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『大人の階段、上ってみました? 』
華桜りりかjb6883)&桜雨 鄭理ja4779)&ミハイル・エッカートjb0544)&ゼロ=シュバイツァーjb7501)&アルドラ=ヴァルキリーjb7894


 華桜りりか(jb6883)は、この度めでたく二十歳の誕生日を迎えました。

「だから、今日からはもうお酒も飲めるの、ですよ……?」
 リビングの一部を改造して作ったミニバーの奥には、いつの間にか増えた多種多様な酒がずらりと並んでいる。
「今までは、皆さんが楽しんでいるのを眺めているだけだったの……」
 しかし今日からは堂々と、このカウンターに座ることが出来るのだ。

 というわけで、本日はりりかの誕生祝い及びハロウィンに便乗した初飲みパーティ。
 彼女と仲間達が住むアパート風雲荘のリビングを綺麗に飾り付け、お菓子とケーキを用意して。
 照明は少し明るさを落として大人っぽいムードに、BGMは静かなジャズが良いだろうか。

 招待を受けたのは、いずれも酒飲みの先輩である桜雨 鄭理(ja4779)、ミハイル・エッカート(jb0544)、ゼロ=シュバイツァー(jb7501)、アルドラ=ヴァルキリー(jb7894)、そして門木章治(jz0029)の五人だった。

 さて、お集まりの皆さんにここで質問です。
 あなたは「りりか嬢が酒を飲める歳になった」という、この事実を信じられますか?

「りんりんが酒やと……?」
 ゼロは何か不思議なものでも見るように、りりかを上から見下ろした。
「嘘や、そんなの認めないりんりんはまだ子供のはず……!」
 だってほら、まだこんなに小さいんだからと、ゼロは自分の腹の辺りにある頭に手を乗せる。
 でもちょっと待って、りりかさんいくら何でもそんなに小さくないから。
「ゼロさん? 足元が浮き上がっているの、ですよ?」
 りりかは背伸びしながら手を伸ばし、宙に浮いたゼロの耳を軽く引っ張る。
「いーででで! 耳がもげるで!」
「ゼロさんは、おおげさなの……」
 悪ふざけばっかりしてると、本当に本気で思いっきり引っ張っちゃうからね、しないけど。
「それはともかく、祭やな!」
 招待状も受け取った気はするけれど、それよりも。
 祭の匂いを嗅ぎ付けて、ソースの香りと共に屋根裏部屋から沸いて出た次第。
「で、今日はりんりんをワッショイすればええんか。歳を誤魔化しとるんは確実やけど誕生日が来たのは事実やしな」
「あたしはお神輿ではないの……ごまかしてもいないの、ですよ?」
 りりかは生年月日が記された学生証を見せる。
 それを見る限り、確かに今年で二十歳――しかしそれでもゼロはその事実を認めようとはしなかった。
「嘘や、りんりんが大人になったやなんて俺は認めへんで! きっと嘘ついとるんや、学生証の偽造なんて簡単やしな!」
 しかし、頑なに否定するゼロの肩をミハイルが叩く。
「気持ちはわかるがな、ゼロ」
 現実を見ようぜ。
「どんなに可愛いがっていても、子供はいつか大人になるもんだ」
 自分の手を離れてしまうことを思うと少し物悲しい気分にもなるが、ここは新たな門出を精一杯に祝ってやろうじゃないか。
 ほら、今日のりりかは気分も一新、大人の装いで……大人の……あれ?
「おかしい、いつもと何も変わらない、だと……?」
 フリルたっぷりの淡いピンクのエプロンドレスと、胸元で何重にも重なったレースの飾りが揺れる白いブラウスは、どちらも少し古風なデザインが可愛らしい。
 頭には勿論お馴染みのかつぎをふわりと被っているが、そこから覗く髪には大きなリボンが結ばれていた。
「りりか、本当に二十歳になったのか?」
 現実を見た結果、ミハイルは認識を改める。
 前言撤回、りりかに酒はまだ早い。
「ミハイルさんまでそんなことを言うの、です?」
 かつぎを握り締めたりりかは、ぷうっと頬を膨らませる。
「まあ二人とも、からかうのも程ほどにな」
 その様子を見て、鄭理が仲裁に入った。
 が、彼もまた目が笑っている。
「せっかくの誕生祝いを血で染めたくはないだろう?」
「んむぅ、てーりんさんまで……」
 その一言を聞いて、りりかはますます頬を膨らませた。
 しかし勿論、本気で怒っているわけではない。
 そんな軽口を叩けるのも、互いに気を許し、信頼する間柄だからこそ。
「だが親しき仲にも礼儀あり、だ」
 アルドラが、ミニバーのカウンターに一升瓶をドンと置いた。
「余興はそれくらいにして、祝いの宴を始めようではないか」
 中身は強めの日本酒、これは酒に強い呑兵衛への手土産だ。
 りりかには弱めの酒をいくつか用意してみた。
「初めて飲むには、これくらいが良かろう」
 それに前もって贈っておいたワインもあることだし。
 鄭理もまるでジュースの様に甘くて軽いワインや、数々の洋酒を用意していた。

