャアヤカシ風、カボチャ料理というなんとも意味の分からない料理を平らげることになったのだった――……!


―― 登場人物 ――

jb0927/猫宮 京香/女性/25歳/弓術師
ja0432/真亡・雫/男性/16歳/志士
jb0135/雪切・透夜/男性/16歳/騎士

――――――――――
猫宮 京香様
真亡・雫様
雪切・透夜様

こんにちは、今回はご発注頂き、ありがとうございます!
ハロウィンをもとにした内容でしたが、
いかがだったでしょうか……?
気に入って頂ける内容に仕上がっていますと幸いです。

今回は書かせていただき、ありがとうございました!
また、機会がありましたら宜しくお願い致します。

2015/11/20
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水貴透子 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2015年11月20日

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