 勿論それとは別に、プレゼントもある。
「りりか嬢、誕生日おめでとう」
 鄭理は淡い桜色の薄布が張られた扇子を手渡した。
 開いてみると、薄布には桜の花びらが舞い、白い中骨にも桜の透かし彫りが入っている。
 下がりの紐には房の代わりに、桜の花びらを手鞠のように丸く纏めたポンポンが二つ。
 全体的に繊細で柔らかな作りで、間違ってもそれで人を叩こうなどという気は起きないだろう。
「とても可愛いの……ありがとう、です」
 りりかはそれを胸に押し抱くように両手で包み、嬉しそうに微笑む。
 その頭を軽く撫で、鄭理は門木にも小さな包みを差し出した。
「それから、こっちは先生に」
 中身は薄くグレーに色付いたカラーレンズの伊達眼鏡、デザイン重視で五歳くらい若く見える――かもしれない。
「俺に?」
 不思議そうに首を傾げる門木に、りりかが頷く。
「今日は章治兄さまのお誕生祝いも一緒なの」
「……聞いてないぞ……」
 門木は周囲を見回すが、どうやら聞かされていないのは自分だけだったようだ。
「さぷらいずなの、ですよ?」
 りりかが悪戯っぽく微笑みながら、大きなチョコケーキを差し出す。
「お祝いしましょう、です」
 見た目はごく普通の誕生日用のデコレーションが施されたホールケーキだが、どっしり重いスポンジにはたっぷりのラム酒が染み込ませてあった。
 そして贈り物はトパーズをあしらったシルバーのネクタイピン。
「二人とも、ありがとう」
 だが勿論、プレゼントを用意していたのは二人だけではない。
「りりかには先にワインを贈ったが、贈り物はいくらあっても良いものだろう」
 アルドラはりりかの髪に桜の髪飾りを留めてやる。
「まだ付き合いこそ短いが、私の大事な妹であることに変わりはないからな……おめでとう」
「ありがとう、なの……アルドラ姉さま」
 姉妹となってまだ間がないせいか、りりかは少し照れたようにその名を呼ぶ。
「門木にも日頃から科学室で世話になっている。あのヨレた白衣も味ではあるが、たまには新調しても罰は当たらぬだろう?」
 ということで、まっさらな白衣を贈呈しよう。
「そうだな、ありがとう」
 言われてみれば、仕事着に関しては汚れていなければ良い、くらいにしか思っていなかった。
 ボタンの取れていない白衣は久しぶりかもしれない。
「取れたら取れっぱなしか。細かい作業は得意なくせに、裁縫は苦手なのか……それとも面倒なのか?」
 苦笑いを浮かべつつ、ミハイルが尋ねる。
 だが答えはそのどちらでもなかった。
「どうせ前は開けっ放しだし、なくてもいいかな、と……」
「無頓着なだけか、章治らしいな」
 頼めば付けてくれる相手がいないわけでもなかろうにとニヤニヤしながら、ミハイルは抹茶色の地に金粉を散らした和紙で包んだ杏露酒を手渡す。
「ちょいと洒落たペアのグラス付きだ、いつか二人で家飲みするときに使えよ」
「二人?」
 誰の事かと首を傾げる門木は、恐らく素で「わかってない」のだろう。
 やれやれと肩を竦め、ミハイルはりりかに向き直った。
「おめでとう、酒が飲める歳になった記念だ」
 手渡したのは、ピンクと白のセロファンで可愛く包んだ発泡性のシードル――リンゴ酒だ。
 つまみ用に、籠に入った一口サイズのチョコも添えてある。
 こちらもシードルとお揃いの素材で個別にラッピングされていた。
「ありがとう、です。うれしいの……」
 門木からはジャスミンの工芸茶とガラスのポットを。
 9月19日の誕生花は色々あるが、今回は茉莉花、つまりジャスミンを選んでみた次第。
 そしてジャスミンならお茶だろうという安易な連想だった。
 工芸茶とは、茶葉を固めたものに湯を注ぐと中から綺麗な花が現れる「見て楽しめるお茶」のことだ。
「さっそく作ってみるの……」
 透明なポットに大きな塊を入れて湯を注ぐと、ジャスミンの香りがふわりと鼻をくすぐる。
 暫くすると固く巻かれた茶葉の塊がゆっくりと開き、中から鮮やかに紅い千日紅の花が現れた。
「きれい……」
「まるで水中花のようだな」
 姉妹が見守る中、やがてその周囲を取り囲むように白いジャスミンの花が開き始める。
 このままずっと飾っておいても良いと思えるほど、それはカラフルで美しかった。
 でも、これは目で楽しむと同時にその味わいをも楽しむもの。
「よっしゃ、俺がその茶に合う料理をどーんと作ったるで!」
 それがゼロのプレゼントという事で、次々出て来る宴会料理。
 あれ、今日はりりかさんの初飲みパーティだった筈では……
「そんなん、流れでそのうちどうにかなるやろ」
 ゼロとしては、このまま流れて忘れ去られても一向に構わない。
 いや、寧ろそれが狙いか。

 しかし勿論、そんな流れにはならなかった。
「主役の意向は尊重するものだ」
 まずは予備知識からと、てーりん先生の講義が始まる。
「それにいくら撃退士の胃腸が丈夫に出来ていても、酒ばかりを胃に流し込むのは良くない」
 食事をしながら酒を飲むのは胃の粘膜をアルコールの刺激から守る為だ。
 メニューは体内でアルコールを分解する時に失われる蛋白質を補うものや、ミネラルやビタミンが豊富なものが望ましい。
「チョコはよくないの、です?」
 恐る恐る尋ねたりりかの髪を撫で、てーりん先生は笑った。
「いや、大丈夫だ。ナッツと組み合わせた方が良さそうな気はするがな」
「ふむ、なるほど……です」
「酒に酔うという事はつまり、アルコールによって脳が麻痺するということだ」
 先生の授業は続く。
「要するに馬鹿になるということだな」
 身も蓋もないが、確かにその通り。
「適度に麻痺させれば本能や感情を司る部分の働きが活発になって、気分が良くなる。俗に言うほろ酔い加減だな」
 この程度で止めておくのが、酒との上手な付き合い方だ。
「それ以上になると脳の機能障害によって人格が崩壊し、果ては生命維持機能まで失われて死に至る」
 脅かすわけではないが、本当の事だ。
「よく言うだろう、酒は飲んでも飲まれるなと」
 飲まれないように己を厳しく律しつつ、適度に楽しむべし。
「んむぅ、なんだかちょっと、むずかしそうなの……」
「そんなことはない、鄭理は頭が固すぎるのだ」
 アルドラが早速一杯ひっかけながら笑う。
「それに妹分のこととなると、少々入れ込みが過ぎるところもあるか?」
「そんなことは……」
 ない、とは断言できない気もするが。
「要は楽しく飲めば良いのだ。こうして大勢で飲めば自然に会話も弾むし、合間に食事も摂る。酒ばかりを延々喰らって、その結果飲みすぎて救急車……などということにもなるまい」
 勿論、一気飲みなどもってのほかだ。
 アルドラは先程ミハイルに貰ったシードルを勧めてみた。
「これなどは度数も低いし、呑兵衛にとっては酒のうちには入らんかもしれんが、初めて飲むには丁度良いだろう」
 流石は酒好き、良い選択だとミハイルを褒める。
「よせよ、照れるぜ」
 バーテンダーの服装に着替えてすっかり「なりきり気分」のミハイルは、照れ隠しのようにシェイカーを振った。
 抹茶リキュールと生クリームをシェイクして、門木をイメージした緑色のカクテルをグラスに注ぐ。
「髪の色が緑ってのもあるが、章治は和風のイメージだな」
 アルコール度数は控えめに、少し甘さを強くして。
「章治も酒にはあまり強くなさそうだし」
 と言うか味覚が子供だし?
「……抹茶アイスみたいだな……」
 一口飲んだ門木はそんな感想を漏らす。
 トッピングに甘い大納言でも浮かべたら合うかもしれない。
「りりかにもイメージに合うカクテルを作ってやる」
 だがその前に、どれくらい行けそうかシードルで試してからだ。
「では、一口……挑戦してみるの」
 僅かに泡立つ液体をグラスに注ぎ、りりかはそっと鼻を近付けてみる。
「んむ、りんごの香りなの……」
 続いて、少しだけ口に含んでみた。
「おいしい、です」
 まるでジュースのように飲みやすい。
 続けて二口、三口と喉に流し込む――が。
「ゼロさん?」
 何をニヤニヤ悪い顔で笑っているのかと思ったら。
「せやろ、なんせほんまもんのリンゴジュースやからな!」
 すり替えておいたのさ!
「未成年のりんりんに酒を飲ませるわけにはいかんからな!」
 まだ言ってる。
「そろそろ認めてくれても良いと思うの、ですよ?」
「いいや、俺は認めん!」
 それに初めてのお酒で悪酔いでもしたらどうするの。
「酔って暴れる大魔王なんてシャレにならんやろ!」
「ゼロさん?」
 にっこり、りりかが微笑んだ。
「少し、お話をしましょうか……ですよ?」
 パチン、手にした鉄扇が軽い音を立てる。
 音は軽いが、その音がゼロに与える重圧感たるや――
「あー、せや雨さん、久しぶりやな!」
 ゼロはわざとらしく話題を変えて、鄭理の背中をバシバシ叩いた。
「なんや暫く見んと思ったら、こんな時はちゃっかり出て来るんやな!」
「大事な妹分の誕生日だ、祝ってやるのは当然だろう」
「で、今までどこで何しとったんや、武勇伝でも聞かせてもらおうやないか」
「いや、俺のことはいいから」
 鄭理はゼロの背を思いっきり押し出した――鉄扇を手に待ち構える大魔王の前に。
「観念して、OHANASHIされて来い」
 どーん!
「いえ、遠慮します、遠慮させてください」
「なら、ちゃんと認めてくれるの……です?」
「……くっ」
 仕方ない、涙を呑んで認めよう……今だけは。
「大丈夫だ、悪酔いなどさせぬ」
 自分達がちゃんと見ているのだからと、アルドラが笑う。
「私も酒にはそこそこ強い方だし、先に潰れることもあるまい」
 あ、それフラg(

「では今度こそ……なのですよ?」
 改めてシードルに挑戦してみたりりかは、一口飲み下した瞬間に胸が熱くなるのを感じた。
 トゥンク――もしかして、これが恋?(いいえ
「なんだか、ふわふわで気持ち良いの……」
 え、酔ってはいませんよ?
 そんなまさか、一口で酔うなんて。
「ふむ、あまり強くはないタイプか」
 その様子を観察したミハイルは、想定よりも少なめのウォッカを使って、りりか専用のカクテルを作ってみた。
 アセロラジュースにクレーム・ド・バイオレット、ウォッカ、ヨーグルトドリンクをシェイクして――
「どうだ、りりかをイメージした桜色のカクテルだ」
 名前は……そうだな、チェリー・リリーとでもしておこうか。
「ん、甘くておいしいの……」
 りりかは他の酒にも興味津々、特に門木の前に置かれた緑色のカクテルが気になるようだ。
「章治兄さま、それも味見させてもらっていいの、です?」
「ああ」
 いいけど、もう口を付けてしまったし、新しいのを頼もうか。
「んぅ、兄さまが飲んでる、それがいの」
 なんだか駄々っ子の様に言われて、門木は飲み口を拭いてから差し出してみた。
「んふふー、にーさまとかんせつきす、なの……」
「……お前、酔ってるだろ」
 門木がグラスを取り上げようとするが、りりかは酔っぱらいとは思えない身軽さと的確な反応を見せてそれを避けた。
「ほら、だいじょうぶ。酔ってないの、ですよ?」
 門木の前にグラスをそっと返し、りりかはミハイルにおねだりする。
「もっと色んなお酒を飲んでみたいの、です」
 あ、皆が注文したカクテルを一口ずつ飲ませて貰うのも良いかも?
「じゃあ俺もひとつ作ってもらおうか」
 鄭理が言った。
「ミハイル先輩、俺のイメージで頼んでいいだろうか」
 酒には強い、と言うかザルだが――りりかにお裾分けするなら、度数は控えめにしておこう。
「では私も頼むとするか」
 アルドラは持参したワインをベースに考案してもらおうとカウンターに瓶を並べた。
「ところで、そのカクテルに名前はないのか?」
 門木の前に置かれた緑色のグラスを見る。
 特に決めていないと答えたミハイルに、ゼロが「なら俺が決めたるわ」と手を挙げた。
「きっつぁんのイメージで抹茶味やから……かどき、まっちゃ……せや、カドマッチャンでどや!」
 門松みたいでメデタイやろ?
「もう少しカクテルっぽい、洒落た名前はないのか」
 本人は不満そうだが、なら代案を出せと言われても出て来ない。
「なら決まりやな」
 かく言うゼロのイメージは、やはり――たこ焼き。
「たこ焼き味のカクテルでも作るか」
 ミハイルが笑う。
「焼酎に小麦粉を混ぜて鰹節とシェイク、グラスの縁に蛸の足を引っかけて、仕上げにソース……なんてどうだ」
「なんでやねーん!」
 真面目に考えると、赤と黒の二層に分かれたカクテルはどうだろう。
 名前はブラッディ・ゼロ、とか。
 因みにりりかのチェリー・リリーをベースに辛口に仕上げた鄭理のカクテルはチェリーレイン。
 アルドラをイメージした黒いウォッカを使ったカクテルは、ヴァルキリーナイトと名付けようか。
 ミハイルにはハードボイルドに良く似合うソルティ・ドッグ――に見えて、実はグラスの縁に飾った塩を砂糖に変えたものを。
 甘くとろけるメルティ・キャットといったところか。
「んむ、なっとくのはーふぼいるどなの」
 それぞれに一口ずつ味見させてもらったりりかは、すっかり上機嫌。
「しょーじにーさま、だいすきなのー♪」
 いつもは控えめに服の端を握る程度なのが、腕にしっかりと絡み付いている。
 近頃は空気を読んで自重していた分も含めて、酒の勢いを借りて大胆になっているようだ。
「てーりんさんとも、もっとなかよしになりたいの……」
 空いた手で鄭理の腕に絡み付く。
「んふー、りょうてにはな、なの」
「花と言うには華やかさに欠ける気もするがな」
 鄭理は苦笑いを浮かべながらも、まんざらでもない様子でその頭を撫でてやった。
「ぜろさんも、みはいるさんも、あるどらねーさまも、みんなだいすきなの」
 猫ならゴロゴロ喉を鳴らしているに違いない勢いで、素直に甘えるだいまおー様。
「やれやれ、酔わせるつもりではなかったのだがな」
 もう寝かせた方が良さそうだと、アルドラがグラスを置いて立ち上がる――が。
「り〜りか〜」
 身体がコンニャクにでもなったかのようにふにゃりと崩れ落ち、そのままりりかに抱き付いた。
「あかん、手遅れや」
 ゼロが沈痛な面持ちで首を振るが、話に花を咲かせながら彼女のグラスに酒をどぼどぼ注いでいたのは誰でしたっけ。
 お陰でアルドラの属性から「クール」が消滅、代わりにそれまで抑圧されていた「甘えた」が思いきり羽を伸ばす。
「りぃ〜りかぁ〜」
 すりんすりん。
「んふふ、あるどらねーさまかわいいの……」
 もっきゅもっきゅ。
 二匹の子猫が互いにじゃれ合ううちに遊び疲れて寝てしまうように、二人はそのまま寝息を立て始めた。
「どっちも子供だな」
 カウンターの後ろでミハイルが笑う。

 子供達はソファにでも寝かせて、大人はもう暫く飲み会を楽しもうか。


 なお、りりかとアルドラは翌日手ひどい二日酔いに襲われて――
 なんて事はありませんでしたので、ご心配なく。

 記憶も消し飛ぶことなく、しっかり保持していた模様。
 でも、こちらは消えてくれた方がよかった、かもしれない……?


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb6883/華桜りりか/チェリー・リリー】
【ja4779/桜雨 鄭理/チェリーレイン】
【jb0544/ミハイル・エッカート/メルティ・キャット】
【jb7501/ゼロ=シュバイツァー/ブラッディ・ゼロ】
【jb7894/アルドラ=ヴァルキリー/ヴァルキリーナイト】
【jz0029/門木章治/カドマッチャン】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、STANZAです。
いつもありがとうございます。

お待たせしてしまい、申し訳ありません。
全く酒が飲めない者が書いた酒飲み話、お楽しみいただけると幸いです。
リテイクはご遠慮なくどうぞ!
ゴーストタウンのノベル -
STANZA クリエイターズルームへ
エリュシオン
2015年12月08日

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